修繕積立金の運用は「すまい・る債」一択?個人向け国債プラスとの違いと判断基準【YouTube解説】

マンション管理

※当コラムでは商品・サービスのリンク先にプロモーションを含むことがあります。ご了承ください。

マンションにお住まいの皆さんにとって、修繕積立金は建物を長期にわたって維持・管理していく上で非常に重要な資金です。しかし近年は、建築資材価格や人件費の上昇によって、10年前に作成した長期修繕計画の想定金額では工事費が収まらないケースも増え始めています。そのため近年では、「修繕積立金をただ銀行口座に置いておくだけで良いのか」という問題意識を持つ管理組合も増え始めています。

修繕積立金の運用方法にはいくつか選択肢がありますが、中でもマンション管理組合にとって比較的馴染み深く、長年利用されてきたのが、住宅金融支援機構が発行する「マンションすまい・る債」です。

一方、令和8年12月募集分・令和9年1月発行分からは、「個人向け国債プラス」として、マンション管理組合でも個人向け国債を購入可能となる予定です。

そのため今後は、

「すまい・る債を選ぶべきか」
「個人向け国債プラスを検討すべきか」
「資金をどう分けるべきか」

という視点が、管理組合実務で重要になっていくと考えられます。

このコラムでは、「マンションすまい・る債」がどのような商品なのか、どのようなメリットや注意点があるのか、そしてどのように申し込むのかを、マンション管理士でもあり、FP1級(一級ファイナンシャル・プランニング技能士)でもある筆者が分かりやすく解説します。安全に修繕積立金を増やしたいと考えている管理組合の方は、ぜひ最後までお読みいただき、今後の運用検討の参考にしてください。

※2026年4月9日更新:2026年度のマンションすまい・る債の募集情報が更新されましたので、加筆しました。
※2026年5月6日更新:個人向け国債プラスの情報を追加しました。
▼住宅金融支援機構 2026年度マンションすまい・る債の募集情報のお知らせ

※2026年8月18日更新:住宅金融支援機構が検討する、満期後の「連続積み立て」と保有するすまい・る債を活用した資金融資について追記しました。
※2026年9月1日更新:すまい・る債の安全性、10年満期時年平均利率の考え方、認定すまい・る債とステップアップすまい・る債の関係、2026年7月末時点の応募状況について加筆しました。

  1. マンション管理組合の修繕積立金を取り巻く現状
    1. 物価上昇が修繕費用に与える影響
    2. 修繕積立金の積立状況と課題
    3. 現在の主な運用方法
  2. 注目される修繕積立金の運用方法
  3. 「マンションすまい・る債」の詳しい内容とメリット
    1. 安全性の高さが大きな特長
    2. 定期的な利息の支払いと購入単位
    3. 2026年度は短期保有時の利率も改善(2026年9月1日追記)
    4. 中途換金が手数料無料
    5. 管理計画認定で利率が上乗せされる「認定すまい・る債」
    6. ステップアップすまい・る債の創設(2026年4月〜)
    7. 認定型とステップアップ型の上乗せは加算できない(2026年9月1日追記)
    8. 2026年7月末時点の応募状況(2026年9月1日追記)
    9. リフォーム融資利用時の優遇措置
  4. 【2026年8月追記】2027年度から「連続積み立て」へ、保有債券を活用した融資も予定
  5. 「マンションすまい・る債」のデメリットと注意点
    1. 物価上昇率との比較
    2. 資金が増えにくい側面
    3. すまい・る債を購入した結果、修繕積立金の余剰が十分でなくなる可能性
  6. 「マンションすまい・る債」への応募方法と流れ
    1. 年に一度の募集期間と先着順の注意
    2. 応募に必要な書類
    3. 申込方法は郵送とWebから選べる
    4. 応募にあたっての重要な準備
  7. 他の主な運用方法との比較(個人向け国債プラス含む)
    1. 定期預金
    2. 国債
    3. 各運用方法の比較まとめ
  8. マンション管理組合が運用を成功させるためのポイント
    1. 区分所有者間の合意形成
    2. 長期修繕計画と一体で運用を考える
    3. 専門委員会や専門家の活用
  9. マンションすまい・る債を分かりやすくYouTube解説
  10. まとめ:すまい・る債を活用して計画的な修繕資金を
  11. 参考文献

