【必ず確認したい】長期修繕計画の作成メリットやポイントを紹介

マンション管理

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マンションの区分所有者が管理組合の総会に出席した際に、

「長期修繕計画」または「長計」

という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

管理組合の理事になったことがある方にとっては、もしかしたらお馴染みかもしれません。

また、「長期修繕計画」という名称だけは聞いた事はあるけど、

具体的にはどのようなものなのかがよくわからない方も多いでしょう。

今回はそのような方々のために、

・長期修繕計画とは何かが知りたい
・作成する事によるメリットが知りたい
・長期修繕計画を作成するにはどうしたら良いか知りたい

このような悩みや疑問にお答えします。

筆者はマンション管理士として、複数の長期修繕計画の作成やチェックに関わっています。

今回はその筆者が作成のメリットや作成のポイント等について解説します。

【必ず確認したい】長期修繕計画の作成メリットやポイントを紹介

今回の内容は以下のような構成となります。

・そもそも長期修繕計画とは
・長期修繕計画作成のメリット
・長期修繕計画の作成ポイント

これらの内容により、長期修繕計画の概要が理解できます。

マンションに住んでいると、所々に壁面や柱、階段などが劣化していくのを、

目にすることも多いでしょう。

以下の国土交通省の調査にある通り、昔は

マンションは将来的な一戸建て購入のための一次的な住まい

と言われたこともあったようです。

出典:平成30年 国土交通省「マンション総合調査」 永住意識より

 しかしながら、今やマンションに生涯住むことも当たり前の時代です。

また、都心を中心としたマンションの価格がどんどん上がっていることもあり、

その価値が改めて重要視されています。

生涯住むことを考えるということは、

将来的な劣化を想定しながら計画的に修繕を検討していく必要があり、

そのベースとして長期修繕計画が必要となります。

今回は長期修繕計画の概要と必要性、作成のメリットやポイント等を紹介します。

そもそも長期修繕計画とは

まず初めに、長期修繕計画についてですが、どのような計画を言うのでしょうか。

国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」によれば、

「将来予想される修繕工事等を計画し、必要な費用を算出し、月々の修繕積立金を設定するために作成するもの」

とのことです。

出典:国土交通省 長期修繕計画作成ガイドラインより(平成20年6月 令和3年9月改訂)

