管理組合って、具体的にどのようなことをすればよいのだろうか…?
また、
マンションでの出来事を全て理事会役員たちがこなさなくてはならないのだろうか…?
さらには、
理事会役員で手に負えないので、区分所有者にも協力して貰えることはないだろうか…?
このように感じている管理組合も非常に多いと思います。
最近では、役員のなり手不足もますます高まってきており、役員以外の区分所有者にも協力して貰えることがあれば手助けして貰いたいですよね。
国土交通省が定める標準管理規約では、第32条にマンション管理組合全体として行わなければならないことを、「業務」として定めています。
今回はこの内容を取り上げて、管理組合として日々の管理組合運営の中で実施すべき対応事項を紹介します。
【規約解説】管理組合が行う具体的な業務や実施の際の注意点を紹介
今回紹介する内容は以下の通りです。
・第32条の補足・注意事項は?
・実際に対応すべき管理組合の業務とは?
まずはじめに、標準管理規約第32条の内容に従って、管理組合が実施すべき業務を解説します。
続いて、第32条については、管理組合業務を実施する中で、多くの補足・注意事項が紹介されています。
どのような点に注意しながら、管理組合活動を行わなければならないのか、具体的に確認します。
そして、実際に管理組合としては、管理規約第32条に紹介された業務を実施する必要があります。
内容が多いので、全てを紹介することはできませんが、おもな対応業務について、前章で紹介した注意点も踏まえながら確認していきます。
標準管理規約第32条の解説
まず初めに、標準管理規約32条の内容から確認していきます。
第32条 管理組合は、建物並びにその敷地及び附属施設の管理のため、次の各号に掲げる業務を行う。
一 管理組合が管理する敷地及び共用部分等(以下本条及び第48条において「組合管理部分」という。)の保安、保全、保守、清掃、消毒及びごみ処理
二 組合管理部分の修繕
三 長期修繕計画の作成又は変更に関する業務及び長期修繕計画書の管理
四 建替え等に係る合意形成に必要となる事項の調査に関する業務
五 適正化法第103条第1項に定める、宅地建物取引業者から交付を受けた設計図書の管理
六 修繕等の履歴情報の整理及び管理等
七 共用部分等に係る火災保険、地震保険その他の損害保険に関する業務
八 区分所有者が管理する専用使用部分について管理組合が行うことが適当であると認められる管理行為
九 敷地及び共用部分等の変更及び運営
十 修繕積立金の運用
十一 官公署、町内会等との渉外業務
十二 マンション及び周辺の風紀、秩序及び安全の維持、防災並びに居住環境の維持及び向上に関する業務
十三 広報及び連絡業務
十四 管理組合の消滅時における残余財産の清算
十五 その他建物並びにその敷地及び附属施設の管理に関する業務
第1~14号までは具体的な業務について記載されていますが、15号では「その他」としてまとめられています。
また、総会や理事会は日々の業務という位置づけから外れ、別途条項が設けられています。
第32条の補足・注意事項は?
次に、管理組合の業務について、標準管理規約の補足事項では細かく紹介されています。
管理組合が業務を行うに当たってのおもな注意事項について、具体的に紹介します。
長期修繕計画作成の重要性
まず、コメントとして挙げられているのが、長期修繕計画についてです。
この項目が上位に来ているということは、管理組合業務として重要な位置づけであると国土交通省が位置づけていると考えられます。
具体的には、
・その対象となる建物の部分、修繕時期、必要となる費用等について、あらかじめ長期修繕計画として定め、区分所有者の間で合意しておくことは、円滑な修繕の実施のために重要
としています。
さらに、長期修繕計画の内容としては、
・計画修繕の対象となる工事として外壁補修、屋上防水、給排水管取替え、窓及び玄関扉等の開口部の改良等が掲げられ、各部位ごとに修繕周期、工事金額等が定められているものであること
・全体の工事金額が定められたものであること
を踏まえたものを準備する必要があると紹介されています。
劣化診断(建物診断)の実施
さらに、マンションの劣化状況を調べる調査も実施する必要があると紹介されています。
具体的には、
・劣化診断(建物診断)に要する経費の充当については、管理組合の財産状態等に応じて管理費又は修繕積立金のどちらからでもできる
・ただし、修繕工事の前提としての劣化診断(建物診断)に要する経費の充当については、修繕工事の一環としての経費であることから、原則として修繕積立金から取り崩す
のような対応方法が記載されています。
管理組合が管理すべき設計図書
具体的な内容が挙げられているので、紹介します。
・上述以外の設計関係書類(数量調書、竣工地積測量図等)、特定行政庁関係書類(建築確認通知書、日影協定書等)、消防関係書類、給排水設備図や電気設備図、機械関係設備施設の関係書類、売買契約書関係書類等
基本的には、マンションが建った竣工時や、大規模修繕工事の際に発生する図書の全てを保管しておくことが必要でしょう。
いつ、どのような図書が求められるか、管理組合としても想定できないためです。
修繕等の履歴情報の取り扱い
具体的な修繕履歴情報としては、
・設備の保守点検
・特定建築物等の定期調査報告及び建築設備(昇降機を含む。)の定期検査報告
・防火対象物定期点検報告等の法定点検
・耐震診断結果
・石綿使用調査結果
などが紹介されています。
特にこの修繕履歴情報は、自治体が実施する管理計画認定制度の審査項目において、管理規約に「六 修繕等の履歴情報の整理及び管理等」の内容が含まれているかどうかのチェックがあります。
したがって、国や自治体としても非常に重要視している項目といっていいでしょう。
図書の保管や閲覧
前項ならびに前々項で挙げた、各種図書の保管や閲覧については、理事長の責任によって実施することとなっています。
その他、理事長が保管する資料としては、
・理事会議事録と資料
・帳票類等
・組合員名簿等
・規約原本等
が挙げられます。
風紀や秩序、安全の維持、防犯等のための活動
こちらについては、
・経費に見合ったマンションの資産価値の向上がもたらされる活動も含む
とされており、基本的には自治会や町内会活動と切り離して考えるべきものとして取り上げられています。
また、これらに該当しない活動であっても、、管理組合の役員等である者が個人の資格で参画することは可能とのことで紹介されています。
生活や管理に支障を及ぼすおそれがある事案発生時の対応
こちらについては、例として
・区分所有者等にひとり歩き等の認知症の兆候がみられ、区分所有者等の共同生活や共用部分等の管理に支障を及ぼすおそれがある場合
が例示されています。
感染症等の発生は、行政の指示や情報を踏まえての対応が望まれます。
また、認知症の兆候が見られる方がいる場合は、緊急連絡先または、地域包括支援センター等へ相談を行うことが望ましいとされています。
実際に対応すべき管理組合の業務とは?
