こちらの要請に対してなかなかフロント担当が動いてくれない…
または、
管理組合として困っているのに、管理会社が対応策を考えてくれない…
さらには、
区分所有者として困っていて相談しているのに、対応してくれない…
などなど、管理組合において管理会社に対する対応の不満や、今後の管理会社に対する不安等、出てくることも多いでしょう。
確かに、これらはどの管理組合においても共通する課題として挙がってきます。
このような状況にある管理組合や区分所有者はどのように対応すればいいのでしょうか?
管理会社を変えれば対応が変わる…?
また、
フロント担当を変えて貰えれば対応が変わる…??
そのように考えていないでしょうか。
単に変えるだけでは変わらない事実もあるかもしれません。
具体的に管理組合としてどのような対策を講じればよいのか、検討していきます。
管理会社が中々対応してくれない…管理組合が取るべき対策と注意点は
今回紹介する内容は以下の通りです。
・管理組合がなかなか対応してくれない管理会社に対して取るべき対策は?
・対策を講じるうえで管理組合として注意すべき点は?
まず、管理組合の傾向として、令和5年度のマンション総合調査より、管理会社に対してどのような考え方を持っているのか、確認します。
さらに、本題である管理組合の意向をなかなか管理会社が対応してくれない場合の取るべき対策を考えてみます。
そして、管理組合としてそのような対策を取る場合には、注意する必要がある点もあります。
その点を、数々の事例を見てきた筆者の視点から具体的に紹介したいと思います。
データから見る管理組合の管理会社に関する考え方の傾向は?
管理組合や区分所有者の管理会社に対する考え方を、まずはデータを通じて見ていきます。
以下、国土交通省による令和5年度のマンション総合調査より引用します。
管理会社変更の動向は?
令和5年度のマンション総合調査に、「マンション管理会社の決定方法」という管理組合向けに対する調査結果があります。
その回答としては以下の通りです。
このアンケート結果から分かる通り、完成年次が古いほど、管理会社の変更を行っていることがわかります。
具体的には、
・昭和55年~59年の築40年以上の管理組合でも4割以上が管理会社変更を実施
・さらに平成2年~平成6年の築30年以上でも4割弱が実施
・令和のマンションでも少なからず管理会社の変更を行っている
という事実が浮かび上がっています。
管理組合としては、なんらかの要因により管理会社変更を検討し、検討の結果、実際に変更を実施しているということになります。
管理事務を管理会社へ委託することへの意向は?
次に、区分所有者向けのアンケートとして、「管理事務を管理業者へ委託することへの意向」という調査結果があります。
完成年次別では、
傾向として、以下
・専門家の活用も必要であると答えたマンションは比較的築浅のマンションが多い
・完成年次が古いほど専門家を活用せず管理組合で方針を決めるべきと答える割合が多い
となっています。
また、世帯主の年齢別では、以下の通り
となっています。
世帯主の年齢が高齢なほど、「管理業者に任せても良いが、専門家を活用せず管理組合で方針を決めるべき」と答える割合が高くなっています。
管理組合がなかなか対応してくれない管理会社に対して取るべき対策は?
管理組合や区分所有者が、管理会社に対して考えている傾向を確認しました。
高経年マンションや高齢世帯を中心に、一定数は、管理組合で方針を決めて対応すべきという傾向も見えています。
その場合、管理会社に要請するものの、実際は管理組合自ら実施するという結論に達する所も多そうです。
一方で、結論に達する前の段階として、管理組合の要請に対して、管理会社がなかなか対応してくれない場合はどのように対応すればよいのでしょうか。
具体的に考えられる対策を紹介します。
まずは、管理組合としても丁寧にフロント担当者に相談する
「管理組合の要請に応えてくれない」
という段階であれば、繰り返し相談していることと考えられます。
ただ、改めて管理組合からの一方的な要請になっていないかどうかは確認する必要があります。
そして、要請を丁寧に対面で具体的に伝えたうえで、対応可能かどうか、また対応不可能な場合はその理由を確認することが望まれます。
管理組合側の要請はロジカルに伝え、
管理会社からの回答も合理的でロジカルになっているか
このあたりは確認したい点でしょう。
口頭ではなく書面で依頼する
管理組合側からの要請が、口頭で一方的な言い分になっていないかどうかは重要な論点です。
要請を書面で伝える場合は、以下
・一貫性のある論理的である
・丁寧で分かりやすい内容になっている
に注意して伝えていくことも重要です。
どうしても管理会社のフロント担当者には、口頭でお願いすることも多いでしょう。
言った言わないなどを回避するためにも、的確に要請を伝えるためには、メールでもよいので、書面は有効な手段であると考えられます。
管理組合内の自分たちでできないか検討してみる
前章の調査データから、完成年度が古いマンションや、年齢が高い層においては、
管理業者に任せても良いが、専門家を活用せず管理組合で方針を決めるべき
と考えています。
管理組合内や区分所有者においても比較的ノウハウが貯まってくることもあるのでしょう。
そのため、要請に対してもなかなか前に動かない場合は、
自分たちで対応できないか?
