令和5年度マンション総合調査(国交省)を管理士が読む|数字で分かる管理組合の現状

マンション管理

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2024年6月21日、国土交通省から「令和5年度マンション総合調査」が公表されました。この調査は、分譲マンションの管理組合や区分所有者の実態を把握するために行われる重要な調査ですが、単に数字を眺めるだけでは、管理組合が直面している本当の課題は見えてきません。

今回の調査から読み取れる最大のポイントは、マンション管理が「建物の維持管理」だけでは済まなくなっているということです。区分所有者の高齢化、修繕積立金の不足、理事のなり手不足、居住者間の協力不足など、これからの管理組合にとって避けて通れない問題が、数字としてはっきり表れています。

本記事では、令和5年度マンション総合調査の内容を単なる資料紹介として整理するのではなく、マンション管理士の視点から「このデータが管理組合に何を示しているのか」「今後どのような対策が必要なのか」を読み解いていきます。

  1. 【動画解説】国交省 令和5年度マンション総合調査 マンション管理士による解説
  2. 国交省調査で見えたマンション居住者の変化
    1. 高齢化する区分所有者|70歳以上の増加が管理組合に与える影響
    2. 賃貸化は進んでいるのか|所有者が住まないマンションの管理課題
    3. 空室は戸建てだけの問題ではない|分譲マンションにも広がる空き住戸リスク
    4. 所有者と連絡が取れないマンションのリスク|名簿管理は管理組合の生命線
    5. 永住意識の高さは安心材料か|住民の新陳代謝が止まるリスク
    6. 購入時に「管理」はどこまで見られているのか
    7. 半数以上が共用部分の維持管理を十分に見ていない現実
  3. マンション管理の現場では何が起きているのか
    1. 管理規約と使用細則は整っているか|ルールの有無が管理力を左右する
    2. 管理規約は見直されているか|時代に合わないルールを放置しない
    3. 自分のマンションの管理規約をどこまで理解しているか
    4. 管理費はいくらかかっているのか|規模・形態・タワマンで変わる負担感
    5. 管理委託契約を理解しているか|管理会社任せにしないための基本
    6. 管理に満足している理由・不満を感じる理由
    7. EV充電設備はまだ少数|将来の合意形成課題になる可能性
    8. 置き配ルールは未整備が多数|便利さと防犯・共用部分管理のバランス
    9. 宅配ボックスは標準設備になりつつある|築年数で広がる設置格差
      1. 宅配ボックスの設置状況は?
      2. 宅配ボックスの設置台数は?
      3. 宅配ボックスの設置意向は?
  4. 建物は維持できるのか|長期修繕計画と修繕積立金に表れた管理組合の課題
    1. 長期修繕計画は作られているか|作成率88.4%でも安心できない理由
    2. 長期修繕計画は30年以上が標準へ|短い計画では将来費用を見落とす
    3. 長期修繕計画は5年ごとに見直しているか
    4. 長期修繕計画は国交省ガイドラインに沿っているか
    5. 修繕積立金はいくら積み立てているのか|平均額だけでは見えない不足リスク
      1. 駐車場使用料等からの充当額を含む月/戸当たり修繕積立金
      2. 駐車場使用料等からの充当額を除く月/戸当たり修繕積立金
      3. 築年数で変わる修繕積立金|築20〜30年で負担が重くなりやすい理由
    6. 修繕積立金は長期修繕計画に基づいて決められているか
    7. 段階増額方式が多い現実|将来の値上げを先送りしていないか
    8. 修繕積立金が不足しているマンションは36.6%|計画があっても資金が足りない現実
    9. 大規模修繕では何が行われているのか|外壁・防水だけでは終わらない修繕課題
    10. 省エネ改修は進んでいるのか|LED化の次に問われる断熱・設備更新
    11. バリアフリー改修は進んでいるか|高齢化するマンションで避けられない課題
    12. 旧耐震マンションは診断・改修できているのか
      1. 回答マンションの約2割が旧耐震基準と見られる
      2. 耐震診断、耐震改修の実施状況は?
    13. 老朽化問題を議論している管理組合は25.8%にとどまる
    14. 耐震性に不安を感じながらも動けない区分所有者
    15. 多くの区分所有者は建替えより修繕・改修を選んでいる
  5. 管理組合は機能しているのか|総会・理事会・担い手不足から見る現実
    1. 管理者と監事は誰が担っているのか|第三者管理はまだ少数派
    2. 総会は年1回開催が基本|ただし開催だけでは十分ではない
    3. 総会出席率88.5%の裏側|実際に出席している人は24.6%
    4. 委任状と議決権行使書の使われ方|総会決議はどのように成立しているか
    5. 理事会はどれくらい開かれているか|高経年・大規模ほど負担は重くなる
    6. 専門委員会を設置しているか|大規模修繕を理事会だけで抱え込まない
    7. 組合員名簿は整備されているか|所有者・居住者・緊急連絡先の把握が管理組合を支える
    8. 大規模災害への備えは進んでいるか|防災訓練・情報共有・安否確認の現実
    9. 専門家はどこまで活用されているか|管理組合が外部知見を使う場面
    10. 外部役員を求める管理組合が増える理由|高齢化となり手不足の現実
    11. 管理組合ではどのようなトラブルが起きているのか
      1. トラブルは減っているのか|過去調査との比較
      2. 築年数が進むとトラブルはどう変化するのか
      3. どのようなトラブルが発生しているのか|築年数で異なる管理課題
    12. 管理費・修繕積立金の滞納はどこまで広がっているのか
    13. 管理組合は何に取り組むべきか|国交省調査で見えた優先課題
    14. 管理の悩みは誰に相談しているのか
    15. 管理組合は何に不安を感じているのか|数字で見える将来リスク
  6. まとめ|令和5年度マンション総合調査から管理組合が読み取るべきこと

【動画解説】国交省 令和5年度マンション総合調査 マンション管理士による解説

動画では、令和5年度マンション総合調査のうち、特に管理組合に影響が大きいポイントを中心に解説しています。主なテーマは、区分所有者の高齢化、賃貸化・空室化、修繕積立金の不足、長期修繕計画、理事会・総会運営、管理組合が抱える将来不安です。

調査項目は非常に多いため、本記事ではすべての数字を同じ重みで紹介するのではなく、管理組合が今後注意すべき論点に絞って整理します。詳細なデータを確認したい方は本文を、全体像を短時間で把握したい方は動画解説をあわせてご覧ください。

※以下、画像については出典:「令和5年度マンション総合調査」(国土交通省)における令和5年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状から、事実をお伝えするため、情報をそのまま抜粋して紹介しています

国交省調査で見えたマンション居住者の変化

まずはじめに、当該調査データの傾向から見られるマンション居住の状況について紹介します。

高齢化する区分所有者|70歳以上の増加が管理組合に与える影響

令和5年度マンション総合調査では、世帯主の年齢について「60歳代」が27.8%と最も多く、次いで「50歳代」が23.7%、「70歳代」が21.7%、「40歳代」が15.7%となっています。前回調査と比較すると、30歳以下は7.1%から6.2%へ減少した一方、70歳以上は22.2%から25.9%へ増加しています。

この数字が示しているのは、単なる居住者の高齢化ではありません。マンション管理においては、区分所有者の高齢化がそのまま理事のなり手不足、総会参加率の低下、修繕積立金値上げへの慎重姿勢、将来の建替え・改修議論の停滞につながる可能性があります。つまり、年齢構成の変化は、管理組合の意思決定力そのものに影響する問題です。

この結果をみると、マンション居住者が高齢化している傾向がうかがえます。

30代以下の割合が減少している背景には、マンション価格の高騰、若年層の購入余力の低下、賃貸志向、戸建て志向など、複数の要因が考えられます。ただし、管理組合の視点でより重要なのは、完成年次が古いマンションほど70歳以上の割合が高くなっている点です。

特に昭和59年以前のマンションでは、70歳以上の割合が55.9%と半数を超えています。これは、築古マンションほど「建物の老朽化」と「所有者の高齢化」が同時に進んでいることを意味します。大規模修繕、修繕積立金の値上げ、耐震改修、バリアフリー化など、重い意思決定が必要になる時期に、管理組合の担い手も高齢化しています。

この二重の課題こそ、今後のマンション管理で最も注意すべきポイントです。

賃貸化は進んでいるのか|所有者が住まないマンションの管理課題

分譲マンションであっても、すべての住戸に区分所有者本人が住んでいるとは限りません。相続、転勤、住み替え、投資目的の所有などにより、所有者が外部に住み、住戸を賃貸に出しているケースがあります。

令和5年度調査では、賃貸住戸がないマンションは12.8%、賃貸戸数割合が20%を超えるマンションは15.5%でした。前回調査では、賃貸戸数割合が20%を超えるマンションが17.1%だったため、割合としてはやや減少しています。

ただし、ここで重要なのは「賃貸戸数割合が減ったから安心」と見ることではありません。管理組合にとっては、賃貸住戸が一定数あるだけでも、総会への関心、生活ルールの徹底、緊急時の連絡体制、管理費等の滞納対応などに影響が出る可能性があります。

完成年次別に見ると、古いマンションほど賃貸住戸の割合が高い傾向があります。

これは、購入当初は自ら居住していた区分所有者が、その後の住み替えや相続をきっかけに外部所有者となり、住戸を賃貸に出しているケースがあるためと考えられます。

新しいマンションでは、購入者本人が居住している割合が比較的高いと考えられますが、築年数が進めば同じように賃貸化が進む可能性があります。つまり、賃貸化は一部の築古マンションだけの問題ではなく、すべての分譲マンションが将来的に直面し得る管理課題です。

管理組合としては、区分所有者名簿、居住者名簿、緊急連絡先の整備を進め、所有者本人が居住していない住戸であっても、総会通知、議決権行使、管理費等の請求、ルール違反時の連絡が確実に届く体制を整えておく必要があります。

空室は戸建てだけの問題ではない|分譲マンションにも広がる空き住戸リスク

空き家問題というと戸建て住宅を想像しがちですが、分譲マンションにも空き住戸の問題は存在します。令和5年度調査では、3か月以上の空室がないマンションは55.4%、空室戸数割合が0%超から20%のマンションは33.2%、空室戸数割合が20%を超えるマンションは0.8%でした。

