理事長として管理組合総会における議事録の書き方についてよくわからない点があり、確認したい
または、
管理会社から送られてくる議事録について分からない点があるが、どう対応すればよいか
さらには…
総会や理事会決議事項について記載上の注意点があれば知りたい
などなど、総会や理事会の議事録について、分からない点などに疑問を持つ管理組合役員も多いでしょう。
議事録は、管理組合役員だけでなく、その場に出席していない区分所有者にも伝わるように、分かりやすく記載する必要があります。
基本的には、ビジネス文書同様に、相手が理解できるように、分かりやすく、要点を記載すればよいと考えられます。
特に国土交通省が定める議事録書式がある訳でもなく、どのように書く必要があるかなどの定めもありません。
そのような議事録ですが、客観的に見て分かりづらい点が発生することもあるでしょう。
そのため、今回は管理組合の総会や理事会の議事録を多数見てきている筆者が、議事録の作成ポイントを5個紹介します。
管理組合総会や理事会の議事録作成時に工夫したいポイント5つを紹介
今回紹介する内容は以下の通りです。
・管理組合総会や理事会の議事録の記載方法は?
・議事録の作成時に工夫したいポイントを5つ紹介
まずはじめに、かなり前になりますが、国土交通省が平成17年(2005年)にマンション管理におけるあるべき姿を提示した、「マンション管理標準指針」という資料があります。
その中に、総会や理事会の議事録の傾向や、あるべき姿について記載されているので、引用しながら紹介します。
次に、総会や理事会における議事録のひな型の紹介と、具体的な記載方法を、総会、理事会に分けて紹介します。
また、議事録を記載する際においても、記載方法には工夫がいります。
冒頭で紹介したとおり、その場に参加していない区分所有者にとっても内容が分かりやすいことが重要ですので、その点を意識した場合に対応しておきたい点を5つピックアップして紹介します。
国土交通省が総会や理事会議事録に対して求めるものは?
まずはじめに、平成17年(2005年)とかなり古いデータですが、国土交通省が「マンション標準管理指針」を通じて、マンションの維持・管理のため、「何を」「どのような点に」留意すべきかの指針を出しています。
そのデータを参考にしながら、総会議事録や理事会議事録の傾向を確認します。
総会議事録は区分所有者に配布することが望ましい?
総会当日はどのような流れで進行したのか、参加できなかった区分所有者も興味を持っていることと考えられます。
そのため、参加できなかった方のためにも、総会議事録は配布することが望まれます。
標準管理規約においても、必ず配布しなければならないという義務はなく、前回紹介した議事録の保管場所を掲示して、必要に応じて区分所有者又は利害関係人の求めに応じて、閲覧をさせることでよいと考えられます。
一方で、平成17年(2005年)とかなり古いデータですが、国土交通省の「マンション標準管理指針」の中には、次のような情報がありますので、引用して紹介します。
広義の意味での総会の広報は98.4%とほとんどの管理組合では実施していました。
そして、83.3%もの管理組合が、作成した総会の議事録を各戸に配布しています。
そして、国土交通省としても、「議事録等を戸別配布している。」を「標準的な対応」として求めていることが分かります。
総会議事の広報の方法ですが、配布に加え、議事録の掲示や広報誌に掲示するなど、様々な対策によって、総会の結果を伝えている傾向にあります。
理事会議事録は区分所有者への配布までは求められていない?
総会に対して、理事会の傾向はどうでしょうか?
同じく、国土交通省の「マンション標準管理指針」から確認してみましょう。
理事会議事の広報(理事会でどのような議題が話されているかの情報共有)は、80.2%もの管理組合が行っているという傾向でした。
また、以下に具体的な広報の手段を紹介します。
理事会議事録の配布が45.3%と総会よりもかなり低い水準にとどまっています。
また、理事会議事録の掲示や広報誌への掲載等も多少は実施されている傾向にあります。
この内容からも、国土交通省として、「理事会の議事は、総会議事のように、議事録等の戸別配布までは要しないものの、理事会の開催日時、議題等を広報する」ことを求めているといえます。
管理組合総会や理事会の議事録の記載方法は?
