マンションの管理に関する、いい書籍はないかな…。
そのようなことを感じている理事会や修繕委員会も多いでしょう。
そのような理事会、修繕委員会、そして管理組合のために、今回は以下の様な疑問
・分かりやすい書籍はないか
・理事会や修繕委員会、管理組合内でおすすめしたい
に応えるために、マンション管理士の筆者も定期的に確認している、マンション管理においておすすめの10冊を紹介します。
【マンション管理士推奨】マンション管理に役立つおすすめ書籍10冊
マンション管理士で活動している筆者が持っている書籍を中心に紹介します。
マンション管理を推奨している書籍の中には、専門家が推奨していないもので、AMAZON等書籍の販売会社がまとめているものも多いです。
むしろマンション管理士がお墨付きを付けることで、購入側にとっても客観的なデータを取得することで、納得しながら購入する事も可能でしょう。
今回紹介する書籍は、実際には費用がかかるものもありますが、Kindle Unlimitedやアマゾンプライムにより安価に購入できるものもあります。
また、中古本で流通しているものは、さらに安く購入できるものもあるでしょう。
そして、一番最後に理事会や修繕委員会で是非見ておきたい、無料で公表している役に立つデータについても紹介します。
知らないと損をするマンション管理
まずはじめに紹介するのが、こちらの書籍です。
マンション管理コンサルタントである筆者のこれまでの経験やノウハウが詰まっている1冊といえるでしょう。
本書全体の流れとしては、第1章でマンション管理に係るお金、2章で管理組合と管理会社の関係、3章では管理費のコスト見直し、4章では管理組合の運営方法について、最後の5章では管理コストの見直し成功事例について紹介されています。
また、マンション管理業界の都合上で決まってしまっていることが多い実態を、作者の実務上からも紹介しており、マンションにとって課題とする事項に対する、解決策のためのヒントが盛り込まれているといえるでしょう。
最初読んだ時には中々理事会や理事にとっても分かりづらい内容かもしれません。
しかしながら、管理委託費の無駄がないかや管理会社の業務委託内容など、自分たちのマンションと比較しながら調べていくうちに、自らのマンションの課題もあぶり出されることが期待できます。
マンション運営の基本も盛り込まれている本書ですが、マンション管理書籍として、理事会や集会室に持っておきたい1冊といえるでしょう。
難易度:★~★★
わかった!得した!マンション管理 疑問・トラブル解決ガイド
管理組合がマンション管理において疑問に感じる点を中心に、Q&A方式で分かりやすくまとまっている、作者のマンション管理士が実務を通じて執筆した書籍です。
この書籍は、運営編、会計編、修繕編、生活編・その他と4項目でカテゴリー分けされています。
運営編では、規約や催促、管理会社・委託、理事会・委員会、総会、役員・委員等で構成されており、会計編は滞納、管理費・修繕積立金、使用料、保険にて、そして修繕編はコンサル・施工会社、大規模修繕、一般修繕・工事、設備、瑕疵、長期修繕計画と費用・見積から成り立っています。
最後に、生活編・その他では、生活・環境・コミュニティ、ペット、防犯・防災・防火、電力、そしてどれにも含まれないその他事項として紹介されています。
こちらに記載しただけでも、マンションにおける課題が一通りラインナップされていると感じるでしょう。
それが全部のQ&Aでなんと250例の紹介があり、また質問に対する回答もまずは結論から入っており分かりやすく、追加で解説する説明は具体的で非常に詳しく、そして分かりやすくまとまっています。
AMAZONであればサンプル版も閲覧することができますので、その質疑応答の詳しさを確認して納得すれば、購入してみてもよいのではないでしょうか。
難易度:★~★★
改訂版 目からウロコ マンション管理のトリセツ
トリセツ、ということで、マンション管理として必要な取扱説明書として、マンション管理士の作者により書かれた書籍です。
基本的なマンション管理と管理組合運営のトリセツとして記載されているうえ、副題には、管理会社と設計事務所の財布にならないためにとあるとおり、マンションの管理業務と大規模修繕にフォーカスされています。
とりわけ、管理業務のトリセツについては、管理委託契約書の内容や、リプレース(管理会社変更)、そして小規模マンションにおける課題と解決方法を提示しています。
さらに、大規模修繕のトリセツには大規模修繕工事や長期修繕計画の必要性等基本的な説明とともに、他の例に漏れず工事における談合問題についても触れています。
筆者がこれまで課題視してきた管理業務と大規模修繕に関する内容に触れており、同様の課題が非常に多いマンションにおいては、参考にできる内容も多いのではないでしょうか。
