長期修繕計画とは?見直し時に確認すべきポイント|修繕費高騰で“計画崩壊”を防ぐ管理組合の実務

マンション管理
Group of dedicated hardworking highly motivates architects looking and pointing at blueprints on desk inside of building they want to renew.

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長期修繕計画は、マンションの将来の修繕工事と修繕積立金を結び付ける、管理組合にとって最も重要な資金計画のひとつです。しかし、近年は建設費や資材価格、人件費の上昇により、以前に作成した長期修繕計画の金額では実際の工事費に追いつかないケースが増えています。計画上は資金が足りているように見えても、見積りを取った段階で大幅な不足が判明することもあります。

つまり、これからの長期修繕計画は「作ってあるから安心」ではなく、「今の工事費・建物の劣化状況・修繕積立金の水準に合っているか」を定期的に確認することが重要です。

国土交通省の令和5年度マンション総合調査でも、長期修繕計画を5年ごとを目安に定期的に見直している管理組合は63.2%にとどまっており、計画に比べて修繕積立金が不足しているマンションも36.6%あります。

本記事では、長期修繕計画とは何か、なぜ見直しが必要なのか、そして修繕費高騰時代に管理組合が確認すべきポイントを、マンション管理士の実務目線で解説します。

特に注意したいのは、長期修繕計画が古いまま残っているマンションです。計画書自体は存在していても、作成時の単価が古い、給排水管や機械式駐車場など高額工事が十分に反映されていない、修繕積立金の値上げ予定が実行されていない、といった場合には、計画として機能していない可能性があります。

長期修繕計画は、単なる資料ではありません。将来の大規模修繕工事、設備更新、修繕積立金の改定、一時金徴収や借入れの必要性まで左右する、管理組合の将来設計そのものです。

【必ず作成・見直ししたい】長期修繕計画の重要性とは?

今回、長期修繕計画の重要性として紹介する内容は次の項目です。

・長期修繕計画とは?マンション管理で必要とされる理由
・長期修繕計画が古いまま放置される理由
・長期修繕計画の見直し時に確認すべきポイント

「長期修繕計画とは?マンション管理で必要とされる理由」

は、そもそも長期修繕計画が必要である理由が分からない場合もあるでしょう。

今回、具体的に紹介します。

また、ついつい忘れてしまうことですが、長期修繕計画が作成されたにもかかわらず、更新されていない点も解説します。そして、長期修繕計画の作成・見直しを行うにあたり、どこに注意して作成・見直しを考えればよいのか、国土交通省が提示しているデータにも触れながら紹介します。

長期修繕計画とは?マンション管理で必要とされる理由

長期修繕計画とは、マンションの共用部分について、将来どの時期に、どのような修繕工事を行い、そのためにどれくらいの費用が必要になるのかを整理した計画です。マンションは年数の経過とともに、外壁、防水、給排水管、エレベーター、機械式駐車場など、さまざまな部分で修繕や更新が必要になります。これらの工事をその場しのぎで判断していると、必要な時期に資金が足りず、工事の延期や一時金徴収につながる可能性があります。

そのため、長期修繕計画は単なる工事予定表ではなく、修繕積立金の水準を判断するための基礎資料として位置付ける必要があります。

将来のどの工事をすればよいか明確化する

マンションは住み続けていると、徐々にいたるところが劣化して、痛みます。一方で、どの箇所がどの程度で修繕が必要になるかは、「国土交通省の長期修繕計画作成ガイドライン」でも一定の目安が提示されています。


※国土交通省 長期修繕計画作成ガイドライン84ページ(資料95枚目)から抜粋

たとえば、この画像に記載されているものであれば、給水管は19~23年を目安に更生工事(管の中をきれいにする工事)を、30~40年で取替工事を行うことが目安であると記載されています。

他の修繕工事項目含め、安心安全な暮らしを継続するためには、大規模修繕工事においていつ、どのような工事が必要になるか、が明確となっています。

工事のお金をどれぐらい準備しておけばよいか明確化する

長期修繕計画で重要なのは、将来の工事時期だけではなく、その工事に必要な金額を把握することです。特に現在は、過去に作成した計画上の工事費と、実際に見積りを取得した際の工事費に差が出やすい状況です。長期修繕計画上では資金が足りているように見えても、最新単価で見直すと不足が判明することがあります。

そのため、管理組合は「現在の修繕積立金の残高」「今後の積立予定額」「将来の工事費」「値上げの必要性」を一体で確認する必要があります。不足が見込まれる場合には、早い段階で修繕積立金の増額、工事時期の調整、工事項目の優先順位付け、借入れの可能性などを検討することになります。

反対に、当面の資金に余裕がある場合でも、単に普通預金に置いておくだけでよいのか、すまい・る債や定期預金など安全性を重視した資金管理を検討する余地があります。

長期修繕計画を明確にして区分所有者に計画を周知する

長期修繕計画は、長くマンションに住む為に区分所有者全員が確認すべき計画です。確認することで、将来管理組合としてどのような工事に備えておかなければならないのか、修繕積立金は十分なのか、また足らない場合はどうすればいいのか、など計画を周知することで、区分所有者としての意識も高まります。

