老朽化したマンションが増加する中、政府は2025年3月4日、「マンションの管理・再生の円滑化等のための改正法案」を閣議決定しました。本記事では、この法改正の背景や具体的な内容を分かりやすく解説します。


今回これらの記事をベースに、筆者独自の観点も踏まえて今後のマンション管理の方向性等も含めて紹介します。
なぜ法改正が必要なのか?
現在、築40年以上の老朽化したマンションは全国で約137万戸あり、今後も増え続ける見込みです。国土交通省によると、2043年にはその数が約464万戸に達すると予測されています。管理組合の機能不全や、建て替え・修繕の合意形成が難しくなることで、危険なマンションが放置されるリスクが高まっています。
この状況を改善するために、政府は以下のポイントを中心に法改正を進めます。
マンション再生の決議要件を緩和
従来、マンションの建て替えは「5分の4の賛成」が必要でしたが、新たな法改正により以下のように要件が緩和されます。
- 建て替え以外の手法(取り壊し・売却、リノベーション) でも「5分の4の賛成」で決議可能に
- 耐震性不足やバリアフリー基準を満たしていない場合 は「4分の3の賛成」で決議可能に
- 大規模災害時の建て替え・取り壊し は「3分の2の賛成」に緩和
また、所在不明の所有者については、裁判所の判断で決議の母数から除外できるようになり、手続きを円滑化する仕組みも整備されます。
建替えに関するイメージも、これまでとは変わってくる可能性はありそうです。
修繕や管理規約の変更手続きを簡素化
管理組合が適切に機能するためには、修繕や管理規約の変更がスムーズに行えることが重要です。新しい法改正では、以下のような変更が加えられます。
- 「修繕」や「管理規約の変更」 は、集会に出席した所有者の多数決で決議可能に
- 緊急修繕の場合 は、より迅速に対応できるよう手続きを簡素化
- マンションの管理計画を新築段階で策定し、国や自治体の認定を受ける仕組みを導入
これにより、管理組合が機能不全に陥ることを防ぎ、適切な維持管理が行われやすくなります。
特に頻繁に特別決議が必要となる規約改正は、
✅区分所有者数及び議決権の4分の3以上→出席者の多数決(NHK記事)
になれば、管理組合役員としても非常に苦労が少なくなると思われます。


自治体の関与を強化
老朽化したマンションが放置されないよう、自治体の関与を強化する施策も盛り込まれています。
- 自治体が管理状況の報告を求める権限を持つ
- 建て替えや取り壊しの助言・指導・勧告が可能に
- 耐震性が不足するマンションについては、自治体の判断で高さ制限を特例的に緩和できる制度を導入
また、マンションの建て替えを後押しするため、隣接する土地の所有者が新築マンションの区分所有権を得られる仕組み も新たに導入されます。これにより、建て替えの資金計画が立てやすくなり、事業の実現性が向上します。


税制優遇措置による支援
建て替えやリノベーションを推進するために、税制面での支援策も検討されています。
- 所有者が設立する事業組合に対して税制優遇を適用
- 建て替え時の固定資産税や譲渡所得税の軽減措置
- 管理組合の修繕積立金の税制優遇
これらの施策により、経済的な負担を軽減し、再生事業を後押しする狙いがあります。
まとめ
この法改正により、以下のようなメリットが期待されます。
✅ マンションの建て替えや再生がしやすくなる
✅ 修繕や管理規約の変更がスムーズに進む
✅ 自治体のサポートにより管理不全マンションを防止
✅ 税制優遇により経済的負担を軽減
今後、2026年4月を目処に施行される予定です。老朽化マンションの所有者や管理組合の方々は、今後の動向に注目し、適切な対応を検討する必要があります。
マンションの再生は、単なる建物の改修ではなく、住民の生活の質を向上させ、地域全体の価値を高める重要な取り組みです。今回の法改正がその大きな一歩となることが期待されます。
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