マンション管理には多くの課題がつきものです。管理費や修繕積立金の不足、管理会社との関係の悪化、理事のなり手不足など、どのマンションでも共通する問題が発生します。特に近年は、投資用マンションの増加により、総会への参加率低下や意思決定の偏りといった新たな課題も浮上しています。
これらの問題を放置すると、管理体制の崩壊やマンションの資産価値低下につながる可能性があります。そこで、適切な管理運営を行うためには、住民同士の協力だけでなく、マンション管理士等の専門家の知見を活用することも重要です。
本記事では、マンションに共通する代表的な課題とその解決策について、実務に精通しているマンション管理士が詳しく解説します。
管理組合としてどのような対応が求められるのか、具体的なポイントを押さえていきましょう。
マンションに共通する代表的な課題
一般的なマンションの課題として、管理費や修繕積立金の課題が挙げられます。
・それらを滞納している
など、管理組合全員に直接関わってくる課題です。
このような課題は、早い段階で課題認識をして、解決していく必要があるでしょう。
管理費・修繕積立金の不足が引き起こす問題
まず、管理費や修繕積立金の不足に関する課題です。
日々の管理に関する費用である「管理費」や、将来的な修繕に備えて、一定額を積み立てていく必要がある「修繕積立金」、これらが十分に積み立てられていないことが挙げられます。
適正額を積み立てなければならないのは言うまでもありません。
また、どうしても差額がある場合は考えていかなければならないことがあります。
管理費を適正に見直すためのポイント
日々の管理に関する費用は、外部の管理会社に頼む場合も、また自分たちで実施するいわゆる「自主管理」の場合も、必ず発生する費用です。
基本的な対策方法として、
②管理費を適切に徴収すること
③滞納者を減らすこと
が大切です。
また、マンションにおけるコスト管理がなされているかも重要でしょう。
とりわけ滞納は放置すれば雪だるま式に膨れ上がっていきます。
放置していると時効の成立が発生する可能性もでてきます。
すなわち、管理組合としては見過ごせない問題であることを、早期に認識して対策する必要があります。
修繕積立金の適正化と管理の注意点
管理費と同様、修繕積立金も適正額の算出と積み立てが大切です。
しかし、修繕積立金を見直す前に、以下の点を確認することが重要です。
②修繕工事の資金不足が発生した場合の対応策を検討しているか
③長期修繕計画や大規模修繕計画に基づいた適正な積立額になっているか
これらを見直すことで、修繕積立金が適正に管理され、将来的な不足を防ぐことができます。
とりわけ①については、将来必ず発生する修繕の費用を、短期の管理に関する費用とは区分しなければなりません。
また修繕積立金を管理費に充当しないようにすることが非常に重要です。
一緒にせずに、必ず区分して経理しなければなりません。
マンションごとの個別課題
マンション独自で発生する課題にはどのようなものがあるのでしょうか。
こちらも少し挙げてみます。
管理会社との関係がうまくいかない原因と対策
管理会社の対応が悪い、または理事会との連携がうまく取れないという問題は、管理組合の間でよく見られます。
「管理費をこれだけ払っているのに」と不満を抱く住民も多く、管理会社への信頼が揺らぐ原因となります。
この課題は、理事経験者の多くが直面する問題の一つです。
ほとんどの管理組合や理事会で共通して発生する悩みといえます。
管理会社と管理組合は、一般的に利害が相反する状況です。
そのため、折り合いをつけていかなければなりません。
しかし、理事や理事会だけでは平行線となってしまう事も多いようです。
そのような時には、上手く関係をまとめるうえ、立場が弱く情報の非対称性(知っている情報と知らない情報の差が激しいこと)が発生する管理組合寄りの考え方を重視するマンション管理士や、建築士等の第三者の外部専門家を入れることで、上手く回していくことも選択肢の一つでしょう。
投資用マンションの増加と管理組合への影響
近年、特に問題視されるようになった課題の一つが「区分所有者が住んでいないマンションの増加」です。
区分所有者が居住していないために総会へ参加しないケースが増えています。
その結果、管理組合の意思決定が特定のメンバーに偏る恐れがあり、健全な運営を維持するための対策が必要です。
特に、投資用マンションとしてのタワーマンションや、ワンルームが多い小規模マンションではこの傾向が顕著です。
また、所有者が地方や海外に住んでいるため、総会への参加率が低くなる問題も指摘されています。
理事・監事のなり手不足をどう解消する?
前述の様な投資用マンションの増加や、区分所有者の高齢化に伴い、理事や監事のなり手も不足しがちです。
一方で、世帯を持つ若い層は、週末は家族サービス、平日は遅くまで業務ということもあり、管理組合活動にも中々参加しづらい、また、参加を促しづらい状況もあるでしょう。
第三者の専門家を活用するという選択肢
個別の課題で挙げられるような、管理会社との問題、区分所有者不在や、理事や監事のなり手不足等は、今後の分譲マンションにおいては深刻的な課題となってくることも考えられます。
また、マンション管理には法的知識や財務管理のスキルが求められ、住民だけで適切に対応するのは困難です。
そのため、専門家を活用し、より効率的で適正な管理を行うことが重要です。
具体的には、第三者管理者方式という考え方もあるため、紹介します。
第三者管理者の活用により、マンションの区分所有者の負担は大幅に減少することが見込まれます。
一方で、理事や監事となっている区分所有者からのチェックや、総会でのチェック機能を有効に果たすことも可能です。
まとめ ~マンション管理の課題を解決するために~
マンションには、管理費不足や理事のなり手不足など、さまざまな課題が積み重なっています。
しかし、マンションの課題を解決するには、住民同士の協力が不可欠ですが、それだけでは限界があります。
そして、問題を放置すれば、建物の資産価値が下がり、将来的な負担が増大するリスクもあります。
そのため、専門家の知見を活用し、管理体制を強化することが重要です。
とりわけ、国土交通省が推奨する「マンション管理士などの専門家の活用」が有効な手段となります。
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