マンション管理組合の総会では、重要な議案書や資料が配布され、それらは適切に保管・管理される必要があります。特に近年では、紙媒体だけでなく、電子データ(電磁的記録)での保存・閲覧も一般的になっています。
標準管理規約第49条の2では、こうした総会資料の保管方法や組合員・利害関係人への対応について詳しく定められています。本記事では、
✅ 標準管理規約第49条の2の概要
✅ 電磁的方法が利用できる場合・できない場合の違い
✅ 国土交通省の補足事項
✅ 管理組合や区分所有者が注意すべきポイント
について、実務に精通しているマンション管理士が分かりやすく解説します。特に、デジタル化が進む中で、管理組合がどのように対応すべきかについても考察しますので、ぜひ参考にしてください。
【規約解説】マンション管理規約 第49条の2とは?総会資料の保管方法と電磁的記録の活用
今回紹介する内容は以下の通りです。
✅ 標準管理規約第49条の2 総会資料の保管等の解説
✅国土交通省が補足する事項は?
✅第49条の2における管理組合や区分所有者に対する注意事項
まず、最初の章では標準管理規約第49条の2の条文から「総会資料の保管等」について、電磁的方法が利用可能でない場合と、可能な場合それぞれの文面を紹介します。
続いて、この条文についての補足事項や、注意しておくべき事項について国土交通省より提示されています。
さらに、その文面の解説を、イメージしやすい具体的な例を踏まえながら紹介します。
そして、最後の章では第49条の2「総会資料の保管等」の条文や補足事項を踏まえて、管理組合や区分所有者が注意しておいた方が良い点を、マンション管理士である筆者独自の視点から具体的に紹介します。
それでは、次章より当該条文について紹介します。
マンション標準管理規約第49条の2とは?総会資料の保管方法を解説
標準管理規約第49条の2の概要と基本ルール
マンション管理組合の総会では、さまざまな重要事項が議論され、その内容は議案書や付随資料として記録されます。これらの資料は後から確認できるように保管される必要があります。
標準管理規約第49条の2では、総会資料の適切な保管と組合員・利害関係人への閲覧対応について定めています。特に近年では、書面だけでなく「電磁的方法(デジタルデータ)」による保管や閲覧請求の方法も規定されており、IT化の進展を反映した内容となっています。
それでは、「利用できない場合」と「電磁的方法が利用できる場合」との違いを見ていきましょう。
紙で保管する場合のルールと閲覧手続き
この場合の条文は以下の通りとなります。
(総会資料の保管等)
第49条の2 理事長は、議案書及び付随する資料を保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による請求があったときは、議案書及び付随する資料の閲覧をさせなければならない。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。
デジタル保存が可能な場合のルール
一方、電磁的方法が利用可能な場合の条文は以下の通りです。
(総会資料の保管等)
第49条の2 理事長は、議案書及び付随する資料を書面又は電磁的記録により保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面又は電磁的方法による請求があったときは、議案書及び付随する資料の閲覧をさせなければならない。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。
2 電磁的記録により作成された議案書及び付随する資料の閲覧については、前条第5項に定める議事録の閲覧及び提供に関する規定を準用する。
紙保管の場合の条文解説と実務対応
電磁的な記録(デジタルデータ)を活用できない場合、管理組合の理事長は書面で総会資料を保管し、組合員や利害関係人からの閲覧請求があれば対応しなければなりません。
📌 ポイント
- 閲覧請求は「理由を付した書面」によるものに限られる
- 閲覧に際しては、理事長が日時・場所を指定できる
🔹 現場での対応例
例えば、ある組合員が「先日の総会で決議された修繕工事の詳細を確認したい」と申し出た場合、その理由が妥当であれば、理事長は紙の議案書を閲覧させる必要があります。土曜日の午後1時から管理室や集会所で閲覧可能など、管理組合が適切と判断する時間と閲覧場所を指定できます。
デジタル保存の条文解説と活用のポイント
デジタル化が進んだ管理組合では、議案書や資料を紙だけでなく、電子データ(PDFなど)でも保管することが可能です。この場合、閲覧請求も「書面」だけでなく「メール等の電磁的方法」でも受け付けられます。
📌 ポイント
- 総会資料は「書面」または「電磁的記録」で保管できる
- 閲覧請求は「書面」または「電磁的方法(メールなど)」で可能
- 閲覧の際は、議事録の閲覧・提供に関する規定(第49条第5項)が適用される
🔹 現場での対応例
例えば、組合員が「メールで総会資料のPDFを送ってほしい」と請求した場合、管理組合はルールに基づき対応する必要があります。閲覧方法としては、