新たに計画された長期修繕計画は管理組合総会において決議を行い、管理組合の将来計画として継続して活かしていく必要があります。

長期修繕計画が古いまま放置される理由

現在では、多くのマンションで長期修繕計画が作成されています。しかし、計画書が存在していることと、現在も実態に合った計画として機能していることは別問題です。国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、長期修繕計画を作成している管理組合は88.4%とされています。一方で、5年ごとを目安に定期的に見直している割合は63.2%にとどまっています。

つまり、長期修繕計画は「作成されているか」だけではなく、「直近でいつ見直したか」「最新の工事費を反映しているか」「修繕積立金の不足が見込まれていないか」を確認する必要があります。ここでは、長期修繕計画が古いまま放置される主な理由を整理します。

長期修繕計画が当初から作成されていない、または紛失した

国土交通省が行った令和5年度マンション総合調査では、長期修繕計画の見直し時期としての調査があります。長期修繕計画の見直し時期は、

・「5年ごとを目安に定期的に見直している」が63.2%(平成30年度調査は56.3%)
・「修繕工事実施直前に見直しを行っている」が9.4%(同12.5%)
・「修繕工事実施直後に見直しを行っている」が9.9%(同10.1%)

となっています。


※国土交通省 令和5年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状 (6)長期修繕計画の見直し時期(新規調査項目) 10ページから抜粋

一方、見直しを行っていないマンションの割合は3.7%(同5.7%)ありました。一定の期間で見直しを行っている一方で、

・見直しているものの時期は上記以外である
・見直していない、不明である

などが12%あります。

また、本来国土交通省が推奨している、5年程度ごとの見直しを行っているのは前回平成30年度調査よりも増加したものの6割強であり、それ以外のマンションは長いスパンでの見直しになっている傾向です。そして不明のなかには、80年代以前に建てられたマンションでは、長期修繕計画を作成したことがないところも含まれるかもしれません。

長期修繕計画の見直しが理事会や総会で決議されていない

前項の円グラフによると、長期修繕計画は大規模修繕工事の前後においてなされたものの、そもそも施工会社や設計監理会社からの提出にとどまり、区分所有者への周知がなされておらず、さらには決議されていないことも考えられます。

大規模修繕工事の設計図書の中に、参考資料として長期修繕計画が紛れ込んでいて、誰も気づかなかったといったようなことも想定されそうです。その場合は、

「うちのマンションは長期修繕計画がない」

ということにもつながってしまい、区分所有者にとって存在すら知られないままとなってしまう可能性もありそうです。

理事会や総会で承認されたものの、その後のチェックがなされていない

大規模修繕工事後において、理事会や総会では長期修繕計画として承認されました。ここまでは良かったのですが、その後は総会関連資料や設計図書の中に入っており、適切なタイミングでのチェックがなされておらず、そのままとなっています。

筆者が見たマンションの中でもこのケースが比較的多いと想定され、大規模修繕工事を実施して計画は立てたものの、前回以降全く見直さずに10数年が過ぎてしまった、そのようなパターンです。

長期修繕計画の見直し時に確認すべきポイント

長期修繕計画の必要性とともに、更新されていない理由を確認したところで、今後どのように作成を行い、見直しを行っていく必要があるのか、紹介します。

竣工時や大規模修繕工事の際に作成した後には定期的に見直す

マンションが建った時の竣工時や、その後の大規模修繕工事の段階で長期修繕計画が作成されるかと思います。

「計画を作成して貰って終了」するというのではなく、必ず理事会でチェックしたのちに、総会の決議を経て、マンションの計画として活かしていく必要があります。

これには、見直しを途切れさせないように、理事会において常に確認のタイミングを設けることや、管理会社を採用している管理組合においては、遅滞なく見直しを提案するように管理委託契約書等で定めておくことも考えられます。

計画の見直しに関する国土交通省の見解

ちなみに、長期修繕計画ガイドラインによる、計画の見直しに関する国土交通省の見解(93ページ)は以下のとおりです。

◆長期修繕計画は、作成時点において、計画期間の推定修繕工事の内容等に関して計画を定めるものであり、本文に掲げる不確定な事項を含んでいますので、5年程度ごとに調査・診断を行い、その結果に基づいて見直すことが必要です。
◆例えば、新築後 15 年目以降の見直しでは、新築当初の 30 年の計画期間では推定修繕工事費を計上していなかった給排水管の取替えなどについても計上が必要となる場合があります。
これに伴って計画期間の推定修繕工事費が増加しますので、修繕積立金の額の見直しも必要となります。
◆長期修繕計画の見直しは、大規模修繕工事と大規模修繕工事の中間の時期に単独で行う場合、大規模修繕工事の直前に基本計画の検討に併せて行う場合、又は、大規模修繕工事の実施の直後に修繕工事の結果を踏まえて行う場合があります。
したがって、その時期は、おおよそ大規模修繕工事の直前又は直後とその中間程度となります。
◆建物・設備の劣化状況等の現状を踏まえた見直しを行うために、事前に調査・診断を行います。
大規模修繕工事の中間の時期に単独で行う場合は、目視等による簡易な調査・診断を行いますが、大規模修繕工事の直前又は直後に行う場合は、その基本計画を作成するために行う詳細な調査・診断の結果によります。