前回調査と比較すると、空室がないマンションは47.9%から55.4%へ増加しています。

一見すると改善しているようにも見えますが、別の見方をすれば、3分の1以上のマンションには何らかの空室が存在しているということです。

空室は、単に部屋が使われていないという問題に留まりません。管理費や修繕積立金の滞納、漏水発生時の対応遅れ、緊急時の連絡不能、防犯上の不安、管理組合活動への参加低下など、建物全体の管理に影響する可能性があります。

社会全体では空き家問題が深刻化している一方で、今回の調査では、空室がないマンションの割合が増加しています。ただし、この結果だけを見て「マンションの空室問題は改善している」と判断するのは早計です。

完成年次別に見ると、古いマンションほど空室割合が高い傾向があります。築年数が進むほど、所有者の高齢化、相続、賃貸化、住み替え、売却困難などが重なり、空き住戸が発生しやすくなるためです。

管理組合としては、空室の有無を単なる居住状況として把握するのではなく、管理費等の入金状況、緊急連絡先、鍵の所在、漏水時の対応方法、防犯上の確認体制とセットで管理する必要があります。

マンションの空き住戸対策については、別記事でも詳しく解説しています。空き住戸は、管理費等の滞納、漏水時の連絡不能、防犯上の不安、総会運営への影響など、管理組合全体に関わる問題です。空室が目立ち始めてから対応するのではなく、区分所有者名簿や緊急連絡先の整備を含めて、早い段階から体制を整えておくことが重要です。

所有者と連絡が取れないマンションのリスク|名簿管理は管理組合の生命線

マンションが経年すると、住み替え、相続、賃貸化、所有者の高齢化などにより、区分所有者と管理組合との距離が広がることがあります。その結果、所有者本人とすぐに連絡が取れない住戸が発生する可能性があります。

令和5年度調査では、総戸数に対する所在不明・連絡先不通の住戸割合が20%を超えるマンションはなく、0%超から20%のマンションは3.3%でした。一方、所在不明・連絡先不通の住戸がないマンションは87.7%となっています。

数字だけを見れば、所在不明・連絡先不通の住戸があるマンションは限定的です。しかし、管理組合にとっては、たとえ1戸であっても連絡が取れない住戸があることは大きなリスクです。漏水、火災、滞納、専有部分内の不具合、相続未了などが発生した際、対応が遅れる可能性があるためです。

管理費や修繕積立金の滞納が発生した場合、管理組合は区分所有者に対して督促を行う必要があります。また、漏水や設備不具合が発生した場合には、専有部分内への立入りや所有者との調整が必要になることもあります。そのため、区分所有者の連絡先を把握しているかどうかは、管理組合運営の基本です。

完成年次別に見ると、古いマンションほど所在不明・連絡先不通の住戸割合が高い傾向があります。高経年マンションでは、相続をきっかけに所有関係が複雑化したり、所有者が遠方に住んでいたりすることもあります。管理組合としては、名簿を作るだけでなく、定期的に更新し、緊急連絡先まで確認しておくことが重要です。

永住意識の高さは安心材料か|住民の新陳代謝が止まるリスク

令和5年度調査では、「永住するつもりである」と回答した割合が60.4%となっています。年齢別では、年齢が高くなるほど永住意識が高くなる傾向があります。一方で、前回調査と比較すると、「永住するつもりである」は62.8%から60.4%へ減少し、「いずれは住み替えるつもりである」は17.1%から17.7%へ増加しています。

マンションに長く住み続けたいという意識は、地域コミュニティや管理組合への愛着につながる面があります。しかし、管理組合の視点では、永住意識の高さが必ずしも安心材料になるとは限りません。住民の入れ替わりが少なくなると、区分所有者の高齢化が進み、理事のなり手不足や意思決定の固定化につながる可能性があります。

一方、住み替えや売却によって新しい世代が入ってくれば、管理組合に新たな担い手が生まれる可能性もあります。重要なのは、永住か住み替えかという選択そのものではなく、マンションの世代交代が止まらない仕組みを管理組合として意識できているかどうかです。

購入時に「管理」はどこまで見られているのか

マンション購入時に重視される項目を見ると、「駅からの距離などの交通利便性」が71.6%で最も多く、次いで「間取り」が61.4%、「日常の買い物環境」が53.5%となっています。購入検討時には、通勤、買い物、家族構成に合った間取りなど、日々の暮らしに直結する条件が重視されやすいことが分かります。

一方で、住み始めてから大きな問題になりやすい「耐震性能」「共用部分の維持管理状況」「共用施設・サービスの充実度」などは、交通利便性や間取りに比べると低い水準に留まっています。

ここに、マンション購入の大きな落とし穴があります。購入時には立地や間取りに目が向きやすい一方で、将来の修繕積立金、管理組合の運営状況、長期修繕計画、管理規約、管理費の妥当性といった「買った後に効いてくる項目」は後回しにされがちです。マンションは購入して終わりではなく、購入後も管理費や修繕積立金を負担しながら、管理組合の一員として維持していく資産です。

その意味では、購入時点で管理の質を見る視点が欠かせません。

半数以上が共用部分の維持管理を十分に見ていない現実

マンション選定時に、入居後の共用部分の維持管理を考慮した割合は43.5%でした。一方、考慮しなかった割合は54.8%であり、半数以上の購入者が、共用部分の維持管理を十分に検討しないままマンションを選んでいることになります。

考慮した事項を見ると、「優良なマンション管理業者であること」が55.3%と最も多く、次いで「管理規約の内容が妥当であること」が45.3%、「管理費及び修繕積立金の額が十分であること」が42.5%となっています。

この結果は、マンション購入時の大きな課題を示しています。購入時には、駅距離、価格、間取り、眺望、設備など、目に見えやすい条件が優先されます。しかし、実際に住み続ける中で資産価値や暮らしやすさを左右するのは、共用部分の管理状態、修繕積立金の水準、管理規約の内容、管理会社との契約、管理組合の運営力です。

特に中古マンションを購入する場合は、専有部分のリフォーム状態だけで判断するのではなく、長期修繕計画、修繕積立金の残高、滞納状況、総会議事録、管理規約、過去の大規模修繕履歴を確認することが重要です。マンション選びでは、「部屋を見る」だけでなく、「管理を見る」視点が必要です。

マンション管理の現場では何が起きているのか

ここからは、管理規約、使用細則、管理費、管理委託契約、管理状況への満足度など、マンション管理の基本部分を確認します。これらは一見すると地味な項目ですが、管理組合が正常に機能しているかどうかを判断するうえで重要な手がかりになります。

特に、近年は置き配、宅配ボックス、電気自動車充電設備など、従来の管理規約や使用細則では十分に想定されていなかったテーマも増えています。管理組合には、古いルールを維持するだけでなく、生活環境の変化に合わせてルールを更新していく力が求められています。

管理規約と使用細則は整っているか|ルールの有無が管理力を左右する

令和5年度調査では、管理規約がある管理組合は94.7%、使用細則・協定等がある管理組合は88.5%となっています。多くの管理組合では、管理規約そのものは整備されているといえます。

使用細則・協定等の種類を見ると、「駐車場」が81.8%と最も高く、次いで「専有部分に係る使用・居住」が81.1%、「自転車置場・バイク置場」が72.9%、「専有部分の修繕等」が71.4%、「ペット飼育」が70.5%、「ベランダ・バルコニー」が56.2%となっています。日常生活でトラブルになりやすい項目ほど、細則として整備されている傾向が見られます。

一方で、管理規約や使用細則が「ある」ことと、現在の生活実態に合っていることは別問題です。窓ガラス等の改良、民泊、宅配ボックス、置き配、電気自動車充電設備など、近年のマンション管理では、従来の規約では十分に想定されていなかったテーマが増えています。

管理規約は見直されているか|時代に合わないルールを放置しない

管理規約を改正したことがある管理組合は91.0%となっています。単棟型では90.9%、団地型では96.7%であり、団地型の方がやや高い割合となっています。

この結果から、多くの管理組合では少なくとも一度は管理規約の見直しを行っていることが分かります。

特に団地型マンションでは、敷地、棟、共用施設、駐車場、集会所、自治会との関係など、単棟型よりも調整すべき項目が多く、規約改正の必要性が生じやすいと考えられます。

ただし、規約改正の経験があることと、現在も十分に見直されていることは同じではありません。過去に一度改正しただけで、その後の法改正や標準管理規約の改正、生活様式の変化に対応できていない管理組合もあり得ます。管理規約は一度作れば終わりではなく、マンションの状況に合わせて継続的に更新していくべきものです。

自分のマンションの管理規約をどこまで理解しているか

令和5年度調査では、現在の管理規約を認知している区分所有者は84.8%、購入時に管理規約を読んだ区分所有者は79.3%となっています。また、完成時期が新しいマンションほど、購入時に管理規約を読んだ区分所有者の割合が高くなる傾向があります。

一方、国土交通省が示している標準管理規約については、「名前ぐらいは聞いたことがある」が30.9%、「全く知らない」が30.1%、「だいたい知っている」が23.5%となっています。自分のマンションの管理規約は知っていても、標準管理規約との違いや、現在の規約が標準的な考え方に沿っているかまで理解している区分所有者は限られると考えられます。

管理規約は、ペット飼育、専有部分の修繕、ベランダの使い方、駐車場、総会決議、理事会運営、管理費等の徴収など、マンション生活の基本ルールを定めるものです。ところが、トラブルが起きるまで内容を確認しない区分所有者も少なくありません。

管理組合としては、総会資料や広報資料の中で、規約の重要なポイントを分かりやすく周知することが重要です。規約は「保管されている書類」ではなく、「区分所有者が理解し、日常的に守るルール」として機能してこそ意味があります。

管理費はいくらかかっているのか|規模・形態・タワマンで変わる負担感

月1戸当たりの管理費について、駐車場使用料等からの充当額を含む管理費の平均は17,103円となっています。総戸数規模が大きくなるほど1戸当たりの管理費は低くなる傾向があり、形態別では単棟型が17,214円、団地型が14,925円です。

