【マンション管理組合必見】収益事業と電子帳簿保存法!管理会社委託でも知っておくべきポイントとは?

マンション管理

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マンションを適切に維持管理し、快適な共同生活を営むためには、様々な業務が発生します。特に会計書類の管理は、組合員の皆様から預かった管理費や修繕積立金に関わる重要な事務であり、正確性と透明性が求められます。

近年、社会全体でデジタル化が進み、ビジネスの現場では様々なやり取りが電子化されています。これに伴い、会計に関わる帳簿や書類の保存に関する法律である「電子帳簿保存法」も改正され、電子的に授受した取引情報(請求書や領収書など)の電子データでの保存が義務化(※)されるなど、その重要性が増しています。

この電子帳簿保存法は、私たちマンション管理組合にも無関係ではありません。特に、収益事業を行っている管理組合は、この法律の対象となる可能性があるため、適切な対応が必要となります。

本コラムでは、マンション管理組合にとっての電子帳簿保存法の基本から、どのような場合に保存が必要になるのか、そして多くの管理組合が行っている「管理会社への業務委託」との関係性について、詳しく解説します。

(※)電子取引データの出力書面による保存を認める猶予措置は、2023年12月31日で終了し、2024年1月1日以降は原則として電子データでの保存が義務化されています(ただし、相当の理由がある場合は、税務署長が認めることで猶予される場合があります)。

電子帳簿保存法ってなに?マンション管理組合との関係

電子帳簿保存法は、一言でいうと、税金に関する帳簿や書類を、電磁的記録(電子データ)で保存するためのルールを定めた法律です。この法律は、大きく分けて以下の3つの区分に対応しています。

電子帳簿等保存: 会計ソフトなどで作成した帳簿や、パソコンで作成した請求書・見積書などの控えを電子データのまま保存すること。
スキャナ保存: 紙で受け取ったり作成したりした書類(請求書、領収書など)をスキャンして画像データで保存すること。
電子取引: 電子メールやクラウドなどを利用して電子的にやり取りした取引情報(請求書、領収書など)を電子データのまま保存すること。

マンション管理組合がこの法律と特に関わる可能性が高いのは、主に3つ目の「電子取引」に関する部分です。

「電子取引」とは?マンション管理組合での具体例

「電子取引」とは、取引に関する情報を電磁的方式によりやり取りする取引を指します。具体的には、電子メールに添付されたPDFの請求書を受け取る、クラウドサービス経由で領収書をダウンロードする、といったケースがこれに該当します。

マンション管理組合の運営においても、こうした電子的なやり取りは増えています。例えば、以下のようなケースが考えられます。

✅業者から工事費用の請求書を電子メールで受け取る。
✅インターネットバンキングで振込を行った際の取引明細を電子的に確認・保存する。
✅管理会社から電磁的方法で会計の収支状況に関する書面の提供を受ける場合。
✅管理会社との間で管理委託契約を電子契約で締結した場合。

こうした電子取引で発生した情報は、原則として電子データのまま保存する必要があります。

どんなマンション管理組合が電子帳簿保存法の対象になるの?

マンション管理組合は、通常、営利を目的としない公益法人等として扱われます。しかし、収益事業を行っている管理組合は、電子帳簿保存法の対象となります。

つまり、収益事業を行っているかどうかが、電子帳簿保存法の対象となるかを判断する重要なポイントとなります。

マンション管理組合における収益事業の例

マンション管理組合における収益事業としては、以下のようなものが一般的です。

駐車場の使用料収入: 敷地内の駐車場を組合員や外部に貸し付けて使用料を得ている場合。

駐輪場・バイク置場の使用料収入: 駐輪場やバイク置場の使用料を管理組合以外の人から得ている場合。
自動販売機設置場所の賃貸料収入: 共用部分に自動販売機を設置し、業者から賃貸料や販売手数料を得ている場合。
携帯基地局設置場所の賃貸料収入: マンションの屋上などに携帯電話会社の基地局を設置させ、賃貸料を得ている場合。

