マンションの共用部分の管理って、実際にはどういう取り決めがあるのか知りたい…
また、
窓ガラスや窓サッシの管理や修復は、区分所有者それぞれが実施しないといけないのかな…
さらには、
ベランダが劣化してきており、表面が凸凹してきたのだけれど、この修繕も我々区分所有者が実施しないといけないの…?
など、共用部分の管理において、どのような取り決めがあるのか疑問を持っている区分所有者や居住者も多いでしょう。
確かに、自分たちで管理はするものの、費用負担はどうするのか非常に気になりますよね。
今回は、敷地や共用部分における管理について、国土交通省が定める標準管理規約第21条の条文を用いて、マンション管理士の筆者が詳しく解説します。
【規約解説】敷地や共用部分等の管理・費用負担のルールを細かく紹介
今回紹介する内容は、以下の通りです。
・第21条「敷地及び共用部分等の管理」の規定に対する補足・注意事項は?
・「敷地及び共用部分等の管理」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?
まず、標準管理規約21条の条文から、「敷地及び共用部分等の管理」についてそのまま紹介します。
比較的長い条文になることから、各項目区切りながら紹介したいと思います。
続いて、この条文についての補足事項や、注意しておくべき事項について国土交通省より提示されています。
第21条についても注意すべき箇所が多いことから、比較的細かい説明となっています。
それらについて、全て抜き出して紹介したいと思います。
そして最後の章で、第21条「敷地及び共用部分等の管理」の条文や補足事項を踏まえて、管理組合や区分所有者が気を付けておいた方が良い点を筆者独自の視点から具体的に紹介します。
標準管理規約第21条「敷地及び共用部分等の管理」の紹介
早速ですが、標準管理規約第21条の「敷地及び共用部分等の管理」について紹介します。
今回は、条文が比較的長いため、各項区切って紹介したいと思います。
条文については、「POINT」と青枠で囲っている所が対象となります。
第1項 責任と費用負担
第1項では、敷地及び共用部分等の管理責任と、(費用)負担について誰が行うのか、明確になっています。
第21条 敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。ただし、バルコニー等の保存行為(区分所有法第18条第1項ただし書の「保存行為」をいう。以下同じ。)のうち、通常の使用に伴うものについては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない。
こちらでは、管理責任と費用負担については
敷地及び共用部分の管理:管理組合
バルコニー等(共用部分の中の専用使用部分)の保存行為:専用使用権を有する区分所有者や賃借人等の占有者
が行うものとして定められています。
また、区分所有法第18条第1項ただし書の「保存行為」とは
(共用部分の管理)
第十八条共用部分の管理に関する事項は、前条の場合(特別決議で決する変更)を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
に記載があります。
すなわち、「各共有者≒区分所有者」として紹介されています。
規約ではここを「専用使用権を有する者」として記載されています。
第2項 専有部分の設備で共用部分と構造上一体となった部分の管理
この第2項については、以下の通りとなります。
専有部分であっても、構造的に共用部分と一体となった部分は、管理組合が工事等を行うことができるということになります。
第3項 バルコニー等の保存行為を実施する場合の取り決め
区分所有者や占有者が専用で使用できる、バルコニーや窓ガラス、窓サッシ、玄関ドアといった、バルコニー等の専用使用部分の保存行為を行う場合の取り決めについて定められています。
電磁的方法が利用可能でない場合と、可能な場合において条文が違うのでそれぞれ紹介します。
電磁的方法が利用可能ではない場合
電磁的方法が利用可能な場合
太字の「又は電磁的方法」という文言が入っているだけで、ほぼ同様の内容となっています。
第3項の解釈
バルコニー等も共用部分であることから、保存行為であっても勝手に実施はできず、理事長への申請が必要となっています。
保存行為とは、通常の状態に戻すことであり、例えば窓ガラスやドアが劣化した場合の修復や取替えなどが該当します。
ただし、窓ガラスが割れて雨風が入り至急修復しなければならない等、緊急を要するものである場合は、この限りではなく、申請前に修復できることとなります。
第4項 申請や承認の準用規定
バルコニー等の保存行為を行う手続きについてです。
こちらは第17条「専有部分の修繕等」を準用すると記載されています。
また、「保存行為」は修繕や工事も行う場合もあることから、そのまま「修繕等」「工事」と読み替えを行うこととなります。
第17条については細かくまとめていますので、以下
から確認できます。
第5項 承認を受けずに保存行為を行った場合
第3項の規定に違反して、理事長への申請や承諾なしに保存行為を行った場合についてです。
その場合は、費用については実際に保存行為を行った区分所有者が負担することとなります。
第6項 緊急時における理事長の対応
災害等の緊急時においては、わざわざ総会や理事会の決議を待っている訳にはいきません。
そのため、理事長の権限において対応できるよう、以下のような条文が定められています。
第21条「敷地及び共用部分等の管理」の規定に対する補足・注意事項は?
