【是非知っておきたい】機械式駐車場の種類、改修時期や費用は?

管理組合Q&A

※当コラムでは商品・サービスのリンク先にプロモーションを含むことがあります。ご了承ください。

築20~30年程度までのマンションにおいては、機械式駐車場が設置されるところが比較的多いでしょう。

特に、都心のマンションは敷地スペースが限られることから、駐車場は機械式にならざるを得ない事情もあります。

一方で、機械式駐車場は平置き駐車場に比べて、多額のメンテナンス費用が掛かります。

そのため長期修繕計画においても、必ず見ておかなければならない重要な項目といえそうです。

今回はこのような機械式駐車場について、種類や改修、費用について解説します。

【是非知っておきたい】機械式駐車場の種類、改修時期や費用は?

今回紹介する内容は以下の通りです。

・機械式駐車場の種類
・機械式駐車場のメンテナンス
・改修工事の内容や実施時期と費用
・機械式駐車場に関するおもな課題

前段でも触れた通り、機械式駐車場の有無によって、組合員から徴収する修繕積立金にも大きく変わってきます。

一方で後述しますが、駐車場が満車で順番待ちならまだよいですが、高齢化やカーシェアなどを背景として、自家用車の所有が減少し、空き駐車場が多くなってくる課題も出てきているかもしれません。

基本的な所として、機械式駐車場の種類やメンテナンス、更には改修時の費用についても触れながら、課題についても紹介します。

機械式駐車場の種類

まず初めに、機械式駐車場の種類について紹介します。

自治体が実施するマンション管理計画認定制度では、機械式駐車場の種類により、積み立てるべき修繕積立金が変わってきます。

今回はその認定制度で用いられている種類から紹介します。


※マンションの管理の適正化の推進に関する法律第5条の3に基づく
マンションの管理計画認定に関する事務ガイドライン P50より

ピット式(昇降ピット式)

まず、ピット式についてです。

図を確認頂くとイメージがよりつきやすいと思います。

※国土交通省 「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」の手引きより
以下、エレベーター方式の画像は同様の引用となります

このピット式は、車を乗せるパレットの動きが上下に限定されるものです。

・2段式は地上に1段、地下に1段が縦列に並ぶ
・3段式は地上に2段、地下に1段が縦列に並ぶ

という形状のものになります。

普段機械式駐車場をご使用の管理組合はイメージが付きやすいと思います。

こちらは比較的見かける、機械式駐車場の形態であると言えるでしょう。

メリットやデメリットなどの特徴は、次に紹介する昇降横式とは逆ですが、

・駐車区画が決まっているため自分の車が分かりやすい
・昇降横式に比べ早く車を出すことが出来る
・空きが出ても自由に駐車できない

などが挙げられます。

昇降横行式

次に、昇降横行式についてです。

このタイプは、

・地下にある時はパレットが上下のみ動く
・地上では上下左右に動く

ものとなります。

そのため、メリットとしては

・場所を決めずに車を置くことができる
・空きがない効率的な駐車が可能
・限られたスペースで設置可能

がある反面、デメリットとしては

・運用コストが他に比べてやや掛かる
・車を出すまでに待ち時間が発生する
・比較的スペースが必要となる

などが挙げられます。

エレベーター方式(垂直循環方式)

3つ目は、垂直に駐車する、エレベーター方式や垂直循環方式です。

それぞれのイメージや説明はまさに図表の通りですが、おもなメリットは

・高いセキュリティが保てる
・狭い敷地を有効活用して多くの駐車が可能となる
・天候の影響が少ない

などがある反面、デメリットとしては

・出庫に時間が掛かる
・大きな設備を動かすため、機械音が大きい
・メンテナンスにコストが掛かる

などが挙げられます。

機械式駐車場のメンテナンス

次に、機械式駐車場のメンテナンスについてです。

契約形態により、エレベーター設備と同様のメンテナンス方式があります。

POG契約

POGとは、「パーツ・オイル・グリス」の略であり、

パーツやオイル、グリス(潤滑油)の交換や定期点検を含めた、定期メンテナンスを行う形態です。

こちらには、機械式駐車場の部品の交換は含まれておらず、通常の簡易なメンテナンスのみとなります。

メリットとしては、

・通常運用のメンテナンスのみのためコストが安い
・必要最低限の交換でロスが少ない
・定期点検も実施してくれる
・築浅のマンションには向いている

反面、デメリットとしては、

・部品交換は含まれず別途費用がかかる
・フルメンテナンス契約よりも結果的に高くなる可能性もある
・経年している機械式駐車場には向かない場合がある

などが挙げられます。

フルメンテナンス契約

POG契約に対して、手厚いメンテナンスを行うのがフルメンテナンス契約です。

特徴としては、定期点検や消耗品の交換、さらには部品代、修理代も含む、メンテナンス契約となります。

メリット、デメリットもPOG契約と逆になる傾向があります。

おもなメリットについては、

・フルでメンテナンスしてくれるため保険的な安心感がある
・機械式駐車場設備を常に安定した状態に保つことができる
・経年している機械式駐車場にも安心な形態である

反面、デメリットとしては

・POG契約に比べコストが掛かる
・築浅のマンションにとってはオーバースペックになる可能性がある
・過剰な部品交換対応等となった場合には過分なコストが掛かることとなる

