自宅のマンションが建ってから時間が経過し高経年化してきている
また、
少子高齢化と相まって、住民が高齢化し若い世代の入居が無く、子どもも少なくなっている
このような悩みを持たれている管理組合や理事会も非常に多いと思われます。
タワーマンションの竣工ラッシュを見れば感じるかと思いますが、
国土交通省の調査 によると、
2022年度の新規マンション供給戸数は9.4万戸となっており、
2012年から10年連続で10万戸超の供給が続いていたものの、
10万戸を割る水準となっています。
一方で、マンションが建ってから40年を超える、いわゆる「高経年マンション」も数多く存在し、
40年以上が前年+31.2万戸の125.7万戸(前年94.5万戸)
50年以上が前年+8.2万戸の29.3万戸(前年21.1万戸)
というデータが、同じく国土交通省の把握している数値として出ています。
今回は、
・マンションも高経年化していて今後が心配だ
・高齢化、高経年化にどのような対応をすればいいのか知りたい
このような悩みを持つマンション管理組合や区分所有者に対して解決策を考えていきます。
時の流れとともに増え続ける高経年マンションの課題とその対策について、国のデータも参考にしながら考えてみます。
マンション管理組合が直面する「2つの老い」の問題
マンション管理組合は一般的に、「2つの老い」に直面しつつあると言われています。
具体的には、
・住民の「高齢化」
の2つの問題です。
最近では、マンション管理に欠かせない管理員さんも高齢化してきており、
この管理員さんの老いを加えると「3つの老い」とも言われることもあります。
日本全体の構造変化として、回避できない課題となっており、今後の対策が非常に大きな課題となりつつあります。
それぞれ具体的に確認してみましょう。
進行するマンションの高経年化
冒頭に述べたように、1980年代に建てられた築40年以上のいわゆる「高経年マンション」が大幅に増加しています。
・10年後の2032年末には約2.1倍の260.8万戸
・20年後の2042年末には約3.5倍445.0万戸
までに増えると想定されています。
出典:国土交通省 築40年以上の分譲マンション数の推移(2022年末現在/2023年8月10日更新)
30~40年以上前から、マンション住まいが一般化した時代になっています。
それ以降もどんどんマンションが建ってきていることを考えると、今後もますますマンションは増加傾向になってくるでしょう。
特に、1981年5月以前に建てられた、旧耐震基準マンションは一定の耐震処置が必要となっています。
一方で、それ以降に建てられた新耐震基準のマンションであっても、大規模修繕工事を中心に、適切な修繕が実施されていなかった場合においては、劣化が進行していることも考えられます。
加速する住民の高齢化
高経年化に合わせて見られるのが、マンション住民の高齢化です。
1980年代にファミリー層として新たにマンションを購入された方も、
住み続けていれば70代以上の高齢者となっている方が中心となっています。
高齢者世帯が増えると、管理組合活動にそれなりの支障が発生し始めます。
また、マンションの管理組合には、理事や監事が必要ですが、就任には一定の負担を伴うものであることから、高年齢者は就任しづらいという課題が、今はどこの管理組合においても発生しています。
さらに、年金暮らしの高齢者世帯が多くなれば、マンション住民の中にも収入が現役世代に比べ減少している方も増えているでしょう。
そのような場合において、場合によっては管理費、修繕積立金等の滞納問題も発生し、管理組合として問題視する必要がでてきます。
マンションの維持・保全の重要性
今後においてマンションにおける、高経年化、高齢化の流れは避けることができません。
そのような中でも、マンションを適切に管理し、傷んだところの修繕を行いながら、マンションを維持、保全していかなければなりません。
一方でマンションが高経年化しても、自分たちの世代で終わりではなく、子や孫の世代に住まいを引き継いで行く必要があります。
管理次第で延命できるマンション
前提として、マンションはメンテナンス次第では長年維持可能です。
マンションがどれぐらい持つのかという指標の一つに、減価償却の概念である、法定耐用年数という考え方があります。
鉄筋コンクリート造の建物としてのマンションには47年という数字がありますが、税金の考え方での話であり、マンションの寿命を指している訳ではありません。
実際に躯体や壁面、給排水管更新により、80年や100年住めることも十分考えられます。
もちろん、長期修繕計画を適切に立案したうえで、しっかりと修繕積立金を確保し、大規模修繕工事を実施すべきタイミングで行うことも大切になってきます。
耐震・断熱性能の確保が不可欠
旧耐震基準で建築されたマンションは、新耐震基準に比べて耐震性に課題が残ります。