一方、駐車場使用料等からの充当額を除いた月1戸当たりの管理費は平均11,503円で、形態別では単棟型が11,580円、団地型が10,394円となっています。

ここで注意したいのは、管理費の金額だけを見て「高い」「安い」と判断しないことです。管理費は、管理員の勤務形態、清掃頻度、エレベーターの台数、共用施設、機械式駐車場、植栽、警備、コンシェルジュサービスなどによって大きく変わります。

特に20階建以上のタワーマンションでは、エレベーター、共用施設、防災設備、内廊下空調、警備体制などにより、管理費が高くなりやすい傾向があります。管理費を見る際には、単純な金額比較ではなく、「その管理費で何を維持しているのか」「将来も同じ水準で維持できるのか」を確認する必要があります。

管理委託契約を理解しているか|管理会社任せにしないための基本

マンション標準管理委託契約書への準拠状況を見ると、「概ね準拠している」が93.8%となっています。多くのマンションでは、国土交通省が示す標準管理委託契約書を参考にしながら、管理会社との委託契約が作成されていると考えられます。

また、区分所有者の管理委託契約内容の認知状況については、「だいたい知っている」が53.7%、「よく知っている」が18.7%で、合計72.4%が管理委託契約の内容を知っているとされています。

※国土交通省の発表資料では、区分所有者の管理委託契約内容の認知状況については、「だいたい知っている」が23.5%、「よく知っている」が 6.3%で、合計 29.8%の区分所有者が知っていると記載がありましたが、筆者が確認したところ参照元が間違っていると思われます(2024年6月23日時点)

ただし、ここでいう「知っている」が、契約書の重要なポイントを具体的に理解していることを意味するとは限りません。管理会社の業務範囲、免責事項、別途費用が発生する業務、管理員業務、清掃業務、点検業務、契約更新、解約条件などを正確に把握している区分所有者は、実際には限られる可能性があります。

管理委託契約は、管理会社に何を依頼し、何が管理組合側の責任として残るのかを定める重要な契約です。管理会社任せの管理組合ほど、「当然やってくれると思っていた」「契約外だとは知らなかった」という認識違いが起こりやすくなります。理事会は、総会承認前に契約内容を確認し、区分所有者にも分かりやすく説明する姿勢が必要です。

管理委託契約書はどこを見ればよいのか。管理委託費の値上げ、免責範囲、解約条件、別表に記載された管理員業務・清掃業務・点検業務など、管理組合が総会承認前に確認すべきポイントをマンション管理士が解説します。

管理に満足している理由・不満を感じる理由

管理状況全般の満足度を見ると、「非常に満足している」が24.4%、「やや満足している」が36.8%で、合計61.3%の区分所有者が現状の管理に満足していると回答しています。

満足している理由としては、「マンション管理業者が良いので」が69.9%と最も多く、次いで「管理員が良いので」が49.0%、「管理組合役員が熱心なので」が37.9%となっています。多くの区分所有者にとって、管理会社や管理員の対応は、管理状況を評価するうえで分かりやすい判断材料になっているといえます。

一方、不満であると回答した理由では、「一部の居住者の協力が得られにくいので」が56.4%と最も多くなっています。次いで、「管理組合役員が不慣れなので」と「その他」がともに24.2%、「マンション管理業者が良くないので」が21.2%です。

ここで注目すべきなのは、不満の最大要因が管理会社ではなく「一部の居住者の協力不足」である点です。

マンション管理の難しさは、管理会社の良し悪しだけでは決まりません。管理組合員や居住者がルールを守り、総会や理事会に協力し、費用負担を理解するかどうかが、管理の質を大きく左右します。

完成年次別に見ると、築年数が浅いマンションでは、管理組合役員の熱心さよりも、管理会社や管理員への評価が満足度に影響している傾向があります。新しいマンションでは、分譲時から管理会社の体制が整っており、区分所有者も管理会社に任せる意識が強くなりやすいと考えられます。

一方、高経年マンションでは、管理組合役員の熱心さが満足度を支えている傾向があります。建物や設備の老朽化、修繕積立金の見直し、規約改正、居住者トラブルなど、管理組合側で判断すべき課題が増えるため、理事会の力量が管理の質に表れやすくなるためです。

つまり、築浅マンションでは管理会社の体制が目立ち、高経年マンションでは管理組合の主体性が問われるようになります。どのマンションも時間が経てば、管理会社任せだけでは対応できない課題が増えていきます。

早い段階から理事会が情報を蓄積し、区分所有者と課題を共有する仕組みを作ることが重要です。

EV充電設備はまだ少数|将来の合意形成課題になる可能性

電気自動車充電設備については、「ある」が5.7%、「ない」が90.7%となっています。現時点では、マンションにおけるEV充電設備の設置はまだ少数派です。

ただし、新しいマンションほど設置されている傾向があり、今後、電気自動車の普及が進めば、既存マンションでも設置を検討する場面が増える可能性があります。

EV充電設備の設置では、設置費用、電気容量、駐車場区画の公平性、利用者負担、管理規約や使用細則の整備など、管理組合として検討すべき事項が多くあります。利用する人と利用しない人の費用負担をどう考えるかも、合意形成上の重要な論点になります。

置き配ルールは未整備が多数|便利さと防犯・共用部分管理のバランス

置き配は、再配達の削減や共働き世帯の利便性向上という点で広がりつつある一方、マンションでは共用廊下や玄関前の管理、防犯、避難経路の確保、景観、盗難リスクなどの問題を伴います。

令和5年度調査では、置き配について「特にルールを決めていない」が86.0%と最も多く、「管理規約又は使用細則に置き配を規定し、置き配を全面禁止としている」は2.5%に留まっています。多くの管理組合では、置き配が現実に広がっているにもかかわらず、明確なルール整備が追いついていない状況といえます。

置き配に対する利用意向では、「マンション内のルールで許容されており、利用している」が30.6%と最も多くなっています。一方で、「マンション内のルールで禁止されているし、利用したくない」が28.1%、「マンション内のルールで許容されているが、利用していない」が27.7%となっており、利用意向は分かれています。

「許容されているが利用していない」と「禁止されているし利用したくない」を合わせると、置き配に積極的ではない層も一定数存在します。物流のひっ迫や再配達問題を考えると置き配のニーズは高まる一方で、区分所有者や居住者の中には、安全性、防犯、共用廊下への荷物放置に不安を感じる人もいます。

年齢別では、「許容されており利用している」は40代、「禁止されているが利用したい」は50代に山があり、現役世代ほど利用意向が強い傾向がうかがえます。共働き世帯や日中不在の世帯にとって、置き配は生活上の利便性が高い一方、高齢世帯では防犯面や管理面を重視する傾向があると考えられます。

管理組合としては、置き配を全面的に禁止するか許可するかだけで判断するのではなく、置き場所、時間帯、荷物の大きさ、共用廊下への放置禁止、宅配ボックスとの使い分け、盗難時の責任範囲などを整理したうえで、使用細則に反映することが望まれます。

宅配ボックスは標準設備になりつつある|築年数で広がる設置格差

置き配と並んで、宅配ボックスもマンションの利便性を左右する重要な設備になっています。令和5年度調査では、「竣工当初から設置されている」が49.2%と最も多く、次いで「設置の検討はしていない」が25.3%、「後から設置した」が8.2%となっています。

宅配ボックスの設置台数の平均は8.3台で、完成年次が新しくなるほど平均台数が大きくなる傾向があります。また、設置意向については、「すでに設置されている」が60.6%、「どちらともいえない」が15.9%、「設置したい」が15.5%、「設置したくない」が6.5%となっています。

この結果から、近年のマンションでは宅配ボックスが標準設備に近づいている一方、築年数の古いマンションでは未設置のままになっているケースも多いことが分かります。宅配ボックスの有無は、単なる便利設備ではなく、再配達の削減、置き配トラブルの抑制、防犯、居住者満足度にも関係します。

宅配ボックスの設置状況は?

平成12年から平成16年以降に完成したマンションでは、8割以上が竣工当初から宅配ボックスを設置している傾向があります。比較的新しいマンションでは、宅配ボックスが標準的な設備として位置づけられているといえます。

一方、昭和期に完成したマンションでは、6割以上が設置を検討していないという結果になっています。高経年マンションでは、設置スペースの不足、工事費用、管理費・修繕積立金との優先順位、利用ニーズのばらつきなどが、導入を進めにくい要因になっている可能性があります。

ただし、宅配ボックスを設置しない場合でも、置き配の可否や共用廊下への荷物放置ルールは整理しておく必要があります。設備を導入するかどうかにかかわらず、宅配をめぐるルール整備は避けて通れない課題です。

宅配ボックスの設置台数は?

宅配ボックスの設置台数については、戸数規模別に見ると、一定の傾向が見えてきます。

101戸以上のマンションについて、戸数の下限をもとに単純計算すると、おおむね10戸から16戸に1台程度の宅配ボックスが設置されている計算になります。

具体的には、101〜150戸では約9.8戸に1台、151〜200戸では約11.2戸に1台、201〜300戸では約16.1戸に1台、301〜500戸では約12.1戸に1台、501戸以上では約12.2戸に1台という水準です。

大規模マンションやタワーマンションでは、日中不在の現役世代が多いこと、住戸数が多く再配達の負担が大きいこと、荷物の受け取り需要が集中しやすいことから、宅配ボックスの重要性は高まります。

ただし、台数が多ければ十分というわけではありません。利用率、荷物の滞留時間、大型荷物への対応、管理員による運用、故障時の対応なども含めて考える必要があります。

宅配ボックスの設置意向は?

