総会日に遠方にいるため、当日出席できるようIT(情報技術)を活用した総会を実施して欲しい
また、
理事会について、家庭の事情があり外出できないため、オンライン開催でできないか?
さらには、
議決権行使は効率化のためにオンラインで行使できないか?
このような疑問を持ったマンション管理組合員も非常に多いと思います。
特に、若い層を中心とした現役世代の区分所有者にとっては、普段の業務がオンラインで実施されることが一般的となっているでしょう。
そのような環境から、上記のような疑問が良く出てくるようです。
筆者も普段から取引先とオンライン会議を活用したやり取りを頻繁に行うとともに、ITベンチャー企業にも長年勤務していたIT活用に比較的慣れています。
今回は、ITを活用した総会や理事会の可能性について、有効性とともに細かく紹介します。
【導入したい】マンション管理組合のIT活用総会・理事会の開催方法
今回紹介する内容は、以下の通りです。
・IT総会の進め方はどのようにすればよいか?
・総会や理事会をIT化することによるメリットは?
・ITを活用した総会や理事会を開催する際の注意点は?
このような内容を中心に紹介します。
2020年以降のコロナ禍を通じて、ITを活用したマンション管理組合総会や理事会の考え方が広がってきました。
そして、冒頭でも触れたとおり、ITを活用した総会や理事会は非常に効率的であり便利です。
また、慣れれば準備についても手際よくできるようになる上、長い目で見るとコスト削減にもつながるでしょう。
加えて、普段は土日開催でなかなか参加できない方も、オンラインなら出席できるようになるかもしれません。
筆者の感覚としては、総会はリアル開催している所が多く、オンライン開催であっても、リアルと併用が多い印象です。
しかしながら、幅広い区分所有者層に活動を共有していく手段として、ITを活用することはマンション管理組合運営にとって良い効果をもたらす可能性も考えられます。
今回の記事は、国土交通省(マンション管理業協会参考資料)より、コロナ禍真っ只中の2020年12月1日付で公表された、「ITを活用した総会の実施ガイドライン ― ITを活用した「新しいマンション管理様式」― 」も一部参考にしながら、筆者の見解も踏まえて記載しています。
ITを活用した総会や理事会はどのように準備すればよいか?
まず、はじめにITを活用した総会や理事会はどのような準備を事前に行っておけばよいのか、確認してみます。
規約の確認
最新のマンション規約のひな型である標準管理規約には、IT総会や理事会について触れられています。
具体的には、
とのコメントがあります。
すなわち、現状の規約であっても、特段規約を改正せずにオンライン開催は可能という解釈となります。
これは理事会でも同様です。
また、最新版の規約では、第47条に
とカッコ書きにWEB会議システムについて触れられました。
規約の改正はしなくてもWEB会議システムは可能ですが、ひな型に合わせるのであれば、上述のように明記することによって、マンション管理組合として分かりやすくしておくことも一つです。
IT環境や機材の準備
マンション管理組合として、IT環境を整えていく必要があります。
また、場合によっては機材を準備する必要があるでしょう。
たまたま理事長がITに詳しく、ノートパソコンやWEBカメラを持っていて、総会の準備することができたということもあるかもしれません。
しかしながら、そのようにならない場合も想定して誰が準備するのか考えておく必要があります。
具体的には、マンション管理組合として、
・機材としてカメラやマイク、さらにはスクリーンやプロジェクター、スピーカーは必要なのか
・使用するWEB会議システムはどのようなものを使うのか
・発言としてのチャットシステムを取り入れるのか
・議決権行使をオンラインで可能とする場合は、事前にメールで受け付けるのか、または当日専用アプリや管理会社の投票システムを使うのか
など、参加者等マンション管理組合の事情や総会会場を考えて想定しておくことも重要でしょう。
IT総会の進め方はどのようにすればよいか?
具体的に、IT総会はどのように進めればいいのでしょうか。
事前の準備から当日の開催までに、IT総会として必要事項を含めて紹介します。
招集通知への記載
まずは、総会をWEB会議システムを活用して、オンラインで実施する場合、招集通知にもオンラインで参加できることを記載しておく必要があります。
具体的には、
・参加方法としての総会用URLの記載
・総会専用のWEB会議システム入室のためのIDやパスワードの付与方法
・当日のシステムトラブル時に備えて、管理会社担当や理事長の携帯電話番号の記載
なども、リアル開催に加えて記載する必要があります。
とりわけ、総会用WEB会議システム入室のためのIDやパスワード、さらには理事長の携帯電話番号については、当日のなりすまし参加を防ぐため、全体に共有せずにオンライン参加の区分所有者に個別に伝えていくことも重要です。
議決権行使の進め方
WEB会議システムから参加している区分所有者も、リアルに総会会場で参加している区分所有者同様に評価されます。
それがチャットシステムで議決権行使とするのか、オンライン投票システムを使うのか、さらには画面越しの挙手であるのか、そしてWEB会議システムの挙手ボタンを押すのかなど、どのような方法であっても、議決権行使となります。
ただし、後述するように、通信上のトラブルが発生した場合の議決権はどのように扱うのか、決めておくことも大切です。
総会当日の開催方法
総会当日は、仮にリアルとオンライン双方で同時開催とする場合を想定します。
具体的には、
・事前にシステムテストを行い、WEB会議システムが最新のものにアップデートされているか、通信やチャットシステムに問題ないかの確認
・総会に先立って、オンライン参加した方全員と音声と映像のシステムに問題ないか確認
・通常と同様に議事進行
・決議の際のリアル参加者の挙手とオンライン参加者の挙手のカウント
などを確認しながら進行していくことになります。
とりわけ、オンラインのみの開催やリアルとオンライン併用開催の場合は議事録にも
「WEB会議システムにより、出席者の音声と画像が即時に他の出席者に伝わり、参加者が一堂に会することと同等に適時的確な意見表明が互いにできる状態になっていることが確認された」
など、オンライン参加者に不利のないような環境にあることを記載していくことも重要でしょう。
総会や理事会をIT化することによるメリットは?