難易度:★~★★
令和5年度版 マンション管理の知識
マンション管理士試験や管理計画認定のための手続き支援サービスを実施している、マンション管理センターから毎年発売されている書籍です。
こちらは電子書籍は無く紙の書籍のみですが、区分所有法やその他法令、マンション管理の実務、管理組合の運営、マンションの建物及び附属施設の構造及び設備等に関する内容を、体系的かつ総合的に解説したものです。
マンション管理に携わっている方や、専門家であるマンション管理士にも活用されている書籍です。
また、毎年発売されているということで、こちらは令和5年4月1日現在施行の法令等に基づく内容となっており、加えて重要判例が検索できます。
そして、令和4年4月に改正されたマンション管理適正化法やマンション建替円滑化法とともに、同時に改正されたマンション標準管理規約や長期修繕計画作成ガイドラインについても概要を説明しています。
マンション管理の基本を学ぶことや、管理計画認定制度等の最新のマンション諸制度に対応していく前向きなマンションにおいては、定期的に確認しておきたい1冊と言えるでしょう。
難易度:★★★
マンション管理を劇的に改善する5つの法則
マンション管理士でもある作者が、自身の顧問先マンション等での事例を中心に紹介した書籍です。
一般的な内容ではなく、個別具体的な内容となっており、自身のマンションでも同様の事例があるのでは、と考えてしまうような内容が続きます。
その事例を読むだけでも、自らのマンションで改善できる余地はもしかしたらあるのではないか、また取り組みができるのではないかと思うような内容です。
作者が顧問等で対応したマンションの一覧が、マンション名はもちろん伏せて掲載されていましたが、戸数は比較的少な目の、50戸未満の小規模マンションが比較的多いようです。
50戸未満のマンションも比較的含まれる、建築床面積が5,000㎡、地上20階未満の小規模のマンションは、国土交通省の修繕積立金ガイドラインのデータでも、コストが割高になる傾向がありあります。
そのため、当書籍によって見直しの余地もあると考えられます。
もちろん、この規模でなくても参考になる点は多いでしょう。
難易度:★~★★
※こちらの書籍は、AmazonのKindle Unlimitedのみの発売です
マンション管理はこうして見直しなさい[新版]
マンション管理の見直しの観点から、Q&A方式と管理委託費の見直しのケーススタディ、さらにはマンション管理会社主要30社の実力比較から構成されています。
Q&Aは管理についての基本、管理組合の組織と仕組み、管理組合で起こるトラブル、管理会社との付き合い方や管理費、修繕積立金の値上げについて、管理会社変更、修繕工事の対応方法など、全部で81個からなります。
文書での回答とともに図表を交えながら紹介されているため、分かりやすく理解が促進される内容です。
さらに、ケーススタディでは具体的な見直し方法について事例が紹介されています。
特に管理会社との付き合い方や変更方法にページが割かれており、その点が課題となってる管理組合には参考になるでしょう。
ちなみに、代表でもある作者の会社は、マンション管理適正化法が施行される3年前の段階の1997年に、管理組合と区分所有者をサポートする日本初のコンサルティング会社として設立された老舗の企業です。
難易度:★★
マンションの管理組合とは何か
題名のとおり、マンションの管理組合とはどういうものなのかを、マンションの出現から法律、法の内容、そして管理組合についての説明、さらには判例など、マンション管理について一連の解説書となっています。
また、書籍は基本的には読み物であり、マニュアルや対策法が記載されている訳ではなく、法やマンション管理に登場するそれぞれの説明など、マンションの管理組合のための学問の領域と言えるかもしれません。
それは、作者は大ベテランの弁護士であり大学教授であるため、そのような構成になっているのでしょう。
マンションの管理について、背景や理論などから本格的に学びたい方にとってはおすすめの書籍ですが、図表はないため、感覚的ではなく、しっかり読んで理解する必要があります。
難易度:★★★
知らないと損する 大規模修繕工事
『知らないと損する』シリーズの大規模修繕工事版で、管理版と同じ作者です。
管理版がある場合は、大規模修繕版もあわせて読むことで、作者が考える一連のマンション管理の理解が進むことが期待できます。
内容は、長期修繕計画と修繕積立金、大規模修繕工事の内容、さらには大規模修繕工事に群がる管理会社と業者の実態として、工事の事情なども記載されています。
さらに、大規模修繕工事の改善として、どのような方式で進めるか、さらには成功させるためのコツ、そして最後に長期修繕計画と大規模修繕工事の成功事例が紹介されています。
