自治会加入率はどのくらい?横浜市データで見る、管理組合と自治会の“危険な線引き”

マンション管理

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横浜市内でマンション管理に携わる皆様にとって、避けて通れないのが「自治会・町内会」との関わり方です。近年、全国的に加入率の低下がニュースとなっていますが、私たちの足元である横浜市では今、何が起きているのでしょうか。

本記事では、令和7年(2025年)3月から5月にかけて実施され、2026年1月に横浜市市民局が発表した最新の調査結果「令和7年度 自治会町内会アンケート調査報告書」を一次資料として徹底分析します。マンション管理組合が直面している「自治会問題」の正体と、法的なトラブルを未然に回避するために理事会が取るべき実務的な整理方法を、マンション管理士の視点から解説します。

横浜市の自治会加入率はどのくらいか【最新公式データ】

自治会町内会の加入状況は、地域コミュニティの状態や、行政施策の浸透度を把握するための一つの参考指標とされています。まずは、最新の統計データから横浜市の現状を俯瞰し、私たちが住むマンションが置かれた立ち位置を確認しましょう。

横浜市が公表する自治会加入率の全体像

横浜市が2026年1月に公表した「令和7年度 自治会町内会アンケート調査報告書」によると、市全体の加入率は、令和3年度の69.4% → 令和7年度の65.3%へ、4年連続で低下しています。

※引用 横浜市 自治会町内会加入世帯及び加入率の推移

区別に見ると、その差はさらに顕著です。

  • 加入率が高い区:金沢区(74.7%)、旭区(72.0%)、栄区(71.4%)
  • 加入率が低い区:都筑区(54.8%)、中区(55.2%)、西区(57.6%)

※引用 横浜市 自治会町内会加入世帯及び加入率の推移

特に都筑区や中区、西区といったマンション供給が盛んなエリアでは、すでに「住民の半数近くが非加入」という状況が定着しています。これは、マンション管理の主な課題と解決策でも触れている「居住形態の多様化」が、地域組織の維持に大きな影響を与えていることを示唆しています。

この数字をそのままマンションに当てはめてはいけない理由

この「65.3%」という数値を読む際に注意したいのは、戸建て住宅地のデータが大きく影響している点です。調査対象団体の内訳を見ると、「マンションを区域とする自治会」が18.6%、「団地を区域とする自治会」が11.4%で、両者を合わせて30.0%がマンション・団地系に該当します。

※引用 横浜市 「令和7年度 自治会町内会アンケート調査報告書」6ページ

つまり、調査対象の7割は主に戸建て住宅地を中心とした自治会であり、市全体の加入率65.3%を、そのまま分譲マンションの実態に当てはめて考えるのは慎重であるべきです。加えてマンション・団地では、新築時の一括加入や管理費との同時徴収といった運用によって、数字上の加入率が実態より高く見えているケースもあります。

だからこそ、この章では「市全体の数字」と「マンションの現場感」を切り分けて整理します。

横浜市調査から見える「加入・運営」の構造問題

なぜ、これほどまでに加入率の低下が止まらないのでしょうか。横浜市の詳細なアンケートデータからは、住民が抱く「心理的な壁」と、運営側である自治会役員が直面する「疲弊」の実態が浮かび上がってきます。

加入を断る理由は「メリット不在」ではなく「負担感」

住民が自治会への加入を断る、あるいは退会を希望する理由として、最も多い回答は「班長や役員をやりたくないから(65.1%)」でした(横浜市調査でも、未加入理由のトップ) 。次いで「ほとんど家にいない、活動に参加できない(48.0%)」、「加入メリットが分からない(43.1%)」と続きます 。

※引用 横浜市 「令和7年度 自治会町内会アンケート調査報告書」18ページ

興味深いのは、「メリットが分からない」という不満よりも、「役員負担」という実務的なコストを回避したいという動機が強く出ていることです。これは、管理組合では何度も言われてきている「役員のなり手不足」という課題が、任意加入である自治会において、より表面化しやすい形で現れていることを裏付けています。

行政からの依頼事項が7割以上の団体の負担に

一方で、運営する側の自治会役員の苦悩も深刻です。今回の調査では、回答した団体の77.9%が「行政からの依頼事項が負担だと感じるものがある」と回答しています 。 具体的には、民生委員などの「委嘱委員の推薦(50.1%)」や、大量の回覧板・ポスター掲示などの「情報周知」が負担として挙げられています 。

※引用 横浜市 「令和7年度 自治会町内会アンケート調査報告書」23ページ

自治会が「行政の下請け機関化」している現状が、役員になることの心理的ハードルをさらに高め、結果として加入率を押し下げるという悪循環に陥っているのです。

管理組合と自治会は「そもそも別物」である

マンション内で活動していると、管理組合と自治会が混同されがちですが、これらは法的根拠も目的も全く異なる団体です。この「一線」を曖昧にすることが、将来的なトラブルが顕在化する要因となります。