マンション管理組合の修繕積立金を取り巻く現状

物価上昇が修繕費用に与える影響

ご存知の通り、近年は様々なものの価格が上昇しています。これはマンションの大規模修繕工事や設備の改修・更新にかかる費用にも影響しており、建築資材費や人件費の高騰により、以前に立てた長期修繕計画で想定していたよりも費用がかさんでしまう懸念が出てきています。

修繕積立金の積立状況と課題

国土交通省の調査によると、約4割のマンション管理組合が「計画通りの積立ができていない」と回答しています。物価上昇に伴い、この傾向はさらに強まる可能性があり、将来的に必要な修繕費用が不足することが懸念されています。

現在の主な運用方法

このような状況にもかかわらず、多くのマンション管理組合の修繕積立金は、依然として低金利の銀行預金に置かれたままです。実際、令和5年度のマンション総合調査では、修繕積立金の運用先として最も多かったのが銀行の普通預金で、次いで定期預金、決済性預金となっています。

かつての超低金利時代であれば、「安全に保管しておく」という考え方でも大きな問題はありませんでした。しかし現在は、物価上昇や修繕費高騰によって、資金をほとんど増やせない状態そのものが、将来的な修繕計画へ影響を与える可能性も出始めています。

特に、修繕積立金残高が数千万円から数億円規模となるマンションでは、金利差が年間数十万円〜数百万円単位の差につながるケースもあります。

注目される修繕積立金の運用方法

このような背景から、マンション管理組合の間で関心が高まっているのが、修繕積立金の効率的な運用です。様々な運用方法がある中で、近年特に応募数を増やしているのが、住宅金融支援機構が発行する「マンションすまい・る債」です。

「マンションすまい・る債」は、マンション管理組合が修繕積立基金や修繕積立金などをまとめた金額で購入できる債券商品で、修繕積立金の代替運用先として利用できます。これは、住宅金融支援機構という国の認可を得て発行する債券であり、原則として10年満期の全期間固定金利債です。マンション管理組合は「マンションすまい・る債」を購入(積立て)することで、将来の修繕資金を計画的に運用することが可能です。

「マンションすまい・る債」の詳しい内容とメリット

では、「マンションすまい・る債」にはどのような特長やメリットがあるのでしょうか。

安全性の高さが大きな特長

「マンションすまい・る債」は、安全性に配慮された債券ですが、銀行の定期預金のような元本保証商品ではありません。また、預金ではないため、預金保険制度の対象にもなりません。そのため、「国の関係機関が発行しているから、必ず元本が保証される」と説明するのは正確ではありません。

一方で、元本保証がないことだけを見て、一般的な価格変動の大きい金融商品と同じように捉える必要もありません。住宅金融支援機構は、資本金の全額を政府が出資する独立行政法人であり、「マンションすまい・る債」は、国の認可を受けて機構が発行する一般担保付債券です。

住宅金融支援機構法では、すまい・る債を保有する管理組合は、機構の財産から優先的に弁済を受ける権利を有すると定められています。元本保証とは異なりますが、管理組合が預けた財産を保全するための法的な措置が講じられているということです。

また、初回債券発行日から1年以上経過した後の中途換金では、市場価格で債券を売却するのではなく、原則として購入金額に所定の利息を加えた金額が支払われます。この点は、満期前に市場で売却すると価格変動によって元本割れする可能性がある新窓販国債などとは、リスクの性質が異なります。