続いて、第21条の「敷地及び共用部分等の管理」については、国土交通省が細かな補足を行っています。
その内容について、非常に細かく紹介されていることから、各項目に分けて確認してみます。
保存行為は区分所有者も管理組合も双方考えられる
第21条の第1項及び第3項はについての補足です。
前章でも紹介した、区分所有法第18条第1項ただし書において、保存行為は、各共有者がすることができると定められています。
対して、第2項では、同法ではない部分について、規約で改めて定めているものです。
すなわち、法律上では各共有者(区分所有者)が対応するのですが、専有部分と共有部分が一体となっている工事は、管理組合でもできるということを定めている形です。
駐車場の管理は管理組合が実施
こちらについては、管理組合が責任をもって、費用支出含めて管理を行う必要があるとのことです。
バルコニー等の管理における管理組合負担
第1項において、バルコニー等の管理については、使用者の責任と費用負担で行うことが定められています。
しかしながら、大規模修繕等の計画的な修繕工事においては、管理組合が責任と費用負担を持つ必要がある点が補足されています。
バルコニー等の管理における使用者負担
第1条にある「通常の使用に伴う」保存行為とは、バルコニーの清掃や窓ガラスが割れた時の入替え等が当てはまります。
これらについては、賃借人や区分所有者の親族等、専有部分の使用者が負担することとなります。
バルコニー等の経年劣化対応
バルコニー等の経年劣化への対応は、前述とおり管理組合がその責任と負担において、計画修繕として行うこととなります。
しかしながら、バルコニー等の劣化であっても、長期修繕計画作成ガイドラインにおいて管理組合が行うものとされている修繕等の周期と比べ短い期間で発生することも考えられます。
さらに、使い方によっては他のバルコニー等と比較して劣化の程度が顕著である場合もあるでしょう。
その場合は、特段の事情がない限り当該バルコニー等の専用使用権を有する者の「通常の使用に伴う」ものとして、その責任と負担において保存行為を行うものとされています。
なお、この場合であっても、結果として管理組合による計画修繕の中で劣化が解消されるのであれば、管理組合の負担で行われることとなります。
バルコニー等の使用者としては、よほどひどい使い方、例えば、バルコニーにものをたくさん置いて床が劣化した、またはフェンスが壊れたなどが無い限りは、大規模修繕工事で行われることが多いと考えられます。
バルコニー等の破損が犯罪行為等によることが明らかな場合
破損が第三者による犯罪行為等によることが明らかである場合の、バルコニー等の保存行為の実施についても考え方があります。
これは、通常の使用に伴わないものであるため、管理組合がその責任と負担において行うということです。
ただし、同居人や賃借人等による破損については、「通常の使用に伴う」ものとして、当該バルコニー等の専用使用権を有する者がその責任と負担において修復等の保存行為を行うこととなります。
専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の例
専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の対象となる設備の例としては、配管、配線等があります。
配管の清掃等に要する費用については、第27条第三号「共用設備の保守維持費」として管理費を充当することが可能としています。
一方、配管の取替え等に要する費用のうち専有部分に係るものについては、各区分所有者が実費に応じて負担すべきものとしています。
なお、共用部分の配管の取替えと専有部分の配管の取替えを同時に行うことにより、専有部分の配管の取替えを単独で行うよりも費用が軽減される場合、これらを一体的に工事を行うことも考えられます。
その場合には、あらかじめ長期修繕計画において専有部分の配管の取替えについて記載する必要があります。
その工事費用を修繕積立金から拠出することについて規約にも規定し、先行して工事を行った区分所有者への補償の有無等についても十分留意することが必要であるとのことです。
バルコニー等の緊急を要する場合の修復例
第3項ただし書の例です。
例えば、台風等で住戸の窓ガラスが割れた場合に、専有部分への雨の吹き込みを防ぐため、割れたものと同様の仕様の窓ガラスに張り替えるというようなケースが該当します。
また、第5項は、区分所有法第19条に基づき規約で別段の定めをしており、「規約違反で勝手に実施した場合は区分所有者持ち」と定めています。
また、承認のための申請先は理事長であるが、承認、不承認の判断はあくまで理事会の決議によるものとなります。
この点は、標準管理規約第54条第1項(理事会の決議事項)第五号に、
とあり、それに従うこととなります。
詳しくは、第17条、第22条は以下
でも詳しく紹介しています。
災害時等の緊急時で理事長単独でできる保存行為の例
区分所有法第26条(権限)における第1項では、敷地及び共用部分等の保存行為の実施が管理者(標準管理規約では理事長)の権限として定められています。
それに従って、第6項では、災害等の緊急時における必要な保存行為について、理事長が単独で判断し実施できることを定めています。
また、災害等の緊急時における必要な保存行為として、共用部分等を維持するための緊急を要する行為又は共用部分等の損傷・滅失を防止して現状の維持を図るための比較的軽度の行為が該当します。
特に、後者の例として、給水管・排水管の補修、共用部分等の被災箇所の点検、破損箇所の小修繕等が挙げられます。