リーガルリスクの境界線:判例が示した「二段階の整理」

最も重要な違いは、管理組合が区分所有法に基づく「強制加入団体」であるのに対し、自治会は個人の自由意思に基づく「任意加入団体」であるという点です。

この原則を明確にしたのが、最高裁判所平成17年(2005年)判決です。同判決は、自治会を任意団体と位置づけ、住民には「退会の自由」があることを認めました。これにより、自治会への加入や会費負担を強制することはできない、という大原則が確立されました。

その後、この最高裁判決の考え方を前提として、平成19年(2007年)の下級審判決(東京高裁・東京簡裁系事案)において、管理組合が総会決議や規約を根拠に「自治会費を管理費と一緒に徴収する」運用は、区分所有法で定められた管理組合の目的(建物等の管理)の範囲を超えるものであり、無効と判断されています。

こうした判例の積み重ねを受け、現在では、管理組合と自治会・町内会の役割を明確に分け、会計を完全に分離することが、マンション管理における標準的なリーガルチェックと位置づけられています。

この線引きを曖昧にしたまま運用を続けることは、理事会自身が意図せず法的責任を問われるリスクを抱え込むことにつながりかねません。

「昔からの慣習」が通用しない住民構成の変化

「うちは新築時から一括徴収だから問題ない」と考えるのは危険です。国土交通省の「マンション標準管理規約」からも、かつて存在したコミュニティ条項は整理されました。現在のマンションでは、購入時の経緯や地域との関係を共有していない転入者や賃貸居住者が増えており、「なぜ支払うのか」「その根拠は何か」という問いが、これまで以上に可視化されやすくなっています。

その結果、「法的根拠のない徴収」に対して厳しい目が向けられるようになり、慣習に甘んじた運用は、理事会が「不当利得返還請求」などの訴訟リスクを背負う可能性を生じさせます。

管理組合と自治会を“混ぜたまま”にする5つのリスク

「面倒だから今のままでいい」という先延ばしは、マンション運営に対する信頼性を損ない、結果として資産価値に影響を及ぼす可能性があります。曖昧な運用を続けた結果、理事会が直面する可能性のある具体的なリスクを整理しましょう。

会計の混同が招く「流用」の疑い

管理組合の修繕積立金や管理費を、自治会の夏祭りや親睦イベントなどの費用に充当することは、区分所有法上の「目的外支出」に該当する可能性があります。たとえ少額であり、長年慣行として続いてきたものであっても、支出目的が管理組合の本来業務と無関係であれば、その正当性は問われかねません。

実務上は、会計監査や総会の場で指摘されることを契機に、反対派の住民から「善管注意義務違反」を主張されるケースが見られます。こうした指摘は、金額の大小よりも「説明できない支出が存在すること」自体が問題視されやすく、結果として理事会への不信感を高める要因となります。特に資産価値の維持を重視する管理組合にとって、会計の透明性を欠く状態は、長期的なリスクとして無視できません。

防犯カメラと補助金の複雑な関係

横浜市の調査によれば、86.7%の自治会が防犯カメラを「必要」と回答しており、防犯意識の高さ自体は明確です。一方で、防犯カメラの設置・運用には、プライバシーへの配慮や継続的な維持管理コストといった、慎重な判断を要する課題も伴います。

※引用 横浜市 「令和7年度 自治会町内会アンケート調査報告書」37ページ

例えば、管理組合が設備として防犯カメラを設置し、日常の運用や管理を自治会が担うような場合、故障時の修理費用を誰が負担するのか、映像データの管理責任はどこに帰属するのかといった点が曖昧になりがちです。こうした整理が不十分なまま運用を続けると、万が一の画像漏洩やトラブル発生時に責任の押し付け合いとなり、住民間の紛争に発展する恐れがあります。

役員なり手不足の「共倒れ」

自治会と管理組合の役員が実質的に同一のメンバーで構成されている場合、負担感や不満が双方の組織に波及しやすくなります。本来は別組織であるにもかかわらず、役員個人に過度な責任が集中することで、活動そのものへのモチベーションが低下するケースも少なくありません。

特に、経年化が進む中小規模マンションでは、そもそもの担い手が限られており、管理組合業務と自治会業務を同時にこなすことが常態化しがちです。この状態が続くと、役員の疲弊から意思決定が滞り、結果として管理体制が機能不全に陥る、いわゆる「管理不全」への入り口となるリスクが高まります。

行政補助金の申請と手続の不備

自治会向けの補助制度では、申請主体の名義、使用する口座、収支の管理方法が明確に分かれていることが前提とされる場合が多く見られます。そのため、管理組合と自治会の会計が混在していると、申請段階で書類の差戻しや追加確認を求められる可能性が高まります。

実務上は、名義や会計区分の不一致が原因で、補助金の交付が遅れたり、結果的に申請を断念せざるを得なくなったりするケースもあります。こうした手続上の不備は、自治会活動そのものを停滞させるだけでなく、管理組合と自治会双方の運営に無用な負担を生じさせる点に注意が必要です。

