高齢者が多いマンションの安心安全策をマンション管理士が20例紹介

マンション管理

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うちのマンションは居住者の高齢化が進んでおり、なんらかの対策を打たなければならないがどのように考えればよいか?

また、

まずはマンション管理組合として対策できそうな高齢化対策はないものか…?

このような疑問を持っている管理組合も多いと思います。

マンションの築年数の経過とともに、居住者(区分所有者+賃借人)の高齢化が進行するいわゆる「マンションの二つの老い」は今後ますます進行すると想定されます。

将来、進行することが明らかになっている現在、手を打つことができる対策は予め打っておきたいものです。

具体的にどのような対策があるのか、日々マンション管理組合に対する高齢化対策を検討しているマンション管理士の筆者が紹介します。

※現状のマンションの管理状態や財政状態等の個々の事情で優先度は変わる可能性があります

  1. 高齢者が多いマンションの安心安全策をマンション管理士が20例紹介
  2. 高齢化が進むマンションの現状や課題は?
    1. どのマンション管理組合も直面する「2つの老い」の問題
    2. 管理費や修繕積立金の滞納問題
  3. 高齢者の防犯対策と安全確保 ★★★★~★★★★★
    1. マンション周辺地域の不審者情報の共有
    2. 防犯意識を高める情報共有や説明会の開催
    3. 玄関ドアや窓の二重ロック対応
    4. 管理組合として共用部分への配慮
  4. 災害時避難計画の充実 ★★★★~★★★★★
    1. 安全な避難ルートの確保と確認
    2. 非常用備蓄の確保
    3. 高齢世帯も参加した避難訓練の実施
  5. 居住者名簿の充実 ★★★★
  6. 高齢者向けコミュニティ形成と交流促進 ★★★~★★★★
    1. 高齢者の状況を理事会・自治会で気に掛けてあげる
    2. 高齢者世帯への声掛けや手渡し配布の実施
    3. ポスト投函物の確認
    4. 自治会と連携したイベントの実施
  7. 見守りサービスの導入と活用方法 ★★★
    1. 地域の見守りネットワークとの連携
    2. 見守りサービス会社の紹介
  8. バリアフリー化の必要性と具体的な改修ポイント ★★~★★★
    1. 通路の段差解消
    2. 共用部分における手すりの設置
    3. 滑りにくい床材の導入
    4. 廊下における照明の変更
    5. 出入口における扉の工夫
  9. エレベーターの改修・新規設置 ★~★★
    1. 既存のエレベーターを改修する
    2. エレベーターを新たに設置する
    3. エレベーターの改修や新規設置は特別決議が必要
  10. 手掛けられるところから実施たい安全安心対策

高齢者が多いマンションの安心安全策をマンション管理士が20例紹介

今回紹介する内容は以下の通りです。

筆者の推奨として、是非取り入れたい★★★★★~管理組合としてコストが許せば検討したい★ということで、分けて紹介します。

・高齢化が進むマンションの現状や課題は?
・高齢者の防犯対策と安全確保 ★★★★~★★★★★
・災害時避難計画の充実 ★★★★~★★★★★
・居住者名簿の充実 ★★★★
・高齢者向けコミュニティ形成と交流促進 ★★★~★★★★
・見守りサービスの導入と活用方法 ★★★
・バリアフリー化の必要性と具体的な改修ポイント ★★~★★★
・エレベーターの改修・新規設置 ★~★★

高齢者に対する安心・安全対策を全部で20例抽出しました。

紹介の順番としては、費用が極力掛からないもの→高額な修繕費用等が発生するものの順番で紹介します。

とりわけ、★が多い対策については、費用を掛けない範囲でもまずは管理組合で対応可能かを検討したいところです。

このあとの高経年マンションを中心とした現状でも紹介しますが、経年が進むとマンション内の劣化も増加し、修繕箇所が多くなります。

また、それと並行して高齢の区分所有者によっては修繕積立金の負担が重くなってくることも考えられます。

したがって、対応する人や金銭的なリソースがあるマンション管理組合としては、「できる所から実施する」が基本線になってくるでしょう。

高齢化が進むマンションの現状や課題は?

