東京都のマンション管理状況届出制度から分かる管理組合の実態は?

マンション管理

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東京都のマンション管理組合の方にはおなじみですが、東京都にはマンション管理状況届出制度というものがあります。

これは、東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例

によって、東京都のマンションにおいて、一定の要件を満たすマンションは届出が必要となっています。

具体的には、次のようなマンションです。

・要届出マンションとは、昭和58年12月31日以前に新築されたマンションのうち、人の居住の用に供する独立部分の数が6以上であるもの
・要届出マンションの管理組合は、5年ごとに届出が必要

今回、令和6年度第1回マンション施策推進会議(令和6年7月2日開催)において、東京都における管理状況届出制度の運用状況について紹介されています。

東京都における高経年マンションのおかれた状況を集計した貴重なデータなのですが、検索にも引っかかりづらい、見つけにくいところにありました。

今回はサイトポリシーに従って、東京都住宅政策本部民間住宅部マンション課が発表したデータを引用して、筆者の見解等も踏まえて紹介します。

東京都のマンション管理状況届出制度から分かる管理組合の実態は?

今回紹介する内容は、以下の通りです。

・届出書類であるマンション管理状況届出書
・東京都マンション管理状況届出制度による届出マンションの概要
・管理不全を予防するための必須事項とは?
・適正な維持管理に関する事項
・マンショ ンの社会的機能の向上に資する取組に関する事項

各項目については、発表された資料の流れから参考にしています。

届出概要を確認したところ、東京都におけるマンションの全貌が確認できる観点から、重要なデータであると思いました。

そのため、今回は筆者なりに記事としてまとめてみましたので紹介します。

届出書類であるマンション管理状況届出書

まず、各マンションが届け出るマンション管理状況届出書という書類について紹介します。

この書類は次の2枚となっています。

1枚目 マンションの概要や管理不全を予防するための必要事項の記載

まず、こちらには届出者の氏名や、住所、マンション名、管理組合の形態、戸数、階数等基本的なところを記載します。

加えて、管理不全を予防するための必要事項を記載する必要があります。

2枚目 適正な維持管理に関する事項等の記載

届出書は表裏一体となっており、裏側には適正な維持管理に関する事項の記載が必要となります。

さらには、マンションの社会的機能の向上に資する取組に関する事項の記載が続きます。

最後に、窓口としての連絡先を記載しますが、こちらは理事長、区分所有者、さらには管理会社でもよいようです。

東京都マンション管理状況届出制度による届出マンションの概要

次に、当該届出制度において届出を行っているマンションの概要(集計結果)を紹介します。

届出マンションの件数やタイプは?

2024年3月末現在の届出マンションは次のようになっています。

・届出は10,665件
・要届出マンションは11,343件
・届出率は94.0%
・届出対象となっていない任意届出も324件あり
また、管理組合形態は、団地形態である団地管理組合が14.6%、そうでないマンション(単棟型)が77.2%でした。

団地管理組合は組合のまとまりとして戸数を束ねるため、件数的には少ないですが、戸数割合で考えると、さらに多いと想定されます。

土地の権利は85.9%が所有権ですが、実際に区分所有者自身のものではない借地権と答えた割合も4.9%存在します。

1棟当たりの戸数は?

昭和58年12月31日以前の6棟以上の分譲マンションにおいては、1棟当たりの戸数として10~19戸と回答した割合が一番多くなっています。

続いて、20~29戸、さらに30~39戸と、戸数が増えるに従って減少傾向です。

一方で、100~199戸と回答したマンションも一定数あり、ここに入るのは団地の回答とも想定されそうです。

届出マンションの階数や建築年代は?

データから、階数としては4~5階と答えた管理組合が多く、6~7階が続きます。

この時代の4~5階のマンションは、エレベーターが設置されていない、階段で上り下りするマンションが多いと考えられます。

また、建築年代は1980(昭和55)~1983(昭和58)年と回答した割合が多くなっています。

建築年度が新しくなるにつれて回答も増加傾向にあります。

届出率が94.0%と高水準のため、東京都における昭和58年以前の6戸以上の分譲マンションの傾向はこのような分布になっていると想定できます。

併用用途や管理形態は?

複合用途マンションとして、併用施設があるマンションは、用途無しが48.0%、店舗が23.8%、さらに事務所が9.7%という結果でした。

「用途無し」というのが、かつては使用されていたものの現在は空き店舗として残ってしまっているのか、分かりませんが、昔は活用されていたのでしょうか。

また、管理形態は、58.8%が全部委託で、一部委託している15.9%を含めると、74.7%が清掃等を含めなんらかの業務を外部の業者に委託していることが分かります。

一方で、自主管理も15.9%存在し、管理組合の負担とともに適切管理が行われているのかも課題となりそうです。

管理不全を予防するための必須事項は?