を考えていくことも一つです。
これによって、管理組合内に新たなノウハウが残る可能性もあるでしょう。
ただし、管理委託契約で決められた内容であれば、あくまでも専門的なノウハウを持つ管理会社にお願いするのが筋といえます。
なかなか改善されない場合はフロント担当の変更を要請する
フロント担当者の担当範囲が多くて忙しい可能性があります。
その場合は、フロント担当に気遣う形も踏まえて、
管理組合に対する対応を見ていると、フロント担当者が非常に忙しいとのこと、お伺いしました。
ついては、どなたか新たな担当者をアサインしてもらえませんでしょうか?
など、フロント担当者の上長や、問い合わせ窓口等へ確認することも考えられます。
本人からしたら、いきなりこのような話が上長から来たり、横のカスタマーサービスから来たりすると、良い気がしないでしょう。
そのため、まずは担当者本人に話せるようなら話すべきでしょう。
さらに動かない場合は管理会社変更も視野に入れる
管理組合の度重なる要請に対しても動いてもらえない場合は、会社組織として対応してくれない可能性があります。
また、もしかしたら管理組合との取引を縮小したいと考えているのかもしれません。
冒頭の令和5年度のマンション総合調査にもあったとおり、建ってから長いマンションほど、管理会社を変更する傾向にあります。
ただ、安易に管理会社を変更することは、その後の管理会社からの協力体制を受けづらくなるとともに、理事会や役員、さらには管理組合の負担になります。
そのため、手を尽くした後の最終手段として考えるべきでしょう。
対策を講じるうえで管理組合として注意すべき点は?
前章のような対策を講じるにあたって、管理組合として注意しておかなければならない点はどのような点でしょうか。
最後に、チェックしておきたい内容として紹介します。
管理委託契約の内容を確認する
まず、なかなか動いてくれないということは、契約内容に含まれていないことを管理組合として言っているのではないかを確認しておくことも重要です。
フロント担当者は、管理委託契約の内容を知っている前提です。
しかしながら、もしかしたら詳しくは知らず、会社として対応したことがない、または対応していない内容を、管理組合が要請してきていることも考えられます。
明らかに契約内容に含まれている内容であれば、契約記載内容や該当部分の条項を提示することで、交渉する必要があると考えられます。
管理組合の要請が過剰になっていないか確認する
管理委託契約の内容には含まれているとしても、要請がそれ以上に及ぶ場合は対象外になる可能性も考えられます。
また、管理組合からの高圧的な対応や一方的な言い分等、いわゆるカスタマーハラスメントに該当しないかどうかも重要な論点です。
このような場合は、管理会社として対応しない可能性もあり、もし思い当たる点があれば、管理組合としても対応を改める必要もあるかもしれません。
申し入れは必ず理事会や管理組合を通じて行う
管理組合役員から伝える形とし、役員ではない区分所有者や居住者から、直接管理会社やフロントに伝えるということは避けなければなりません。
理由は、管理委託契約の契約主体は個人ではなく、管理組合であるからです。
ただ、要請が個人の事情によるものであれば、区分所有者や居住者個人と管理会社になる場合もあるでしょう。
管理委託契約の内容に沿った形でお互いに向き合うことが重要
今回は管理組合の要請に応じてくれない場合の、管理組合として取るべき対策や、注意すべき点を紹介しました。
管理会社としても、管理組合という顧客のために、要請には応じたいと基本は考えているかと思います。
ちょっとした対象外の事項でも、その姿勢はフロント担当者によっては持っているでしょう。
しかしながら、昨今の人材不足によってリソースがひっ迫した状態であれば、極力契約範囲の中で行いたいと考えるのが普通です。
そして、管理会社としてもビジネスであり、契約外の過剰な要請への対応は難しくなるでしょう。
このようなことから、もし対応してくれない場合が発生すれば、話し合いの中でお互いの妥協点を見つけていく必要があるといえます。
くれぐれも、管理組合側のカスハラ行為には注意する必要があります。
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