具体的な対策を紹介する前に、高齢化が進むマンションの現状や課題について確認しておきます。

どのマンション管理組合も直面する「2つの老い」の問題

マンション管理組合が直面している「2つの老い」とは、

・建ってから時間が経ってしまう「高経年化」
・住民の「高齢化」

という2つの問題です。

高経年化や高齢化が進行すると、普段の生活において高齢者だけではなく、若い世代にも影響を与えることとなります。

具体的には、

・高経年化で修繕がなされない箇所が多くなると住みにくいマンションになる
・高齢者が多いと、役員の順番が若い世代に早く回ってくる

などの影響です。

また、世帯主の年齢構成は、令和5年度マンション総合調査

によると、

・「60 歳代」が27.8%と最も多く、次いで「50 歳代」が23.7%、「70 歳代」が21.7%、「40歳代」が15.7%
・前回調査と比較すると、30歳以下は7.1%から6.2%へと減少する一方で、70歳以上は22.2%から25.9%へと増加

とのことです。

「2つの老い」については、以下の記事

に詳しく紹介していますので、今回はこちらをご案内します。

管理費や修繕積立金の滞納問題

必ずしも高齢者に限ったことではないですが、年金暮らしの高齢者の中には普段の生活で負担が多くなってくる方も一部には考えられます。

生活上の負担がでてくると、管理費や修繕積立金の滞納問題も場合によっては発生してしまいます。

管理組合内で滞納があると、若い世代を含めた区分所有者全員に影響を与えてしまうこととなります。

また、修繕積立金不足となると、後述するマンションのバリアフリー対策をはじめとする、設備面における安心安全対策も後手に回ってしまう可能性も出てきます。

ちなみに、令和5年度マンション総合調査では、完成年次が古いマンションの方が滞納割合が高いというデータが出ています。

高齢者の防犯対策と安全確保 ★★★★~★★★★★

具体的に、高齢者に対する安心安全対策を確認していきます。

防犯対策や安全性の確保は、高齢者のみならず居住者全体に重要な論点です。

高齢者にフォーカスを当てると、具体的にはどのような対策が可能なのか、確認してみます。

マンション周辺地域の不審者情報の共有

自治会や自治体、さらには近隣の警察当局と連携して不審者情報の共有等を啓もうすることが求められます。

掲示板の掲示や、各戸へのチラシ配布、館内アナウンス等で周知することが求められます。

防犯意識を高める情報共有や説明会の開催

不審者情報以外にも、高齢者を狙った振り込み詐欺が多発しています。

ついつい自分の家族からの要請ということで、大切なお金を振り込もうとしてしまいます。

振り込み詐欺かどうかのチェック方法や相談先など、高齢者に対する対策としては管理組合としても重要でしょう。

さらには、高齢者に限らず、マンション管理組合全体として普段から心がけておきたい防犯対策の共有も考えられます。

そして、これらの啓もうのための説明会を実施することも対策の一つとして考えられます。

玄関ドアや窓の二重ロック対応

比較的新しいマンションでは、防犯に配慮した玄関ドアや窓ガラス・窓サッシにおいてはセキュリティ対策が施されています。

しかしながら、経年マンションでこれらを取り換えたことが無い場合は、十分でないことも考えられます。

そのため、二重でロックできるような対策をはじめとしたセキュリティ対応の強化が求められます。

管理組合として共用部分への配慮

不審者がマンション内に侵入しないような、防犯カメラの設置や増設、24時間体制のセキュリティシステムの導入も考えられます。

こちらは費用がある程度かかってしまうこととなりますが、安心、安全には変えられないという視点から、管理組合として検討することも考えられます。

災害時避難計画の充実 ★★★★~★★★★★

続いて、こちらも高齢者に限らず、居住者全員にとって大切な論点ですが、若い方が中心のマンションよりも配慮しなければならない事項も存在します。

具体的にどのような対策が必要なのか、確認していきます。

安全な避難ルートの確保と確認

マンションとして、非常階段までの安全な避難ルートが確保できているのかどうか、定期的に確認しておく必要があります。

また、廊下や共用部分に居住者の私物が置かれていないかどうか、定期的にチェックしておくことも重要です。

避難経路として、建築基準法上の廊下として片側のみ住居がある場合は幅1.2m、両側に住居がある場合は1.6mの通路幅が確保できているのかも重要な点です。

なにか工作物によって、幅が確保できていないことも比較的考えられます。