そして、管理不全とならないために実施すべきそれぞれの項目についての有無の状況です。

管理組合が活動状態にない割合も5.1%と、マンションの管理に手が付けられていない状態のマンションがあることが分かります。

総会の開催も1年に1回実施していない割合が7.5%あり、管理組合として意思決定していない状態にありそうです。

また、計画的な修繕を実施していない割合も11.1%となっており、大規模修繕工事等の工事も実施されていない状況にあることが想定されます。

ただ、なんらかの形で管理費は多くの管理組合で徴収しており、管理者等(理事長)も設置していると考えられます。

適正な維持管理に関する事項

続いて、適切な維持管理に関する事項として、長期修繕計画や滞納、名簿、空き住戸や賃貸化、耐震化の取組などについて確認します。

長期修繕計画や滞納ルール、区分所有者名簿

長期修繕計画を作成しているマンションは64.5%であり、国土交通省が推奨する、計画が30年以上設定されているマンションは31.7%と3割に満たない状況です。

また、滞納に関するルールがあると回答したマンションは70.6%であり、区分所有者名簿も84.5%と比較的高い割合でした。

滞納への対応と名簿については、管理組合において比較的意識の高い結果となっています。

特に高経年マンションは、高齢化が進む傾向にあるため、どのような人が住んでいるかの情報を洗い出していくことが重要です。

さらに過去からそのルーティンが継続されているとも想定されます。

空き住戸や賃貸化の割合は

管理組合内における空き住戸や賃貸化の傾向です。

空き住戸がある割合は全体の約3割であり、不明と回答した割合も12.9%と比較的高水準でした。

誰かが住んでいるのか、空き住戸なのかなどが把握できていない状態の住戸もあると考えられます。

さらに、区分所有者が外部に住んでおり、住戸を貸し出している賃貸化率についても2割を超えていると回答したマンションが約4割あります。

ちなみに、年代を問わずに国土交通省た調査した、令和5年度マンション総合調査でも、賃貸戸数割合が2割を超えると回答したマンションは15.5%(平成30年調査時は17.1%)でした。

高経年マンションは比較的外部所有者が多い傾向があります。

住戸を相続したり、さらには高年齢で便利な所への住み替えや高齢者施設に入ったり等で使わなくなった住戸が増えてきているのではないかと想定されます。

旧耐震基準マンションにおける耐震化への取組状況は

旧耐震基準マンションのなかの約6割が耐震診断を実施していない状況にありました。

また、耐震診断実施済と回答した約半数が「耐震性なし」と回答し、耐震改修が必要な状態にあることが分かります。

そして、耐震性なしと回答したマンションの約7割が耐震改修未実施という結果にあります。

このように、東京都のマンションにおいて比較的耐震性に課題があるという実態が確認できます。

耐震診断や改修においては、自治体で一定の補助金も付与する施策が出されていますので、マンションの管理水準向上のためにも、それを利用することも要検討課題と感じました。

設計図書や修繕履歴の有無

修繕工事を行った際の設計図書や修繕履歴の有無については、7割以上がなんらかの形で残していることが分かりました。

後々の修繕のためにも、過去の状況がわかる設計図書や修繕履歴については重要な書類と位置付けられます。

そのため、将来就任する役員や管理組合のためにも、継続して引き継いでいくことが重要でしょう。

マンションの社会的機能の向上に資する取組に関する事項

最後の章では、防災やバリアフリー化、地域コミュニティなど、社会的機能の向上のための取組についての調査結果です。

防災への取組

まず、防災についてです。

多くのマンションは防災対策に取り組んでいない結果となっていました。

具体的には、

・自主防災対策に取り組んでいない割合が61.6%
・防災マニュアルがない割合が63.2%
・防災用品の備蓄を行っていない割合が57.7%
・避難行動や要支援者名簿がない割合が71.7%
・防災訓練の定期的実施を行っていない割合が58.4%

と防災に関する対応が後手に回っている状況です。

高経年マンションでは、取りまとめたり実施する人がいなかったりすることも大きな要因でしょうか。

バリアフリー化・環境への取組又は実施状況

マンションのバリアフリー化や環境への取組の実施では、エレベーターの設置と共用部分のLED化は半数以上の管理組合で対応が進んでいるとの回答でした。

階段のみの高経年マンションにおいて、後付けのエレベーターは比較的負担が大きいこととなりますが、修繕積立金が十分にあるマンション等、体力があるマンションでは改めて検討している所もあるかもしれません。

また、共用部分における照明のLED化は、光熱費削減への影響も考えられることから、管理組合として取り組んでいることが考えられます。

一方で、共用部分としても重要性が低いと考えられている、二重窓や外断熱等、開口部遮熱性向上対策や、電気自動車の充電設備は未対応が多くなっています。

地域コミュニティの形成等の取組や連絡窓口

そして、最後の項目として地域コミュニティの形成等の取組や連絡窓口の属性についてです。

地域コミュニティ形成等( 町内会や自治会との共催事業・ 協力連携イベント( 祭り・運動会・防災訓練・ 清掃活動等) )の取組は約4割で実施しているとの回答がありました。

長い間地域に属している高経年マンションは、地域との取り組みが比較的密である一方で、管理組合としては対応する人がいないという課題もあるでしょう。

かつて団地では、団地全体で定期的な季節イベントが行われていたところも多いようですが、高齢者が増えるにしたがって、中心となって対応する人も少なくなっているでしょう。

また、連絡窓口の属性では、マンション管理業者が61.6%、管理組合理事長が23.0%となっていました。

管理会社に委託している管理組合においては、管理会社が当該書類を代わりに作成していることも考えられます。

東京都のマンション管理状況制度を確認して

東京都には市区町村関係なく、このような届出制度が条例で定められていることによって、マンションの管理状況の届出が必要なことを確認しました。

神奈川県で活動している筆者としては、マンション管理士が自治体の依頼でマンションの実態調査をすることが多くなっています。

一方で、東京都の条例によって対象マンションが強制的に出す必要がある点は、管理不全を改善するために効果的な施策であると感じています。

今後、管理不全マンションが増えていくことが想定され、自治体においても対策が求められることとなります。

事前に状況を察知するためにも、条例による強制力は、マンション管理組合側にとっても効果があるのではと、改めて感じました。

 

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