図解した見直し例

図解した見直し例は以下のようになります。

この図から、5年毎に定期的に見直しを行い、将来の修繕に備えていく必要があると考えられます。

ただし、長期修繕計画の見直しには一定の費用が掛かってくることから、どこまで調査や計画の作り込みを行うかは、理事会や修繕委員会等で議論して決めていく必要があるでしょう。

見直しが途切れた場合は新たなに作成しなおす

上記の5年程度ごとの見直しが途切れた場合は、5年が過ぎた場合であっても新たに作成しなおすことが必要です。

見直し時期のアンケート調査でも、「5年を過ぎてしまったために、次の大規模修繕がもうすぐ来るから、費用も掛かるしそのタイミングでいいのでは」と考えているマンションも多いと推定されます。

しかしながら、計画立案を先延ばしにすると、これまでの計画にずれが生じてしまったり、修繕積立金が適正かどうかにもずれが生じることとなり、マンションとしては好ましくないところです。

先述した通り、どこまで費用をかけるかという点もありますが、後追いであっても作成を検討することが必要です。

国土交通省が提示するひな形や工事項目が入っているものを基準とする

国土交通省は「マンション管理について」というページで、長期修繕計画をPDF版、Excel版双方で公開しています。

イメージのみ上記で紹介しますが、具体的なひな形についてはダウンロードして確認頂ければと思っています。

長期修繕計画を見直す際には、国土交通省が示している長期修繕計画標準様式や長期修繕計画作成ガイドラインを確認することが重要です。国土交通省のマンション管理に関するページでは、長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン、修繕積立金に関するガイドラインが公表されており、いずれも令和6年6月7日に改訂されています。

特に、推定修繕工事項目が適切に入っているか、計画期間が十分に確保されているか、修繕積立金の試算が現実的かどうかは、管理計画認定制度を意識する管理組合にとっても重要な確認ポイントです。

古い長期修繕計画では、現在のガイドラインに沿った工事項目や金額になっていない可能性があります。そのため、単に過去の計画を延長するのではなく、最新版の様式や考え方に照らして確認することが望ましいといえます。

修繕工事項目に合わせて修繕積立金の徴収額を試算する

各修繕工事項目の各年度に対して、いつ修繕工事を行うのか、金額を入れていく必要があります。

金額を入れることで、どの年においてどれだけの工事費用が必要なのか、算出することができます。

その際に足らない場合には、修繕積立金の残高が赤字として表示され、その年の工事のための修繕積立金が足らないということになります。

修繕積立金の金額で赤字が出ないように、徴収額を増額させるか、金融機関からの借入を検討するかなど、理事会や修繕委員会においても検討していく必要があるでしょう。

ちなみに、前項でも紹介した管理計画認定制度を申請する場合においては、「長期修繕計画の計画期間全体での修繕積立金の総額から算定された修繕積立金の平均額が著しく低額でない」という項目があり、一定の基準額をクリアする必要があります。

修繕積立金の増額予定が現実的か確認する

長期修繕計画を見直す際には、修繕積立金の増額予定が現実的かどうかも確認する必要があります。国土交通省は令和6年6月のガイドライン改訂で、段階増額積立方式における適切な引上げの考え方を示しています。段階増額積立方式では、当初の負担を抑えられる一方で、将来の値上げ幅が大きくなりすぎると、予定通りに引上げできず、修繕積立金不足につながるおそれがあります。

そのため、長期修繕計画を見る際には、単に「将来値上げする予定になっているか」だけでなく、「その値上げが総会で現実的に通る水準か」「区分所有者が受け入れられる段階的な増額になっているか」まで確認する必要があります。

計画上は将来の値上げで収支が合っていても、その値上げが実行できなければ、計画は実質的に崩れてしまいます。ここが、修繕費高騰時代における長期修繕計画の大きな確認ポイントです。

長期修繕計画は見直しを含めて継続的に作成することが重要

長期修繕計画は、一度作成すれば終わりという資料ではありません。マンションの劣化状況、工事費の相場、修繕積立金の残高、区分所有者の合意形成によって、常に見直しが必要になる計画です。

特に現在は、修繕費高騰や人手不足により、過去に作成した計画の金額では実際の工事費に届かない可能性があります。計画上は問題がないように見えても、最新の見積りやガイドラインに照らすと、修繕積立金の不足や値上げの必要性が見えてくることがあります。

管理組合としては、少なくとも5年程度ごとに長期修繕計画を見直し、大規模修繕工事の前後や設備更新のタイミングでも内容を確認することが重要です。そのうえで、修繕積立金の増額、工事項目の優先順位、借入れの可能性、資金運用の考え方まで含めて、早めに議論しておく必要があります。

長期修繕計画は、マンションの将来を守るための「資金と工事の地図」です。古い地図のまま進めば、途中で資金不足や工事延期に直面する可能性があります。だからこそ、管理組合は長期修繕計画を定期的に見直し、現実に合った計画へ更新し続けることが大切です。

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