ただし、発行体である住宅金融支援機構の信用状況が悪化した場合には、元本や利息の支払いが滞ったり、元本割れが生じたりする可能性があります。管理組合内で説明する際には、「元本保証ではないが、機構法に基づく優先弁済権などの法的保全措置がある」と整理するのが適切でしょう。

定期的な利息の支払いと購入単位

「マンションすまい・る債」は利付10年債であり、満期までの10年間、毎年1回、通常は2月に利息を受け取ることができます。ただし、毎年同じ利率が適用されるわけではありません。

2026年度募集分の通常のマンションすまい・る債は、10年満期時の年平均利率が2.000%です。この2.000%は、10年間の受取利息を平均した利率であり、最初の年から毎年2.000%の利息を受け取れるという意味ではありません。

通常のマンションすまい・る債の場合、単年利率は1年目の0.400%から始まり、6年目以降に大きく上昇し、10年目には4.340%となります。

例えば、1億円を運用した場合、税引前の受取利息は1年目が40万円、10年目が434万円です。10年間保有した場合の税引前受取利息の合計は2,000万円となりますが、毎年200万円ずつ受け取るわけではない点に注意が必要です。

受取利息額は保有年数によって大きく異なるため、管理組合の会計計画に組み込む場合は、「10年間の平均利率」だけではなく、各年度に実際に受け取る利息額を確認しておくことが重要です。

購入は1口50万円単位から可能で、一度購入すると、応募時に届け出た積立希望口数を毎年最大10回まで継続して購入し、積み立てることができます。1回のみの購入も可能です。ただし、継続購入の途中で購入口数を増減する場合などには、改めて応募手続が必要となる点に注意してください。

▼2026年度の受取利息を1,000万円・1億円の実額で確認する

2026年度は短期保有時の利率も改善(2026年9月1日追記)

すまい・る債は、長期間保有するほど単年利率が上がる設計となっています。そのため、従来は比較的早い段階で中途換金すると、十分な利息を受け取りにくいという側面がありました。

しかし、2026年度募集分では利率の上昇カーブが見直され、短期間の保有でも従来より利息を受け取りやすい設計となっています。

1,000万円を通常のマンションすまい・る債で運用した場合の、税引前受取利息の累計額を比較すると、次のとおりです。

保有期間2025年度募集分2026年度募集分
1年1,000円40,000円
3年19,200円180,000円
5年59,500円350,000円
10年525,000円2,000,000円

※住宅金融支援機構「マンションすまい・る債受取利息表」に記載された各年の単年利率をもとに、筆者が1,000万円を運用した場合の税引前受取利息の累計額を試算。2025年度募集分は2026年2月発行債券、2026年度募集分は2027年2月発行予定債券を比較しています。
出典:住宅金融支援機構「マンションすまい・る債受取利息表

2025年度募集分では、5年間保有した場合の税引前受取利息は累計5万9,500円でした。これに対し、2026年度募集分では35万円となります。

もちろん、10年間保有した方が受取利息は多くなりますが、次回の大規模修繕工事まで5年程度しかない管理組合でも、以前より検討しやすくなったといえるでしょう。

ただし、上記は各年度募集分の通常のマンションすまい・る債を、各期間保有した場合の単年利率を合計した税引前の概算額です。実際の受取額からは、所得税及び復興特別所得税が差し引かれます。

中途換金が手数料無料

マンションの修繕は計画通りに進むとは限りません。大規模な災害や予期せぬ設備の故障などで、急にまとまった修繕費用が必要になる場合もあります。「マンションすまい・る債」は、初回債券発行日から1年以上経過すれば、手数料なしで、修繕工事等のために1口単位で中途換金が可能です。また、やむを得ない事情がある場合には、債券発行から1年以上経過していなくても中途換金が可能な場合があります。中途換金時には、購入金額(元本)に所定の利息を加えた金額が支払われます。ただし、中途換金には機構による確認(管理組合の中途換金の意思表示や必要書類等の確認)が必要です。

