専門委員会を立ち上げた方がいいって聞いたけど…
専門委員会はどのように運営すればよいのか…
そのような疑問を感じている管理組合も多いでしょう。
これまで立ち上げたことがない新しいマンションや、新たに委員会を検討している理事などにとっては、なおさら疑問点も多いかもしれません。
管理組合において、課題解決のために、理事会とは別に新たな委員会を立ち上げて、運営することもどこの管理組合でも見られます。
理事会の総会でいきなり決議することではハードルが高いこともあります。
そのため、専門委員会形式を立ち上げて、その中で管理組合個別の課題について討議し、まとめ上げていくことが一般的です。
今回は専門委員会の立ち上げと運営上の注意点について紹介します。
【確認したい】管理組合での専門委員会立ち上げと運営上の注意点は?
今回紹介する専門委員会については、以下のような内容となります。
・専門委員会の立ち上げ方
・委員会運営において注意すべき事項
理事会ではなかなか討議できないような、具体的な内容を討議する場として、専門委員会の立ち上げが考えられます。
その立ち上げ方や立ち上げてはみたものの、運営上において注意すべき事項等、進めるうえで課題となることを中心に、具体的に確認していきます。
専門委員会にはどのようなものがあるのか
まず初めに、管理組合が立ち上げる専門委員会には、どのようなものがあるのでしょうか。
管理組合で一般的に見られるものを中心に確認していきます。
大規模修繕委員会
多くの管理組合で必ずといっていいほど立ち上がるのが、大規模修繕委員会です。
大規模修繕工事は12~15年程度に1度必ずやってくる、一大イベントと言えるでしょう。
ただ、その一大イベントにおいては、組合員を始めとした住民全体に協力して貰わなくてはなりません。
さらに、工事内容の確認や工事進行状況のチェック、住民への通達、組合員との合意形成など、やることが非常に多岐に渡ります。
そのため到底理事会では手に負えるものではありません。
さらには、大規模なマンションであれば、工事項目も多く影響する住民も多いことから、組合員で手分けしながらこなしていく必要もあるでしょう。
大規模修繕委員会のおもな活動としては以下の通りです。
・工事計画の確認(作成は施工業者や施工監理が実施することが大半)
・工事進行状況の確認や検査の立ち合い(計画的に進んでいるかなど)
・住民への通知や共有、協力への依頼(広報などを通じて委員会活動を伝えるなど)
このような形の内容を議論して、取りまとめていく必要があります。
必ずしも、マンションに関して詳しい人が委員になる必要はありません。
マンション内で不具合があったり、壊れている等、住民としての率直な意見や発見が大事です。
長期修繕計画委員会
長期修繕計画とは、マンションを長期的視点から見て、
・適切な時期に
・発生する工事金額を見積もって
・必要もしくはあるべき修繕積立金を
・将来に渡って積み立てる
という計画です。
その計画について、
・国土交通省が推奨する5年程度ごとの見直し
において行うことが求められます。
長期修繕計画も大規模修繕工事同様に理事会で議論することは、負担が多くなります。
そのため、委員会形式で実施されることも多いです。
また、大規模修繕工事後においては実施工事個所が明確化すします。
加えて、次回は何年後にどの箇所を工事することが必要なのか明らかになることも多いです。
したがって、長期修繕計画も練りやすいでしょう。
継続が可能な場合は、大規模修繕委員会が工事終了後もそのまま継続し、長期修繕計画を練り上げていくことも考えられます。
この方法のメリットとしては、
・施工会社や監理会社と連携が取りやすい
・施工会社・監理会社協力のもと必要工事項目の洗い出しが実施しやすい
・改めての劣化調査が不要である
などの一方で、
・契約次第では長期修繕計画は別途費用が必要となる
こともあります。
よって、メリット、デメリットを検討しながら進めることが求められます。
管理規約検討委員会
法改正に伴う標準管理規約の改正に伴って、新たな決まりが必要となる事があります。
数年に一度など、標準管理規約が大改正する場合、新たなルールに合わせていくべきか、検討していくことも求められます。
また、規約に紐づく細則についても、改めて検討する必要が出てくるかもしれません。
これらを行うとなると、前2項の委員会同様、理事会にとっても負担となってきます。
そこで、規約の改正を検討する委員会の立ち上げが必要となるわけです。
管理組合としては、標準管理規約にそのまま準拠するのか、それとも一部変更するのか等、考えていく必要があります。
長年変更していない場合は、管理組合の規約として大改正になってしまうため、組合員に対する合意形成を取っていく必要があります。
いきなり総会で変更を決議しようとしても、中々理解して貰えないことも想定されます。
そのため、管理規約検討委員会で変更箇所を検討するとともに、必要に応じて、組合員に説明する機会も必要となるでしょう。
このように、組合員に徐々に新たなルール案を浸透させつつ、変える必要性を理解して貰うという、合意形成も重要です。
駐車場委員会
駐車場における管理組合の課題を解決する際に編成される委員会です。
具体的には、
・機械式駐車場のリニューアルを行うためその課題を討議したい
・機械式駐車場を辞めて平面駐車場にリニューアルしたい
・電気自動車の充電スタンドの設置を検討したい
などが考えられます。
これらについても、駐車場にフォーカスした細かな討議が必要でしょう。
また、駐車場を利用している人、そうでない人をバランス良く配置することで、管理組合として今後駐車場をどのように運営していく必要があるのか、理事会から切り離して委員会形式で討議していくことが考えられます。
管理会社変更委員会
現状委託している管理会社との関係において、
・管理組合として満足度が低く、組合員からの不満が多く挙がっている
など、課題が生じている場合は、管理会社変更を検討することもあるでしょう。