この場合に必要な支出については、第58条(収支予算の作成及び変更)にて記載がありますので、改めて紹介します。
ちなみに、以前紹介した第23条「必要箇所への立入り」
では、第4項で専有部分や専用使用部分(バルコニー等)へ立ち入ることができると規定されています。
災害等で総会も理事会も、さらには理事長の判断も出来ない場合の対処方法
災害等の緊急時において、保存行為を超える応急的な修繕行為の実施が必要となる場合も考えられます。
さらに、総会の開催が困難である場合には、理事会においてその実施を決定することができることとしています。
この点の補足については、第54条にて改めて紹介します。
一方で、大規模な災害や突発的な被災では、理事会の開催も困難な場合も想定されます。
その場合に、保存行為に限らず、応急的な修繕行為の実施まで理事長単独で判断し実施することができる旨を、規約において定めることも考えられるとのことです。
そして、更に理事長をはじめとする役員が対応できない事態に備えておくことも考えられます。
このような緊急事態であれば、あらかじめ定められた方法により選任された区分所有者等の判断により保存行為や応急的な修繕行為を実施することができる旨を、規約において定めることも考えられるとのことです。
なお、理事長等が単独で判断し実施することができる保存行為や応急的な修繕行為に要する費用の限度額についても重要となります。
そこで、費用についても予め定めておくことも考えられるとのことです。
以上をまとめると、
・理事会が難しい場合は理事長が判断できる
・理事長も判断が出来ない場合は、区分所有者等が判断できる
・保存行為や応急的な修繕に掛かる費用の限度を定める
・これらを規約に定めておく
という流れになります。
平時における専用使用権(バルコニー等)ではない敷地や共用部分等の保存行為
第6項の災害等の緊急時における必要な保存行為の実施以外の点についても補足があります。
平時における専用使用権のない敷地又は共用部分等の保存行為についてです。
こちらも、理事会の承認を得て理事長が行えることすることや、少額の保存行為であれば理事長に一任することを、規約で定めておくことも考えられるとのことです。
その場合、理事長単独で判断し実施することができる保存行為に要する費用の限度額について、災害等緊急時同様に、予め定めておくことも考えられるとのことです。
「敷地及び共用部分等の管理」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?
条文ならびに補足・注意事項において、国土交通省は災害等を想定して非常に細かく紹介していることが分かりました。
そして、実例も挙がっているので、イメージできる箇所も確認できたと思います。
それらも踏まえつつ、管理組合や区分所有者、さらには居住者も含めて気を付けておいた方が良い点について、さらなる補足として紹介します。
人命救助や被害が広がる可能性がある場合は誰の許可とか言ってられない
当たり前の話ではありますが、人命救助や被害の回避のためには、実質誰とか言ってられずに対応する必要があります。
わざわざ規約や理事会、理事長を待っている訳にはいかないためです。
周りとの確認や最大限の協力を含めて、速やかに動くことが優先されるでしょう。
共用部分の費用負担をするのは管理組合か区分所有者か?
国土交通省の補足・注意事項にありましたが、修繕費用の負担については標準管理規約では以下の点が明確になっています。
・大規模修繕等の計画修繕は「管理組合」
・平時の破損等の修理や清掃費用は「区分所有者」
・犯罪等による通常の使用を伴わない破損の修理は「管理組合」
・配管等、専有部分と共有部分を一体で工事する場合は専有部分の箇所は「区分所有者」、共用部分は「管理組合」
・一体で工事する場合であっても規約に定めてあり、長期修繕計画にて専有部分の工事も計画している場合であれば費用負担は「管理組合」の修繕積立金からも考えられる
・本来は費用負担は「管理組合」の内容であっても、規約違反で勝手に区分所有者が修繕した場合の費用負担は「区分所有者」
上記は、一般的な考え方であり、管理組合それぞれで考え方も違うと思われます。
また、規約条文や上記に無いような「こういう場合はだれが負担するのか?」というケースも考えられるでしょう。
その場合は、理事会や役員間でルールを検討しつつ、改めて総会に諮り規約の変更も考えられます。
費用負担が区分所有者、管理組合どちらの内容であっても申請が必要
例えば、前項によって、やむを得ずに共用部分を自費で修理しなければならないケースがあったとしても、規約に従うとなると必ず申請が必要となります。
ただし、緊急を要する場合であれば、前章で記載したように
の優先順位で判断して実施することができるとなっています。
仮に、区分所有者の独断で修繕したとしても、改めて理事長に相談または事後の申請が必要であると考えられます。
共用部分の管理は誰がするのか明確化することが非常に重要
今回は、標準管理規約第21条から「敷地及び共用部分等の管理」を取り上げ、条文や補足・注意事項と共に、筆者が特に気を付けておいた方が良い点を紹介しました。
共用部分の管理は、バルコニー等の場所によっては区分所有者や賃借人含めた居住者が実施することとなり、その費用についても区分所有者や居住者が負担することとなります。
また、管理組合として、ここはだれが負担するのか?を明確にしておくことが混乱を招かず、非常に重要といえます。
今回紹介した第21条の条文や筆者の補足説明等を含めて、管理組合内で共用部分の管理や負担を明確にするうえでの参考になれば幸いです。
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