専有部分って意識したことないけど、具体的にどういう部分を指すのだろうか?
また、
マンションの専有部分と共有部分という言い方があるけど、規約ではどのように定められているのだろうか?
さらには、
普段の生活で使用する所はわかるけど、それ以外の目につかない専有部分ってどういったところがあるのだろうか…?
などなど、専有部分という言葉に対して疑問を持つ方も多いと思います。
確かに、管理組合内での会話の中に、「専有部分」「共有部分」という言葉が良く出てきます。
筆者のコラムでは、特に説明なくここまで紹介してきていますが、今回は特に「専有部分」にフォーカスします。
具体的に、該当する国土交通省が定める標準管理規約の第7条の条文を取り上げ、マンション管理士の筆者が紹介します。
【規約解説】管理組合でよく話す専有部分とはどういう所を指しますか
今回のコラムで紹介する内容は以下の通りです。
・第7条「専有部分の範囲」の補足・注意事項は?
・専有部分の詳細
まず、標準管理規約から第7条の条文を紹介し、具体的に解説します。
そして、標準管理規約には、第7条にも補足・注意事項がありますので、そちらの文面を紹介します。
さらに、標準管理規約でいう所の専有部分はどのような所を指すのか、イメージしやすいように図表等も用いて解説します。
今回は専有部分という基本的な内容ですが、本来マンションに住むすべての居住者が知っておく必要がある所です。
所有者である区分所有者はもちろんですが、区分所有者の家族や賃貸で借りている賃借人等、分譲マンションに住む居住者にとっても必要な内容であると考えています。
早速次章より、専有部分について紹介します。
標準管理規約第7条「専有部分の範囲」の解説
この章では標準管理規約第7条の内容とともに、抽象的であるため、補足を含めた解説をしたいと思います。
標準管理規約第7条の内容は?
まずはじめに、標準管理規約第7条(専有部分の範囲)の条文を紹介します。
第7条 対象物件のうち区分所有権の対象となる専有部分は、住戸番号を付した住戸とする。
2 前項の専有部分を他から区分する構造物の帰属については、次のとおりとする。
一 天井、床及び壁は、躯体部分を除く部分を専有部分とする。
二 玄関扉は、錠及び内部塗装部分を専有部分とする。
三 窓枠及び窓ガラスは、専有部分に含まれないものとする。
3 第1項又は前項の専有部分の専用に供される設備のうち共用部分内にある部分以外のものは、専有部分とする。
これだけみても、ニュアンスが伝わりづらい箇所もあるため、次項で詳細を解説します。
第7条の解説
具体的に第7条の各項を確認してみましょう。
第1項「住戸番号を付した住戸」とは?
まずは、第1項にある
という部分です。
対象物件の専有部分となる所には、「住戸番号を付した住戸」である必要があります。
すなわち、各住戸には番号が付されている必要があり、専有部分であることを明確にしておく必要があります。
第2項の解釈は?
専有部分における、他から区分する構造物の帰属について、明確に示されています。
一号の「天井、床及び壁は、躯体部分を除く部分」であると記載があります。
躯体部分とは、マンションの構造部分となる梁や天井のコンクリートの部分で、壁紙等を貼っている外側の部分が該当します。
逆に、上塗り部分である、壁紙や内装などは専有部分扱いです。
また、二号は「玄関扉は、錠及び内部塗装部分」となっています。
こちらは、錠と内側の塗装した所までは専有部分という扱いで、上述の上塗り部分と同様の考え方です。
そして、玄関扉本体は共用部分という複雑な構成になっています。
さらに三号は「窓枠及び窓ガラスは、専有部分に含まれない」とありますので、共用部分扱いとなります。
第3項の解釈は?
こちらは「第1項又は前項の専有部分の専用に供される設備のうち共用部分内にある部分以外のもの」は専有部分とされています。
具体的にはどういうものを指すのか、イメージしやすいように紹介すると、
・エアコンの室外機
・専有部分内の給湯器やボイラー
などが考えられます。
専有部分内の配管や配線は、給水管、排水管、ガス管、電気配線、電話線などが該当します。
これらは、共用部分である共用縦管などから分岐し、住戸内部に入った部分は「専有部分の専用に供される設備」という扱いになります。
エアコンの室外機は、バルコニーや屋上という共用部分に設置されるものの、住戸専用の設備であり、共用部分ではなく専有部分のものであると考えらえます。
第7条「専有部分の範囲」の補足・注意事項は?