これらの収益事業から得た収入がある管理組合は、その事業に関する会計処理を行い、税務申告が必要となる場合があります。そして、この収益事業に関連する取引において、電子取引が発生した場合は、電子帳簿保存法の要件に従って適切に電子取引情報を保存する義務が生じます。

逆に言えば、収益事業を一切行っていないマンション管理組合は、原則として電子帳簿保存法の対象とはならないと考えられます。

管理組合個別の状況については、管理会社や顧問税理士に確認することが望まれます。

電子帳簿保存が必要となる具体的な「電子取引」の例

収益事業を行うマンション管理組合が電子帳簿保存法の対象となる場合、具体的にどのような電子取引情報を保存する必要があるのでしょうか。

その収益事業に関連する取引で、電子的に授受された書類等が該当します。一例としては、以下のようなものが挙げられます。

駐車場・駐輪場関連: 利用者との契約に関する書類(電子契約の場合)、使用料の請求書や領収書を電子メールなどでやり取りした場合。金融機関からの振込通知書などを電子的に受け取る場合。
自動販売機・基地局関連: 設置業者との契約書(電子契約の場合)、業者からの売上報告書、手数料や賃貸料に関する請求書・支払通知書をPDFなどで受け取る場合。
収益事業に係る経費: 収益事業のために購入した物品や利用したサービスに関する請求書、領収書などを電子的に受け取る場合。例えば、駐車場機器の保守業者からの請求書を電子メールで受け取った場合など。
管理会社との取引: 管理委託契約書を電子契約で締結した場合。管理会社から管理費等の会計に関する書面を電磁的方法で提供を受ける場合。ただし、これは管理事務に関するものであり、収益事業固有の取引情報がどこまで含まれるかは契約内容によります。

これらの電子データは、電子帳簿保存法の要件(真実性、可視性の確保など)を満たした状態で保存する必要があります。例えば、検索機能を確保することや、訂正削除の履歴が残る、または防止する措置を講じることなどが求められます。

管理会社に業務を委託している場合の実務はどうなる?

多くのマンション管理組合は、管理事務の多くを管理会社に委託しています。管理委託契約においては、管理会社が管理組合の会計に関する業務、例えば会計帳簿の整備・保管 や収支状況の報告、費用の支払い といった基幹事務を含む様々な事務管理業務を受託しています。

そのため、管理組合宛の請求書や領収書等の保存は管理会社が行っていることから、実際に電子帳簿保存法への対応は管理会社が行っているでしょう。

これは、管理組合宛に送られてくる請求書や、管理組合が発行する領収書など、管理事務の遂行において発生する会計関連の書類について、管理会社が管理組合に代わって受領・作成し、その保存も行うことが一般的であるためです。そして、これらの書類に電子取引(電子データでの授受)が含まれる場合、管理会社がその電子データの保存も実質的に担うことになります。

つまり、管理会社に管理事務を委託している管理組合の多くは、収益事業を行っている場合であっても、電子帳簿保存法への具体的な対応(電子データの保存方法の検討やシステムの導入など)は、管理会社が契約に基づき行う範囲でカバーされていると考えられます。

したがって、管理会社は、自社の業務として、受託している管理組合の会計に関する電子取引情報を適切に保存する義務を負います。

管理会社委託でも管理組合が知っておくべきこと

しかし、管理会社に委託しているからといって、管理組合が電子帳簿保存法について全く知らなくてよい、ということにはなりません。

管理委託契約の確認

管理委託契約において、管理会社がどのような会計業務、特に収益事業に関連する電子取引情報の保存をどこまで担当するのかを明確にしておくことが重要です。別表などに記載されている委託業務の範囲 を確認しましょう。

