マンションの未来を拓く「改修」という選択肢:国土交通省マニュアルから学ぶ賢い再生手法と価値向上

マンション管理

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マンションは、多くの居住者にとってかけがえのない生活の基盤です。しかし、年月とともに建物は老朽化し、当初の性能や機能は低下していきます。

国土交通省が公開している「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」(令和3年9月改訂)は、こうした課題に立ち向かい、マンションの持続的な価値を高めるための羅針盤となるでしょう。

本稿では、この重要なマニュアルのエッセンスを、マンション管理組合の皆様に向けてコンパクトにまとめ、マンションの価値を最大限に引き出す「改修」という選択肢について解説します。

  1. 第1章 マンション管理の基本と改修による再生の重要性
    1. マンション管理の主体-管理組合
    2. 改修の重要性
  2. 第2章 計画修繕に伴う改良工事(既存性能のグレードアップ)
    1. 建築関係の改良工事
      1. 鉄・アルミ部等塗装工事
      2. 躯体改修工事
      3. 外壁仕上げ改修工事
      4. シーリング改修工事
      5. 屋根防水改修工事
      6. 床部改修工事
      7. ドア改修工事
      8. エントランス改修工事
      9. サッシ改修工事
      10. 金物改修工事
      11. 屋外鉄骨階段改修工事
      12. 内壁・内装改修工事
      13. バリアフリー改修工事
    2. 設備関係の改良工事
      1. 機械設備工事
        1. 給水設備改修工事
        2. 排水設備改修工事
        3. 給湯設備改修工事
        4. ガス設備改修工事
        5. 換気設備改修工事
      2. 電気設備工事
        1. 受変電設備改修工事
        2. 幹線設備改修工事
        3. 電灯設備改修工事
        4. テレビ共聴設備改修工事
        5. 防災設備改修工事
      3. 昇降機設備改修工事
    3. 外構・その他の改良工事
      1. 外構工作物改修工事
      2. 植栽改修工事
  3. 第3章 新たな性能・機能を付加する改良工事(増築・改造)
    1. 住戸面積の拡大
      1. 居室の増築
      2. 住戸(専用部分)の2戸1戸化
      3. バルコニーの屋内化
    2. 住棟内の共用スペース等の整備
      1. 増築・改造による共用スペースの整備
      2. マンションの用途の部分的な変更
    3. 共用施設及び屋外環境の整備
      1. 集会所・コミュニティーセンターの新築・建替え・増築・改造
      2. 駐車場(立体駐車場等)、バイク置場・自転車置場の整備
      3. 不要となった施設の跡地を活用した共用施設の整備
    4. 耐震性能の向上
      1. 耐震補強工事
    5. エレベーターの設置
  4. 第4章 改修によるマンション性能の総合的改善
    1. 改修によるマンション性能の総合的改善
    2. 各性能の総合的な改善
      1. 住戸内の生活空間の拡大
      2. 共用部分のバリアフリー化
      3. 省エネルギー化
      4. 共用スペースの拡充と質的改善
      5. 屋外環境の改善
      6. 共用施設の建築工事等
  5. 参考 法律上の手続きと補助・融資等の制度
    1. 参考1 マンション改修に関する建築基準関係規定上の手続き
    2. 参考2 マンション改修に関する区分所有法上等の手続き
    3. 参考3 耐震改修工事に係る補助及び税制特例
    4. 参考4 住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資
    5. 参考5 マンションの居住環境改善に係る自治会活動に対する補助事業
  6. 結論:未来を見据えたマンション管理を

第1章 マンション管理の基本と改修による再生の重要性

マンション管理の主体-管理組合

  • マンションの管理の主体は、マンションの区分所有者等で構成される管理組合である。
  • 管理組合は、区分所有者等の意見が十分に反映されるよう、また、長期的な見通しを持って、適正な運営を行う必要がある。
  • 特に、その経理は、健全な会計を確保するよう、十分な配慮がなされる必要がある。
  • 第三者に管理事務を委託する場合は、その内容を十分に検討して契約を締結する必要がある。
  • 管理組合を構成するマンションの区分所有者等は、管理組合の一員としての役割を十分認識して、管理組合の運営に関心を持ち、積極的に参加する等、その役割を適切に果たすよう努める必要がある。
  • マンションの管理には専門的な知識を要する事項が多いため、管理組合は、問題に応じ、マンション管理士等専門的知識を有する者の支援を得ながら、主体性をもって適切な対応をするよう心がけることが重要である。
  • 場合によっては、外部の専門家が管理組合の管理者等又は役員に就任することも考えられる。

