管理計画認定のカギ!マンション規約に必須の3つの重要項目とは? – 適正管理でマンション価値を向上

マンション管理

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マンションの管理計画認定制度は、適切な管理が行われているマンションを地方公共団体が認定する、マンションの管理の適正化の推進に関する法律に基づく制度です。この制度の目的は、マンションの管理状況を「見える化」し、区分所有者が適正な管理に取り組むことを促すとともに、購入者などにも管理状況が分かりやすいようにすることです。

この認定を受けるためには、国の定める一定の基準を満たす必要があります。横浜市でも2022年11月からこの制度が開始されており、2025年3月時点で認定件数が200件を突破するなど、全国トップクラスの実績となっています。自治体によっては独自の基準を設けている場合もありますが、国が定めるチェック項目は共通しており、横浜市には独自の基準はありません(2025年5月時点)。

認定基準は多岐にわたりますが、中でも管理規約に特定の項目が定められているかどうかが重要な審査ポイントとなっています。今回は、特に重要視される管理規約に関する3つの項目に焦点を当て、その内容と重要性について解説します。

マンション管理計画認定制度とは?

マンション管理計画認定制度は、改正された「マンション管理適正化法」により新たに創設された制度です。マンションの管理組合が作成した管理計画を地方公共団体(横浜市など)に申請し、一定の基準を満たしていれば認定を受けられます。

この制度は、区分所有者が自らマンションの資産価値を守り、快適な住環境を確保できるように創設されました。認定を取得することで、適正に管理されているマンションとして売買時に市場で評価されることが期待されます。

また、マンション共用部分リフォーム融資の金利優遇や、認定マンション購入者向けのフラット35金利優遇などのメリットもあります。さらに、固定資産税の減額を受けられる場合もあります(マンション長寿命化促進税制)。

認定の有効期間は5年間で、申請にあたっては管理組合の総会決議が必要です。認定基準は全部で16項目(自治体独自基準を除く)あり、全てを満たす必要があります。

管理計画認定の重要ポイント!規約に定めるべき3つの項目

管理計画認定の基準には、管理組合の運営、管理規約、経理、長期修繕計画などに関する項目が含まれています。その中の「管理規約」に関する基準として、以下の3点が特に重要視されています。これらの項目が、標準管理規約(単棟型)の該当条項に相当する内容で規約に定められているかが審査されます。

緊急時等における専有部分への立ち入り(標準管理規約第23条)

マンションにおいて、専有部分である各住戸は居住者のプライバシーが尊重されるべき場所であり、原則として立ち入ることはできません。しかし、生命や建物に危険が及ぶような緊急時には、例外的な対応が必要となります。この点について、標準管理規約第23条では以下のように定められています。

標準管理規約第23条(必要箇所への立入り)によれば、管理を行う者(理事長など)は、管理を行うために必要な範囲内において、他の者が管理する専有部分又は専用使用部分への立入りを請求することができます。そして、立入りを請求された者は、正当な理由がなければこれを拒否してはなりません。正当な理由なく拒否した結果生じた損害は、その拒否した者が賠償する責任を負います。

さらに、第4項ではより強い権限が規定されています。「理事長は、災害、事故等が発生した場合であって、緊急に立ち入らないと共用部分等又は他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがあるときは、専有部分又は専用使用部分に自ら立ち入り、又は委任した者に立ち入らせることができる」。これは、正当な理由なく拒否された場合であっても、緊急時には理事長等が強制的に立ち入ることができるという内容です。

想定される具体的な立ち入り事例としては、以下のようなケースがあります。

✅火災等の事故が発生した際。
✅高齢者が急に体調が悪くなった、または暫く音沙汰がなく安否が確認できない場合。人命を最優先とするため、専有部分への入室が必要になることがあります。
✅なんらかの要因で室内から出れなくなった場合。
専有部分や専用使用部分から漏水が発生し、階下の住戸に被害が広がっている場合。特に留守中の漏水は、居住者が帰宅するまで待っていると被害が甚大になる可能性があるため、理事長または委任した方が立ち入って止水などの対応が必要となることがあります。

管理計画認定制度では、マンションの管理規約に災害等の緊急時や管理上必要なときの専有部分への立ち入りについての定めがあることが認定基準の一つとなっています。これは、将来来るべき災害への対策としても有効であり、マンションとして安全対策が取られているかという重要な論点と言えます。

なお、第4項の実効性を高めるために、管理組合が各住戸の合鍵を預かっておくことも考えられますが、プライバシーの問題などがあるため、各マンションの個別の事情を踏まえて検討する必要があります。例えば、一人暮らしの高齢者世帯や長期不在となる居住者、物件売却のため不在な状態などの場合に、個別の合意に基づいて合鍵を預かることが考えられます。

修繕等の履歴情報の保管(標準管理規約第32条第6号)

マンションの長期にわたる維持管理には、計画的な修繕が不可欠です。標準管理規約第32条は、管理組合が行うべき具体的な業務を列挙しており、その第6号において「修繕等の履歴情報の整理及び管理等」が管理組合の業務として定められています。

