【高経年マンションは要確認】窓ガラス・窓サッシ交換対応のポイント

マンション管理

新築から時間が経過した高経年マンションになると劣化してくるのが、各住戸内における窓ガラスや窓サッシです。

窓サッシ・窓ガラスは、玄関ドアやバルコニーと同様に区分所有者が専有使用が可能部分ですが、実はマンションの管理組合の持ち物である共用部分という点は、もしかしたら意外と知られていないかもしれません。

また、30~40年以上経過した高経年マンションは、窓ガラスや窓サッシの劣化がひどくなってくる段階であり、そのようなマンションにお住まいの方は特に交換して欲しいと感じていらっしゃる方も多いと想定されます。

そのような区分所有者の方や管理組合が持っている、以下の様な疑問

・窓ガラス・窓サッシは交換可能なのか?
・窓ガラス・窓サッシはどのぐらいのタイミングで交換を検討すべきなのか?
・窓ガラス・窓サッシの交換は費用的にどれぐらいかかるのか?
・窓ガラスや窓サッシの交換に際して注意すべき点を知りたい

に答えます。

最近筆者はとあるマンションで、窓ガラス・窓サッシの交換対応について、中心的な役割(管理組合における推進リーダー)を担いました。

そのような窓ガラス・窓サッシ交換対応を経験した筆者が、窓ガラス・窓サッシの交換における注意しておきたい点や交換時のポイント等も踏まえて解説します。

【高経年マンションは確認】窓ガラス・窓サッシ交換対応のポイント

今回の記事の内容は以下の構成からなります。

・窓ガラス・窓サッシの交換時のポイントは?
・窓ガラス・窓サッシ交換時のメリットは?
・窓ガラス・窓サッシ交換時の注意点は?

窓ガラス・窓サッシの交換を行うには、比較的高額であり、また区分所有者への説得が不可欠であることから、管理組合として合意形成を上手く図っていくことが求められます

窓ガラス・窓サッシの交換には一定のハードルを伴うものの、準備さえ用意周到に行えば、交換することは不可能という訳ではありません。

また、管理組合内で実施する場合は、誰かがリーダーシップを取って実施する必要があり、他のメンバーとともに委員会を構成して進めていくことなどが求められるでしょう。

そのような側面もある窓ガラス・窓サッシの交換について、具体的に紹介します。

窓ガラス・窓サッシの交換時のポイントは?

まず初めに、窓ガラス・窓サッシの交換時のポイントとして、考えておくべきことを中心に紹介します。

長期修繕計画や修繕積立金との整合性

国土交通省の長期修繕計画ガイドラインには、窓ガラスや窓サッシの点検・調整周期として12~15年、取替周期として34~38年であると記載があります。


※国土交通省 長期修繕計画作成ガイドライン (様式第3-2号) 推定修繕工事項目、修繕周期等の設定内容より

このタイミングにおいては、大規模修繕工事の2,3回目に丁度該当するタイミングであり、そのタイミングと合わせて実施することが望まれます

また、大規模修繕工事実施時に窓サッシ工事も実施する場合には、外壁修繕や屋上、ベランダ等の防水工事とともに実施する必要があることから、費用が多額にかかる事となります。

そのため、予め長期修繕計画において、修繕積立金の確保が必要になってくることも考えておく必要があるでしょう。

大規模修繕委員会や窓ガラス・窓サッシ交換委員会等の設置

窓ガラス・窓サッシ工事は、サッシメーカーの選定や竣工図面等からの工事個所の確認、劣化のための調査など、準備段階においても確認事項が多岐にわたります。

また、交換時においては区分所有者1件1件に細かくサッシの仕様や形状を確認することはありますが、区分所有者への負担を軽減し、効率的に工事を進行するためにも、管理組合内に一定のまとめ役が必要となります。

その場合においては、大規模修繕委員会や窓ガラス・窓サッシ交換委員会等、理事会と密に連携する分科会的な機能を果たす役割も重要でしょう。

さらに、各委員にはそれなりの負担を強いることになるため、区分所有者の中から全戸に対するまとめ役としての委員長には、区分所有者からある程度の信頼感がある方が就任することも大切であり、自薦、他薦を問わず選任においては一定のハードルも想定しておく必要があります。

委員会においては、理事会への報告は勿論ですが、定期的に区分所有者に対してマンション内での広報誌を作成することで、その活動状況を周知していくことも重要な役割となるでしょう。

メーカーや工法の検討

窓ガラス・窓サッシにおいては、各メーカーから製品が発売されています。

既存で設置されている窓ガラス・窓サッシメーカーでもよいと思いますが、別のメーカーであっても規格が定まっていることから、対応可能であると考えられます。

複数社の相見積もりを取得しながら、製品概要や、工事内容、金額等、比較検討しながら進めることが望まれます。

また、工法については、多くの方法で取られているのが既存サッシの上から新たなサッシを被せる、「カバー工法」という手法が一般的で、住みながらも簡単に取り付けが可能です。


一般社団法人 建築開口部協会チラシより

既存のサッシを取り外す「はつり工法」という手法もありますが、取り外す作業において比較的工数がかかるうえ、工事の際の音も大きく、さらに費用も掛かることから、カバー工法によるものが一般的です。

窓ガラス・窓サッシ交換時のメリットは?