改修の重要性

  • 計画修繕に取り上げられる工事項目の改良工事だけでは、既存性能の水準をグレードアップするに留まる。
  • 増築・改造等の大掛かりな工事によりマンションに新たな性能や機能を付加する大規模な改良工事(レベル2)も必要とされる。
  • こうした増築・改造等により新しい性能・機能を付加する方法については、第3章で説明されている。
  • 効率的な工事の実施のためには、大規模修繕工事を行う際に、レベル1とレベル2の改良工事を同時に行い、マンションの性能・機能を総合的に改善する改修工事として計画することが望ましい。
  • こうした改修工事によるマンションの性能の総合的なグレードアップの方法については、第4章で説明されている。

第2章 計画修繕に伴う改良工事(既存性能のグレードアップ)

建築関係の改良工事

鉄・アルミ部等塗装工事

  • 塗料のグレードアップにより、防錆・防食性や耐久性を高めることがポイントとなる。
  • 仕上げの化粧性を高めることもポイントとなる。
  • 耐久性・耐候性の向上を目的として、塗料をグレードアップする。
  • 錆の発生が著しい場合は、アルミ・ステンレス製等のものへ取替えを行うこともある。
  • エレベーター扉等は、水磨ぎ等の下地処理の上、吹付け塗装を行うことが望まれる。
  • 外壁との取合い部で塗装が困難な場合や取り外しての塗装により耐久性・美装性が向上する場合は、脱着塗装を行うことが望まれる。

躯体改修工事

  • 躯体に発生するひび割れに対しては、エポキシ樹脂等の注入やUカットシール材充填工法により修繕する。
  • 躯体の欠損に対しては、ポリマーセメントモルタル等の付着力の強い無機材を充填し成型する。
  • 鉄筋の発錆・露出に対しては、錆を除去し防錆材を塗布し、ポリマーセメントモルタルで埋める。
  • コールドジョイントに対しては、止水材の注入、又は、Uカットシール材充填工法により修繕する。
  • ジャンカに対しては、注入材注入工法や断面修復工法により修繕する。
  • 再アルカリ化等によるコンクリート躯体の中性化抑止。
  • 片持ちスラブの補強。

外壁仕上げ改修工事

  • 塗料の性能、外壁仕上げ材のグレードアップ。
  • 仕上げによる中性化抑止。
  • 外壁の外断熱改修。
  • 既存塗材の除去方法には、全面除去、準除去、洗浄がある。
  • 高耐候性のシリコーン樹脂・フッ素樹脂系の複層塗材や石材調塗材等による仕上げへとグレードアップし、コンクリート躯体の保護性能や美装性を向上させる。
  • 寒冷地等では高弾性塗材の使用も望まれる。
  • 地域の景観等に調和した色彩を選定することは、建物の資産価値を高めることにもつながる。
  • 塗料の塗り仕上げから、タイル張りの外観仕上げに変更することも考えられる。
  • 透気性の小さな仕上げ材で塗替えることで中性化を抑止する。
  • 外断熱工事により室内の結露・カビ等を防止する。
  • 外壁の主な外断熱工法には、断熱材ピンネット押え工法、GRC複合断熱パネル工法、胴縁サイディング材仕上げ工法がある。

シーリング改修工事

  • シーリング材のグレードアップにより美装性・耐久性を向上させることがポイントとなる。
  • 耐久性や美装性の向上を目的として、シーリング材の性能をグレードアップする。
  • 外壁仕上げ塗材を変色・汚染させないシーリング材や、塗装可能なシーリング材が採用されるようになってきている。
  • シリコーン系シーリング材は耐久性・耐候性に最も優れているが、使用箇所が限定される。
  • ポリイソブチレン系シーリング材は、シリコーン系と同等に近い性能をもち目地周辺を汚染させにくい。

屋根防水改修工事

  • 防水仕様のグレードアップ。
  • 屋根の外断熱防水。
  • 笠木等の材質のグレードアップ。
  • 屋上の排水能力の向上。
  • 屋根スラブの外断熱を行うことで、最上階の温度変化や結露を減少させる。
  • 屋根スラブの外断熱工法には、スラブ上断熱防水露出工法、防水層断熱ブロック押え工法、防水層断熱コンクリート押え工法がある。
  • 耐久性、修繕容易性、コスト、積載荷重増加の可能性等を考慮して最適な工法を選択する必要がある。