次に、総会や理事会の議事録の記載方法を紹介します。
雛形については、マンション管理士試験を取り仕切ったり、マンション管理センター通信の発行等、マンション管理情報を提供する、公益財団法人マンション管理センターの様式集
から引用して紹介します。
それぞれのひな型について、上記からダウンロードしてみてください。
総会の議事録は?
まずは、総会の議事録からです。
日時や開催場所等の基本事項の記載
管理組合総会の議事録に限らず、どの議事録にも同様の内容が記載されることが多いでしょう。
このひな形では具体的には次の内容が紹介されています。
(「●×管理組合第30期定時総会」など)
・開催日時(年月日と時間)
・開催場所
・組合員総数及び議決権総数
・出席組合員数と出席議決権数(委任状、議決権行使書含む)
・理事長からの組合員総数や議決権総数、出席組合員数と出席議決権数の報告
・出席や議決権から総会が成立しているか否か
日時や場所、組合員数や議決権総数により、以降議論される各議案が、可決要件を満たすかの目安となります。
また、そもそも出席組合員数と議決権によって、総会が成立するものであるのか、議事録にも記載しておくことが必要です。
このひな形にはないですが、総会の冒頭に議事録署名人を指名することが一般的であり、その点に触れておくことも考えられます。
議案の記載
各議案毎に、議案が承認されたか否かの記載が必要です。
また、賛成数や反対数を記載することで、客観的に見て可決されているのかも分かります。
そして、各議案において総会時に出された質疑応答内容も記載することが望まれます。
これらによって、後々どのような議論がなされたのか確認できるとともに、当日議場に参加できなかった区分所有者に対しても、どのようなやり取りがなされたのか、共有することができます。
総会を締める際の記載
議事について、全て総会で議論がなされ、可決か否決されたあとに、終了することとなります。
そのことが行われた締めの記載が必要となります。
年月と管理組合名、議事録署名人の署名と押印
最後が最も重要なところですが、総会開催年月と管理組合名を記載する必要があります。
さらに、議長とともに総会に参加した区分所有者の中から2名の署名が必要になります。
議長は理事長印を押印することが一般的ですが、他の2名は署名でも問題ありません。
また、電磁的方法により議事録を作成する際には、電子認証やサインでも問題なく、必ずしも実際ペンで記載する署名や朱肉を付けて理事長印を押す必要もありません。
理事会の議事録は?
続いて、理事会の議事録についても紹介します。
マンション管理センターが出しているひな型は、総会ほどしっかり記載されているものではなく、少しラフな感じのものでした。
日時や開催場所等の基本事項の記載
これは総会と同様ですが、ひな型では総会よりも少しシンプルです。
・日時と場所
・出席者(理事、監事、オブザーバーなど)
これぐらいシンプルで、日時や出席者等、開催されていることが分かればよいという形です。
仰々しい見出しは特に必要ありません。
本来なら、例えば標準管理規約第53条(理事会の会議及び議事)に従って、
などの記載が入っても良いかもしれません。
議題
各議題と、具体的な内容を記載するという非常にシンプルなひな型です。
全く理事会の議事録が無いよりも、もちろんあった方がよいですが、その最低限を行く感じのひな型と言っていいかもしれません。
逆に、あまり細かい書式にこだわらずに、理事会当日に議論された内容を、的確に記載することが求められていると言えるでしょう。
議事録の作成時に工夫したいポイントを5つ紹介
最後に、議事録の内容を記載するにあたって、筆者が考える議事録を記載する際に工夫したいポイントを5つ紹介します。
複数案がある場合はどの案が承認されたのか具体的に記載
総会議事録で見られる例として、例えば第1号議案で修繕積立金のシミュレーション案としてA案、B案、C案と複数案あった場合に、
としか記載がないこともあります。