宅配ボックスの設置意向を見ると、「設置したくない」と「どちらともいえない」を合わせて、約4分の1が積極的ではない回答となっています。すでに設置されているマンションが増えている一方で、未設置マンションでは導入に慎重な層も一定数存在します。

世帯主の年齢別に見ると、高年齢世代になるほど「設置したくない」「どちらともいえない」という傾向が強くなっています。宅配ボックスをあまり利用しない世帯にとっては、設置費用や維持管理費を負担してまで導入する必要性を感じにくい可能性があります。

管理組合で宅配ボックスの設置を検討する場合は、単に「便利だから導入する」という進め方ではなく、利用ニーズ、設置費用、維持管理費、設置場所、防犯効果、置き配トラブルの抑制効果などを整理し、利用しない区分所有者にも納得しやすい説明を行うことが重要です。

建物は維持できるのか|長期修繕計画と修繕積立金に表れた管理組合の課題

ここからは、マンションの将来を左右する建物・設備の維持管理について確認します。マンションは、築年数が進めば必ず外壁、防水、給排水管、エレベーター、電気設備、機械式駐車場などに修繕や更新が必要になります。

そのときに重要になるのが、長期修繕計画と修繕積立金です。計画がなければ将来の工事を見通せず、積立金が不足すれば必要な修繕を先送りせざるを得ません。今回の調査では、長期修繕計画の作成率は高い一方で、修繕積立金の不足も一定程度発生していることが分かります。

つまり、これからの管理組合に問われるのは、「計画があるか」だけではなく、「その計画を実行できるだけの資金と合意形成力があるか」です。

長期修繕計画は作られているか|作成率88.4%でも安心できない理由

令和5年度調査では、長期修繕計画を作成している管理組合の割合は88.4%でした。前回調査の90.9%からは若干低下していますが、全体としては多くの管理組合で長期修繕計画が作成されていることが分かります。

ただし、ここで注意すべきなのは、長期修繕計画が「ある」ことと、その内容が実態に合っていることは別問題だという点です。計画が古いまま見直されていなかったり、工事費の高騰を十分に反映していなかったり、修繕積立金の改定と連動していなかったりすれば、計画が存在していても実効性は弱くなります。

今回の調査では、長期修繕計画の作成率そのものは高いものの、後述するように、計画上の積立額に対して現在の修繕積立金が不足しているマンションも一定数存在します。つまり、管理組合にとって重要なのは「長期修繕計画を作ったか」ではなく、「その計画が今の工事費、建物状態、積立金水準に合っているか」です。

長期修繕計画は30年以上が標準へ|短い計画では将来費用を見落とす

国土交通省は、長期修繕計画の計画期間について、従来の25年以上から、2回の大規模修繕工事を含む30年以上を基本とする考え方を示しています(令和3年9月28日)。令和5年度調査では、「30年以上」が72.7%と最も多く、次いで「25〜29年」が6.2%となっています。また、計画期間30年以上の割合は、前回調査の60.0%から増加しています。

形態別では、計画期間30年以上の割合は単棟型で75.9%、団地型で64.9%となっており、単棟型の方が高い結果です。完成年次が新しいマンションほど計画期間が長くなる傾向も見られます。

長期修繕計画の期間が短いと、2回目以降の大規模修繕、給排水管更新、エレベーター更新、機械式駐車場更新、防水工事、建具・金物更新など、将来大きな費用がかかる工事を十分に見込めない可能性があります。特に築古マンションや団地型マンションでは、建物や設備の更新周期が重なりやすく、30年以上の視点で資金計画を立てることが重要です。

管理組合としては、計画期間が何年になっているかを確認するだけでなく、その中にどの工事項目が含まれているか、工事費単価が現在の水準に合っているか、修繕積立金の改定計画と連動しているかまで確認する必要があります。

長期修繕計画は5年ごとに見直しているか

長期修繕計画は、一度作成すれば終わりではありません。建物の劣化状況、工事費の高騰、資材価格、人件費、設備更新の必要性、法改正などに応じて、定期的に見直す必要があります。

令和5年度調査では、「5年毎を目安に定期的に見直している」が63.2%と最も多く、前回調査の56.3%から増加しています。また、「修繕工事実施直後に、工事の結果を踏まえて見直しを行っている」が9.9%、「修繕工事実施直前に、工事計画の検討と併せて見直しを行っている」が9.4%となっています。見直しを行っていないマンションは3.7%で、前回の5.7%から減少しています。

5年ごとの見直しが広がっていることは前向きに評価できます。しかし、管理組合としては「見直した」という事実だけで安心してはいけません。重要なのは、見直しによって工事費の上昇、修繕積立金の不足、工事項目の追加、設備更新時期の前倒しなどが適切に反映されているかです。

特に近年は、大規模修繕工事費や設備更新費が上昇しやすくなっています。前回の計画を形式的に更新するだけでは、将来必要になる資金を十分に確保できない可能性があります。理事会や修繕委員会は、見直し結果を総会資料として分かりやすく説明し、必要に応じて修繕積立金の改定もあわせて検討する必要があります。

長期修繕計画は国交省ガイドラインに沿っているか

長期修繕計画作成ガイドラインへの準拠状況については、「準拠している」が72.8%となっています。また、完成年次が新しいマンションほど、ガイドラインに準拠している割合がやや高い傾向があります。

ガイドラインに準拠していることは、長期修繕計画の一定の信頼性を判断する材料になります。ただし、ガイドラインに沿っているからといって、そのマンション固有の課題がすべて反映されているとは限りません。海沿い、斜面地、寒冷地、機械式駐車場の有無、エレベーターの台数、給排水管の劣化状況、外壁仕様、過去の修繕履歴などによって、必要な修繕内容や時期は変わります。

管理組合としては、長期修繕計画を確認する際に、ガイドライン準拠の有無だけでなく、自分たちのマンションの実態に合っているかを確認することが重要です。特に、見直し時には、過去の大規模修繕工事の結果、今後の設備更新、修繕積立金の残高、借入の有無、工事費の上昇を踏まえて、現実的な計画に更新する必要があります。

長期修繕計画の見直しポイントについては、別記事でも詳しく解説しています。計画を作成している管理組合であっても、見直しが不十分であれば、将来の資金不足や工事先送りにつながる可能性があります。

修繕積立金はいくら積み立てているのか|平均額だけでは見えない不足リスク

駐車場使用料等からの充当額を含む月/戸当たり修繕積立金

修繕積立金について、駐車場使用料等からの充当額を含む月1戸当たりの平均額は13,378円となっています。形態別では、単棟型が13,300円、団地型が13,535円です。

※駐車場使用料等からの充当額を含む月/戸当たり修繕積立金データ

また、調査年度ごとの推移を見ると、1戸当たりの修繕積立金は上昇傾向にあります。これは、長期修繕計画の見直し、工事費の上昇、大規模修繕への備え、国土交通省のガイドラインの影響などにより、管理組合が修繕積立金の水準を見直してきた結果と考えられます。

※駐車場使用料等からの充当額を含む月/戸当たり修繕積立金データの推移

ただし、平均額が上がっているからといって、すべてのマンションで十分な修繕積立金が確保されているわけではありません。修繕積立金の適正額は、築年数、戸数、建物形状、設備内容、機械式駐車場の有無、エレベーター台数、過去の修繕履歴によって大きく変わります。平均額との比較だけで判断せず、自分のマンションの長期修繕計画に対して不足していないかを確認する必要があります。

駐車場使用料等からの充当額を除く月/戸当たり修繕積立金

一方、駐車場使用料等からの充当額を除いた月1戸当たりの修繕積立金は平均13,054円で、形態別では単棟型が13,041円、団地型が12,923円となっています。駐車場使用料等を含む場合と除く場合で大きな差がないことから、修繕積立金への充当額は限定的であることがうかがえます。

※駐車場使用料等からの充当額を除く月/戸当たり修繕積立金データ

駐車場使用料等を修繕積立金にどの程度充当しているかは、マンションごとの管理規約や会計処理によって異なります。標準管理規約第29条(使用料)では、駐車場使用料その他の敷地及び共用部分等に係る使用料について、それらの管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てる考え方が示されています。

しかし、実際には、駐車場使用料を管理費会計に充当しているマンションも少なくありません。特に機械式駐車場があるマンションでは、駐車場使用料を日常の保守点検費や修繕費に充てる必要があり、必ずしも将来の大規模修繕資金として十分に積み立てられているとは限りません。

管理組合としては、駐車場使用料が管理費会計に入っているのか、修繕積立金会計に入っているのか、駐車場設備の将来更新費用をどの会計で見込んでいるのかを確認する必要があります。駐車場使用料に依存して管理費を抑えているマンションでは、駐車場契約率が下がったときに管理費会計が苦しくなるリスクもあります。

修繕積立金を見る際には、月額の平均だけでなく、駐車場使用料の扱い、会計区分、将来の設備更新費まで確認することが重要です。

築年数で変わる修繕積立金|築20〜30年で負担が重くなりやすい理由

完成年次別に見ると、平成7年から平成16年に完成した、築20〜30年前後のマンションで修繕積立金の額が高くなっている傾向があります。この時期のマンションでは、1回目の大規模修繕を終え、2回目の大規模修繕や設備更新を見据える段階に入っていることが影響していると考えられます。

新築時の修繕積立金は、購入者の月々負担を軽く見せるために低めに設定されていることがあります。その後、築年数が進むにつれて段階的に修繕積立金を引き上げる「段階増額方式」が採用されているマンションでは、築20年、築30年に近づくにつれて負担が大きくなりやすくなります。

このデータから読み取るべき重要な点は、築浅時代の修繕積立金の安さは、必ずしもメリットではないということです。初期設定が低すぎれば、後年になって大幅な値上げが必要になり、区分所有者の合意形成が難しくなります。

管理組合としては、築年数が浅いうちから長期修繕計画と修繕積立金の整合性を確認し、必要な値上げを先送りしないことが重要です。問題が表面化してから大幅に引き上げるよりも、早期に段階的な見直しを行う方が、合意形成の負担を小さくできます。

修繕積立金は長期修繕計画に基づいて決められているか

修繕積立金の額をどのように決めているかを見ると、「長期修繕計画で算出された必要額に基づき決めた」が78.4%と最も多く、前回調査の72.5%から増加しています。修繕積立金制度がある管理組合のうち、計画期間25年以上の長期修繕計画に基づいて修繕積立金を設定している割合は62.4%となっています。