中途換金が可能な金額は、その時点で保有する債券の残高の範囲内であれば一部でも全部でも可能で、複数回に分けて行うこともできます(ただし、同じ月に中途換金できるのは1回のみです)。中途換金額は購入した債券1口あたり50万円で、これに加えて経過利息が支払われます。経過利息に対しては課税されますが(源泉分離課税)、中途換金自体に手数料はかかりません。

管理計画認定で利率が上乗せされる「認定すまい・る債」

2025年4月からは、地方公共団体が定める基準を満たし、「管理計画認定制度」の認定を受けたマンションの管理組合が「マンションすまい・る債」を購入する場合、債券の利率が上乗せされる「認定すまい・る債」の募集が開始されました。

2026年度募集の場合、通常の「マンションすまい・る債」の10年満期時年平均利率(税引前)が2.000%であるのに対し、認定を受けたマンション向けの利率は2.100%に上乗せされます。管理計画認定を取得している管理組合にとっては、より有利な条件で修繕積立金を運用できるメリットがあります。

管理計画認定制度は、マンションの適切な管理を推進するための制度であり、借入れがある場合でも、適正な長期修繕計画があり、計画最終年度までに借入れを完済していれば認定取得の可能性があります。認定を取得することで、資産価値向上や共用部分リフォームローンの借入利率引き下げといったメリットも得られます。

ステップアップすまい・る債の創設(2026年4月〜)

2026年度から、新たに「ステップアップすまい・る債」が創設されました。これは、マンション管理適正評価制度において「★4以上」の評価を取得したマンション、またはマンション管理適正化診断サービスにおいて「S評価」を取得したマンションの管理組合を対象とする制度です。

2026年度募集分の10年満期時年平均利率は、通常のマンションすまい・る債が2.000%、ステップアップすまい・る債が2.050%、認定すまい・る債が2.100%となっています。

管理水準の高さを評価し、修繕積立金の運用面でもインセンティブを与える仕組みであり、「管理計画認定の取得までは至っていないものの、一定の管理水準を満たしているマンション」にとって現実的な選択肢となります。

認定型とステップアップ型の上乗せは加算できない(2026年9月1日追記)

認定すまい・る債の0.10ポイントの利率上乗せと、ステップアップすまい・る債の0.05ポイントの利率上乗せは、加算できません。

例えば、管理計画認定を取得し、同時にマンション管理適正評価制度の★4以上や管理適正化診断サービスのS評価を取得している場合でも、利率が2.150%になるわけではありません。この場合は、上乗せ幅の大きい認定すまい・る債の2.100%が適用されます。

住宅金融支援機構は、両制度の上乗せ利率を将来的に加算する可能性について、今後の応募状況や制度の効果を見ながら検討するとしています。ただし、現時点で加算が決まっているわけではありません。

2026年7月末時点の応募状況(2026年9月1日追記)

住宅金融支援機構が公表した2026年7月末時点の速報では、すまい・る債全体の応募組合数は2,084組合、応募口数は10万8,069口となっています。

内訳は次のとおりです。

商品区分応募組合数応募口数
通常型1,650組合76,114口
認定型254組合23,272口
ステップアップ型180組合8,683口
合計2,084組合108,069口

※住宅金融支援機構が公表した「2026年7月末時点の応募状況(速報)」をもとに筆者作成。
出典:住宅金融支援機構「マンションすまい・る債

認定すまい・る債とステップアップすまい・る債を合わせた優遇型の応募は434組合で、全体の約20.8%です。一方、応募口数では両者を合わせて3万1,955口となり、全体の約29.6%を占めています。
※優遇型の応募割合20.8%及び応募口数割合29.6%は、住宅金融支援機構の公表数値をもとに筆者が算出。