ここまでは、標準管理規約第32条ならびに、その補足コメントの内容を中心に紹介しました。
しかしながら、ここに記載されている内容を管理組合内で全て実施するとなると、非常に労力がかかることとなります。
ここに記載されているものの中から、対応すべき重要な業務について、第32条の各号と照らし合わせながら、具体的に紹介します。
マンション敷地内や共用部分の管理・修繕に関する業務
まずこちらの件について、幅広くなりますが、マンション敷地内や共用部分の管理に関する業務全般となります。
第32条の中では、一号、ニ号が該当業務となります。
具体的には、
・敷地内や共用部分内の清掃
・エレベーターのメンテナンス
・法定点検や定期点検など必ず実施する必要があるもの
などについて、管理組合の役員が自ら実施するのではなく、管理会社や点検業者等の関連業者と連携を取りながら、具体的な指示を出すということになります。
長期修繕計画の作成と見直し
こちらは、三号が該当業務となります。
具体的には、前章の最初に記載していますが、その内容にしたがった長期修繕計画を必ず作成することと、5年程度ごとに定期的に見直しを掛けていくことが求められます。
また、管理組合内で作成することは難しいので、管理会社や設計監理を行っている建築事務所等に依頼するか、簡易であればマンション管理センターが実施している長期修繕計画作成・修繕積立金算出サービス
などを活用して作成することも可能です。
各種管理組合書類の適切な管理
こちらは五号、六号が該当業務となります。
また、マンションは建ってから時間が経つにつれて、管理組合の書籍も膨大な量になります。
しかしながら、最初に入手する建物が建った時の竣工図書や、毎年開催する総会関連書類、また理事会書類や大規模修繕工事関連の図書など、過去のものは取っておく必要があります。
膨大な量になる場合は、データ化によって、紙からPDF書類への管理に代えることも考えられます。
大規模修繕工事の実施
こちらは、二号や九号が該当業務となります。
管理組合として、12~15年程度のスパンで定期的に大規模修繕工事を実施することとなります。
工事自体は依頼した専門の施工会社が実施することとなりますが、
・どのような方式で工事をするのか
・専門委員会形式で討議するのか
・どのような施工会社や設計監理を実施する建築事務所を選ぶのか
など、検討することが必要となります。
適切な修繕積立金の確保
おもに十号が該当業務となります。
また、大規模修繕工事を実施するにあたって、工事に必要な修繕積立金の積立が必要になります。
そのためには、長期修繕計画とリンクした修繕積立金計画も必要となるでしょう。
さらに、場合によっては将来的に足らなくなることも考えられることから、どのように充当するのかも検討していく必要があります。
防災、防犯対策
こちらは十二号が該当業務となります。
マンションは集団で生活する形態であることから、管理組合全体で防災や防犯の対策を講じていく必要があります。
そのための検討も日々行う必要があり、防災、防犯のための計画や活動体制も重要となってくるでしょう。
どのような形で活動していくのか、日々管理組合で考えていく必要があります。
管理組合内の情報共有や連絡
こちらは十三号が該当業務となります。
管理組合内での出来事として、居住者に連絡しておくべきことについては、随時掲示板や回覧等で情報共有することが求められます。
また、管理組合内で啓蒙したい場合は、広報という手段も考えられます。
理事会や役員が重要となることを継続的に広報という形で区分所有者に伝えることで、重要性を認識をしてもらう手段として効果的です。
管理組合業務は広いのでやるべきことを確実にする所から…
今回は、標準管理規約第32条の管理組合の業務について紹介しました。
挙げたのはほんの一部ですが、それでもこれだけの管理組合としての対応事項があります。
実際に動くのは、管理会社や施工会社等の関連業者になることもありますが、業務内容を把握をし、指示をするのは、管理組合としての重要な役割です。
そのため、役員含め、区分所有者自体もほとんどの内容に関与することとなります。
したがって、やるべきことは確実に行う所から実施していくことが求められます。
※標準管理規約は都度変更になるため、専用書籍はあるものの、法改正により古くなってしまいます。そのため、マンション管理センターのこちらの書籍の最新版
を確認されることをお勧めします。
コメント