また、過去5年以内に新築したマンションでは、計画期間30年以上の長期修繕計画に基づいて修繕積立金を設定している割合が75.3%で、前回調査の43.3%から大きく増加しています。国土交通省のガイドライン改定により、30年以上の計画に基づいて修繕積立金を考える意識が広がっていると考えられます。

この傾向自体は前向きです。修繕積立金は、何となく周辺相場や前年度水準で決めるものではなく、長期修繕計画で見込まれる将来工事費に基づいて決めるべきものだからです。

ただし、長期修繕計画に基づいていると回答していても、その計画自体が古かったり、工事費高騰を反映していなかったり、必要な設備更新が抜けていたりすれば、修繕積立金の額も不十分になります。つまり、修繕積立金を長期修繕計画に基づいて決めているかだけでなく、その長期修繕計画が現実的かどうかが重要です。

管理組合としては、修繕積立金の改定を検討する際に、単に「値上げが必要です」と説明するのではなく、長期修繕計画上の必要額、現在の積立残高、将来の工事項目、現行額を維持した場合の不足額を、区分所有者に分かりやすく示す必要があります。

段階増額方式が多い現実|将来の値上げを先送りしていないか

現在の修繕積立金の積立方式を見ると、均等積立方式が40.5%、段階増額積立方式が47.1%となっています。完成年次別では、新しいマンションほど段階増額積立方式の割合が高い傾向があります。

段階増額方式は、新築時や購入当初の月々負担を抑えやすい一方で、将来の値上げを前提とした仕組みです。計画通りに値上げできればよいものの、実際には区分所有者の理解が得られず、必要な増額が先送りされるリスクがあります

一方、均等積立方式は、長期的に必要な修繕費を平準化して積み立てる考え方です。国土交通省も、将来の急激な負担増を避ける観点から、均等積立方式を推奨する方向を示しています。

今回のデータから見えるのは、新築マンションほど、購入時の負担感を抑えるために段階増額方式が採用されやすいという現実です。しかし、修繕積立金の本来の目的は、将来の修繕に必要な資金を確保することです。購入時に安く見えることよりも、将来必要な工事費を無理なく積み立てられるかが重要です。

管理組合としては、段階増額方式を採用している場合、次回以降の値上げ時期、値上げ幅、総会での合意形成方法を早めに確認しておく必要があります。値上げ時期が近づいてから議論を始めるのではなく、長期修繕計画の見直しとあわせて、区分所有者に段階的に情報共有することが重要です。

修繕積立金が不足しているマンションは36.6%|計画があっても資金が足りない現実

今回の調査で最も重要なポイントの一つが、修繕積立金の積立状況です。計画上の修繕積立金の積立額と現在の積立額を比較すると、現在の積立額が計画に比べて不足しているマンションは36.6%となっています。また、不足割合が20%を超えるマンションも11.7%あります。

これは、長期修繕計画を作成していても、実際の積立額が計画に追いついていない管理組合が一定数存在することを示しています。計画があることと、その計画に必要な資金が確保されていることは別問題です。

さらに注意すべきなのは、「不明」と回答している管理組合が一定数ある点です。自分たちの修繕積立金が計画に対して足りているのか、不足しているのかを把握できていない場合、必要な値上げや計画見直しが遅れる可能性があります。

修繕積立金の不足は、単なる会計上の問題ではありません。大規模修繕工事の延期、工事項目の削減、一時金徴収、借入、修繕積立金の急激な値上げなど、区分所有者の生活と資産価値に直接影響します。特に高経年マンションでは、建物の劣化が進む一方で、区分所有者の高齢化により大幅な値上げへの合意形成が難しくなることもあります。

管理組合としては、まず現在の修繕積立金残高が長期修繕計画上の必要額に対して足りているのかを確認する必要があります。不足がある場合は、工事費の見直し、修繕積立金の改定、工事項目の優先順位、一時金や借入の可能性まで含めて、早めに検討することが重要です。

管理費や修繕積立金の値上げを検討する際の確認ポイントについては、別記事でも詳しく解説しています。値上げは避けたいテーマですが、必要な修繕を先送りすれば、将来さらに大きな負担となって返ってくる可能性があります。

大規模修繕では何が行われているのか|外壁・防水だけでは終わらない修繕課題

大規模な計画修繕工事で実施された工事項目を見ると、「外壁塗装工事」が87.1%と最も多く、次いで「屋上防水工事」が75.0%、「床防水工事」が61.6%となっています。いわゆる大規模修繕工事の中心となる外壁、防水、床まわりの工事が上位を占めています。

また、直近の大規模修繕工事と同時に実施した修繕工事では、「鉄部塗装等工事」が81.6%と最も多く、次いで「建具・金物等工事」が35.6%、「共用内部工事」が29.1%となっています。

ここから分かるのは、大規模修繕工事は単なる外壁塗装イベントではないということです。外壁、防水、鉄部、建具、金物、共用部など、建物全体の劣化状況を確認し、限られた予算の中でどこまで同時に実施するかを判断する総合的な工事です。

特に近年は、工事費の高騰により、長期修繕計画で予定していた工事をすべて実施できないケースも想定されます。管理組合としては、劣化診断の結果を踏まえ、今すぐ実施すべき工事、数年先送りできる工事、仕様を見直せる工事を整理し、修繕積立金の残高と照らして判断する必要があります。

大規模修繕は、施工会社に任せれば自動的に適正化されるものではありません。理事会や修繕委員会が、工事項目、見積内容、仕様、数量、工期、保証内容、追加工事の発生可能性を理解しながら進めることが重要です。

省エネ改修は進んでいるのか|LED化の次に問われる断熱・設備更新

省エネ改修工事については、実施したことが「ある」が27.9%、「ない」が63.3%となっています。実施した省エネ改修工事の内容では、「照明器具のLED化」が94.6%と圧倒的に多く、次いで「サッシの省エネ化」が8.6%、「昇降機設備の高効率化」が7.4%となっています。

この結果を見ると、マンションの省エネ改修は、現時点ではLED化が中心であり、サッシや玄関ドア、エレベーターなど、建物性能や設備更新に関わる本格的な省エネ改修はまだ限定的です。

省エネ改修を実施した経験のない管理組合のうち、「検討したことはない」が56.4%となっている点も重要です。省エネ改修は、光熱費の削減、居住性の向上、断熱性の改善、資産価値の維持につながる可能性がありますが、管理組合の優先順位としては、外壁、防水、給排水管、エレベーターなどの基本的な修繕より後回しになりやすいと考えられます。

比較的新しいマンションでは、当初から一定の省エネ性能を備えているため、改修の必要性を感じにくい面があります。一方、高経年マンションでは、省エネ改修の必要性を感じていても、工事費、合意形成、補助金活用、専有部分との関係などが障壁になり、実施まで進まないケースがあると考えられます。

省エネ改修の中心がLED化に留まっている一方で、今後は高経年マンションを中心に、サッシや玄関ドアの断熱改修、エレベーターの高効率化、共用部照明の制御、給湯・空調設備の見直しなどが課題になる可能性があります。

特にサッシや玄関ドアは、共用部分に該当するケースが多く、個々の区分所有者が自由に交換できるものではありません。管理規約、使用細則、総会決議、補助金制度、施工方法、費用負担の整理が必要になります。

窓ガラスやサッシ交換については、別記事でも詳しく解説しています。断熱性や防音性の向上、光熱費削減の効果が期待できる一方で、共用部分としての扱いや管理組合決議の要否には注意が必要です。

バリアフリー改修は進んでいるか|高齢化するマンションで避けられない課題

バリアフリー改修工事については、実施したことが「ある」が19.5%、「ない」が71.6%となっています。実施した工事内容では、「手すりの設置」が77.7%と最も多く、次いで「スロープの設置」が53.5%、「滑りにくい床材への変更」が32.3%となっています。

マンション居住者の高齢化が進む中で、バリアフリー改修は今後ますます重要になります。エントランス、共用廊下、階段、集会室、駐車場、駐輪場、ごみ置場までの動線など、日常生活で使う共用部分に段差や危険箇所があれば、高齢者や障害のある居住者にとって大きな負担になります。

一方で、バリアフリー改修は、費用対効果を数字で示しにくい工事でもあります。外壁や防水のように建物劣化を直接防ぐ工事ではないため、管理組合内で優先順位が下がりやすい面があります。しかし、住み続けられるマンションを作るという観点では、手すり、スロープ、滑りにくい床材、エレベーター設置・更新などは、将来の居住継続性に関わる重要な投資です。

管理組合としては、事故が起きてから対応するのではなく、居住者の年齢構成、共用部分の段差、雨天時の滑りやすさ、夜間照明、避難経路などを点検し、長期修繕計画や修繕積立金の中でどのように位置づけるかを検討する必要があります。

旧耐震マンションは診断・改修できているのか

こちらの耐震改修に関する傾向についてです。

回答マンションの約2割が旧耐震基準と見られる

耐震診断・耐震改修の状況を確認する前提として、回答マンションにおける旧耐震基準と新耐震基準の割合を見ると、旧耐震基準のマンションは19.1%、新耐震基準のマンションは73.1%、不明は7.8%となっています。

旧耐震基準は、一般に昭和56年5月31日以前に建築確認を受けた建物が対象となるため、築年数の古いマンションほど耐震性の確認が重要になります。回答データ上は、おおむね2割程度が旧耐震基準に該当する可能性があると考えられます。

ここで重要なのは、旧耐震だから直ちに危険、新耐震だから絶対に安心という単純な話ではないということです。建物の形状、構造、地盤、劣化状況、過去の改修履歴によって耐震性は変わります。管理組合としては、自分たちのマンションがどの基準で建てられ、耐震診断を実施しているかを正確に把握する必要があります。

耐震診断、耐震改修の実施状況は?