長期修繕計画とは何かや、具体的な工事方式等は教科書通りの内容で、どの書籍も変わらないところでしょう。
一方で、作者が実際に具体的に上げている事例や、教科書以外の事例、さらには談合や不適切コンサルタント等の大規模修繕工事に関する問題に切り込んでいく箇所は、今後大規模修繕工事を控える管理組合にとって、目を通しておいた方がいい所かもしれません。
折角貯めた修繕積立金は、工事代金に有効活用していきたいと考えるのが管理組合として普通でしょう。
高額となる大規模修繕工事の費用をけん制するために、管理会社や工事施工会社、さらには大規模修繕コンサルタントに対する意識を強化するための1冊として挙げられます。
難易度:★~★★
危機管理士が経験したマンショントラブル脱出劇 リンク
危機管理の専門家と女性起業家プロデューサーが書いた書籍で、トラブルに対する解決策を提示してくれる書籍です。
マンション管理の視点とはまた違い、マンションの購入から始まり、住み始めてから発生する数々の生活におけるトラブルの実例とその対処方法を紹介しています。
さらに、マンション内の課題に対する対応として、防災の観点からの対策が比較的取り上げられており、リスクへの対処方法としても参考になるでしょう。
そして、コロナ禍のなかでの対処方法や、マンション管理の最近の動向として、建替え決議の要件が変更になる案について触れたりと、問題意識を住民目線で記載されているのも特徴的です。
難易度:★
※こちらの書籍は、AmazonのKindle Unlimitedのみの発売です
マンション管理(週刊ダイヤモンド 2022年6/4号 [雑誌]) リンク
紹介する中で唯一の雑誌は2022年に発売された週刊ダイヤモンドからですが、マンション管理において比較的話題性もある内容でもあったため、紹介します。
2022年といえば、丁度管理計画認定制度が各自治体で始まった年であり、それに合わせてマンション管理が重要とされているということで特集されました。
さらに、Part1,2,3として、Part1では、マンション管理における資産として、ヒト、モノ、カネの切り口が紹介されています。
ヒトにおいては今後どのマンションでも課題となる理事のなり手不足、モノについては修繕と建替えの話題、そしてカネについては金持ち組合・貧乏組合の分かれ目として、管理組合における管理費・修繕積立金の問題解決方法を紹介しています。
Part2では、管理会社ランキングとして、総合ランキングや面倒見、大規模修繕と経営力の切り口でマンション管理会社を評価しているとともに、凄腕理事長の座談会も掲載されています。
さらにPart3において、管理の新時代として、新たにこの年からクローズアップされた自治体の管理計画認定制度とともに、管理会社が所属する管理業協会のマンション管理適正評価制度の2つ、管理会社が管理組合との付き合いを辞退する逆リプレース問題について触れています。
そして、今後は理事のなり手不足等を発端とした、第三者管理者方式の紹介も新たな取り組みとして紹介されています。
今後のマンション管理のトピックスを確認するには必要な1冊となるでしょう。
難易度:★
番外編:大規模修繕の手引き~マンション管理組合が知っておきたい工事・資金計画のポイント~
最後に番外編として、住宅金融支援機構が無料で公開している、こちらのデータです。
手引きには、106ページにも及ぶ通常版と、44ページのダイジェスト版があります。
通常版は、大規模修繕工事の進め方を解説した書籍並みの分量であり、これ一冊でも大規模修繕工事に関する理解は可能です。
まずはダイジェスト版で全体を確認して、深堀するために通常版を確認するのが良いと思います。
ただ、あるべき方法論が記載されている一方で、理事会や修繕委員会の中で、どのように対処していくかは、別途考えていく必要があるでしょう。
また、これだけの分量の資料が無料であるというのは、資金力がある住宅金融支援機構だからできるとも言えます。
こちらで紹介したのはPDFですが、ダイジェスト版に限って冊子の郵送も10部まで承っているようです。
難易度:★~★★
書籍を参考に管理組合として次の一歩を
マンション管理に役立つ書籍として、筆者が全て読んで内容を確認した10冊+αを紹介しました。
各書籍について確認することで、理事会や修繕委員会等で、現状課題と解決策、またあるべき姿について一定の共通認識が図れる可能性はあります。
しかしながら、実際に実施したことがない場合は、読んで理解するだけでは難しい点も考えられます。
そのような場合は、マンション管理士や建築士、コンサルティング会社等のマンションの専門家の力を借りることも一つでしょう。

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