などが挙げられます。

改修工事の内容や実施時期と費用

機械式駐車場における、改修工事の内容や実施時期、費用について確認します。

具体的には、国土交通省が提示している長期修繕計画作成ガイドライン

を中心に参考にします。

改修工事の内容

まず、どのような改修工事を行うのか、具体的に確認してみます。

長期修繕計画作成ガイドラインには、②機械式駐車場について

・部品取替などの補修
・機械式駐車場の装置入れ替えリニューアル

について記載があります。

部品の取替などの補修は、前章のメンテナンスの範囲内で対応可能かもしれません。

一方で、メンテナンスではどうにもならない劣化については、入替による対応をせざるを得ないと言えるでしょう。

改修工事の実施時期

次に、工事の実施時期ですが、同様に上記の画像を確認すると、

・補修は5年ごとに実施
・取替(装置入替リニューアル)は18~22年ごとに実施

と記載があります。

あくまでも国土交通省の修繕周期の提案であり、劣化の状態によって、前後することも考えられます。

特に、取替は18~22年ごととなっているので、大規模修繕工事の12~15年程度とは周期が合わないこととなります。

その他、

・スイッチや基盤等の制御機械や電気部品に関する部品は10年程度
・チェーンやモーター等は15年程度
・ターンテーブルなどの構造的な部分は25年程度

と考えられています。

そして、機械式駐車場はマンションの外壁や屋根、廊下等、住まいに関わる大規模修繕工事とは別の場所であるので、必ずしも同一で行う必要はありません。

そのため、構造的な部分の取替工事は、次期の大規模修繕工事の期間の間などのタイミングで行うことが想定されます。

機械式駐車場の改修工事に掛かる費用はどれぐらいなのでしょうか?

数台の小規模なものから、タワー型の大きなものまであるうえ、劣化の度合いにもよるので、一概金額を出すことは難しいでしょう。

仮に冒頭でご紹介した、国土交通省が資料で提示している、機械式駐車場1台あたりの月額の修繕工事費を目安とすると、

・2段昇降式は1台あたり月額6,450円
・3段昇降横行式は1台あたり月額7,210円

となっています。

2段昇降式の駐車場で20台分だとすると、

・年間では6,450円×20台×12ヶ月=154.8万円
・5年の補修工事までに6,450円×20台×12ヶ月×5年=774万円
・最大22年のリニューアルまでに6,450円×20台×12ヶ月×22年=3,405.6万円

と計算できます。

また、3段昇降横行式の駐車場で30台分だとすると、

・年間では7,210円×30台×12ヶ月=259.56万円
・5年の補修工事までに7,210円×30台×12ヶ月×5年=1,297.8万円
・最大22年のリニューアルまでに7,210円×30台×12ヶ月×22年=5,710.32万円

程度は、機械式駐車場がないマンションに比べて掛かってくるということになります。

また、これらは長期修繕計画を立案するうえにおいて、管理組合として、

将来的に掛かっている機械式駐車場の工事費用として見積もっておく

ことが望まれます。

機械式駐車場に関するおもな課題

最後に、機械式駐車場に関する主な課題を挙げてみます。

機械式駐車場の空き区画が増えてきた

管理組合においては、当初は満杯だった駐車場から高齢者を中心に車を手放したりなど、徐々に空きが出てきているという所もあるでしょう。

空き区画があると、その分の駐車場収入が入らないため、管理組合としても、新たに借りて貰うことによって、駐車場収入を確保したいところです。

特に都心では、電車やバスが充実しているため、車が不要かもしれません。

また、若い世代を中心に車を所有せず、カーシェアを利用する人もかなり増えてきています。

このような世の中の流れもあることから、今後管理組合にとっては、区分所有者以外にも貸し出すことや、マンション専用のカーシェアの設置等、収益化手段を検討して空き区画を埋めていくことも必要となります。

修繕コストがかかり管理組合の負担となっている

前章の修繕シミュレーションにも記載しましたが、機械式駐車場があれば、相応の修繕費用がかかるため、管理組合として一定額を積み立てておくことが重要です。

そのため、前項の空き区画に対する課題もクリアにしていく必要があるでしょう。

また、いっそのこと、空き区画が多い場合、機械式駐車場を辞め、平面駐車場にしてメンテナンスコストを削減することも考えなければなりません。

車を持たない人も払う必要があり、ますます不満が高まる

車を持っていないのに、また使用していないのに、なぜ機械式駐車場に対する、メンテナンスの費用を負担しなければならないのか…

このように疑問を持たれる組合員の方もいらっしゃるでしょう。

中には機械式駐車場個別の修繕積立金を利用者から徴収して管理している管理組合もありますが、組合員全員の修繕積立金から機械式駐車場の修繕費用を捻出している所が多いです。

そのため、管理組合全体に機械式駐車場の負担が重くなってくるうえ、さらには空き区画が目立つと収入としても減少することから、組合員からの不満もますます高まってくる可能性がでてくるかもしれません。

機械式駐車場の維持管理には方針とともに適切な積立が必要

これまで見てきたとおり、機械式駐車場は非常に便利な反面、日々のメンテナンス費用等の負担が、組合員に重くのしかかることが分かりました。

管理組合として、機械式駐車場に対する適切な方針とともに、将来の修繕に備えた、計画性を持った適切な修繕積立金の確保が求められるといえるでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました