【規約解説】マンション標準管理規約第70条とは?細則の役割や作成のポイントを分かりやすく解説!

管理規約解説

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マンションの管理組合運営には、細かなルールが必要です。しかし、管理規約だけではすべてのルールを決めることは難しく、細則を活用することで適切な運営が可能になります。

この記事では、マンション標準管理規約第70条に定められた「細則」について、実務に精通しているマンション管理士が詳しく解説し、具体的な活用方法や注意点について紹介します。

【規約解説】【規約解説】マンション標準管理規約第70条とは?細則の役割や作成のポイントを分かりやすく解説!

今回紹介する内容は以下の通りです。

✅ マンション標準管理規約第70条とは?
✅国土交通省の補足解説
✅管理組合や区分所有者が注意すべきポイント

まず、最初の章では標準管理規約第70条の条文から「細則」について紹介します。

続いて、この条文についての補足事項や、注意しておくべき事項について国土交通省より提示されています。

さらに、その文面の解説を、イメージしやすい具体的な例を踏まえながら紹介します。

そして、最後の章では第70条「細則」の条文や補足事項を踏まえて、管理組合や区分所有者が注意しておいた方が良い点を、マンション管理士である筆者独自の視点から具体的に紹介します。

それでは、次章より当該条文について紹介します。

マンション標準管理規約第70条とは?

以下、条文となります。

(細則)
第70条 総会及び理事会の運営、会計処理、管理組合への届出事項等については、別に細則を定めることができる。

条文は、「管理規約だけでは細かいルールが決めきれない場合に、細則を作って補足できる」という意味です。

以下、具体的に説明します。

細則とは?管理規約との違いを解説

マンションには、「管理規約」という基本ルールがあります。これは、マンション全体の運営ルールを定めたもので、区分所有法(マンションに関する法律)に基づいて決められるものです。

しかし、管理規約だけではすべての細かいルールを決めることは難しく、個々のマンションの事情に応じた追加の決まりが必要になることがあります。そこで作られるのが「細則」です。

管理規約と細則の違い

項目
管理規約
細則
目的
マンション全体の基本ルール
管理規約を補足する具体的なルール
定方法
総会の特別決議(厳格)
総会の普通決議(柔軟)
ペット飼育の可否、理事会の設置
ペットの種類やサイズの制限、理事会の具体的な運営方法

 

どんな細則を作るべき?具体例を紹介

マンションによって事情は異なりますが、以下のような項目について細則を定めることが多いです。

細則には、マンションごとの事情に応じた具体的なルールを定める役割があります。例えば、当研究室の記事「マンション管理組合にある使用細則の種類を一挙紹介【是非参考に】」でも触れられているように、以下のような項目が細則に盛り込まれることが一般的です。

総会・理事会の運営に関する細則

  • 理事会の運営方法(開催頻度、議事録の作成・配布ルール)
  • 総会の議決方法(書面決議の活用、委任状の取り扱い)
  • 議案提出の期限(いつまでに議案を提出すべきか)

💡 ポイント!
理事会や総会の運営がスムーズに進まないと、管理組合の意思決定に支障をきたします。事前に細則でルールを決めておくことで、トラブルを防ぐことができます。

会計処理に関する細則

  • 会計の内容
  • 会計処理の原則
  • 会計上の職務分担

💡 ポイント!
お金の管理ルールを細則で明確にしておかないと、未納問題が発生したときに適切な対応ができません。特に、滞納者への督促手順 を決めておくことが重要です。

専有部分の使用・届出に関する細則

  • ペット飼育のルール
  • 専有部分のリフォームの事前申請
  • 住戸の賃貸・転貸の届け出申請

💡 ポイント!
特にペット飼育については、「どんな種類・サイズのペットが飼えるのか」「飼育者の遵守事項」などを細則として明文化 することがトラブル回避につながります。貴サイトの記事「使用細則とは?」でも紹介されているように、使用細則で「詳細な条件」を定める ことが重要です。

