中小規模マンションでは、単位当たりの金額が上がる傾向にあります。
すなわち、戸当たりの管理費や修繕積立金負担が、比較的大きなマンションに比べ大きいこととなります。
今回、中小規模マンションの今後の管理の在り方について考察してみます。
中小規模マンションにおける管理費や修繕積立金の現状
まず、中小規模マンションの管理費や修繕積立金の傾向についてです。
マンション管理新聞と国土交通省のデータをもとに傾向を確認します。
マンション管理新聞のデータは半年に一度実施されている、「管理費等初期設定調査」のデータを活用します。
2022年度下半期(22年6月~11月)において新規で分譲されたマンションから596件、9,679戸のデータを、同新聞社が集計したものです。
平米当たりの基準としては、管理費等初期設定調査や、国土交通省の修繕積立金ガイドライン双方において、専有部分の床面積を対象としています。
管理費の傾向と課題
管理費の傾向として、専有部分床面積において平米当たり199円と、前半期187円に比べて増加しています。
首都圏では262円、近畿圏では201円となっています。
首都圏は前半期265円、近畿圏は189円でした。
そのため、首都圏は下がっているものの、近畿圏は上がっている傾向です。
また、管理費の戸あたりの全国平均としては以下の通りとなっています。
戸数 | ㎡当たり単価(円) |
2~20戸 | 295 |
21~40戸 | 214 |
41~60戸 | 187 |
61~80戸 | 179 |
81~100戸 | 178 |
101~150戸 | 175 |
151~200戸 | 210 |
201戸以上 | 241 |
出典:マンション管理新聞 2022年下半期管理費等初期設定調査 (戸数別)管理費・修繕積立金データ(㎡当たり)より抜粋
これを確認すると、新築ではありますが、
・次に201戸以上が241円
・3番目に21~40戸が214円
という傾向にあります。
201戸以上はタワーマンション等が多いと想定されます。
共用部分が充実しており、管理に関する費用が掛かる事が想定されます。
戸数が少ないマンションは、負担が大きくなってくることがデータで出ています。
修繕積立金の傾向と課題
次に、修繕積立金の傾向も見ていきます。
管理費等初期設定調査における修繕積立金の傾向
同様に、管理費等初期設定調査からも修繕積立金の傾向を見てみましょう。
平米当たり101円と、前半期96円に比べて増加しています。
調査以来、初めての100円越えとなったようです。
首都圏では111円
近畿圏では101円
となっており、前半期は
首都圏は同額の111円
近畿圏は102円
でしたので、ほぼ横ばい傾向にあります。
修繕積立金の戸当たりの全国平均としては以下の通りとなっています。
戸数 | ㎡当たり単価(円) |
2~20戸 | 107 |
21~40戸 | 99 |
41~60戸 | 102 |
61~80戸 | 119 |
81~100戸 | 97 |
101~150戸 | 95 |
151~200戸 | 102 |
201戸以上 | 112 |
出典:マンション管理新聞 2022年下半期管理費等初期設定調査 (戸数別)管理費・修繕積立金データ(㎡当たり)より抜粋
修繕積立金は戸あたりの傾向があまり見られずばらつきがあります。
81~150戸の中規模マンションが低水準でした。
それよりも小さいか大きなマンションで金額が高くなる傾向にあります。
マンションの修繕積立金に関するガイドラインのデータより
国土交通省によるマンションの修繕積立金ガイドラインの中の「計画期間全体における修繕積立金の平均額の目安(機械式駐車場分を除く) 」において、次のような表があります。
この表はマンション管理の専門家の中では比較的上がってくる表です。
国が提示する目安として重要な表であるとも言えるでしょう。
出典:国土交通省 『マンションの修繕積立金ガイドライン』より
こちらは戸数でなく、専有部分の床面積当たりの金額で算出されています。
地上20階未満においては、5,000㎡以下が小規模マンション、5,000~20,000㎡が中規模マンション、それ以上と20階以上が大規模マンションと位置付けられます。
小規模マンションでは335円
中規模では252~271円
