管理組合余剰資金の運用方法は?マンション管理士兼FP1級が解説

マンション管理

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修繕積立金が積みあがっており、銀行の普通口座に置いておくだけでは勿体ない…

また、

大規模修繕工事はまだ将来先であり、暫く修繕積立金を使わない…

さらには、

修繕積立金は直近の直近の修繕をする必要分だけ残して、余剰分は運用しておくのが良いのではないか?

このような疑問をもつ管理組合や役員、区分所有者も多いのではないでしょうか。

修繕積立金が足らないと騒がれている中で、余剰の修繕積立金があるということは、マンションとしても優秀な部類に入るのではないかと考えられます。

先日のニュースでも、修繕積立金の運用に関する記事があり、話題になりました。

タワーマンションに住む優秀な金融マンが考えて可能となった策でしょう。

ほとんどの管理組合にとってここまでの運用は難しいかもしれませんが、余剰をうまく活用して増やしていくことを検討してみたい所です。

個人の資産運用と同様に、管理組合としても余剰資金の運用で金融資産を増やしていきたいと考えるのが普通だと思います。

そのため今回は、修繕積立金に余剰があり暫くの間利用しない分がある場合、未使用分をどのような形で考えればよいのか、マンション管理士に加えてFP1級資格も持つ筆者が具体的に解説します。

※今回の記事は余剰資金の運用方法についての紹介であり、管理組合向けに購入を勧めるものではありません

管理組合余剰資金の運用方法は?マンション管理士兼FP1級が解説

今回紹介する内容は以下の通りです。

・管理組合の資金の運用に関する傾向は?
・具体的な管理組合余剰資金の運用方法は?
・管理組合の余剰資金を運用する際の注意点は?

まず、管理組合資金の運用に関する傾向として、令和5年度マンション総合調査よりその傾向を確認します。

次に、具体的な管理組合の余剰資金に関する運用方法について、マンション総合調査の実態も含めて、具体的に紹介します。

そして、管理組合資金の運用に関する注意点を、マンション管理士兼FP1級資格取得者であり、企業の財務責任者も歴任している筆者の視点から具体的に紹介します。

管理組合の資金の運用に関する傾向は?

最初に、実際の管理組合における資金運用に関する傾向はどのようになっているのか確認します。

今回も、国土交通省が出している令和5年度マンション総合調査の回答より抜粋します。

以下、参照元も同様となります。

修繕積立金の運用先は?

質問事項に、「修繕積立金の運用先は?」というものがあります。

重複回答もありますが、具体的には以下の通りです。

銀行の預金が運用の中心

運用先として最も多いのが、8割弱を占めた「銀行の普通預金」でした。

これは運用というよりも、修繕積立金を口座に入れているだけ=運用していない

という解釈とも受け取れます。

そして、完成年次が古いマンションほど、この「銀行の普通預金」の割合が多い傾向にあります。

次に多い(というか、いわゆるメインの運用)のが、「銀行の定期預金」の35.1%でした。

大規模修繕工事のタイミングを満期として、普通預金から定期預金に移し替えるという考え方とも捉えられます。

さらに、25.6%の「銀行の決済性預金」と続きます。

預金保険機構によると、銀行の決済性預金は

①決済サービスを提供できること、②預金者が払戻しをいつでも請求できること、③利息がつかないこと、という3要件を満たす預金とのことです。

決済性預金も「利息がつかない」という点から、運用とは言い難いものでしょう。

住宅金融支援機構のマンションすまい・る債は?

銀行の預金が上位3つを占める中で、4番目にようやく「マンションすまい・る債」が入ってきます。

また、マンションすまい・る債については後述で詳細説明しますが、金利が低い現在において、管理組合にとっても比較的なじみ深いものとなってきています。

その他の運用方法は?

ほかには、ゆうちょ銀行が2.1%とわずかながらにあります。

こちらは、管理組合の修繕積立金口座がゆうちょ銀行になっているものも想定されます。

また、非常に割合として低いですが、国債、公社債、投資ファンドが0.1%と続きます。

運用していると回答した1,522件中1~2件のため、冒頭で紹介したタワーマンションのような、非常にレアなケースだと考えられます。

マンションの形態別に修繕積立金の運用先を見てみると…?