場合によっては、耐震補強等を施す必要があるでしょう。
国や自治体などが準備する補助金を使って耐震性やバリアフリー化を充実させることも可能になってきています。
また、高経年マンションは断熱性能においても徐々に劣ってくることとなり、国や自治体は補助金を準備して断熱性能を高めるための施策にも力を入れています。
管理組合としてこれらに対応することにより、今では高経年マンションであっても、住みやすい環境づくりを構築していくことは可能です。
長期修繕計画の作成と定期的な見直し
長期修繕計画は、竣工時に作成したものの、その後見直されておらず大規模修繕工事の際に改めて見直すことが多いようです。
長年マンションを維持、向上させていくためには、定期的に見直しの機会を設けるとともに、長期的な計画が重要となってきます。
国土交通省の長期修繕計画ガイドラインでは、
・計画期間中に2回以上の大規模修繕工事の計画が含まれていることが望ましい
とされています。
また、計画は5年程度毎に見直すことで、長い将来を見越した長期修繕計画としていくことが望まれます。
外部専門家役員の起用
管理組合内では、総会や理事会が有機的に機能していることが重要です。
そのためには、内部で理事や監事を準備したい所ですが、先述した高齢化の進行とともに、残った現役世代を中心とした、若い世代への管理組合運営の負担も増大する傾向にあります。
若い世代に是非なって欲しいとは思うものの、平日は労働で、週末は家族サービスと、管理組合運営には中々負担を伴うものであることも事実でしょう。
なり手がどうしても上手く配置できない場合は、外部の専門家を中心として、一定の報酬を支払ってでも理事や監事になって貰う、いわゆる「第三者管理者」を設置することも視野に入れていく必要があるかもしれません。
マンションの建替えは現実的なのか?
今後40年以上の高経年マンションは、60年、70年等、時間が経過して、本当にマンションにそのまま住んでいくことが果たしていい事なのかを考えることもあるでしょう。
最終的に、終焉を迎えることも想定する必要はありますが、まだまだ一般的ではないのが現状のようです。
マンション建替えには特別決議が必要
マンションの建替えが可能なのは、おそらくは地価が高く、建替えても新たにこれまで以上に住民の入居が見込まれる立地であることが考えられます。
都会の駅近ならタワマンにして新たに入居者を募ることができるなどのイメージは湧くかもしれません。
一方で、地方都市や、都会であっても駅から離れているところの建替えは、果たして現実的なのかという課題も残るでしょう。
また、一時的にも他に住まなければならないため、現状の住民にも負担がかかることとなります。
さらに、現在の法律では、
で、ハードルが非常に高い状況です。
現在、法制審部会では、建替え要件をこれまでの5分の4から、4分の3や3分の2へ引き下げる案なども審議されているようです。
国としても、大規模修繕工事だけではなかなか難しいと考えられるマンションは、建替えをしやすくすることで、将来的な老朽化マンションを未然に防ごうという対策を考えているようです。
マンションの建替え実績と現実を見極める
国土交通省のマンション建替え実施状況によると、2023年3月現在、マンション建て替えの実績は累計で282件とのことです。
出典:国土交通省 マンション建替えの実施状況より
2022年4月1日現在で工事完了済みは270件、実施中は41件、実施準備中は5件と発表されていたため、約1年で12件増えただけです。
マンション建替法によらない、区分所有法や民法によるものと考えられる建て替えが最近3年は進んでいないのに対して、マンション建替法が整備されてきたことにより、こちらに基づいた建替えにシフトしてきていることが読み取れます。
冒頭に述べた、築40年以上のマンションが94.5万戸、50年以上が21.1万戸であり、戸数の合計は115.6万戸です。
対して、建替え件数が累計282件で1年間で12件しか増えていないことから、余程でない限りは建て替えが難しい現実が読み取れます。
現時点では、ほとんどのマンションにおいて建替えは「非現実的」であると言えるかもしれません。
まとめ
国土交通省のデータを参照しながら、マンションの高経年化の実態と、マンション自体の高齢化について紹介しました。
最後に述べましたが、多くのマンションでは簡単に建替えは難しいのが現実でしょう。
そのためには、高経年マンションも今後維持向上させていくことで、住み続けることができる環境づくりが大切であると考えられます。
マンションの管理を適切に行うとともに、計画性を持った修繕をおこなうことで、数十年、さらには100年でも住み続けられるマンションにしていくことが現実として考えられるかもしれません。
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