この課題についても、理事会のみで討議するのは比較的重いと考えられます。
したがって、別途委員会形式で討議していくことが望まれます。
具体的に管理会社変更を検討する際の注意点等は、こちら
に記載していますので、合わせてご参照ください。
専門委員会の立ち上げ方
次に、前章で紹介したような専門委員会を立ち上げる一般的な方法を紹介します。
専門委員会についての管理規約や細則を確認する
現在運用している管理規約や細則に、専門委員会についての項目があるかどうか、確認する
必要があります。
例えば、標準管理規約(単棟型)の第55条には、以下のような規定があります。
第55条 理事会は、その責任と権限の範囲内において、専門委員会を設置し、
特定の課題を調査又は検討させることができる。
2 専門委員会は、調査又は検討した結果を理事会に具申する。
この文言が入っていると、理事会の諮問委員会として、専門委員会の設置が可能になります。
また、すでに専門委員会に関する細則が規定されている場合は、その内容に従って委員会を立ち上げていくことになります。
専門委員会立ち上げを理事会で決議する
理事会として、専門委員会を立ち上げることを考えた場合に、
具体的に
・委員会の名称
・メンバーの公募について(組合員のみか、外部の専門家を入れるのか等)
・委員会の開始から終了までのおおよその期間
などを決議するのが良いでしょう。
理事会として、委員会を実際に立ち上げることを明確化する事により、管理組合内の課題を解決していくという意思表示も重要です。
組合員からメンバーを募集する
理事会で委員会立ち上げを決議したあと、期限を区切って組合員からメンバーを募る事となります。
組合員自身も参加するかどうするかにおいて、
・報酬は発生するのか
・委員の任期
なども重要なので、規約、細則等に合わせて伝えていくことも求められます。
また前述のとおり、そこに外部を含めた専門家が入る場合、一定のコストが掛かります。
したがって、専門家のプロフィールや過去の実績、費用等も合わせて検討することも必要です。
また、諮問機関である委員会と、意思決定機関の理事会のつなぎ役として、役員(理事または監事)が1人以上は委員会メンバーとして入っている事が望ましいでしょう。
一方で、兼務委員においては負担を伴う事から、本人の承諾は当然のこととして、人選含めて慎重に決める必要があります。
委員長や副委員長を決める
委員会においては、その会合を取りまとめる委員長が必要となります。
前述のとおり、理事会メンバーは兼務となります。
そのため、できれば役員以外の管理組合に比較的精通した、過去の役員経験者等の組合員から選任することが望まれます。
さらに、指名よりも、立候補で委員長をやってくれる方がいれば、なおさら管理組合としては良い方向に進むのではないでしょうか。
また、委員長の代行として副委員長を決めておくことも一つでしょう。
委員長ほど負担を伴わないので、理事会役員が就任することも考えられます。
第一回委員会で管理組合の課題を認識する
初回の第一回委員会の場では、委員全員が参加して顔合わせします。
今回の委員会立ち上げの背景や、管理組合としての課題、さらには委員の間で解決したい内容、任期等を共有します。
また、普段の生活に加えて、委員会出席となることから、必要な限り委員会の出席を要請するものの、強制は極力避けるよう運営していくことも重要です。
そのためにも
・リアルにその場にいなくてもオンライン出席できる環境整備
などの工夫も考えておくとよいでしょう。
専門委員会運営において注意すべき事項
最後に、専門委員会運営において注意しておいた方がよい事項を紹介します。
専門委員会は決議の場ではなく諮問機関である
開催される各委員会においては、最終的な決議の場ではなく、
理事会の諮問機関(検討する機関)である
点に注意する必要があります。
すなわち、
委員会で決まったことを理事会に上げて決議して貰う
という流れになります。
多くの理事会と委員会の関係においては、委員会で討議された内容を尊重して、そのまま
理事会で可決して進めることもあるでしょう。
一方で、理事会として決議できなかったり、委員会に戻して再討議して貰うなど、発生する
ことも考えられます。
もっといえば、管理組合としての最高意思決定機関は管理組合総会であることから、委員会や理事会で決議された内容であっても、最終的に管理組合の総意ではない点に注意が必要です。
理事長や理事の専門委員会での関わり方に配慮する
繰り返しになりますが、専門委員会は管理組合内での課題を討議する諮問機関という位置づけのため、理事会とは異なります。
すなわち、
理事会=専門委員会
という位置づけではなく、専門委員会は理事会と切り離された、管理組合の課題について客観的に討議できる場である必要があります。
そのため、委員長が理事長であることは避ける必要がありますし、前述の通り、出来れば委員長は役員以外であることが望まれます。
外部の専門家を上手く活用する
コストに余裕があれば、外部委員の位置づけとして専門家を活用して、委員会を活性化するのも一つの考え方です。
専門的な見地から幅広く意見を貰い、組合員を中心とした委員だけでは出てこない、課題の解決策を考えていく効果もあります。
一方で、意見が一般的で管理組合にそのままマッチするかどうか分からない場合も考えられますので、その点は専門家の意見を尊重しつつも、管理組合として流されないように、委員の間でしっかりと決めていくのが良いでしょう。
専門委員会は管理組合の課題を討議する諮問機関
今回、専門委員会の種類と立ち上げ方、注意点について紹介しました。
長年住んでいるマンションにおいては、対応すべき課題が次から次へと発生するため、柔軟に専門委員会を立ち上げ、解消することが望まれます。
理事会の負担を軽減すべく、かつ専門的な課題に対して集中討議する場として、管理組合にとって専門委員会が有効的に機能することを願っています。
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