具体的に必要性を確認します。

長期修繕計画の必要性

国土交通省のガイドラインの抜粋からもある通り、

マンションにとっては長期的に修繕のことを考えて、

計画的に将来を見据えていくことが大切です。

これにより、

将来においてもマンションの共用部分においての維持管理が向上するとともに、

専有部分での快適な居住環境を維持することにも繋がります。

さらに、外見的に劣化が修繕されているだけではなく、

計画性により内面的なマンション管理状態の評価にも繋がります。

結果的に、区分所有者にとっては資産価値の向上に繋がる好循環を、

長期修繕計画立案を通じて生み出していくことにもなります。

管理計画認定制度への対応

令和4年4月に改正された「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)」により、

地方公共団体によるマンション管理適正化の推進とともに、

マンションの管理計画認定制度が創設されました。

将来的には、管理計画認定が取れているマンションとそうでないマンションにおいて、

マンションの管理状態の良いマンションの評価にも繋がることとなり、

結果的に先述したマンションの価値向上にも影響してくることとなります。

さらに、管理計画認定制度では、長期修繕計画の審査が細かく入ります。

計画的にも適切に将来を見据えるべく、大規模修繕工事等の修繕工事に必要な積立金も、

管理組合として問題なく適切に積み立てているかもチェック対象となります。

長期修繕計画の作成と見直し

長期修繕計画の作成において、

大規模修繕工事の実施前後にマンション全体の状態が洗い出されるので、

そのタイミングに合わせて作成・見直しすることが望まれます。

大規模修繕工事の間は見直さなくていいのかということでもなく、

工事の間も、計画の修正や更新等を実施することが必要です。

また、第一回目の大規模修繕工事を迎えていない、比較的新しいマンションにおいては、

建設当初に作成したものが見直されずにそのままになっている場合もあるでしょう。

一方で、大規模修繕工事を実施しているにも関わらず、長期修繕計画が見直されなかったということも考えられます。

その場合は、長期修繕計画策定時が比較的古くなることから、

現在要請される価値や基準と乖離していることも考えられます。

そのため、定期的な見直しを図っていく必要があるでしょう。

見直し時期の傾向としては、以下のようなデータがあります。

出典:平成30年 国土交通省「マンション総合調査」 長期修繕計画の見直し時期より

半数以上が5年ごとを目安に、定期的に見直している傾向がでています。

また、大規模修繕工事の直前、直後も4分の1程度存在します。

さらに、

・長期修繕計画は30年以上の計画がある
・その中で大規模修繕工事が2回以上含まれる
・長期修繕計画の見直しは5年程度ごとに実施していくことが適切である

と、「長期修繕計画作成ガイドライン」の80ページに記載されていますので、紹介しておきます。

長期修繕計画作成のメリット

一部、長期修繕計画の必要性の中で、作成しておいた方が良いと考えられる点について少し触れています。

改めてメリットはどのような所にあるのか、具体的に確認していきます。

長期的な計画性を持ったマンション管理が可能

まず、マンションに対する長期的な計画があるということで、

長期的な視野でマンションを考えることができるのが大きなメリットです。

長期的に見て、

・どのような箇所の劣化が想定され
・その個所を工事するのにどれぐらいの費用が将来的に必要になるのか

を意識するようになります。

普段は組合員は自分たちが住んでいる専有部分に対する修繕意識は非常に高い傾向にありますが、

階段や廊下、エレベーターなど、共用部分の修繕意識の高まりも期待できます。

また、管理組合にとって、将来的にいくら費用が必要になるのかは、

組合員全員にとっての重要課題といえるでしょう。

そのため、自らの支出となる金額面を、将来に渡って考える意識が向上すると言えます。

理事会における修繕意識の向上

管理組合全体で意識が高まれば、おのずと理事会内でも修繕に対する意識が高まります。

具体的には、

・次回の大規模修繕工事で修繕すべき箇所にはどのような箇所が該当するか
・修繕積立金は大規模修繕工事を行うために十分なのか
・どのような工事方法を考えていかなければならないのか

などが考えられます。

工事方法としては、責任施行方式や設計監理方式などが考えられますが、

どの工事が管理組合や理事会にとって好都合なのか、十分議論も出来るでしょう。

管理計画認定制度やマンション管理適正評価制度への意識向上

長期修繕計画は、評価制度において評価対象となることは少し記載しました。

自治体が取り組んでいる管理計画認定制度に準拠し、

認定を勝ち得ていくことが、マンションの質を高めていく手段でもあるといえます。

また、マンション管理会社が所属する管理業協会が独自で行っている、

マンション管理適正評価制度への意識も高まってくるかもしれません。

評価を通じて、管理組合全体としてマンション管理への底上げに繋げるべく、

制度に対して積極的に対応するマンションも出てくるでしょう。

長期修繕計画の作成のポイント

長期修繕計画の重要性やメリットを確認したところで、最後に作成のポイントについて紹介します。

修繕すべき箇所の周期や修繕金額の見積が重要になってくるので、確認していきます。

マンションの現況調査や診断

マンションの現状として現況調査や診断を行うことで、どのような状態になっているか確認する必要があります。

・新築からの経年により劣化が進行している箇所
・前回大規模修繕を行ったため次回はそれほど修繕が必要がない個所

など、特定することができます。

また、

・思ったほど劣化が進行していないものの、次回の大規模修繕まではもたないもの
・年数により変えた方がいいもの

等も発見されるかもしれません。

さらに、これまでどのような修繕を行ってきたのか、修繕記録も見ておく必要があります。

修繕関連の図書が残っていない場合も考えられますが、

その場合は調査や診断により、改めて再評価することになるでしょう。

工事項目ごとの修繕周期の確認

マンションの共用部分においては、国土交通省の長期修繕ガイドラインに、

修繕工事項目ごとに目安とすべき修繕周期の記載があります。

出典:国土交通省「長期修繕ガイドライン」から修繕周期の例

 修繕周期を確認することにより、今回修繕する必要があるのかどうか、

現況調査や診断のうえで、判断していくことになります。

修繕積立金が十分に無い場合は次回に回せないかどうかの検討や、

足場を組まなくても良い所は大規模修繕の間にやることも検討する必要があります。

修繕費の算出と工事時点での修繕積立金の試算

具体的に修繕すべき工事項目が明確になれば、推定の修繕費を算出することができます。

修繕費の算出は、数量と単価を掛けることで概算金額の算出が可能です。

数量は設計図書のほか、修繕履歴、現況調査や診断の結果などを参考としながら、

概算の数量を割り出します。

また、単価は過去の計画修繕工事の契約実績や調査データ、刊行物の単価、

専門工事業者の見積価格等を参考にして金額を割り出します。

特に最近は、職人さんの不足による人件費の高騰や工事会社の働き方の影響などから、

人員の確保が難しい状況です。

さらに、大規模修繕工事が重なった場合には、職人さんの需要が一気に進むことから、

価格高騰に加え、大規模修繕工事が計画通りできないことも想定されます。

参考までにですが、マンション管理新聞2023年3月15日号(第1231号)によると、

物価高、職人不足で労務費が高騰しており、昨年初めからの大規模修繕の上昇幅は10~20%となっているようです。

また、急激な高騰により、見積もり期間もこれまで提示から90日程度有効とされていたものが、

最近では30日という例もあるようです。

見積提示から着工までの間のタイムラグが、市場価格高騰に合わないということになっています。

そして、単価には都市部や地方などによって差がでることにも注意が必要です。

まとめ

長期修繕計画の重要性と作成のメリット、さらには作成のポイントについて記載しました。

長期修繕計画は作成して終わりではなく、計画的に見直しを怠らずに、

見直し計画として更新していくことが重要です。

計画に沿って、修繕積立金を積み立てつつ、修繕すべき箇所は計画的に修繕していく

その計画性がマンション管理やマンション価値の向上に繋がるでしょう。

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