賃貸居住者の疎外による住環境の悪化

分譲オーナーのみで構成される管理組合が、自治会業務まで事実上担ってしまうと、マンション内に居住する賃貸居住者(占有者)が、地域コミュニティから距離を置かれがちになります。自治会活動が「所有者向けのもの」として運用されることで、占有者が関与する機会を失うケースも見受けられます。

しかし、ゴミ出しルールの遵守や騒音への配慮など、日常の住環境を左右する事項においては、占有者の協力が不可欠です。自治会機能が形骸化し、情報共有やルール周知が十分に行われなくなると、結果として住環境の悪化を招く可能性が高まります。

実務としての整理術:3つの出口戦略

では、私たちは具体的にどう動くべきでしょうか。横浜市の現状を踏まえ、法的安定性と住民の利便性を両立させるための「制度の適正化」に向けた3つの戦略を提示します。

完全分離型:法的リスクを大幅に低減させる

会計、徴収、組織をすべて明確に切り離し、管理組合と自治会を完全に別団体として運営する方法です。管理組合は区分所有法に基づく本来業務に専念し、自治会は加入を希望する住民のみが会費を負担して活動します。実際に、筆者が関与している管理組合の中でも、自治会を管理組合とは完全に分離して運営している事例が見られます。

この方式は、管理組合が自治会活動に直接関与しないため、法的な整理が最も明快であり、将来的な紛争リスクを大幅に低減できる点が特徴です。

メリットとしては、理事会の責任範囲が明確になり、非加入者からのクレームや返還請求といった問題が生じにくくなります。一方で、デメリットとしては、自治会側に集金や事務負担が集中し、結果として加入率が下がる可能性がある点を理解しておく必要があります。

業務受託型:移行期の現実的な選択

管理組合が自治会から「会費徴収などの事務」を受託し、一定の事務代行を行う形態です。完全分離に踏み切る前段階として採用されるケースも多く、現状の運用を大きく変えずに整理を進められる点が特徴です。

この方式を採る場合、管理規約に徴収事務代行の根拠を明記すること、および自治会に加入しない選択肢があることを住民に明確に周知することが不可欠となります。

実務上のポイントは、自治会費を管理費とは明確に区別し、「預り金」として処理することです。これにより、管理組合の収支と自治会の収支を切り分け、会計上の混同や説明責任の問題を回避しやすくなります。

自治会解消・一本化:究極の効率化

自治会を解散し、防災訓練や清掃活動などの必要最低限の活動を、管理組合の「交流活動」として規約上に位置づける方法です。団体を一本化することで、役員や会計を集約し、運営負担を大きく軽減できる点が特徴です。

一方で、この方式を選択すると、自治会を前提とした行政補助金や支援制度が利用できなくなる不利益が生じます。そのため、活動内容や資金計画を事前に整理した上での判断が必要です。

特に役員のなり手不足が深刻なマンションでは、管理組合の法定業務は外部管理者方式(第三者管理者/外部管理者方式)に委ね、地域性や任意性を伴う活動については、過度な期待をせず必要最小限に整理するという考え方も検討に値します。

横浜市データから学ぶ「これからのコミュニティ」

最後に、今回の調査データから見えてくる、未来のマンションコミュニティの在り方について、実務と専門家の視点から考察します。

デジタル化が負担軽減の「特効薬」になる

横浜市の調査では、役員間の連絡にLINEを用いている団体が61.9%に達するなど、デジタル化が着実に進んでいます 。 アナログな集金や対面会議をデジタル化するだけで、現役世代の参加ハードルは劇的に下がります。管理組合としても、マンション管理計画認定制度の取得などを目指す過程でIT活用を推進し、効率的な情報伝達基盤を構築すべきです。

災害対策を共通のゴールにした連携

自治会の加入率が下がったとしても、大地震などの災害時には、「マンション住民」と「地域」が運命共同体となる現実は変わりません。横浜市の調査においても、自治会活動の中で「防災・防犯」が常に上位に挙げられており、この傾向は全国の多くの地域に共通するものと考えられます。

管理組合と自治会は、日常の運営や会計については明確に線引きを行いつつも、「防災」という共通の目的においては、互いの情報・人材・拠点を補完し合う関係を築くことが重要です。こうした過度に混ざらず、しかし必要な場面では連携する「大人のパートナーシップ」こそが、横浜に限らず、これからの全国のマンションに共通して求められる姿だと言えるでしょう。

数字が示すのは「参加の強制」から「関係の再設計」への転換

横浜市の自治会加入率65.3%という数字は、「全員加入が当たり前」という時代の前提が、すでに成立していないことを示しています。

重要なのは、加入率の上下そのものではなく、参加のあり方が変化しているという現実をどう受け止めるかです。管理組合の理事会には、感情論や慣習に頼るのではなく、ルールと線引きを明確にした上で、無理のない関係性を再設計していく姿勢が求められています。

こうした視点は横浜市に限らず、全国のマンションに共通する課題であり、これからのマンション管理における重要な判断軸になると言えるでしょう。

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