また、義務化されている消防法による法定点検により、問題なく機器や設備が整っている状態であるかも重要でしょう。

非常用備蓄の確保

比較的若い世帯と比べて高齢者世帯においては、万が一災害が発生した際においても、柔軟に動くことができないことも想定されます。

そのため、管理組合としても飲料水や食品等の非常用備蓄の充実や簡易トイレや懐中電灯等、災害時に必要な備品の充実がより望まれます。

高齢世帯も参加した避難訓練の実施

避難訓練実施の際には、高齢者、若い層関係なく、全居住者の参加が望まれます。

とりわけ、車いすで避難する場合はどのように考えればよいのか、また、身体的に不自由な居住者が安全に避難するような体制はどのようなものなのかなど、対応策を準備しておく必要があるでしょう。

居住者名簿の充実 ★★★★

どのような居住者がマンションに住んでいるのか、また区分所有者は誰なのか、その連絡先はどこなのかなど、基本的な情報は取り揃えておきたい所です。

ただ、個人情報になるため、管理組合としては取得の目的等を提示したうえで居住者からの了解を得て取得することが望まれます。

具体的な収集方法や注意点等、以下の記事

で細かく紹介していますので、そちらをご参照ください。

高齢者向けコミュニティ形成と交流促進 ★★★~★★★★

マンション内で高齢者が孤立しないように、気に掛けてあげるコミュニティづくりも管理組合として重要な論点です。

具体的にはどのような活動が有効的なのか、紹介します。

高齢者の状況を理事会・自治会で気に掛けてあげる

管理組合内では、高齢者が誰であるかある程度把握はしているでしょう。

しかしながら、最近見かけなくなったりすると、どうしたのかということで心配にもなります。

定期的に理事会やマンション内に自治会があればその場において、最近どうなっているのか、まずは話題を共有することからでも役員の意識が高まることが想定されます。

高齢者世帯への声掛けや手渡し配布の実施

前述のような、最近見かけないという話題が出た場合は、管理組合役員や管理員さん中心に確認をすることも考えられます。

もし、管理組合内での配布物がある場合は、ポスト投函ではなく、呼び出しベルを押してあえて住居に訪問することも考えられます。

これによって、高齢世帯の近況を自然に確認することも可能でしょう。

ポスト投函物の確認

玄関の集合ポストの郵便物がたまっている場合は、長期不在としている可能性もあります。

とりわけ、高齢世帯については気になる所でしょう。

管理員さんと連携して定期的に確認することによって、連絡が取れない状況となっていないかなど、あたりを付けることができます。

自治会と連携したイベントの実施

マンション内に独自の自治会があれば、理事会と連携して高齢者が参加しやすいイベントを考えるのも一つです。

また、無い場合は地域の自治会・町内会と連携することによって、このようなイベントの参加を促すことも可能でしょう。

戸建てを中心とした、地域の自治会や町内会は高齢世帯も比較的多く、このようなイベントを定期的に開催している所も多いです。

マンション管理組合としても、地域の自治会・町内会組織とうまく連携することによって、独自開催するよりも負担を減らすことも可能です。

見守りサービスの導入と活用方法 ★★★

自治体や事業会社が見守りサービスを行っています。管理組合として具体的にどのような対策が可能なのか、以下紹介します。

地域の見守りネットワークとの連携

自治体においても、見守りについては課題として認識しています。

例えば、横浜市では日常業務で個人宅を訪問しているライフライン事業者、新聞販売店、宅配事業者などの関係事業者が、それぞれの日常業務の中で、異変を発見した場合に関係機関に連絡する「緩やかな見守り」を進めています。

また、横浜市は認知症高齢者等に対する対策も実施しています。

見守りサービス会社の紹介

不動産関連会社やそれ以外でも、見守りサービスを行っているところが多数あります。

管理組合として、これらのサービスを推奨していくのも一つです。管理会社に委託している場合は、管理会社協力の下で連携して進めるのも良いでしょう。

バリアフリー化の必要性と具体的な改修ポイント ★★~★★★

高経年マンションは、最近できたマンションと比べてもバリアフリー化に対応していない所もあり、解消が望まれる所です。

2006年12月に「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー法)が施行され、マンションでもバリアフリーが一般的になっています。