優遇型は、組合数では全体の約2割ですが、応募口数では約3割を占めています。特に認定すまい・る債は、比較的多くの口数を申し込む管理組合が多い傾向が見られます。

この結果からは、適切な管理体制を整えているマンションほど、修繕積立金の運用余力も大きい可能性が考えられます。ただし、マンションの戸数や規模の違いも影響するため、管理計画認定を取得したことによって運用資金が増えた、とまで断定することはできません。

なお、応募状況は募集期間中の速報値であり、今後更新されます。最新の応募状況については、住宅金融支援機構の公式情報をご確認ください。

▼住宅金融支援機構
マンションすまい・る債の募集情報・応募状況

リフォーム融資利用時の優遇措置

「マンションすまい・る債」を積立てている管理組合には、住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」を利用する際に、金利や保証料の優遇措置が受けられる特典があります。

「マンション共用部分リフォーム融資」は、大規模修繕工事等を実施する際に利用できる、マンション管理組合向けの融資制度です。この融資を利用する際に「マンションすまい・る債」の残高がある場合、融資金利が年0.2%引き下げられ、さらに、(公財)マンション管理センターの保証を利用する場合、保証料が2割程度割り引かれます。これは、将来的に大規模修繕などで融資が必要になる可能性がある管理組合にとって、非常に魅力的な特典と言えるでしょう。

管理組合としては、

「余剰資金があってマンションすまい・る債を購入しているにも関わらず、なぜ共用部分リフォーム融資で借金をしなければならないのか?」

という疑問が生まれるかと思います。確かに、自己資金の運用と借金という、いわゆる両建てを行うことによる違和感もあるでしょう。すまい・る債で運用している中で満期になる前に、新たな工事が必要となり、少額であっても資金需要が発生することも考えられます。そのようなケースを考えると、いわゆる「両建て」という考え方もあり得るかもしれません。

【2026年8月追記】2027年度から「連続積み立て」へ、保有債券を活用した融資も予定

2026年8月5日付のマンション管理新聞によると、住宅金融支援機構では、「マンションすまい・る債」の利便性を高める新たな制度拡充が検討されています。

その一つが、満期を迎えた債券の元本を、新たに購入するすまい・る債の購入資金に充てる「連続積み立て」です。現行制度では、同一口数で毎年1回、最大10回まで継続購入できますが、満期後に再び購入する場合には改めて応募する必要があります。住宅金融支援機構では、2027年度をめどに、満期後も運用を途切れさせにくい仕組みの導入を検討しています。

さらに2028年度をめどに、修繕資金が必要になった際、保有しているすまい・る債に質権を設定し、その積立額を限度として融資を受けられるオプションも検討されています。実現すれば、修繕のためにすまい・る債を中途換金するだけでなく、債券を保有したまま必要な資金を確保するという選択肢が加わることになります。

住宅金融支援機構では、「連続積み立て」は2027年度、資金融資のオプションは2028年度の開始を予定して準備を進めています。ただし、資金融資の金利など未定の項目もあるため、実際の利用に当たっては今後公表される正式な制度内容を確認する必要があります。

「マンションすまい・る債」のデメリットと注意点

多くのメリットがある「マンションすまい・る債」ですが、運用にあたってはいくつかのデメリットや注意点もあります。

物価上昇率との比較

「マンションすまい・る債」の利率は、現在の低金利の銀行預金と比べると高い水準にありますが、近年進む建築コストの上昇率と比べると、その利回りは低いという側面があります。つまり、運用によって得られる利息だけでは、修繕に必要な資材や人件費の上昇分を十分に補えない可能性があるということです。

資金が増えにくい側面

上記とも関連しますが、「マンションすまい・る債」は安全性の高い商品である反面、長期的な視点で見ても修繕積立金の金額を大きく増やすことには向いていないと言えます。積極的に資金を増やして、物価上昇による修繕費用の増加に備えたいと考える場合には、期待する成果が得られない可能性があります。