床部改修工事

  • 防水層の新設、防水仕様・工法のグレードアップ।
  • 開放廊下・階段室踊り場の雨水吹き込み対策・排水対策।
  • 段差部のバリアフリー化।
  • 防水層のない部位へ新規防水を行う。
  • 階段室型住棟の外気に開放されている階段室の床防水は、速乾性のウレタン塗膜防水や長尺塩ビシート防水が多く採用されている。
  • 外気に開放されている廊下の床は防音・消音のため、塗膜防水に長尺塩ビシートを併用する方法が採用されている。
  • ルーフバルコニーについては、押え層のある断熱防水等を施す。

ドア改修工事

  • 住戸ドア・住戸ドアの付属金物・住戸ドア周り、パイプスペース扉等のグレードアップ。
  • エントランスホール及びアプローチ部分の仕上げ等のグレードアップ・バリアフリー化。
  • エントランスドアの性能のグレードアップ。
  • エントランスホールの防犯対策。
  • 玄関ドアをピッキングされにくい錠に取替える。
  • 「1ドア2ロック方式」に改善することも効果的である。
  • サムターンまわしによる侵入を防止するための対策。
  • カム送り解錠による侵入を防止するための対策。
  • ドアノブをレバーハンドルに取替える。
  • 住戸ドア周りをグレードアップする(室名札、玄関灯、インターホンなど)。
  • 新聞受けを扉から外し、門灯、インターホン、室名札などと一体化した新聞受けホルダーに変更することも考えられる。
  • パイプスペース・メーターボックス扉をグレードアップする(材質、塗装など)。

エントランス改修工事

  • エントランスホール及びアプローチ部分の仕上げ等のグレードアップ。
  • エントランスドアの性能のグレードアップ。
  • エントランスホールの防犯対策。
  • エントランスアプローチ部分の階段をスロープに改造する。
  • エントランス前に庇や小屋根を設け、通行人が雨に濡れにくいようにする。
  • エントランスドアを自動開閉ドア(オートドア)に取替える。
  • 防犯性能を高めるためにオートロックを導入する。

サッシ改修工事

  • 断熱性や遮音性のグレードアップを図ること。
  • バリアフリー性や防犯性を高めること。
  • 付属金物も計画的に新品に取替えることが望まれる。
  • サッシ框の取外しと付属金物の取替えを行う。
  • サッシの取替え・取替えの工法には、外付け二重サッシ工法、持出しかぶせ工法、サッシ撤去工法、内付け二重サッシ(インナーサッシ)工法がある。
  • サッシ撤去工法によりサッシを取替える場合には、ノンレール完全フラットサッシや防犯サッシに取替えることも考えられる。
  • 窓面格子・窓手すり・網戸の取替えと雨戸(鎧戸)の追加・増設。
  • 共用廊下側の窓面格子を非常時脱出機能付き面格子とすることや、開閉型ルーバーガラリのものに取替えることが考えられる。
  • 既存サッシの外側に防犯と断熱を兼ねた雨戸(鎧戸)やルーバー型シャッターを取付けることも可能である。
  • 住戸窓の防犯対策を行う(錠付クレセントや補助錠の設置、窓ガラスの材質変更など)。

金物改修工事

  • 耐久性の向上、安全性、美装性・デザイン性、使用容易性等を高めることがポイントとなる。
  • バリアフリー対策の観点から、建物共用部分や敷地内に新たに手すりを設置することも重要となる。
  • スチール製の金物類については、アルミ製又はステンレス製のものに取替える。
  • 使用の安全性・容易性を高めた製品に取替える(避難ハッチなど)。
  • 高齢者や障害者が安全に移動できるよう、共用部分に手すりを設置する。

屋外鉄骨階段改修工事

  • 踏板部分の防錆・防水工事や通行時の消音工事がポイントとなる。
  • 劣化損傷が著しく進行したものについては、階段全体の取替えを行う。
  • 縞鋼板製の踏板の腐食劣化対策と防水・排水対策を行う。
  • 歩行時の消音対策及び安全性を確保する(消音シートの張り付け、ノンスリップの取り付け)。
  • 雨水・排水の処理を適切に行う。
  • 避難階段の保全・補強を行う(建物本体との接合部分の補強など)。
  • 新しい階段の鋼材は、溶融亜鉛メッキ処理又はコルテン鋼とし、床や踊場部分にはGRCを使用することが考えられる。