しかしながら、それ以前のマンションは、一部対応であったり全く対応していない点もあるため、管理組合の必要に応じて対応が求められます。

ただ、バリアフリー化は一定の費用が掛かるため、管理組合としては是非補助金も活用したい所です。

また、具体的に共用部分において考えられるバリアフリー化は、以下のとおりです。

参考:国土交通省 国土技術政策総合研究所 安全・安心なマンションのために

通路の段差解消

車いすで移動する居住者も比較的多くなっているマンションもありますが、段差があると、車いすのタイヤがうまく上がることができないこととなります。

そのため、住戸への入り口付近やロビー、エレベーター前にある廊下の段差を解消するための対策が求められます。

共用部分における手すりの設置

高齢者が停止するエレベーターホールやロビー等、一旦立ち止まる箇所や、階段には手すりが必要となります。

マンション内を見渡せば様々な箇所に手すりが必要な場合も想定され、設置が求められます。

滑りにくい床材の導入

東京都消防庁のホームページ

によると、高齢者の事故のうち約8割が転ぶ事故とのことで、年々増加傾向です。

マンション内においては、廊下や階段がその原因として考えられます。

そのため、転びにくいような床材の導入を検討することもあり、長尺シートと言われるものに変更することも考えられます。

ある程度の予算化が必要なので、大規模修繕工事等に合わせて実施を考える必要があります。

廊下における照明の変更

廊下やエントランス、外階段などにおいては、薄暗く歩きにくい箇所が発生する可能性があります。

また、段差に気付かずに転倒することも考えられます。

誰でも通行しやすいように、一定のスポットの照明を変更したり、光量が発揮できるものに変更することも考える必要があるでしょう。

また、照明が切れている個所がないかのチェックも欠かせないようにする必要があります。

出入口における扉の工夫

経年マンションにおいては、扉を手前に引いたり、押したりして開ける開き戸の所もあるでしょう。

イメージしていただければわかるかと思いますが、開き戸は車いすでは出入りが難しく、介助があっても手間がかかります。

そのため、開き戸から引き戸に変更することも考えられます。

ただし、スペースの関係上、変更できない場合もあるので、事前に十分確認することが求められるでしょう。

エレベーターの改修・新規設置 ★~★★

高経年の団地には、エレベーターが設置されていない所もあり、階上にあがるのも苦労します。

特に暑い夏は、最上階まで上がるのにも大変です。

エレベーターを新たに設置するということも考えられますが、修繕積立金からの支出が非常にかかってしまいます。

また、エレベーターがある住戸においても、かごの改修等で車いすでも入りやすくすることも考えられます。

既存のエレベーターを改修する

古いエレベーターであれば、最新型のエレベーターと違った設備になっていると考えられます。

具体的には、音声案内システムがなかったり、行き先ボタンの配置が高いところにあり車いすに乗ったままでは押せないなども考えられます。

また、エレベーターとエレベーターホールの間の隙間(しきい)の幅が広く、この間を縮小することによって、車いすや杖を持っている人でもスムーズに乗ることができます。

さらに、場合によっては手すりも必要になるでしょう。

そして、車いすで乗る方は周りを見渡すことが難しくなります。

そのため、周囲を確認することができるミラーの設置も考えられます。

エレベーターを新たに設置する

新たにエレベーターを設置するマンションは非常に少ないですが、管理組合の意思決定により、後付けで設置するマンションもあります。

高齢者だけではなく、ファミリー層における普段の生活においてもエレベーターの有り無しでは利便性が全く変わります。

子どもがいる家族においては、重要なポイントであるといえます。

エレベーターの改修や新規設置は特別決議が必要

こちらは対策ではなく、注意点となります。エレベーターのかごやシステムの改修や新規設置は、これまで見てきたバリアフリー化と比べて大規模な工事(著しい変更)になります。

手すりやミラーを設置することは著しい変更には当たらないものの、著しい変更にあたる工事は、総会の特別決議が必要になる点に注意が必要です。

手掛けられるところから実施たい安全安心対策

複数の高齢者に対する安全安心対策を紹介しました。

管理組合としては、人的リソースや費用の問題によって、すべてができる訳ではありません。

しかしながら、管理組合としての必要性や重要性等を考えて手掛けられるところから手掛けていきたい所かと思います。

今回紹介した管理組合における高齢者の安心安全対策を参考にしていただければと考えています。

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