さらに、マンションの形態別に運用先を確認してみます。

銀行預金の傾向は?

単棟型、団地型ともに、銀行預金に比重が置かれています。

また、後述しますが、団地型においては、すまい・る債の割合も高くなっています。

大規模かつ長年の修繕積立金の積立実績から、長期にわたって運用について検討されてきていることが伺えます。

すまい・る債の運用状況は?

単棟型と団地型を比較すると、単棟型が16.5%に対して、団地型が34.6%と倍以上の割合ですまい・る債を運用しています。

団地の棟数規模に関係なく、すまい・る債は一定の認知度を誇っていると考えられます。

一方の単棟型のなかでも20階建て以上のいわゆるタワーマンションでは、約半数がすまい・る債の運用を行っていることが分かりました。

冒頭で紹介した通り、タワーマンションは優秀な現役層が数多く住んでおり、かつ、修繕積立金の額も非常に大きいことから、資金の運用にも積極的であることが伺えます。

また、タワーマンションを管理するデベロッパー系を中心とした管理会社が、長期に寝かすこととなる修繕積立金の運用を提案してきている可能性も考えられます。

専門委員会から見る資金運用の傾向は?

さらに、理事会の諮問機関である専門委員会にて資金運用を試みる動きもあります。

専門委員会の設置状況や種類としては以下の通りです。

多くは大規模修繕委員会や防災委員会等、必要でありかつ理事会では負担が掛かるものを中心に設置されています。

そのような中でも、「修繕積立金の運用に関する委員会」として、4.2%という少数ではありますが、設置の傾向にあります。

さらに、単棟型と団地型に分かれているデータもあるので確認してみましょう。

「修繕積立金の運用に関する委員会」の設置状況は、単棟型が3.2%に対して、団地型が8.2%と多くなっています。

そして、数は少ないですが

・4棟以上の団地
・単棟型20階以上のタワーマンション

における同委員会の設置割合が高くなっています。

やはり余剰の修繕積立金をどのように活用するのかを、管理組合内で積極的に話されている傾向が確認できます。

具体的な管理組合余剰資金の運用方法は?

すでにデータからも明らかになっていますが、マンション管理組合における余剰資金の運用方法について紹介します。

マンションすまい・る債(住宅金融支援機構)

まず、紹介するのは多くのマンションですでに手掛けている住宅金融支援機構のマンションすまい・る債です。

すまい・る債はマンション管理組合における資金運用として比較的人気の商品です。

1口上がり50万円から購入可能であり、利率は0.500%(税引き後は0.4235%)です。

また、管理計画認定を受けたマンションに対する利率は0.550%(同0.4659%)となります。

ちなみに、2024年度は10月11日(金)に締め切ったようです。

このように、人気の商品であるため、春の募集開始に合わせて管理組合として運用の準備をしておく必要があります。

具体的には、

・運用のための資金額(すまい・る債購入額)の検討
・運用開始前の管理組合における総会決議
・総会決議後の速やかな申し込み

が必要であると考えられます。

前述の通り、応募が多数の場合は早期に締め切る可能性があります。

そのため、管理組合としてすまい・る債を手掛ける場合には、募集開始時には応募できるように準備しておくことが望まれます。

定期預金

こちらも無難な方法で挙がっていましたが、使わないなら普通預金に置いておくよりも、定期預金に入れて運用する方が良いという考え方に基づくと考えられます。

従って、リスクは無いものの、急に費用がかかる修繕があったとしても引き出しができない、または満期に比べ途中解約利率が適用され利率が減るということになります。

ちなみに、現在の定期預金の利率は、三菱UFJ銀行の例を挙げると、記事紹介日現在で

1,000万円未満のスーパー定期も1,000万円以上の大口定期もなら10年で年0.4%

という状況です。

すまい・る債の方が良い条件となっています。

国債

令和5年度マンション総合調査の中には、国債という回答もありましたので、紹介します。


引用:財務省 現在募集中の個人向け国債・新窓販国債より

2024年10月11日現在の財務省の情報ですが、管理組合が購入可能な新窓販国債の利率は、10年で0.827%(税引き後)とのことです。

新窓販国債とは、個人が購入することができる個人向け国債以外の国債ということで、マンション管理組合が購入する場合はこちらに当たります。

財務省のよくある質問にも、以下のような回答があり管理組合でも購入ができることとなっています。

また、国債は税引き後で考えると、すまい・る債や定期預金と比べ、利率が非常に良く見えます。

しかしながら、すまい・る債や定期預金と違って、価格変動等のリスクがあるため、いわゆる元本割れ(100万円購入した場合に99万円で戻ってくるなど)の可能性もゼロではありません。