保存状況の確認

管理会社が適切に電子帳簿保存法に対応しているか、管理組合としても関心を持つことが望ましいです。管理会社に保存方法や保管場所について確認してみましょう。

管理会社が提供する、帳票類をPDFなどで保管できるサービスや、マンション管理センターの「みらいネット」、その他管理組合向け専用サービスなどを利用している場合もあります。

データへのアクセス

管理会社が電子データを保存している場合、管理組合が必要な時にそのデータにアクセスし、閲覧や出力ができる体制になっているか確認しておきましょう。

委託範囲外の可能性

管理委託契約の範囲外で、管理組合自身が直接行う収益事業に関する取引や、管理会社が受託していない特定の収益事業(例えば、組合員が直接行う駐車場契約に関する電子取引など)については、管理組合や組合員自身が電子帳簿保存法の要件に従って対応する必要が出てくる可能性があります。

契約終了時のデータ引継ぎ

何らかの理由で管理会社との契約が終了した場合、管理会社が保存していた会計関連の電子データ(電子取引情報を含む)を、適切に管理組合または新たな管理会社に引き継ぐ必要があります。この点についても、あらかじめ確認しておくことが重要です。

このように、管理会社が実質的な対応を行う場合でも、管理組合側が電子帳簿保存法の存在と、管理会社との間で責任範囲やデータ管理方法について認識しておくことは、法令遵守と適切な会計処理のために不可欠です。

自主管理組合の場合の対応

もしマンション管理組合が自主管理を行っており、かつ収益事業も行っている場合は、管理組合自身が電子帳簿保存法に定められた要件を満たす形で電子取引情報を保存する体制を構築する必要があります。

これには、電子取引データの保存に関する規程の策定、ファイル名の規則化、タイムスタンプの付与やシステムの導入といった具体的な対応が必要です。また、これには専門的な知識が必要となる場合があるため、税理士やマンション管理士などの外部専門家に相談することも検討すると良いでしょう。

まとめ:収益事業を行う管理組合は、電子帳簿保存法への理解が不可欠

マンション管理組合が収益事業を行っている場合、電子帳簿保存法の対象となり、電子取引に関する情報の電子データ保存が義務付けられます。

管理会社に管理事務を委託している管理組合では、多くの場合、管理会社が管理組合宛の請求書等の保存を実質的に行い、電子帳簿保存法への対応を担っています。管理会社は管理組合の会計帳簿を整備・保管する業務も受託しているからです。

しかし、管理会社に委託している場合でも、管理組合は無関心でいるのではなく、管理委託契約で定められた管理会社の業務範囲、特に収益事業に関連する電子取引情報の保存について、どこまで管理会社が対応するのかを確認しておくことが重要です。また、管理会社が保存したデータにアクセスできる体制になっているか、契約終了時のデータ引継ぎがどのように行われるのかなども把握しておくべきポイントです。

もし管理会社が対応しない範囲の収益事業に関する電子取引情報がある場合や、自主管理組合で収益事業を行っている場合は、管理組合自身が電子帳簿保存法の要件を満たす形で電子データを保存する体制を構築する必要があります。不明な点や具体的な対応については、マンション管理や税務に詳しい専門家(税理士など)に相談することを強く推奨します。

電子帳簿保存法への適切な対応は、単なる法令遵守に留まらず、管理組合の会計処理の透明性を高め、より適切なマンション運営に繋がる一歩となるでしょう。

参考文献

今回の参考文献は以下の通りです。

✅国土交通省(令和5年9月11日) マンション標準管理委託契約書及び同コメント
✅国税庁 収益事業を行う青色申告法人である公益法人等の電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存について(収益事業以外の事業の取引に関する電子取引の取引情報について)
✅マンションコミュニティ研究会 第91回勉強会(2022年10月26日開催)  マンション管理士 内藤正裕氏 電子署名
✅マンション管理・FP研究室 マンション管理を効率化するDX施策9選!管理組合向けのメリットも解説 【規約解説】マンション管理士等専門家の賢い活用方法(国交省推奨)

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