標準管理規約には、第7条の補足説明があります。
具体的には、以下のような項目です。
専有部分として倉庫又は車庫を設けるとき
この場合は、それぞれの倉庫又は車庫に番号を付ける必要があるということになります。
利用制限を付すべき部分及び複数の住戸によって利用される部分の考え方
「利用制限を付すべき部分」としては、玄関扉や窓サッシがおもに当てはまりますが、この部分は区分所有者が自由に変更することができない部分となっています。
すなわち、勝手にそれらを変更したり、色を塗ったりしてはならないという位置づけです。
すなわち、これらを共用部分として扱っています。
また、「複数の住戸によって利用される部分」は、エレベーターや階段など、普段居住者が利用する部分の位置づけで、当然共用部分となります。
この2点を除く部分を専有部分と位置付けています。
雨戸又は網戸の取り扱い
雨戸や網戸が付いている場合も、窓サッシ同様に共用部分として扱う必要があります。
そのため、網戸が破れた場合は、専用使用において管理責任がある区分所有者の負担で変更する必要があります。
専有部分の専用になるかどうかの扱い
こちらは設備機能に着目して決定するとされています。
例えば、エアコンの室外機であれば、エアコンという各区分所有者の持ち物であり、そこに対する設備であることから、専有部分、すなわち区分所有者のものという扱いになると考えられます。
専有部分の詳細
普段の生活の中で、専有部分か共用部分かを意識せずに使用していることが一般的です。
窓ガラスや玄関扉、バルコニーなどはマンションの共用部分であり、区分所有者の持ち物ではありません。
しかしながら、自分の所有物のように使っている方が大半でしょう。
なぜなら、窓ガラス等は専用使用部分という位置づけであり、区分所有者や居住者に対する専用使用権があるからです。
このように、区分けがしづらい点もありますので、専有部分とはどういう所なのか、確認しておきます。
以下、少々古いですが、平成17年に国土交通省が「マンション標準管理指針コメント」という書面の中で紹介した専有部分と共用部分の区分に関する資料から紹介します。
住戸内の区分
まず、住戸内における専有部分と共用部分の区分について紹介します。
一部紹介した箇所もありますが、図においては
・共用部分:窓枠、窓ガラス、玄関ドア枠、玄関ドア、バルコニー、廊下
となっています。
電気および排水管(スラブ上配管の場合)の区分
続いて、電気や排水管(スラブ上配管の場合)についてです。
スラブとは、躯体の中でも共用部分における床板のことを指します。
図においては、
・専有部分:メーターよりも住戸側の配線、住戸内分電盤等の配線
・共有部分:メーターよりも住戸と反対側の配線、共用配管・配線
となっています。
また、メーターは電力会社の貸与品扱いのため、どちらのものでもない扱いです。
そして、排水管の区分(スラブ上配管の場合)は
・専有部分:共用部分の配管の継手から住戸側の排水管、間仕切壁、住戸内の排水管
・共有部分:共用部分の配管、パイプスペース
給水管及びガス管の区分
さらに、給水管及びガス管も見てみます。
図において、給水管については
・専有部分:メーターよりも住戸側の給水管、住戸内の給水管
・共有部分:メーターよりも住戸と反対側の給水管、バルブ、共用配管
となっています。排水管同様、メーターは水道局の貸与品となります。
また、ガス管の区分も同様に、
・専有部分:メーターよりも住戸側のガス管、住戸内のガス管
・共有部分:メーターよりも住戸と反対側のガス管、バルブ、共用配管
となっています。
同様に、メーターはガス会社の貸与品となります。
排水管の区分(スラブ下配管の場合)
最後に、排水管の区分として、スラブ下配管の場合を確認しておきます。
図においては、
・専有部分:木造間仕切壁、スラブよりも住戸側の配管、住戸内の配管
・共有部分:スラブよりも住戸と反対側の配管、共用配管、パイプスペース
となっています。
スラブ上配管の場合との違いは、共用配管から継手を経て住戸内に入る配管でも、スラブに至るまでは共用部分扱いとなるということです。
スラブ上、スラブ下に配管がある場合には、それぞれ区分が異なることに注意が必要です。
専有部分を正しく把握しておくことが重要
今回は標準管理規約第7条を取り上げ、専有部分について紹介しました。
専有部分は、自宅のリフォームの際には区分所有者がその費用を負担しなければなりません。
特に床仕上の下に隠れている配管や電気は、普段触れるものではないことから、共用部分であると勘違いする可能性もあります。
一方で、一斉にマンション内の排水管工事を行う等、共用部分と一体で行う工事は、専有部分扱いであっても管理組合として区分けせずに工事することもできます。
※(注)工事をまとめて行うことができますが、必ずしも費用は管理組合が負担するとは限らない場合もあります
時としてそのような特殊な扱いになることから、各管理組合でのルールを確認する必要があるでしょう。
※標準管理規約は都度変更になるため、専用書籍はあるものの、法改正により古くなってしまいます。そのため、マンション管理センターのこちらの書籍の最新版
を確認されることをお勧めします。
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