共有部分・共用施設の利用に関する細則

  • 駐車場・駐輪場の使用ルール
  • ゴミ出しのルール
  • 集会室・ゲストルームの利用方法

💡 ポイント!
特に駐車場・駐輪場の利用ルール は、トラブルの元になりやすいので、細則で明確にしておくべき重要なポイントです。

国土交通省の補足解説

次に、第70条の条文に加えて、国土交通省の補足事項について、理事や組合員でも理解しやすいように、筆者の解説を交えて紹介します。

第70条関係
細則は他に、役員選出方法、管理事務の委託業者の選定方法、文書保存等に関するものが考えられる。

以下、具体的に例を挙げながら解説します。

役員選出方法の細則

理事長や理事の選び方にルールを作ることで、公平で円滑な組合運営が可能になります。
例えば、以下のようなルールを細則として定めることが考えられます。

🔹 役員の資格要件

  • 区分所有者本人のみに限定するか、同居の家族も対象にするか
  • 投資用に所有している人(居住していないオーナー)の立候補可否
  • 80歳以上の高齢者は役員候補から除外可能などの条件

🔹 選出方法

  • 立候補制か、輪番制か(公平性を考慮)
  • 役員の任期(例:1年、2年など)
  • 再任の可否(何期まで可能か?)

💡 ポイント!
理事のなり手がいない場合に備えて、外部の専門家(マンション管理士など)を理事として登用できるかどうかも細則で定めておくと安心です。

管理事務の委託業者の選定方法の細則

マンション管理会社や専門業者など、管理業務を外部に委託する場合、その選び方の基準を細則で決めておくと、透明性の高い契約が可能になります。

🔹 業者選定の基準

  • 複数の管理会社から見積もりを取る(相見積もり)の義務化
  • 総会の決議を経て業者を決定するルール
  • 管理業務の範囲を明確にし、契約内容の事前説明を義務化する

🔹 契約期間・更新のルール

  • 管理会社との契約期間は3年を上限とし、更新時に見直しを行う
  • 契約満了前に管理組合で再評価を実施する

💡 ポイント!
管理会社と契約する際、長期間見直しをしないと、不適切な業務があっても放置されるリスクがあります。細則で選定・更新のルールを明文化しておくことが重要です。

文書保存に関する細則

管理組合の活動を記録するために、文書の保存期間や管理方法を細則で定めることが望ましいです。

🔹 保存するべき文書の種類

  • 総会・理事会の議事録(何年間保存するか?)
  • 管理組合の会計帳簿・決算報告書(最低でも5年、可能なら10年保存)
  • 修繕工事の契約書・報告書(マンションの長期修繕計画に関わるため、できるだけ長期間保存)

🔹 保存方法のルール

  • 紙の保管だけでなく、デジタル化してクラウド保存を認めるか?
  • 理事会や管理会社が文書を改ざんできない仕組みを作る

💡 ポイント!
「過去の議事録が見当たらない」「修繕履歴が分からない」といった問題が発生しないように、しっかりとルールを決め、引き継ぎがスムーズにできる体制を作る ことが大切です。

細則の制定・運用における注意点

これまでの第70条の条文ならびに、国土交通省の補足事項を補足事項を踏まえて、筆者が追加で注意すべき点について、具体的に紹介します。

細則の制定・変更手続きを明確にする

細則は管理規約とは異なり、総会の決議で比較的容易に制定・変更できる場合が多いですが、その手続きを曖昧にすると、管理組合運営の安定性を損なう可能性があります。

🔹 注意すべきポイント

  • 細則の新設・改定はどのタイミングで制定するのか?
  • 住民の意見をどの程度反映させるのか?(一定数の要望があれば改定を検討するルールなど)
  • 細則が管理規約と矛盾しないように、チェック体制 をどうするか?