すまい・る債を購入した結果、修繕積立金の余剰が十分でなくなる可能性

すまい・る債のメリットとして中途換金ができるものの、購入から1年以内や満期償還の年(例えば発行からちょうど10年目)の2月には、満期償還を待つ必要があり、この月だけは中途換金ができないというルールがあります。

仮に、工事で支出を計画している場合は、修繕積立金に余剰を残すなどの余裕を持っての購入が必要となります。

「マンションすまい・る債」への応募方法と流れ

「マンションすまい・る債」の購入を検討している管理組合は、以下の応募方法と流れを把握しておきましょう。

年に一度の募集期間と先着順の注意

「マンションすまい・る債」の募集は年に一度行われます。2026年度の応募受付期間は、2026年4月13日から2026年10月9日までと決定しています。

ただし、募集口数には上限があり、応募は先着順となります。応募口数が募集口数に達した時点で受付終了となり、募集口数を超過した場合は、応募期間終了日が前倒しされます。そのため、応募を検討している場合は、募集開始に合わせて早めに準備を進めることが非常に重要です。

応募に必要な書類

応募にあたっては、原則として以下の書類の提出が必要です。

  • 積立申込書
  • 管理規約(全文)(コピー可)
  • 総会議事録(コピー可)等 ※代表権が確認できる書類
  • 認定通知書(コピー可)(認定すまい・る債の場合のみ)
  • 登録証(コピー可)(マンション管理適正評価制度において★4つ以上を取得したマンションのみ)
  • 診断レポート(コピー可)(マンション管理適正化診断サービスにおいてS評価を取得したマンションのみ)

なお、応募時には代表者の本人確認書類の提出は不要ですが、購入時に提出する必要があります。

申込方法は郵送とWebから選べる

マンションすまい・る債への応募は、必要書類を郵送する方法と、「マンションすまい・る債Web申込サービス」を利用する方法から選べます。

Web申込サービスでは、債券への応募や毎年度の積立手続のほか、残高証明書のダウンロード、中途換金、管理組合の登録内容変更などをオンラインで行うことができます。初めて利用する場合は、マンション管理組合の代表者である理事長等が、利用者情報と管理組合情報を登録し、本人確認の手続を行います。

委託先の管理会社がWeb申込サービスの利用登録を行っている場合は、理事長等が管理会社に申請内容の代行入力を依頼することもできます。ただし、管理会社の入力だけで申請が完了するわけではありません。入力内容を理事長等が確認・承認したうえで、住宅金融支援機構へ申請する仕組みです。

管理会社に代行入力を依頼しない場合は、理事長等が自らWeb申込サービス上で手続を行います。Web申込サービスを利用する際は、管理会社が利用登録をしているかを確認するとともに、入力や確認を誰が担当するのか、あらかじめ相談しておくとよいでしょう。

出典:住宅金融支援機構「マンションすまい・る債Web申込サービス ご利用マニュアル

応募にあたっての重要な準備

「マンションすまい・る債」への応募は先着順であり、早期に締め切られる可能性があるため、管理組合としてスムーズに手続きを進めるためには事前の準備が欠かせません。具体的には、

  • 運用する資金の額(すまい・る債の購入口数)を検討する。修繕積立金や修繕積立基金など、まとまった金額で購入できます。
  • 運用を開始するための総会決議を行う。管理規約によっては、修繕積立金の運用方法について総会での決定が必要な場合があります。通常、借入れに関する総会決議は普通決議(出席者の過半数)で可決されることが多いですが、運用に関する規約を確認し、適切な決議方法を確認しておく必要があります。
  • 総会決議後、速やかに申し込み手続きを行う

これらの準備を募集開始前に行っておくことで、希望通りの購入が可能になる可能性が高まります。春の募集開始と同時に購入を申請することによって、問題なく購入できる可能性が高まります。

他の主な運用方法との比較(個人向け国債プラス含む)