旧耐震基準に基づき建設されたマンションのうち、耐震診断を行ったマンションは31.6%となっています。そのうち「耐震性があると判断された」割合は17.1%です。

一方、「耐震性がないと判断された」マンションのうち、耐震改修を「実施した」は45.8%、「まだ実施していないが今後実施する予定」は29.2%、「耐震改修を実施する予定はない」は25.0%となっています。

この結果から分かるのは、耐震診断を実施しても、耐震改修まで進むとは限らないという現実です。耐震改修には多額の費用がかかり、工事内容によっては共用部分や専有部分の使い勝手にも影響します。合意形成、資金確保、工事中の生活影響、補助金活用など、多くのハードルがあります。

ただし、耐震性の不安を抱えたまま放置すれば、大規模地震時の被害リスクだけでなく、売却時の評価、融資、保険、将来の建替え・敷地売却の議論にも影響する可能性があります。管理組合としては、まず自分たちのマンションが旧耐震か新耐震か、耐震診断を実施済みか、診断結果を区分所有者に共有しているかを確認することが第一歩です。

なお、調査データの細部には、完成年次と旧耐震基準の関係について確認が必要に見える部分もあります。そのため、個別マンションで判断する際には、調査上の分類だけに頼らず、建築確認日、竣工時期、構造図書、過去の診断履歴を確認することが重要です。

老朽化問題を議論している管理組合は25.8%にとどまる

マンションの老朽化問題について対策を議論した管理組合は25.8%にとどまり、議論を行っていない管理組合は66.1%となっています。老朽化が将来的な課題であることは多くの管理組合が認識しているはずですが、実際に議論まで進んでいる管理組合は限られています。

さらに、議論を行った管理組合のうち、建替え・解体等または修繕・改修の方向性が出た管理組合は51.5%である一方、議論は行ったものの方向性が出ていない管理組合は43.4%となっています。

つまり、議論を始めても、具体的な方針決定まで進むとは限らないということです。

完成年次別に見ても、建替えを含めて検討した割合は限られています。高経年マンションであっても、建替えは簡単に選べる選択肢ではありません。建替えには、合意形成、建築規制、容積率、事業採算、仮住まい、追加負担、権利調整など、極めて大きなハードルがあります。

このデータから読み取るべきことは、老朽化問題を「いつか建替えればよい」と考えるのは危険だということです。多くのマンションでは、現実的には建替えよりも、修繕・改修を重ねながら長く使い続ける方向が中心になります。

そのため、管理組合には、老朽化が深刻化してから議論するのではなく、築30年、築40年の段階から、修繕、改修、耐震、バリアフリー、省エネ、資金計画を一体で考える姿勢が求められます。

耐震性に不安を感じながらも動けない区分所有者

耐震性については、42.7%の区分所有者が何らかの不安を感じているとされています。その内訳を見ると、「地震の不安はあるが、今のままで仕方ない」が全体の19.8%、「大規模な地震の場合は被害を受けると思うので不安だ」が14.2%、「耐震性が確保されているかわからないので不安だ」が8.7%となっています。

ここで注目すべきなのは、「不安はあるが、今のままで仕方ない」という回答が一定数あることです。耐震性に不安を感じていても、診断や改修には費用がかかり、合意形成も簡単ではありません。そのため、問題を認識しながらも具体的な対策に進めない管理組合が存在すると考えられます。

地域別には、大規模地震への不安が強い地域や、「今のままで仕方ない」と考える傾向が強い地域も見られます。ただし、地震リスクは特定地域だけの問題ではありません。旧耐震マンションや耐震診断未実施のマンションでは、地域にかかわらず、まず自分たちの建物の耐震性を把握することが重要です。

管理組合としては、耐震性について漠然と不安を抱えるだけでなく、耐震診断の有無、診断結果、改修の必要性、補助金制度、資金計画を整理し、区分所有者に共有する必要があります。

多くの区分所有者は建替えより修繕・改修を選んでいる

区分所有者の建替えの必要性に対する考えを見ると、「建替えが必要である」は2.4%にとどまっています。一方、「修繕工事又は改修工事さえしっかり実施すれば建替えは必要ない」が36.4%、「今のところ建替えは必要ない」が54.3%となっています。

この結果から、多くの区分所有者は、現時点では建替えよりも修繕・改修によってマンションを維持していく方向を考えていることが分かります。これは現実的な感覚ともいえます。建替えは、法的な合意形成だけでなく、資金負担、仮住まい、事業採算、権利調整、建築規制など、多くのハードルを伴うためです。

一方で、「今のところ建替えは必要ない」という意識が強すぎると、老朽化対策そのものが先送りされるリスクもあります。建替えをしないのであれば、なおさら修繕・改修によって建物を長く使い続けるための計画が必要です。

管理組合は機能しているのか|総会・理事会・担い手不足から見る現実

マンション管理の本当の難しさは、建物や設備だけではありません。管理組合という組織が、総会を開き、理事会で議論し、必要な決議を行い、区分所有者に説明し、トラブルや滞納にも対応していく必要があります。

長期修繕計画や修繕積立金がどれほど重要であっても、それを実行するのは管理会社ではなく、最終的には管理組合です。理事会が機能しなければ、値上げも、規約改正も、大規模修繕も、防災対策も進みません。

ここからは、管理者・監事、総会、理事会、専門委員会などのデータを通じて、管理組合がどのように運営されているのかを確認します。

管理者と監事は誰が担っているのか|第三者管理はまだ少数派

管理者の選任状況を見ると、92.1%が管理組合代表者であり、区分所有者以外の第三者が管理者となっているマンションは3.7%となっています。監事についても、97.7%が区分所有者であり、区分所有者以外の第三者が監事となっているマンションは1.1%にとどまっています。

この結果から見る限り、多くのマンションでは、理事長や監事を区分所有者の中から選任する従来型の運営が中心です。近年は、役員のなり手不足や高齢化を背景に、外部専門家や管理会社が管理者となる第三者管理者方式への関心も高まっていますが、実際の普及はまだ限定的といえます。

ただし、第三者管理者方式が少ないからといって、区分所有者による管理組合運営が十分に機能しているとは限りません。理事長や監事が形式的に選任されていても、実際には管理会社任せになっていたり、監事によるチェックが十分に機能していなかったりするケースも考えられます。

管理組合として重要なのは、誰が管理者や監事に就いているかだけではなく、その役割を理解し、理事会・総会・会計・契約・修繕計画を適切に確認できているかです。第三者管理者方式を採用するかどうかにかかわらず、管理組合側に最低限の監督力がなければ、健全な運営は難しくなります。

総会は年1回開催が基本|ただし開催だけでは十分ではない

総会の開催状況を見ると、「年に1回開催している」が89.9%と最も多く、「年に2回以上開催している」は6.4%となっています。完成年次にかかわらず、通常総会を年1回開催する形が一般的です。

総会は、決算、予算、役員選任、管理委託契約、大規模修繕、修繕積立金の改定、管理規約の変更など、管理組合の重要事項を決定する場です。年1回の開催自体は標準的ですが、議案の内容が十分に説明されているか、区分所有者が理解できる資料になっているか、質疑の機会が確保されているかが重要です。

特に、修繕積立金の値上げ、管理費の値上げ、大規模修繕工事、規約改正のように区分所有者の負担や権利に関わる議案では、総会当日だけで理解を得るのは難しい場合があります。理事会は、総会前から資料配布や説明会を通じて、区分所有者に判断材料を提供する必要があります。

総会出席率88.5%の裏側|実際に出席している人は24.6%

直近の通常総会への区分所有者の出席割合を見ると、委任状及び議決権行使書提出者を含む場合の平均は88.5%となっています。一見すると、非常に高い参加率に見えます。

しかし、委任状及び議決権行使書提出者を除いた実際の出席割合は、平均24.6%にとどまっています。形態別では、単棟型が26.0%、団地型が17.5%です。また、総戸数規模が大きくなるほど、実際に総会へ出席する割合は低くなる傾向があります。

この差は、管理組合運営の実態を考えるうえで非常に重要です。議決権行使書や委任状によって総会決議が成立していても、実際に議案内容を理解し、質疑に参加し、管理組合の課題を共有している区分所有者は限られる可能性があります。

高経年マンションでは、委任状や議決権行使書を含めた出席率が高くなる傾向があります。築年数が進むほど、大規模修繕、修繕積立金、建物不具合、管理規約、滞納、老朽化対策など、区分所有者にとって身近で切実な議案が増えるため、関心が高まりやすいと考えられます。

一方、委任状や議決権行使書を除いた実際の出席状況では、20階建て以上のタワーマンションで出席率が低い傾向が見られます。タワーマンションでは戸数が多く、居住者の属性も多様で、投資用・賃貸化・多忙な現役世代なども重なり、総会に直接参加する人が限られやすいと考えられます。

管理組合としては、総会への実出席率が低いことを単に「無関心」と片付けるのではなく、参加しやすい仕組みを整える必要があります。事前説明資料の充実、議案ごとの分かりやすい要約、オンライン説明会、質問受付、議決権行使書の改善などにより、総会当日に出席できない区分所有者にも判断材料を届ける工夫が求められます。

委任状と議決権行使書の使われ方|総会決議はどのように成立しているか

総会決議の方法を見ると、委任状の提出割合の平均は28.9%、議決権行使書の提出割合の平均は35.6%となっています。委任状よりも、区分所有者自身が議案ごとに賛否を示す議決権行使書の方がやや高い割合となっています。

委任状は、議長や特定の代理人に議決権行使を任せる方法です。一方、議決権行使書は、区分所有者が各議案に対して賛成・反対を直接示す方法です。管理組合の意思決定の透明性という点では、議決権行使書の活用が進むことは望ましい面があります。

ただし、議決権行使書を提出していても、議案の内容を十分に理解したうえで判断しているとは限りません。特に、長期修繕計画、修繕積立金の値上げ、管理規約の変更、大規模修繕工事の発注などは、資料が難しくなりがちです。

理事会は、議決権行使書を集めることだけを目的にするのではなく、区分所有者が判断しやすい資料づくりを行う必要があります。議案の背景、選択肢、メリット・デメリット、費用負担、否決された場合の影響を分かりやすく説明することで、形式的な決議から実質的な合意形成に近づけることができます。

理事会はどれくらい開かれているか|高経年・大規模ほど負担は重くなる

理事会の開催状況を見ると、「月に1回程度開催している」が35.7%と最も多く、次いで「2ヶ月に1回程度開催している」が27.3%となっています。月1回程度の理事会開催が、一定数の管理組合で一般的に行われていることが分かります。