社債

冒頭のタワーマンションの例では、リスクが少ない社債を運用したとの記載がありました。

社債とは、企業が市場からお金を借りるために発行するための有価証券であり、投資家が購入することができます。

マンション管理組合も口座を開設することによって、社債を購入することができます。

社債を購入することによって、管理組合としては、利息を受け取ることができ、満期になったら元本が返済される仕組みです。

会社によって価格や利回りが違い、かつ価格が変動するため、前述の国債同様にリスクが発生します。

かつ、国よりも企業の方が破綻リスクがあるため、国債よりも社債の方が利率は高くなっているのが一般的です。

管理組合の余剰資金を運用する際の注意点は?

最後の章では、修繕積立金を中心とした余剰資金を運用する場合の注意点を紹介します。

管理組合としての合意が重要である

修繕積立金は、管理組合の共有財産のため、その運用については管理組合の合意が重要となります。

おもに管理規約には、修繕積立金の運用については、総会決議事項として記載されていることが一般的です。

標準管理規約第48条7号では、以下の通り

総会の普通決議事項として、修繕積立金の保管及び運用方法として定められています。

運用を検討する際には、金額や運用商品とともに総会決議を得ることが必要となります。

リスクとリターンを慎重に考える

修繕積立金は、将来的には必ず必要となるお金であるため、リスクをとった運用は望ましくありません。

そのため、マンション総合調査にあったとおり、多くのマンションでは、銀行預金がすまい・る債というリスクがない商品を選んでいます。

国債や社債等、リスクを伴う運用を行う管理組合はごく少数であると考えられますが、リターンとリスクは表裏のため、管理組合として慎重に運用方針を検討することが望まれます。

運用額が少ないと複利の効果が限られる

どうしても運用資金が少ないと、複利の効果が限られてしまいます。

簡単にいえば複利とは、購入額に対して1年目についた利息分を含めて翌年度にも購入するという考え方で、どんどん金額が雪だるま式に増えていくことを指します。

ちなみにすまい・る債を例に、1000万円を運用した場合と、1億円を10年間運用した場合を比較すると、

・1,000万円の運用:1000万円×(1+0.005)^10年=1,056万3,958円
運用益:56万3,958円 10年間の複利利回り:5.6%
・1億円の運用:1億円×(1+0.005)^10年=1億563万9,583円
運用益:563万9,583円 10年間の複利利回り:5.6%
※税引き前で管理計画認定を受けていないマンションを想定
※^10は10年複利計算の算式

という計算になります。

運用額が10倍になると、同様の運用方法なら当然10倍の効果が表れます。

その差として507万円あり、余剰資金が多いほど複利の効果が得られ、金額として有利になるということになります。

途中で修繕積立金が必要となる可能性もある

修繕積立金のほとんどの額を運用に回す管理組合は少ないと考えられます。

しかしながら、満期を待たずに運用期間中にやむを得ない多額の費用を伴う修繕が発生することも考えられます。

そのため、いくらぐらいを運用に回すか、また将来の予備としてどのぐらい持っておくのが適切なのか、現状のマンションの管理状況とも照らして十分考えておくおくことが重要です。

定期預金の解約やすまい・る債の解約も出来なくはないですが、本来計画していた運用目標に対して目減りしてしまう点に注意が必要でしょう。

是非とも検討したい管理組合の余剰の修繕積立金の運用

管理組合の修繕積立金の運用として、令和5年度のマンション総合調査のデータも見ながら、おもな運用方法を確認しました。

余剰資金をうまく運用するというのは、個人資産の考え方や、国が運用する年金資金も同様の考え方といえます。

銀行の普通預金ではほぼ増えない中、管理組合としても例外ではありません。

運用の際には注意すべき点や、管理組合としての運用方針を考えながら、将来に必要となる余剰資金をより増やしていくことが賢明であると考えられます。

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