「マンションすまい・る債」以外にも、マンション管理組合が修繕積立金を運用する方法はいくつかあります。ここでは、主な運用方法として挙げられる定期預金と国債について簡単に触れ、「マンションすまい・る債」と比較してみましょう。

定期預金

定期預金は、普通預金よりも高い金利で預けることができる運用方法です。リスクはほとんどなく安全性の高い方法と言えます。しかし、現在の金利水準は非常に低く、例えば三菱UFJ銀行の10年もののスーパー定期でも年0.4%程度(記事紹介日現在)という状況です。「マンションすまい・る債」の2025年度の利率(0.525%または0.575%)と比べると、条件は劣ります。また、急に資金が必要になった場合に途中解約すると、適用される利率が低くなるデメリットがあります。

国債

国債は国が発行する債券であり、管理組合でも購入可能な「新窓販国債」などがあります。2026年4月9日現在の情報では、新窓販国債10年物の表面利率は年2.4%(税引前)となっており、「マンションすまい・る債」や定期預金と比べると、利率面では高く見える場面もあります。

ただし、新窓販国債は市場価格で価格が変動するため、満期前に売却した場合には元本割れとなる可能性があります。この点は、元本保全性を重視する「マンションすまい・る債」とリスクの性質が大きく異なります。

一方、令和8年12月募集分・令和9年1月発行分からは、「個人向け国債プラス」として、これまで個人限定だった個人向け国債についても、マンション管理組合が購入可能となる予定です。

個人向け国債プラスは、額面100円につき100円で償還される仕組みであり、変動10年型・固定5年型・固定3年型から選択できます。一方で、発行後1年間は原則として中途換金できず、中途換金時には「中途換金調整額」が差し引かれる点には注意が必要です。

そのため、今後の管理組合実務では、

・中途換金の柔軟性を重視するのか
・インフレや金利上昇への耐性を重視するのか
・長期修繕計画との整合性を重視するのか

によって、「すまい・る債」「個人向け国債プラス」「定期預金」などを比較しながら検討することが重要になっていくでしょう。

▼新たに管理組合も購入可能となる「個人向け国債プラス」については、以下の記事で詳しく紹介しています。

各運用方法の比較まとめ

運用方法 安全性 利回り(目安) 中途換金 その他注意点
マンションすまい・る債 高い 2%前後(管理組合の状況にもよる) 手数料無料(初回債券発行日から1年以上の場合) 物価上昇率との差、早期締め切り
定期預金 非常に高い 0.1〜1%前後 途中解約で利率低下 期間によってはほぼ利息が付かない
国債(新窓販国債) 比較的高い 2%前後〜(市場金利で変動) 価格変動リスクあり 満期前売却時は元本割れの可能性
個人向け国債プラス 比較的高い 1〜2%前後(商品・金利環境で変動) 原則1年換金不可 中途換金調整額あり

個人向け国債プラスの制度内容や、すまい・る債との違い、中途換金制限などについては、以下の記事で詳しく解説しています。

マンション管理組合の修繕積立金は、将来必ず必要になる大切な資金です。運用によって大きく増やすことよりも、安全性を最優先に考えることが重要です。その点において、「マンションすまい・る債」は、管理組合実務に合わせて設計されている点や、中途換金の柔軟性などから、現在でも非常に有力な選択肢といえます。

一方で、近年では「個人向け国債プラス」のように、インフレ耐性を意識した新たな選択肢も登場しています。そのため今後は、

「どちらが優れているか」

ではなく、

「いつ使う予定の資金なのか」

という視点で、商品を使い分ける考え方が重要になっていくでしょう。

マンション管理組合が運用を成功させるためのポイント

修繕積立金の運用、特に「マンションすまい・る債」のような新しい運用方法を導入する際には、管理組合内で円滑に進めるためのポイントがあります。

区分所有者間の合意形成

修繕積立金はマンションの全区分所有者の共有財産です。運用方法を変更したり、新しい運用商品を購入したりする際には、区分所有者間の十分な話し合いと合意形成が不可欠です。投資や運用に対する意識は区分所有者によって様々であり、運用経験がない方にとっては不安を感じることもあるでしょう。運用方法のメリットだけでなく、デメリットやリスクについても丁寧に説明し、理解と協力を得ることが重要です。総会での円滑な決議のためにも、事前の丁寧な説明会や資料配布などが効果的です。

