マンション管理の全部委託と一部委託の違いは【メリットと注意点】

マンション管理

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うちの管理組合は一部委託とのことだが、どういう業務を管理会社に委託しているのか?

また、

管理会社に全部委託しているが、一部業務は委託する必要があるのか?

さらには、

今後の管理費圧縮のためにも、一部の業務を見直したい…

このように考えている管理組合もあるかもしれません。

管理業務を全部管理会社に委託するか、一部を委託せずに管理組合で実施するか、または安価で内容を見直して他の業者に対して個別で発注するかなど、考え方はあります。

今回はこのように管理業務を管理会社に全部委託する場合と、一部委託する場合の違いや、それぞれのメリット、さらには注意点など紹介します。

マンション管理の全部委託と一部委託の違いは【メリットと注意点】

今回紹介する内容は、以下の通りです。

・管理組合における全部委託と一部委託の現状は?
・全部委託と一部委託の違いや委託内容は?
・一部委託を行う場合の委託内容は?
・管理組合における一部委託導入のメリットは?
・一部委託導入の注意点は?

多くのマンションでは、マンション管理は管理会社が全てやるものと考えることが一般的でしょう。

しかしながら、マンションタイプ、完成年次別でそれぞれ傾向が見られますが、そのような傾向について、令和5年度のマンション総合調査から確認します。

その次に、全部委託と一部委託の違いや、一部委託を行う場合の業務内容を具体的に紹介します。

さらに、一部委託する場合のメリットや注意点について紹介します。

管理組合における全部委託と一部委託の現状は?

まずはじめに、令和5年度のマンション総合調査から「管理事務の状況」という管理組合に対する回答より、委託状況を確認します。

データは、管理会社に業務を委託する管理事務の中で管理組合にとってベースとなる業務である基幹業務と、それ以外の業務をどのように委託しているかの状況を集計しています。

以下、国土交通省の令和5年度のマンション総合調査の調査結果を引用します。

全体ならびに、マンション完成年次別の一部委託の傾向は?

管理事務の状況について、全体ならびに、マンション完成年次別の傾向です。

全体的な傾向としては、7割強が基幹事務を含めてすべての業務を管理会社に委託していると回答しています。

すなわち、管理組合として管理業務を管理会社にそのまま丸投げしているという形になります。

管理組合や理事会の御用聞きも兼ねる、管理会社ならではの対応であると考えられます。

それ以外の、基幹業務の一部や全部、さらに基幹業務以外の業務を管理会社以外に委託している割合(以下、一部委託等の割合と表現)は、18.5%と、2割弱はいわゆる一部委託や、管理組合が全て実施していると回答しています。

なかでも管理組合が全ての管理委託を実施している割合が5.2%あります。

いわゆる、自主管理と言われる形態であり、昭和49年以前のマンションでは31.9%と3割以上が自主管理形態を敷いています。

マンションの形態別の一部委託の傾向は?

次に、単棟型、団地型のそれぞれのマンションの形態別で、一部委託の傾向はどのようになっているのか確認します。

単棟型においては、75.9%が全てを管理会社に委託しており、一部委託等は15.6%となっています。

対して、団地型は56.6%が全てを管理会社に委託しており、一部委託等は34.9%となっています。

なかでも、自主管理形態が12.9%あり、団地の規模が大きくなるにつれて自主形態をとっている傾向にあります。

全部委託と一部委託の違いや委託内容は?

令和5年度のマンション総合調査結果のデータと前後しましたが、全部委託と一部委託のそれぞれの違いや、一部委託の場合の委託内容について確認します。

マンション管理の全部委託とは?

マンション総合調査の結果でも多くの割合を占めた、「基幹業務を含め管理事務の全てを管理業者に委託する」という形がおもに全部委託という考え方になります。

すなわち、マンション管理組合として、全ての業務を管理会社に発注する形です。

その形態が、管理会社経由で他の業者に発注されている場合であっても、管理組合がまずは管理会社に発注しているという点では、全部を委託しているということになります。

具体的に、清掃業者は管理会社の取引先が実施し、マンションに赴くのもその業者となるような場合もあるでしょう。

一部委託とは?

以前紹介した、重要事項説明書における記事

の中で、基幹事務とそれ以外の管理事務という項目を紹介しています。

これらの業務の一部を管理会社に委託し、それ以外を個別で管理組合独自で発注したり、管理組合が実施したりすることが当てはまります。

すなわち、全部を管理会社に発注せず、一部は管理組合から他の業者に個別で発注したり、管理組合が独自で実施するような形態が一部委託に該当することとなります。

一部委託を行う場合の委託内容は?