✅ PDFをメール添付で送付
✅ クラウドストレージ(Google Driveなど)でURLを指定して閲覧可能とする
✅ 管理会社のシステム上で閲覧できるようにする
などの方法が考えられます。
マンション標準管理規約第49条については、以下
も合わせてご参照ください。
国土交通省の補足:管理組合が理解すべきポイント
次に、第49条の2では、国土交通省が補足している点があります。
具体的には、以下の内容です。
第49条の2関係
理事長が保管すべき付随する資料とは、第48条において議決事項として掲げる書類の案のほか、参考資料として総会において配布された資料等が該当する。
こちらについても解説します。
付随する資料とは?総会資料に含まれるものを解説
標準管理規約第49条の2において、理事長は総会の議案書だけでなく、付随する資料も保管する責任があります。
この「付随する資料」とは、主に以下の2つのカテゴリーに分かれます:
- 議決事項に関する書類案(第48条で決議が必要な事項に関連する資料)
- 総会で配布された参考資料(議案に付随する説明資料やデータ)
具体的には、総会で議決される内容に関して、詳細な資料や説明が必要です。たとえば、長期修繕計画の変更案や収支予算案に関する資料は、議案の内容をより理解するための「付随資料」として重要です。
総会資料に含まれる議決資料の具体例
国土交通省の補足に基づき、議決のための資料には次のようなものが該当します:
- 議案書(具体的な内容が決まる前に、組合員に示すために準備された案)
- 議案に関する説明資料(たとえば、修繕積立金の使途を解説する資料など)
- 総会で配布されたその他議案のための資料(過去の事例や専門家の意見書など)
これらの資料は、単に決議に関連するだけでなく、組合員にとっては決議のプロセスとしても重要な情報源となります。そのため、これらを適切に保管し、組合員からの閲覧請求に応じることが求められます。
付随資料の具体例と管理のポイント
具体的な例を挙げると、次のような資料が「付随する資料」として考えられます:
- 長期修繕計画の変更案や更新案
- 管理費・修繕積立金の使い道を示す詳細資料
- 役員の選任に関する説明資料(候補者役割や外部専門家役員の場合の経歴など)
- 収支予算案や事業計画書
これらは、総会での決議をサポートするために配布され、組合員が十分に理解できるように整理されている必要があります。
管理組合・区分所有者が注意すべきポイント
最後の章では、条文ならびに、国土交通省の補足事項を踏まえて、筆者が特に管理組合や区分所有者が注意しておいた方が良いと考える点について紹介します。
紙からデータへ移行するメリット
時代の変化によって、今後はより電磁的方法での利用が主流になってきます。
電磁的方法が利用可能な場合と可能でない場合双方ありますが、管理組合としては「利用可能な場合」に近づけるべく対策を講じるべきでしょう。
データ提供のルールと注意点
また、データで要望された場合は、閲覧だけではなく提供することができます。
メールで添付して送付すると提供したことにもなりますし、Google Driveなどのクラウドストレージを用いることで、組合員は入手することも可能になります。
さらに、紙の場合であっても、控えをコピーで取ったり、写真を撮ることも考えられます。
この場合は、念のため複製可能か許可を得ることが望まれます。
提供されたデータの取り扱いとセキュリティ対策
入手したデータまたは書面は、管理組合の機密文書として取り扱う必要があります。
とりわけ数値データは管理組合の機密情報に当たるうえ、総会や理事会の議事録は個人名も入っているため、個人情報保護の対象となります。
そのため、セキュリティで守られたパソコンで保存するとともに、使用後は削除するなどの対策も講じる必要があります。
紙・デジタル両方の資料を適切に管理
紙の場合であれば、速やかにバインダーにファイリングをすることで保管が可能です。
データであっても、管理組合で決めた保管方法で適切に保管する必要があります。
データ保管は
データがどこにいったか分からない
といったことが無いように注意する必要があるでしょう。
また、双方の場合においても、鍵が掛かっている書庫または、一定のメンバーしかアクセスできないフォルダー内等に保管することが望まれます。
総会資料の保管ルールを理解し、適切に管理しよう
マンションの総会資料は、書面・電磁的記録のいずれの方法でも適切に管理することが重要です。標準管理規約第49条の2では、管理組合が資料を保管し、組合員や利害関係人の閲覧請求に対応する義務があることを規定しています。
近年、デジタル化が進むことで、紙からデータへの移行が進んでいます。管理組合としては、可能な限り電磁的方法を活用し、利便性を向上させることが求められます。一方で、セキュリティや個人情報保護の観点から、適切な管理体制を整えることも忘れてはいけません。
本記事の内容を参考に、管理組合としての適切な対応を検討しましょう。
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