大規模では255~338円
がそれぞれ平均となっています。
小規模マンションと20階以上のタワーマンションが同様の平均修繕積立金となる事は驚きの結果です。
傾向として、管理費等初期設定調査と相違ないとも読み取れます。
管理費等初期設定調査が新築ですが、修繕積立金ガイドラインは新築や中古問わずに算出されています。
各指標切り口には差があるものの、規模が小さいマンションは比較的高くなる傾向は変わりありませんでした。
中小規模マンションの課題解決策
管理費、修繕積立金の戸あたりや面積当たりの傾向を見てきました。
そこから対策を考えていけばいいのか、触れておきます。
前提:経年化するマンションが急激に増大する未来
前提ですが、今後経年化するマンションが増加傾向にあります。
国土交通省による、2021年末時点におけるデータになります。
築後30、40、50年以上の分譲マンション戸数の見込みは以下の通りです。
出典:国土交通省 『築後30、40、50年以上の分譲マンション戸数』資料より
マンションの建て替えや壊して更地にすることは簡単にはいきません。
そのため、経年マンションはますます増える傾向にあります。
2041年末には、築後30年以上のマンションは600万戸近くにもなります。
2010年代以前に建てられたタワーマンションもこの部類に入るでしょう。
また、築40年以上のケアが必要なマンションが424.4万戸と全体の約7割を占めました。
今後のマンションにおける経年劣化対策が非常に重要になってくると言えます。
小規模マンションの傾向と対策は
小規模マンションは、管理費の額、修繕積立金の額ともに、他の規模のマンションに比べて比較的高水準であることがデータから分かります。
そのため、日々の管理費用に加え、大規模修繕工事も比較的支出が見込まれます。
日々の管理費用は定期的に見直しが必要となってきます。
また、無駄な支出がないかをチェックする習慣が必要となるでしょう。
この点は管理会社に管理を任せている場合は、管理会社の意見だけではなく、理事会を中心とした管理組合内で明確な方針を持つべきです。
できれば、浮いた管理費は修繕積立金に回しておきたい所です。
一方の修繕積立金については、国土交通省の修繕積立金ガイドラインに沿った形で金額を調整していくことが望まれます。
理由として、管理計画認定制度の評価は上記の赤い表が使われるからです。
赤いマーカーの範囲に入っていることが評価の一定基準とされています。
その中に入っていないと適切に修繕積立金を徴収していない、管理に課題があるマンションという位置づけになってしまいます。
そのためには、管理費を極力修繕積立金に充当することも検討課題でしょう。
さらに、長期修繕計画により、将来実施すべき工事内容を想定して、早い段階から修繕積立金の額が適正であるか、考えていくことが望まれます。
中規模マンションの傾向と対策は
データから、20~30戸程度の小規模マンションほどシビアではない状況です。
しかしながら、80戸以下のマンションはそれなりの負担が強いられます。
小規模マンションでの対策を実施することに加え、区分所有者も小規模と比べて多くなることから、多くの区分所有者に問題意識とともに管理に関するかかわりを強く持って貰うことで、早くから将来を考えていくことが望まれます。
具体的に、マンションの将来を考えていく場に区分所有者が参加することが大切です。
また、アンケート等で課題認識を持って貰うことなども考えられます。
問題意識があればあるほど、合意形成も図りやすいこととなります。
結果的に、早期に将来に向けて考えていくことも可能となるでしょう。
それによって、修繕積立金の値上げ等も実行しやすいことが期待できます。
まとめ:中小規模マンションの未来に向けて
データを参考に、マンションの将来を考えてみました。
マンションの経年劣化の進行に伴い、今後益々修繕対応が必要となります。
急な修繕等の支出対応は難しいため、管理組合全体で区分所有者が協力する必要があります。
そして、一体となって長期的課題に取り組むことが、将来の成果を生みます。
とりわけ、中小規模マンションにおいて参考にしていただければ幸いです。
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