LIXILホームページより
※出典:(一社)日本建材・住宅設備産業協会 省エネルギー建材普及促進センター「省エネ建材で、快適な家、健康な家」より

窓ガラス・窓サッシの交換においては、数々のメリットもあります。

交換することにより具体的にどのようなメリットがあるのか、紹介します。

気密性や断熱性、遮音性、防犯性能の向上

まず、これまで長年使っていて劣化している状態から、窓ガラス・窓サッシを刷新することにより、隙間風が入って来たり、音が漏れたりということが少なくなることが期待されます。

また、気密性が向上することにより、夏は暖気が漏れて入ってくることがなく、逆に冬は暖気が外部に漏れることがないことから、室内の温度を一定に保つことが可能となります。

そのため、無駄な冷暖房の必要が低減されることから、冷暖房費用の削減が期待できます。

そして、冬の寒暖差が低減される効果も期待できることから、高経年マンションには多くなってきている、高齢者を中心とした健康被害に対する低減効果も期待できるかもしれません。

さらに、新たに複層ガラスになると、断熱性能がよりアップすることが期待でき、寒い日には結露が減ったりすることで、水滴によるサッシの劣化やサッシの汚れの低減も期待できます。

加えて、最新の窓ガラスにおいては、ガラスが割れにくい、ワイヤーが埋め込まれている仕様となっているなど、防犯性能にも優れていることが挙げられます。

室内におけるカビや汚れ、漏水が減少する

おもに冬の結露により窓サッシの周りに冷気が集まると、サッシにカビやダニが発生したり、さらにはサッシ内に汚れが貯まってしまうことがありますが、これらも低減できる効果が生まれます。


LIXILホームページより

また劣化したサッシにおいては、窓の締まりが悪くなって、ちょっとした隙間から雨水の侵入の可能性も考えられます。

これらも当然防ぐことができ、住まいである専有部分や階下への被害を防ぐことも可能となります。

国や自治体の各種補助金が活用できる可能性がある

国や自治体は、断熱性能向上のための改修において、数々の補助金を出しています。

各補助金について、今後いつまで継続するかは分かりませんが、高経年マンションがますます増加する中、断熱改修の必要性が高まっている現状を踏まえると、引き続き補助金は出て来ると考えられます。

窓ガラス・窓サッシ自体に付与されるものや、大規模修繕工事とセットで付与されるもの、また自治体や、国でも環境省や国土交通省等の各省において出されるものなど、タイプはさまざまです。

また、補助金が取れるようであれば工事を実施する、取れない場合は工事を実施しないなど、柔軟な対応も可能であることから、必ずしも実施しなければならないという訳ではなく、修繕積立金が充分に無い場合は、運よく補助金獲得の目途が付いたら実施する等検討することも可能です。

窓ガラス・窓サッシ交換時の注意点は?

最後に、窓ガラス・窓サッシ交換時に管理組合や区分所有者として注意しておいた方が良い点を紹介します。

管理組合内の合意形成が重要

まず、何といっても工事を進めるためには、管理組合内での合意形成が必要です。

大規模修繕工事と同様に、総会の普通決議(標準管理規約に準拠している場合)が必要になります。

さらに、共用部分であるといっても住戸内に入っての工事になることから、区分所有者に対して一定の協力が必要になってくることとなります。

そのため、総会決議に持っていく前に、何度か管理組合内で説明会を開催したり、交換のメリット等を記載した説明用の告知チラシを継続的に配布して、工事内容や変更内容等を説明していくことも重要であると考えられます。

窓ガラス・窓サッシの交換費用が大規模修繕工事並みに費用が掛かる

窓ガラス・窓サッシは共用部分であることから、工事費用はマンションの修繕積立金から充当することとなります。

しかしながら、窓ガラス・窓サッシの交換は比較的高額であり、特に最近の材料費の高騰や、職人さんの人件費の高騰等を鑑みると、大規模修繕工事かそれ以上に費用が掛かる可能性があります。

窓サッシがアルミ製の場合や、ガラス代の材料費が高騰しているタイミングと重なると、高騰するだけではなく、メーカーから材料が手に入らないという事態も想定され、計画的に実施していかないと、予定通りに進まない可能性も考えられます。

そのため、施工業者やサッシメーカー等々の連携を取りつつ、プロジェクトを進めていく柔軟性も求められてくるでしょう。

窓ガラス・窓サッシの位置によっては足場が必要になる場合がある

窓ガラス・窓サッシの位置や形状によっては、室内やベランダからの交換が難しく、外部からの交換が必要になることも考えられます。

その場合は、足場が必要になることも考えられ、大規模修繕工事のタイミングと上手く合わせて実施することも検討しなければなりません。

足場が必要な場合で窓ガラス・窓サッシ単独で実施することとなると、その為だけに足場を組むという、修繕積立金を浪費する非効率な状況にもなってしまうため、避けた方が無難であるといえます。

既製品では合わないものも存在する可能性がある

高経年マンションにおいて、竣工当時から窓ガラス・窓サッシの交換がなされていない場合は、当時のものがすでに生産されておらず、窓のタイプによっては規格外として取替が難しいことも考えられます。

近いものがあればまだいいですが、全く合わない場合は、取替不可という可能性も発生します。

また、近いものを当て込んだとしても、全く同様のものがあるとは限らず、交換前と開閉方法が変わってしまう可能性が出てしまう点にも注意が必要でしょう。

窓ガラス・窓サッシの交換はタイミングが重要

分譲マンションにおける、窓ガラス・窓サッシ交換には、管理組合、理事会、分科会としての委員会、そして窓ガラス・窓サッシを実際に使用する区分所有者それぞれにとって、費用面や生活上の不都合等、一定の負担が発生します。

しかしながら、劣化している窓ガラス・窓サッシを放置したまま使用すると、室内における快適性を阻害したり、場合によっては健康への影響も出る可能性があります。

管理組合内で合意形成を取りながら、なおかつ長期修繕計画や修繕積立金の貯蓄具合によっても検討する必要がありますが、前もって準備をしながら、そのタイミングを見計らって実行に踏み切ることも重要であるといえるでしょう。

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