長期修繕計画と一体で運用を考える

修繕積立金の運用は、長期修繕計画と一体で検討することが必須です。将来の修繕計画でいつ、いくらくらいの費用が必要になるのかを見通した上で、必要な時期に資金が不足しないように運用計画を立てる必要があります。運用によって得られる収益を長期修繕計画にどのように反映させるか、または計画自体を見直す必要があるかなど、総合的に検討することが求められます。

専門委員会や専門家の活用

とりわけ巨額な修繕積立金の運用は専門的な知識が必要となる場合もあります。管理組合内に運用に詳しい方がいない場合は、修繕積立金の運用に関する専門委員会を設置したり、マンション管理士やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談したりするのも有効な手段です。専門家からの客観的なアドバイスを受けることで、より適切な運用計画を立てることができます。

マンションすまい・る債を分かりやすくYouTube解説

最後に、これまで紹介したすまい・る債について、YouTubeで解説します。他の運用方法との比較にや、管理組合が取り組むべき課題への投げかけなど、リアリティある内容で構成しました。

こちらを聴いて全体像をつかんでから、改めてコラムや住宅金融支援機構のホームページを見ると理解しやすいかもしれません。

まとめ:すまい・る債を活用して計画的な修繕資金を

物価上昇や建築コスト高騰によって修繕費用が増加する中、マンション管理組合にとって修繕積立金をどう守り、どう維持していくかは、以前よりも重要なテーマとなっています。

住宅金融支援機構の「マンションすまい・る債」は、国の機関が発行する高い安全性を持ち低金利の銀行預金よりも有利な条件で、かつ中途換金も手数料無料で行える など、マンション管理組合の修繕積立金の運用先として多くのメリットを持つ商品です。特に、管理計画認定を取得しているマンションであれば、さらに有利な利率で運用できます。また、将来的な大規模修繕で融資を検討する場合にも、金利や保証料の優遇が受けられる特典も魅力的です。

一方で、物価上昇率に見合うほどの大きな運用益は期待しにくいという側面や、応募が先着順で早期に締め切られる可能性があるといった注意点もあります。

マンション管理組合が「マンションすまい・る債」を活用して修繕積立金を運用するためには、区分所有者間の丁寧な合意形成、長期修繕計画に基づいた計画的な検討、そして必要に応じて専門家のアドバイスを得ること が成功の鍵となります。

ぜひこのコラムを参考に、「マンションすまい・る債」や「個人向け国債プラス」など、それぞれの特徴を理解した上で、皆さんのマンションに合った修繕積立金運用を検討してみてください。

参考文献

今回のコラムで参考にした文献は以下の通りです。


✅住宅金融支援機構 すまい・る債 ホームページ
【マンションすまい・る債】のご案内
管理組合のための積立てサポート債券 【マンションすまい・る債】
✅財務省 個人向け国債プラス
個人向け国債の法人等への販売対象拡大について
✅横浜マンション管理・FP研究室
管理組合余剰資金の運用方法は?マンション管理士兼FP1級が解説
【令和7年度最新】国土交通省補助金(マンション関連等)の概要
【規約解説】マンション管理組合の借入れとは?標準管理規約第63条をわかりやすく解説!
【記事解説】マンション組合、資産運用に動く 物価上昇で修繕に懸念(日経)
管理計画認定向けすまい・る債募集枠超え【マン管新聞231125】
個人向け国債プラスとは?マンション管理組合も購入可能に|修繕積立金運用の新たな選択肢を解説

コメント

タイトルとURLをコピーしました