また、「月に1回程度開催している」の割合は、完成年次が古くなるほど、総戸数規模が大きくなるほど高くなる傾向があります。形態別では、単棟型が28.6%であるのに対し、団地型は75.2%と高い割合です。

これは、築年数が進むほど建物不具合、修繕、滞納、規約見直し、居住者対応などの議題が増え、大規模マンションや団地型マンションほど、調整すべき事項が多くなるためと考えられます。

団地型マンションでは、複数棟、広い敷地、集会所、駐車場、植栽、道路、外灯、自治会との関係など、単棟型よりも管理対象が広くなりやすいため、理事会で扱う議題も増えます。タワーマンションでも、共用施設、エレベーター、防災設備、内廊下、機械式駐車場、セキュリティなど、管理すべき設備が多くなります。

理事会の開催頻度が高いこと自体は、管理組合が活発に運営されている証拠ともいえます。しかし一方で、役員の負担が重くなりすぎると、次の担い手が見つからない、現役世代が役員を避ける、特定の人に負担が集中する、といった問題にもつながります。

管理組合としては、理事会を頻繁に開催するだけでなく、議題整理、事前資料配布、専門委員会の活用、オンライン会議、管理会社との役割分担、決裁ルールの明確化などにより、理事会運営の効率化を進めることが重要です。

専門委員会を設置しているか|大規模修繕を理事会だけで抱え込まない

専門委員会の設置状況を見ると、「設置していない」が52.5%となっています。一方で、総戸数規模が大きくなるほど、専門委員会を設置している割合は高くなる傾向があります。

設置されている専門委員会の種類では、「大規模修繕や長期修繕計画に関する委員会」が86.7%と最も多く、次いで「防災に関する委員会」が19.6%、「規約・細則の制定や見直しに関する委員会」が15.0%となっています。単棟型と団地型を比較すると、団地型の方が各専門委員会の設置率が高い傾向があります。

専門委員会の中でも、大規模修繕や長期修繕計画に関する委員会が多いのは自然な結果です。大規模修繕工事は、調査診断、設計、施工会社選定、見積比較、工事説明、追加工事、住民対応など、理事会だけで十分に検討するには負担が重いテーマだからです。

築年数が浅いマンションでは、まだ大規模修繕工事が近づいていないため、専門委員会を設置していないケースも多いと考えられます。ただし、長期修繕計画の見直しや修繕積立金の改定は、築浅の段階から始めるべきテーマです。大規模修繕直前になってから慌てて委員会を作るのではなく、早めに情報を蓄積しておくことが重要です。

一方で、高経年マンションであっても専門委員会を設置していない管理組合はあります。その場合、理事会が修繕、規約、防災、滞納、居住者トラブルなどをすべて抱え込むことになり、役員の負担が大きくなりやすくなります。

専門委員会は、理事会の権限を奪うものではありません。理事会の諮問機関として、特定テーマについて調査・検討し、理事会に報告・提案する役割を担います。最終的な意思決定は理事会や総会で行うとしても、専門委員会を活用することで、議論の質を高め、理事会の負担を分散できます。

専門委員会の立ち上げ方や運営上の注意点については、別記事・動画でも解説しています。大規模修繕、長期修繕計画、防災、規約改正など、継続的な検討が必要なテーマでは、理事会だけで抱え込まず、専門委員会を活用することが有効です。

組合員名簿は整備されているか|所有者・居住者・緊急連絡先の把握が管理組合を支える

組合員名簿、居住者名簿、緊急連絡先は、管理組合運営の基礎となる情報です。令和5年度調査では、組合員名簿を整備している管理組合は86.0%であり、そのうち「変更があるたび都度更新している」または「1年に1回以上定期的に内容の確認を行っている」割合は68.7%となっています。

また、居住者名簿を整備している管理組合は82.8%であり、「変更があるたび都度更新している」または「1年に1回以上定期的に内容の確認を行っている」割合は60.9%です。緊急連絡先については、81.7%の管理組合が整備している一方で、「変更があるたび都度更新している」または「1年に1回以上定期的に内容の確認を行っている」割合は51.3%にとどまっています。

この結果から、多くの管理組合で名簿類は整備されているものの、更新頻度には差があることが分かります。特に緊急連絡先は、漏水、火災、災害、安否確認、専有部分内の不具合などが発生した際に重要になりますが、組合員名簿や居住者名簿に比べて更新状況が弱い点は注意が必要です。

一方で、組合員名簿、居住者名簿、緊急連絡先のいずれも、総戸数規模が小さいほど整備していない割合が高くなる傾向があります。小規模マンションでは、顔が見える関係だから大丈夫と考えがちですが、相続、賃貸化、所有者の転居、長期不在が発生すると、正式な名簿がないことが大きなリスクになります。

組合員名簿の閲覧については、「閲覧理由が妥当な場合は閲覧できる」が37.1%、「請求があれば閲覧できる」が16.9%、「配布しているので閲覧の必要がない」が3.0%で、合計57.0%の管理組合では組合員名簿を確認できる体制があります。一方、閲覧を認めていない管理組合も38.2%あります。

組合員名簿は、単なる一覧表ではありません。管理組合が「誰に通知し、誰と合意形成し、誰に費用負担を求めるのか」を確認するための基礎資料です。居住者名簿や緊急連絡先も含めて、作成して終わりではなく、定期的に更新し、閲覧ルールや個人情報管理の方法を明確にしておく必要があります。

大規模災害への備えは進んでいるか|防災訓練・情報共有・安否確認の現実

大規模災害への対応状況を見ると、「消防設備等の点検を実施している」が69.5%と最も多く、次いで「定期的に防災訓練を実施している」が39.8%となっています。また、総戸数規模が大きくなるほど、何らかの災害対応策を実施している割合が高くなる傾向があります。

消防設備等の点検は、法令に基づく点検と関係する部分も多く、マンション管理における基本的な安全管理です。一方、防災訓練を定期的に実施している管理組合は約4割にとどまっており、訓練まで継続的に行えている管理組合は限られることが分かります。

災害対応で重要なのは、設備点検だけではありません。地震や台風、豪雨、停電、断水が発生したときに、誰が安否確認を行うのか、エレベーター停止時にどう対応するのか、給水やトイレの問題をどうするのか、要配慮者をどう支援するのか、管理会社や自治会とどう連携するのかを事前に決めておく必要があります。

調査年度ごとの傾向を見ると、令和5年度では「防災・災害対応策に関する情報を収集・周知している」と回答した管理組合が、平成30年度よりも約7ポイント増加しています。また、「特に何もしていない」と回答した管理組合は11.6%で、平成30年度よりも約12ポイント減少しています。災害対応への意識は高まっているといえます。

ただし、情報収集や周知だけでは、実際の災害時に機能するとは限りません。防災マニュアル、備蓄品、安否確認方法、緊急連絡網、要配慮者への対応、停電・断水時のルール、防災訓練を組み合わせて、管理組合として実際に動ける体制を作ることが重要です。

法定点検については、別記事でも詳しく解説しています。建築基準法、消防法、水道法などに基づく点検は、災害時の安全性にも関わるため、管理会社任せにせず、理事会として実施状況と報告書の内容を確認しておく必要があります。

専門家はどこまで活用されているか|管理組合が外部知見を使う場面

専門家を活用しているマンションは41.4%となっています。活用した専門家の種類を見ると、「建築士」が15.6%と最も多く、次いで「弁護士」が14.5%、「マンション管理士」と「管理業務主任者」がいずれも13.8%となっています。

専門家の種類を見ると、大規模修繕や長期修繕計画では建築士、管理費等滞納や規約・訴訟対応では弁護士、管理運営や合意形成、管理会社との関係整理ではマンション管理士や管理業務主任者が関わる場面が想定されます。管理組合が抱える課題は、建築、法律、会計、管理運営、防災など多岐にわたるため、テーマに応じて専門家を使い分ける視点が重要です。

活用内容については、「単発のコンサルティング業務」が65.2%と最も多く、次いで「顧問契約」が22.2%、「管理者・理事長への就任」が2.9%となっています。つまり、専門家を常時活用するというよりも、必要な場面で単発的に相談する形が中心です。

一方で、専門家を活用しているマンションは半数に満たないため、多くの管理組合では、管理会社や理事会だけで判断している可能性があります。もちろん、すべての場面で専門家が必要なわけではありません。しかし、修繕積立金の大幅改定、大規模修繕工事、管理規約改正、管理会社変更、滞納長期化、耐震改修、第三者管理者方式の検討などでは、外部専門家の意見が意思決定の質を高める場合があります。

また、外部役員や第三者管理者として専門家を継続的に活用するケースは、現時点ではまだ少数です。多くの管理組合では、困ったときに単発で相談する形が中心になっています。

この背景には、顧問契約や外部役員への報酬負担が重いこと、通常の管理組合運営ではそこまでの必要性を感じていないこと、専門家をどのように選べばよいか分かりにくいことなどがあると考えられます。

ただし、管理組合が専門家を活用する目的は、専門家に丸投げすることではありません。重要なのは、理事会や区分所有者が判断するための材料を増やすことです。専門家は、管理組合の意思決定を代行する存在ではなく、判断の質を高めるための補助線として使うべきです。

特に高経年マンションでは、修繕積立金不足、住民の高齢化、建物の老朽化、耐震、滞納、相続、役員不足などの課題が重なりやすくなります。管理組合だけで抱え込みすぎると、判断が遅れたり、管理会社任せになったりする可能性があります。必要な場面で外部の知見を取り入れながら、最終的な意思決定は管理組合が主体的に行う。この距離感が重要です。

外部役員を求める管理組合が増える理由|高齢化となり手不足の現実

外部役員については、「既に検討している」または「将来必要となれば検討したい」と回答した管理組合が34.6%となっています。

検討理由として最も多かったのは「区分所有者の高齢化」の42.7%であり、次いで「役員のなり手不足」の42.3%となっています。

この結果から見えてくるのは、管理組合運営が建物の問題ではなく、人の問題に直面しているという現実です。

高齢化が進むと、理事や監事を担うことが難しくなる区分所有者が増えます。一方で、現役世代は仕事や子育てで多忙であり、役員就任を敬遠する傾向があります。その結果、一部の区分所有者に役員負担が集中し、さらに次のなり手が減るという悪循環が生じます。