可決されたのは分かるものの、A案、B案、C案のうちどれが可決されたのか分からず、将来的にどの案が可決されたのかが、「総会現場にいた人しか事実を知らない」みたいな状況になってしまいます。
また、これが管理計画認定制度等、修繕積立金が審査される場合は、どの案かが分からないということにもなります。
複数案がある場合は、
など、具体的な採用案を記載することが求められます。
議案書の挿入または議案書に書かれた内容を転記
議事録によくあるパターンとして、修繕積立金案として、前述のA案、B案、C案が上程され、A案が採用されたとします。
その場合に、前項のように
と記載されていれば、A案が採用されたことはわかるものの、どの案がA案だったのか、あとから見てもわかることが望まれます。
そのため、
・配布した総会議案書に提示したA案(さらに比較検討したB案、C案)を議事録の添付資料として挟み込む
などの工夫があれば、将来的に議事録を振り返った場合であっても、すぐに可決の経緯含め理解しやすいでしょう。
また、規約の変更がある場合は、一例として議案書に良く記載される以下のような対比表
決議内容(改正後) | 現行 |
(役員)第35条(中略) 2 役員は、総会の決議によって、組合員のうちから選任し、又は解任する。 |
(役員)第35条(中略) 2 理事及び監事は、総会の決議によって、組合員のうちから選任し、又は解任する。 |
も議事録にも記載していると、どういう内容が可決されたのか、より丁寧と言えるでしょう。
普通決議か特別決議かの記載
管理規約と照らし合わせれば、議案が普通決議なのか、特別決議なのかはわかるでしょう。
また、配布される議案書にも入っていることが一般的です。
議事録には、どちらの決議なのかを明確化するとともに、とりわけ特別決議の場合はその旨記載するのが良いかもしれません。
そして、特別決議の場合は、区分所有者数及び議決権の4分の3以上が必要です。
そのため、可決または否決された根拠として、賛成数や反対数についても具体的に記載するのが良いでしょう。
質疑応答を議事録内に入れる
マンション管理センターの総会ひな型案にもありましたが、質問に対する回答も入れておくことが良いと考えられます。
その場にいなかった方にも、経緯や管理組合としての方向性伝える等の効果も生まれるためです。
また、総会の場合は、開催にあたって事前に書面にて受けた質問に対する回答も、別途行うのもよいでしょう。
開かれた総会であることを示すことができるとともに、質問者が出席出来なかった場合であっても、的確に回答できるという効果も生まれます。
ただし、出席できなかった区分所有者の書面を通じての質問を議事録に入れるかどうかは管理組合の判断にもよるでしょう。
一方で、質問をしてきた区分所有者に回答することは必要と考えられます。
誰の発言かの明確化
議事録においては、議案の説明や区分所有者からの質問に対する回答など、誰の発言であったかの言質を取っておくことが多いでしょう。
総会の場合であれば「議長より」「議長の指名で管理会社より…」や、「副理事長より…」「監事より…」など、発言者を明確にすることも必要となります。
おもな役職だけで発言者の具体的な苗字は必要ありません。
また、同様に誰から質問があったかの苗字までは記載する必要はないと考えられます。
議事録は区分所有者が将来的に見ても分かりやすいものにしたい
今回は、総会や理事会の議事録の話題を中心に取り上げました。
12月は管理組合としても区切りであるところも多いでしょう。
そのため、今後は管理組合総会も開催されることとなります。
議事録は、総会に参加できなかった区分所有者があとから見ても分かるように仕上げておくことが重要です。
これは将来的に振り返ってみても、どのような経緯で決議がなされたのかを確認するにも有効な資料となります。
今回紹介した内容を踏まえて、管理組合としてよりよい議事録の作成になれば幸いです。
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