💡 ポイント!
細則の頻繁な改定は混乱を招く一方、時代や状況に合わなくなった細則を放置すると管理に支障が出ます。バランスの取れた運用が求められます。

細則と管理規約の整合性を確保する

細則は管理規約の詳細ルールを定めるものですが、内容が管理規約と矛盾していると、法的に無効となる場合があります。

🔹 注意すべきポイント

  • 細則の内容が 管理規約の趣旨を逸脱していないか?
  • 逆に、管理規約が改定された際、既存の細則が矛盾しないか定期的に見直す 必要がある
  • 法令(区分所有法など)との整合性 もチェックする

💡 ポイント!
細則は管理組合独自のルールを作るためのものですが、規約や法律と矛盾すると無効になり、トラブルのもとになります。

総会で細則の「見直し・改定」を検討する

細則は一度決めたら終わりではなく、住民のニーズや時代の変化に応じて見直す必要があります。総会の場で改定案を提示し、住民の意見を聞くことが望ましいです。

🔹 総会で見直しを議論すべきタイミング

  • 法律の改正があったとき(例:管理組合に関する法改正)
  • 住民構成やライフスタイルが変化したとき(例:高齢化の進行、賃貸比率の増加)
  • 実際に運用してみて問題が発生したとき(例:細則の内容があいまいでトラブルが発生)

💡 ポイント!
定期的に「細則の見直し」を総会の議題として挙げ、住民と合意形成を図るプロセスを組み込む ことが理想的です。

細則の作りすぎに注意!バランスを考える

細則はマンション管理を円滑に進めるために重要ですが、作りすぎることで逆に運営が複雑になり、住民の負担が増えてしまうことがあります。そのため、「本当に必要な細則か?」を慎重に検討し、総会で適切なバランスを取ることが大切です。

細則を増やしすぎるデメリット

ルールが複雑になり、住民が把握しきれなくなる
 → 「細則が多すぎて覚えられない」「新しいルールが増えて混乱する」という事態に。

細かいルールが逆にトラブルを引き起こす
 → 例えば「ゴミの出し方に細かい規則を作りすぎた結果、住民同士の指摘が増えて対立する」など。

運用の負担が増え、管理組合の対応が煩雑になる
 → 細則が増えると、違反者への対応や定期的な見直しが必要になり、理事会の負担が増大。

理事会の裁量がなくなり、柔軟な対応ができなくなる
 → すべてを細則で定めると、イレギュラーな事態に対応しにくくなる。

総会で細則の「必要性」を議論する

細則を作る前に、本当に総会で承認を得てまでルール化する必要があるのか?を見極めることが大切です。

💡 総会で確認すべき3つのポイント

  1. 管理規約でカバーできない事項か?
     → 既に管理規約で決まっていることを細則で重複して定める必要はない。
  2. 住民にとって分かりやすく、守りやすいルールか?
     → 複雑になりすぎると、住民が細則を守りにくくなる。
  3. 柔軟な運用ができる余地を残しているか?
     → 必要以上に厳格なルールにしすぎないように注意。

シンプルで分かりやすい細則を目指す

「細則はできるだけ少なく、シンプルに」を意識することで、住民がルールを理解しやすく、管理組合の負担も減らせます。

✅ 本当に必要なルールだけを定める(例:駐車場やペットなどトラブルになりやすいもの)
✅ 余白を持たせて、柔軟な対応ができるようにする(細かく決めすぎない)
✅ 運用しやすいルールにする(チェックや罰則の負担が大きくならないように)

細則の数が多くなるほど、管理の負担や住民の不満が増える傾向にあるため、総会で「シンプルな細則のあり方」をしっかり検討することが重要です!

細則を適切に活用し、管理組合の円滑な運営を目指そう

細則は、管理組合の運営をスムーズにするための大切なルールですが、以下のポイントを押さえることが重要です。

  • 管理規約との整合性を確保する
    細則が管理規約と矛盾しないように注意しましょう。
  • 細則の制定・変更手続きを明確にする
    事前にルールを決めておくことで、運用時の混乱を防ぎます。
  • 過剰な細則は避ける
    細かすぎるルールはかえってトラブルの元になります。
  • 総会で定期的に見直しを行う
    運用状況を踏まえ、適宜修正することが理想的です。

細則は、適切に運用すれば管理組合の円滑な運営に役立ちます。本記事を参考に、自身のマンションに適した細則のあり方を検討してみてください。

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