内壁・内装改修工事

  • 建物の内部階段・内部廊下、管理事務室、集会室等の共用部分の床、壁、天井の劣化・損傷箇所の修繕・改修工事。
  • 建物全体の耐久性を高めるためには内壁躯体の修繕工事を推進することが重要となる。

バリアフリー改修工事

  • 段差・階段差の解消(擦付け、スロープ設置、段差解消機・いす式昇降機の設置)及び手すりの設置。
  • エレベーターのない低中層の建物にエレベーターを新設したり、エレベーターを増設したりすることも重要となる。
  • 共用階段・廊下、スロープ、歩道等の仕上げをノンスリップ材に変更する。
  • 階段の段差部分について段鼻部分の明るさや色を他と変えて区別しやすくする。
  • 床面の照度を十分に確保する。
  • 住棟エントランスの扉を開き戸から引き戸、さらには自動ドアへと変更する。
  • 既存の集会所等の附属施設についてもバリアフリー改善を行う(スロープ、手すり、オートドア化、洋室化、下足方式への変更、緊急警報装置、車イス仕様の便所など)。

設備関係の改良工事

機械設備工事

給水設備改修工事
  • 給水管、給水装置、給水施設の材質のグレードアップ。
  • 受水槽・高置水槽の耐震工事。
  • 給水ポンプ等の防振・防音工事。
  • 電動機のグレードアップ。
  • 給水システムの変更。
  • 給水管に用いられる材質のグレードアップ(水道用塩化ビニルライニング鋼管、ポリエチレンライニング鋼管、ステンレス鋼管、架橋ポリエチレン管、ポリブデン管など)。
  • 配管の防音・防震対策。
  • 屋外埋設管は、内外面防食管や耐食管に取替える。
  • 耐震仕様の給水鋳鉄管に取替えることも考えられる。
  • 継手は内外面防食継手、弁類はコーティングバルブや埋設用バルブに取替える。
排水設備改修工事
  • 雑排水管・汚水管の材質のグレードアップ。
  • 排水能力のアップ。
  • 排水システムの変更。
  • 排水管清掃口の新設・増設。
  • 洗濯機パンの新設。
給湯設備改修工事
  • 給湯機器のグレードアップ(高効率給湯器、省エネ型給湯器など)。
  • 給湯方式の変更(個別給湯から集中給湯へ、など)。
  • 給湯管の材質のグレードアップ。
ガス設備改修工事
  • ガス管の材質のグレードアップ(ガス用ポリエチレン管など)。
  • 配管サイズのアップ等により供給能力を高める。
  • 美観性を考慮した配管。
  • ガス燃焼機器の種類の変更(開放式、半密閉式から密閉式、屋外式へ)。
  • 給排気方式の変更に伴う工事。
換気設備改修工事
  • 共用ダクトの風雨にさらされやすい屋上換気口部分の材質をグレードアップし耐久性を高める。
  • ガス機器の能力の向上に応じて共用立てダクトの給排気能力を高める。
  • 鉄製のダクトは耐久性のあるステンレス製のダクトに取替える。
  • 屋上ルーフファンにはアルミ製のルーフファンカバーを取り付けるとともに、低騒音有圧扇に取替える。

電気設備工事

受変電設備改修工事
  • 受電方式の変更(高圧受電化など)。
  • トランスの増設。
幹線設備改修工事
  • 各住戸の幹線を改修し、使用できる電気容量をアップさせる。
電灯設備改修工事
  • 照明器具のグレードアップ(LED照明の採用など)。
  • 点灯方式の改善(ソーラータイマー併用・自動点滅器の採用など)。
  • インバーター式安定器への取替えにより省エネを図る。
  • 防犯灯の増設・防犯カメラの設置。
テレビ共聴設備改修工事
  • BS・CS共同受信設備を導入する。
  • 地上デジタル放送対応への改修。
  • 配線方式の改善(縦配線からスター配線へ)。
  • 各住戸のニーズにあわせた受信形態が選択できる配線システムへの改善。
防災設備改修工事
  • 自動火災報知設備の受信機・電線、感知器の取替え。
  • 非常照明器具、バッテリーの取替え。
  • 消火設備の改修(消火器、屋内消火栓設備など)。
  • 避難設備の改修(避難はしご、救助袋など)。
  • 火災警報設備の設置。