IT化により、管理組合運営にもさまざまなメリットが想定されます。
総会や理事会においては具体的にどのようなメリットが考えられるのか、紹介します。
場所に関係なく参加が可能
記事の冒頭にあったとおり、当日は外出しており、遠方にいる場合でも総会の時間だけ合わせれば、場所に関係なく通信環境さえあれば参加が可能でしょう。
また、特に移動する手間がないという点でも、大きなメリットといえます。
外部所有者の参加を促すことが可能
普段はマンションに住んでいない、外部所有者の参加も促すことができます。
また、最近では役員のなり手不足もどこの管理組合においても顕著であり、外部所有者がいる場合はその方に役員をお願いしなければならない場合もあるでしょう。
そのような場合であっても、外部所有者に対しても参加が可能となり、かつ外部所有者だからという理由で役員就任拒否をすることも難しくなり、管理組合への帰属意識が高まることも期待できます。
紙の準備が不要または少なくて済む
オンライン開催の場合は、事前に資料をメール等で配布することも考えられます。
その場合は、わざわざ紙で印刷することがなくなる、または少なくなる可能性があります。
それによって印刷代が軽減される効果も生まれるでしょう。
人的手間が減る可能性
リアルとオンライン併用開催では、場所の確保等の手間は減らない可能性はあります。
しかしながら、理事会を中心にオンラインのみで開催するとなる場合は、場所の手配や会場の設営等の人的な手間が減る可能性が生まれます。
ITを活用した総会や理事会を開催する際の注意点は?
一方で、ITを活用した総会屋理事会を開催するにあたって、注意しておいた方が良い点もいくつか存在します。
具体的に考えられるものについて、紹介します。
リアルとオンライン双方対応可能な環境が重要
とりわけ総会は、年に1度というマンション管理組合もあるでしょう。
その場合に、顔を合わさずオンラインで済ましてしまうことに懸念する区分所有者もいるかもしれません。
リアルな会場に参加して意見を言いたいという区分所有者も少なからずいるでしょう。
そのような方への配慮のためにも、リアルで会場開催をするとともに、オンラインでも参加できる環境を構築することがベストといえます。
事前準備やテストは入念に行う
総会当日の段階で、機材が足らないことや、通信がうまくつながらない、WEB会議用システムが起動しないなど、トラブルが発生する可能性があります。
これらを避けるためにも、事前準備やテストは入念に行うことが重要です。
どうしても不具合が生じてしまった場合は、次項に紹介するような対策を考えておく必要もあるでしょう。
もし不具合が生じた場合の対処方法を考えておく
総会または、理事会の運営側として、不具合が生じてオンライン出席者の決議が取れない場合はどのような対応が必要なのか、検討しておく必要があります。
例えば、オンライン参加者においては、このようなトラブルが突如発生しても議決権が行使できるように、事前に議決権が行使できることとしておくことも一つでしょう。
最近では総会専用のアプリや会議システムなども出ていますので、それらとうまく併用することも考えられます。
最悪のケースとして、総会が成立しないということも考えられます。
これは区分所有者に二度手間を強いることとなるため、管理組合として避けたいところでしょう。
逆に、オンライン参加の区分所有者側のトラブルによって、WEB会議システムにアクセスできなかった等で参加できなかった場合、欠席扱いとするのか、急遽電話で対応してもらうなどの取り決めも必要になります。
オンライン参加時のルールを決めておく
WEB会議システムを通じてオンラインで総会や理事会に参加するメンバーは、ルールに従って参加する必要があります。
具体的には、
・参加者は全員顔を出す
・発言のための挙手の方法
・発言の際は部屋番号と名前を名乗る
など、他の参加者に配慮した、オンライン会議ならではのルールも重要でしょう。
また、議長をはじめとした進行側はリアル参加者中心に発言が偏らないよう、オンライン出席者に対しても発言の機会を与える等、配慮することも大切です。
区分所有者には様々なITリテラシーの方がいる点を配慮
多くのマンション管理組合においては、幅広い年齢層が区分所有者にいるかと考えられます。
冒頭で、現役世代は、仕事でオンライン会議等に参加することもあり、WEB会議システムについてある程度は知っている方も多いでしょう。
一方で、引退世代の区分所有者の中には、仕事から離れてしまって久しく、ITには詳しくない方もいらっしゃるかもしれません。
さらには、現役世代であっても、普段はなかなかオンライン会議等への出席をしない仕事が多い方もいらっしゃるでしょう。
このような、多様な区分所有者のITリテラシーに配慮すべく、誰でも総会に出席できるような環境を構築していくことも重要です。
くれぐれもITリテラシーの高い招集者が、オンライン総会の開催を濫用的に行い、区分所有者が総会への出席機会を失うことがないようにしなければなりません。
マンション管理組合で是非導入を検討したいIT総会や理事会
様々な世代が居住するマンションにおいては、価値観の多様性から管理組合に対する帰属意識の低下や、役員のなり手不足が顕著になっています。
さらに、高経年マンションや、間取りが小さなマンション、さらにリゾートマンションをはじめとした投資物件になりやすい管理組合はよりその傾向が堅調であるといえるでしょう。
そのような場合には、ITを活用した総会や理事会は一定の効果が見込まれます。
管理組合として、区分所有者に対してマンション管理に興味関心を持ってもらうためにも、今後ますます重要な施策となってくるでしょう。
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