ここでいう「修繕等の履歴情報」とは、マンションの建物や設備の維持管理に関する様々な情報を指します。具体的には、以下のような情報が含まれます。

✅大規模修繕工事、計画修繕工事、設備改修工事などの修繕の時期、箇所、費用、工事施工者など。
✅設備の保守点検の記録。
✅建築基準法や消防法などに基づく法定点検の報告(特定建築物定期調査報告、建築設備定期検査報告、防火対象物定期点検報告など)。
✅耐震診断結果。
✅石綿(アスベスト)使用調査結果。

これらの修繕履歴情報を整理して保管し、後に参照できるようにしておくことが必要です。これは、将来の修繕計画を適切に策定・実施するために非常に有効だからです。

例えば、前回の修繕がいつ、どこで、どのような内容で行われたか、費用はいくらかかったかといった情報があれば、次の修繕時期や工事内容、概算費用をより正確に予測することができます。これにより、長期修繕計画の信頼性が向上し、安心した管理組合運営につながります。

管理計画認定制度では、マンションの管理規約に修繕等の履歴情報の管理等についての定め(標準管理規約(単棟型)第32条第6号に相当する規定)があることが基準の一つとされています。これは、マンションの資産価値を長期にわたって維持していく上で、過去の修繕履歴を適切に管理し、将来に活かす体制が整っているかを確認する重要な項目と言えるでしょう。

管理組合の財務・管理に関する情報の提供(標準管理規約第64条第3項)

管理組合の運営の透明性は、組合員やマンションに関心を持つ人々にとって非常に重要です。標準管理規約第64条は、管理組合における会計帳簿や長期修繕計画書、設計図書、修繕履歴情報といった「帳票類等」の作成と保管について定めています。これらの書類は、組合員または「利害関係人」からの理由を付した書面による請求があった場合に、閲覧させる義務があります。

さらに、第64条第3項では、閲覧の対象となる管理組合の財務・管理に関する情報について、組合員または利害関係人の請求に基づき、求める情報を記入した書面を交付することが可能とされています。

ここでいう「利害関係人」とは、法律上の利害関係がある者を指します。具体的には、敷地や専有部分に対する担保権者、差押え債権者、マンションの賃借人、そして組合員からの媒介の依頼を受けた宅地建物取引業者などが該当します。単に事実上の利益・不利益を受ける者や親族関係にある者などは含まれません。

提供される可能性のある「管理組合の財務・管理に関する情報」の代表的な例としては、以下のようなものがあります。

✅大規模修繕工事等の実施状況や今後の実施予定
✅長期修繕計画や修繕積立金計画。
修繕積立金の積立て状況(マンション全体の滞納状況を含む)。
✅ペットの飼育制限や楽器使用制限といった、規約や使用細則に関する情報。
✅駐車場や駐輪場の空き状況など、共用施設の利用に関する情報。

これらの情報が外部に開示されることによって、優良な管理状態にあるマンションは市場評価が高まることが期待されます。特に、中古マンションの購入を検討している人にとっては、管理組合の財務状況や修繕計画、過去の修繕履歴、トラブルの有無といった情報は、物件を選ぶ上で非常に重要な判断材料となります。

情報の提供方法としては、閲覧だけでなく、書面での交付(コピーを渡すなど)や、電磁的方法(PDFなどのデータをメール送付するなど)も可能です。これらの情報提供に費用がかかる場合(コピー代やデータ作成費用など)は、請求した相手に費用負担を求めることができます

管理計画認定制度では、管理規約に管理組合の財務・管理に関する情報の書面の交付(または電磁的方法による提供)についての定め(標準管理規約(単棟型)第64条第3項に相当する規定)があることが基準の一つとされています。これは、管理組合の透明性を高め、円滑な不動産取引にも寄与するための重要な項目であり、管理組合にとってもこれらの方向性がますます求められていると言えます。

まとめ:規約整備で適正管理とマンション価値向上へ

今回解説した3つの管理規約項目(緊急時等の立ち入り、修繕履歴の保管、財務・管理情報の提供)は、マンションの安全確保、計画的な建物維持、そして透明性の高い管理運営を実現するために不可欠な要素です。これらの項目が管理規約に明確に定められ、適切に運用されていることは、管理計画認定を受ける上での重要な基準となります。

管理計画認定制度の基準に照らし合わせて管理規約を見直すことは、自らのマンションの管理状況をチェックする良い機会となります。もし規約に不足がある場合は、総会での決議を経て整備を進めることが望ましいでしょう。規約が整備され、それに従って適切な管理が行われているマンションは、管理の質が高まっていると評価され、結果としてマンションの資産価値の維持・向上にもつながることが期待できます。

今後、全国の各地方自治体で管理計画認定制度が進められていく中で、管理状況次第でマンションの価値が大きく左右されると考えられます。管理組合においては、これらの重要項目を含め、管理規約を適切に整備し、常に法令に則った最新の状態に保つことが求められていくでしょう。

参考文献

今回のコラムは以下の資料を参考に紹介しました。

✅国土交通省 マンション管理・再生ポータルサイト 管理計画認定制度
✅横浜市(2025年4月14日最終更新) 管理計画認定制度とは、認定基準、申請方法
✅横浜市記者発表(令和4年10月28日) マンションの「管理計画認定制度」がスタート︕
〜マンション管理の “⾒える化” が始まります〜

✅マンション管理FP・研究室 
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【規約解説】管理組合における帳票類の作成、保管のルールとは? 標準管理規約第64条解説

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