昇降機設備改修工事

  • エレベーターの意匠・機能のグレードアップ。
  • 安全性の向上のための機能付加(戸開走行保護装置、地震管制運転装置、火災管制運転装置、停電時自動着床装置、防犯用監視カメラ、防犯用窓ガラス、遠隔監視装置、地震対策など)。
  • マシンルームレスエレベーターへの取替えによる省スペース化。
  • エレベーターの改良(取替え)方法(完全撤去・新設、準撤去・新設、制御リニューアル、巻上機・制御盤リニューアル、かご改修など)。

外構・その他の改良工事

外構工作物改修工事

  • 遊具、パーゴラ、自転車置場上屋、柵、掲示板、案内板、サイン等の外構工作物を取替える際には、防錆性に優れた材料や木材を使用するなどし、耐久性やデザイン性を高める。
  • 敷地内の掲示板や案内板に照明器具を取り付けることも考えられる。

植栽改修工事

  • 樹木の生長障害を解消するために樹木・植栽の間伐・再配置等を行う。
  • 植栽・生け垣等による空間の計画的な区画等を行う。
  • 駐車場の緑化を行う。

第3章 新たな性能・機能を付加する改良工事(増築・改造)

住戸面積の拡大

居室の増築

  • 既存の住戸のバルコニー部分に接続して居室を増築する方法。
  • 既存の建物部分と新たな増築部分とは、構造上は別の建物とし、エキスパンションジョイントで連結されることが一般的。
  • 増築は、既存の住棟の南側に行うことが一般的。

住戸(専用部分)の2戸1戸化

  • 上下2戸をつなげて住戸内に階段をつくる(メゾネット型)。
  • 同じ階の左右どちらかの隣戸との間の戸界壁を抜いて行う。

バルコニーの屋内化

  • 屋外のバルコニーを壁・屋根(天井)等で囲み、屋内化する方法。
  • サンルーム的な屋内空間として居室と一体的に利用することにより、住戸内の空間に広がりを得ることが期待できる。
  • 防災安全性の確保について、地方公共団体の建築安全条例等により制限が加えられている場合がある。

住棟内の共用スペース等の整備

増築・改造による共用スペースの整備

  • 住棟内の空きスペース(不要となった機械室、空き住戸等)の有効スペースへの改造(風除室、宅配ロッカー、トランクルーム、共用倉庫、ラウンジ、プレイルーム、集会室、宿泊施設、管理事務室等)。
  • 増築による住棟内の共用スペースの整備。

マンションの用途の部分的な変更

  • マンション下階の空店舗・空オフィス等を他用途に変更(宿泊施設、貸倉庫、集会室、住戸、SOHOなど)。
  • 用途変更に伴い、建築基準法上の採光規定等への適合工事が必要となる場合がある。
  • 商業・業務床のスペースが大きい場合は、戸境壁を新設して複数の住戸に分割する工事が必要となる場合もある。

共用施設及び屋外環境の整備

集会所・コミュニティーセンターの新築・建替え・増築・改造

  • 葬送儀礼に使いやすくする。
  • 会合やサークル活動が同時並行に行えるようにする。
  • 調理スペース・配膳スペースを確保する。
  • 団地の祭り等のイベントのため、集会所と集会所周りのスペースを一体的に利用できるようにする。
  • 音楽室、防音室など、マンションの住戸では得られない機能・空間を確保する。

駐車場(立体駐車場等)、バイク置場・自転車置場の整備

  • 駐車場の増設。
  • 駐車場用地の確保方法(未利用地の有効利用、緑地・広場等の転用、外部に借地するなど)。
  • 駐車場の増設方式(平面式駐車場、自走式立体駐車場、機械式駐車場等)。

不要となった施設の跡地を活用した共用施設の整備

  • 集会所・コミュニティーセンター、駐車場等の新設・増設。
  • 来客の宿泊施設となるクラブハウスや共同浴場等の建設。
  • テニスコートやゲートボール場、広場やプレイロット等への転用。
  • 近隣商業施設や高齢者・福祉施設等を誘致し、団地を地域のコアとして整備する。