完成年次別のデータでも、高経年マンションほど「高齢化」と「なり手不足」が顕著です。築年数が進むほど、修繕積立金の見直し、大規模修繕、滞納問題、耐震、防災など議題も増えるため、理事会運営の負担は重くなります。

外部役員や第三者管理者方式は、こうした課題への一つの対応策です。しかし重要なのは、外部専門家に任せること自体ではなく、管理組合として意思決定できる体制を維持することです。外部役員は万能ではなく、管理組合の主体性を補完する存在として位置付ける必要があります。

管理組合ではどのようなトラブルが起きているのか

過去1年間に発生したトラブルを見ると、「居住者間の行為・マナーをめぐるもの」が60.5%と最も多く、次いで「建物の不具合に係るもの」が31.7%、「費用負担に係るもの」が24.2%となっています。一方で、「特にトラブルは発生していない」と回答した管理組合は16.0%にとどまっています。

つまり、多くの管理組合では何らかのトラブルが発生していることになります。

マナーに関するトラブルでは、「生活音」が43.6%と最も多く、「違法駐車」が18.2%、「ペット飼育」が14.2%となっています。また、建物の不具合では「水漏れ」が20.1%、「雨漏り」が10.7%であり、費用負担に関するトラブルでは「管理費等の滞納」が20.2%となっています。

マンション管理というと、大規模修繕や修繕積立金が注目されがちですが、実際の現場では日常生活に関わるマナー問題が最も多く発生しています。

そして、その次に建物の不具合や費用負担の問題が続いています。

管理組合運営とは、建物を維持するだけでなく、人間関係や共同生活上のルールを調整する役割も担っていることが、この調査からよく分かります。

トラブルは減っているのか|過去調査との比較

調査年度ごとの推移を見ても、居住者間のマナー問題と建物の不具合が一貫して上位を占めています。注目すべきは、「特にトラブルなし」の割合が低下していることです。これは、マンション管理が難しくなっていることを示唆している可能性があります。

高齢化、賃貸化、ライフスタイルの多様化、ペット飼育世帯の増加などにより、共同生活上の課題は以前より複雑になっています。

また、築年数の経過によって建物不具合も増加するため、管理組合は「建物」と「人」の両方の課題に対応しなければならない状況になっています。

築年数が進むとトラブルはどう変化するのか

完成年次別に見ると、マナーに関するトラブルは築年数にかかわらず高い水準で発生しています。一方で、建物の不具合については、高経年マンションほど発生割合が高くなる傾向があります。これは自然な結果であり、築年数が進めば設備や配管、外壁、防水などの劣化リスクが高まるためです。

さらに、高経年マンションでは、マナー問題、建物不具合、費用負担、管理規約に関する問題など、複数の課題が同時に発生する傾向があります。

つまり、高経年マンションの管理組合は、一つの問題に対応するだけでなく、複数の課題を並行して処理する運営能力が求められていると言えるでしょう。

どのようなトラブルが発生しているのか|築年数で異なる管理課題

トラブルの内容を詳しく見ると、築年数によって発生しやすい問題に違いが見られます。

とりわけ居住者間の行為やマナーに関するトラブルでは、高経年マンションに多いものとして「違法駐車」「ペット飼育」「共用部分への私物放置」が挙げられ、築浅マンションに多いものとしては、「生活音」「バルコニーの使用方法」という傾向が見られました。

高経年マンションでは長年の居住によって生活スタイルが固定化しやすく、ルールの解釈や運用にも個人差が生じやすくなります。その結果、違法駐車や共用部分の使い方などを巡る問題が発生しやすくなります。

一方で築浅マンションでは、比較的若い世帯や子育て世帯の割合が高いことから、生活音やバルコニー利用に関するトラブルが目立つ傾向があります。

興味深いのは、建物が新しいからトラブルが少ないわけではないという点です。マンション管理の課題は、建物の老朽化だけでなく、共同生活を行う人同士の価値観の違いによっても発生します。

そのため管理組合には、設備の維持管理だけでなく、管理規約や使用細則の周知、コミュニケーションの促進といったソフト面の管理も求められます。

管理費・修繕積立金の滞納はどこまで広がっているのか

管理費や修繕積立金を3か月以上滞納している住戸があるマンションは30.1%となっています。つまり、およそ3棟に1棟のマンションで何らかの滞納が発生していることになります。

また、完成年次別に見ると、築年数が古いマンションほど滞納割合が高くなる傾向があります。これは高経年マンションほど区分所有者の高齢化や相続問題、空室化、賃貸化などが進みやすいためと考えられます。

滞納は単なる会計上の問題ではありません。管理費や修繕積立金は、共用部分の維持管理や将来の大規模修繕を支える重要な資金です。そのため滞納が増加すると、管理組合全体の資金計画にも影響を与える可能性があります。

調査年度ごとの推移を見ると、滞納がないマンションは長期的には増加傾向にあります。一方で、平成30年度から令和5年度にかけてはやや減少しており、コロナ禍や物価上昇の影響によって家計負担が増したことも一因として考えられます。

また、完成年次別のデータでは、昭和59年以前に完成したマンションでは、半数近くが何らかの滞納問題を抱えています。高経年マンションでは、区分所有者の高齢化、相続未了、空き住戸の増加、さらには賃貸化の進行などが重なり、滞納回収が難しくなるケースも少なくありません。

管理費等の滞納は放置期間が長くなるほど回収が困難になります。そのため理事会や管理会社は、早期督促、分割納付の相談、法的手続きへの移行などを含め、継続的な管理を行うことが重要です。

管理組合は何に取り組むべきか|国交省調査で見えた優先課題

管理組合が取り組むべき課題として最も多かったのは、「修繕積立金の積立金額の見直し」の36.2%でした。次いで、「長期修繕計画の作成又は見直し」が33.0%、「共用部分の利用に関するルールの徹底」が26.3%となっています。この結果を見ると、多くの管理組合が建物の維持管理に必要な資金確保と将来計画に課題を感じていることが分かります。

また、取得時期が古いマンションほど、「管理規約の見直し」「長期修繕計画の見直し」「管理費等の滞納対策」「耐震診断や耐震改修」「専門家を活用した管理組合運営」の割合が高くなる傾向があります。

高経年マンションでは、建物の老朽化だけでなく、区分所有者の高齢化、役員不足、修繕積立金不足などの課題が同時に発生しやすくなります。

一方で、築浅マンションでは、「共用部分利用ルール」「コミュニティ形成」「防災対策」など、ソフト面の課題が中心です。つまり、マンション管理の課題は築年数によって変化します。

築浅だから安心、高経年だから危険という単純な話ではなく、それぞれの段階に応じた管理課題に向き合う必要があります。

管理の悩みは誰に相談しているのか

マンション管理や運営に疑問を持った際の相談先として最も多かったのは「マンション管理業者」の71.2%でした。次いで「理事長(又は理事)」が45.4%、「他の居住者」が25.1%となっています。

この結果から、多くの区分所有者は管理会社や理事会を身近な相談先として認識していることが分かります。

また、取得年次別に見ると、長く住んでいる区分所有者ほど理事長や理事へ相談する傾向があり、新しく入居した区分所有者ほど管理会社へ相談する傾向があります。長期居住者は管理組合運営への理解が深く、理事会との接点も多いため、理事長が相談窓口として機能していると考えられます。

一方で、新しい区分所有者にとっては、管理組合よりも管理会社の方が身近な存在です。管理組合としては、管理会社だけに相談が集中するのではなく、理事会や管理組合の役割も区分所有者へ周知していくことが重要でしょう。

管理組合は何に不安を感じているのか|数字で見える将来リスク

管理組合運営における将来への不安として最も多かったのは、「区分所有者の高齢化」の57.6%でした。次いで、「建物の老朽化」の55.9%、「居住者の高齢化」の55.1%、「修繕積立金の不足」 39.6%となっています。

この結果は非常に示唆的です。管理組合が不安に感じている上位項目は、すべて相互に関連しています。

区分所有者が高齢化する

役員のなり手不足が発生する

意思決定が難しくなる

修繕積立金の値上げが進まない

建物の老朽化が進行する

という連鎖が起こる可能性があります。つまり、高齢化、老朽化、修繕積立金不足は、それぞれ独立した問題ではなく、管理組合が抱える構造的な課題と言えます。

また、完成年次が古くなるほど、「区分所有者の高齢化」「居住者の高齢化」「修繕積立金不足」「組合活動への無関心」の割合が高くなっています。これは高経年マンションほど、複数の問題が同時進行しやすいことを示しています。

マンション管理は建物の管理だけではありません。人、お金、建物という三つの要素を同時に維持していく必要があります。今回の調査結果からは、その難しさが数字として明確に表れていると言えるでしょう。

まとめ|令和5年度マンション総合調査から管理組合が読み取るべきこと

国土交通省が公表した令和5年度マンション総合調査を見ていくと、日本のマンションが直面している課題が数字として明確に表れていました。特に印象的だったのは、

・修繕積立金不足を課題と考える管理組合が多いこと
・長期修繕計画の見直しが重要課題になっていること
・区分所有者や居住者の高齢化が進んでいること
・役員のなり手不足から外部役員活用が検討され始めていること
・管理費等の滞納や建物の老朽化が高経年マンションで深刻化していること

です。

これらは個別の問題ではありません。高齢化が進むことで役員不足が発生し、意思決定が難しくなり、修繕積立金の見直しが進まず、結果として建物の老朽化が進むという構造的なつながりがあります。

また、築浅マンションにも、

・生活音
・共用部分利用ルール
・防災対策

といった別の課題があります。つまり、マンション管理は築年数に関係なく継続的な取り組みが必要です。

今回の調査は単なる統計資料ではありません。全国の管理組合がどのような課題を抱え、どこに不安を感じているのかを示した貴重な一次情報です。

管理組合役員の方はもちろん、区分所有者の方も、自分のマンションはどこに当てはまるのかという視点で読み返してみると、多くの気付きが得られるでしょう。

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