耐震性能の向上

耐震補強工事

  • 強度型補強(耐震壁の増設、開口部の閉塞、既存耐震壁の増打ち等)。
  • 靱性型補強(柱への鉄鋼板や炭素繊維の巻き付け、袖壁の増設、増打ちによる柱断面の増強等)。

エレベーターの設置

  • 既存階段室内にエレベーターを設置する。
  • 住棟北側へのポーチの増築+増築ポーチ着床型。
  • 住棟北側への廊下の増築+増築廊下着床型。

第4章 改修によるマンション性能の総合的改善

改修によるマンション性能の総合的改善

  • 修繕工事と改良工事とを計画的に組み合わせた改修工事を実施し、マンションの性能を総合的に改善することが重要である。

各性能の総合的な改善

住戸内の生活空間の拡大

  • 居室の増築や住戸の2戸1戸化等により、生活空間を拡大し多様な面積の住戸を生み出す。
  • 住戸規模の拡大に併せて洗濯機置場を屋内に設置する。
  • 住戸規模の再編に併せてエレベーターの設置(増築)を組み込む。

共用部分のバリアフリー化

  • 段差解消、手すりの設置、エレベーターの新設・増設等を行う。
  • 共用階段・廊下等の仕上げ材の変更、照明の改善、エントランスドアの変更等を行う。
  • 集会所等の附属施設のバリアフリー化を行う。

省エネルギー化

  • 屋根のソーラーパネル化、バルコニーのサンルーム化、外壁へのエアサイクルパネル設置、床下の蓄熱空間化など、マンションをパッシブソーラー化する。
  • 建物周りの緑化環境等を整備する。

共用スペースの拡充と質的改善

  • 風除室、宅配ロッカー、トランクルーム・共用倉庫、ラウンジ、プレイルーム、集会室、宿泊施設、管理事務室、駐車場・駐輪場等の共用スペースを増築する。
  • 設備機器の小型化等により建物内に余ったスペースや空き住戸を利用して共用スペースを整備する。

屋外環境の改善

  • 舗装部分のバリアフリー性・デザイン性・材料の向上。
  • 外構工作物の耐久性・デザイン性の向上。
  • 屋外灯の増設及び材料・デザイン性の向上。
  • 居住者の年齢構成に応じた公園・プレイロットの計画的見直し。
  • ゴミ置場の整備。
  • 樹木・植栽の適切な管理や駐車場の緑化。

共用施設の建築工事等

  • 集会所・コミュニティーセンターの新築・建替え・増築・改造。
  • 駐車場ニーズに応じた駐車形式の変更や駐車場の増設。
  • バイク置場・自転車置場の増設。
  • 給水システムの変更等により不要となった施設跡地の活用等による共用施設の建設や広場の整備。

参考 法律上の手続きと補助・融資等の制度

参考1 マンション改修に関する建築基準関係規定上の手続き

  • 確認申請が必要な場合。
  • 既存不適格建築物に対する制限の緩和。
  • 増築・大規模な模様替え等を伴う改良工事に関する建築基準関係規定上の特記事項。

参考2 マンション改修に関する区分所有法上等の手続き

  • 共用部分の変更。
  • 大規模な増築・改造等を伴う改良工事に関する区分所有法上等の手続き。

参考3 耐震改修工事に係る補助及び税制特例

  • 国や自治体の補助事業の条件等。

参考4 住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資

  • ご利用いただける管理組合。
  • 融資限度額。
  • 融資金利。
  • 返済期間。
  • 担保・保証人・手数料。

参考5 マンションの居住環境改善に係る自治会活動に対する補助事業

  • 集会所や防災器具等の地方自治体の補助について紹介。

結論:未来を見据えたマンション管理を

マンションの改修は、建物の寿命を延ばし、快適な住環境を維持するだけでなく、資産価値の向上にも繋がる重要な取り組みです。国土交通省の「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」は、改修の必要性、進め方、具体的な工事内容、関連する法制度や支援策など、マンション管理組合が知っておくべき情報が網羅されています。

このマニュアルを参考に、各マンションの状況や居住者のニーズを踏まえ、長期的な視点を持って計画的に改修工事を進めていくことが、マンションの未来を拓く上で不可欠と言えるでしょう。区分所有者間の十分な合意形成を図りながら、賢く「改修」という選択肢を実行し、皆様のマンションがいつまでも安全・安心で快適な住まいであり続けることを願っています。

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