具体的に一部委託を行う場合の業務委託の内容はどのようなものが、例を挙げながら確認してみます。

管理員を管理組合で直接雇用する

管理会社を通じて、管理員が派遣されてくることも考えられますが、管理員を直接雇用することも考えられます。

具体的には、管理組合として求人募集を行なったり、人材紹介会社から紹介して貰う等が考えられます。

管理員は自宅近隣のマンションで働くことを望む場合が大半であり、近隣でマッチングすることができれば、直接雇用するという考え方もあります。

マンション管理組合としては、継続して勤務して貰える良い管理員を欲しています。

そして、通学や帰宅時の子どもたち、さらには高齢者の安全を見守り、コミュニケーションをとることも重要な役割として挙げられます。

マンションの維持又は修繕に関する業務を管理会社以外に依頼する

日々のマンション管理に関する維持、修繕を管理組合から修繕業者に個別に発注することが考えられます。

また、長期修繕計画を直接建築事務所に依頼する等、管理会社以外で作成することもあるでしょう。

さらには、大規模修繕工事を行う際には、管理会社に直接発注するいわゆる責任施工方式と言われるケースも考えられます。

対して、管理会社を通さない方式として、建築事務所等の設計監理者を当てる設計監理方式や、管理組合が個別で施工業者から大規模修繕の企画提案を募るプロポーザル方式という方式もあるでしょう。

これらも、管理会社を経由しないと考えた場合には、一部委託の部類に入ると考えられます。

清掃を管理会社以外に個別で依頼する

重要事項説明書のひな型には、基幹事務以外の管理事務で清掃業務という項目があります。

この項目を、管理会社を経由せずに個別で清掃会社に依頼することが考えられます。

また、コストを削減するという視点では、定期清掃は専門業者へ委託し、日常業務は管理組合で実施するなども該当するでしょう。

建物や設備の点検業務を管理会社以外に委託する

先ほど紹介した記事の中にも、重要事項説明書の中に各種点検業務として、建物・設備管理業務というものがあります。

中には、法令によって定期的に点検しなければならない事項もあり、これらの点検作業を管理会社を経由せずに管理組合で直接発注することが考えられます。

管理組合運営業務を管理組合内部で実施する

理事会や総会の運営は、管理組合内部で実施することも多いでしょう。

議案書作成や議事進行、議事録等の業務について、役員を中心に理事会で請け負うなどが考えられます。

ただし、管理規約に従って、重要な決議事項が漏れないように対応する必要があります。

管理組合における一部委託導入のメリットは?

おもな一部委託業務について紹介しましたが、挙げたような業務を一部委託する場合の管理組合におけるメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

想定できるものを具体的に紹介します。

マンション管理運営コストが削減できる

まず、マンション管理運営面でのコスト削減効果が期待できます。

管理組合として、実際に安い業者を選定したり、管理会社が管理組合と業者の間に入るマージンが省かれたりということも考えられます。

これらによって、日々の管理費の改善により、余剰資金を修繕積立金に回すことができるなどの効果も期待できます。

マンション管理についてのノウハウが管理組合内に蓄積される

業者の選定や対応等、ある程度は管理組合個別で実施することとなるため、業務対応を通じたマンション管理ノウハウが蓄積されていることも期待できます。

対応状況等継続的に残すことによって、他の役員に共有したり、次世代の役員に申し送りすることも可能でしょう。

管理会社を経由しないためクリーンな取引が期待できる

管理組合と業者の間に入る管理組合には、取次料として一定の事務手数料が支払われることが一般的です。

取り次ぐための動きを、管理会社側で行う必要があるためです。

取引規模が小さい場合は、管理組合への影響も少なく、許容できることもあるかもしれません。

一方で、大規模修繕工事で数千万~億単位の金額が動く場合はどうでしょうか。

責任施工方式で管理会社が元請けを行うことによって、管理組合内では分からない多額の金額が動いている可能性があります。

他の方式が必ずしもクリーンではない金額が動いていないとは言い切れません。

しかしながら、可能性が高いのは責任施工方式であるため、「マンションの維持又は修繕に関する業務を管理会社以外に依頼する」場合は一定の取引のクリーンさが期待できます。

一部委託導入の注意点は?

メリットがある反面、注意しなければならない一部委託ですが、具体的にはどのようなものが考えられるのか、紹介します。

管理組合内での手間が掛かる

管理会社を通さないということは、管理組合がその業務を引き受ける可能性もあります。

業者とのやり取りや、書類の発行、基幹事務を行うための支払い書類の管理会社への引き渡しなどは、管理員さんに協力をしてもらうものの、管理組合内部で行う必要があるでしょう。

管理会社との業務のすみわけや調整が必要となる

どの業務を管理会社が行い、または管理組合が行うのか

このすみわけや調整が必要になると考えられます。

もし、双方が自分たちの業務ではないとなった場合には、業務がこぼれてしまい、対応が後手になる可能性もあるためです。

このようなことが起きないようなケアが必要になると考えられます。

業務発注のための相見積もりを都度取得する必要がある

管理組合から直接業者に発注する場合は、まずは業者選定の段階で相見積もりが必要になるでしょう。

少額であれば、その業者に決めるということでもよいかもしれませんが、管理組合においてクリーンな取引を心がけるにあたって、他の役員や区分所有者への説明のためにも、相見積もりは重要です。

役員や区分所有者の利益相反行為に注意する

相見積もりに関連しますが、役員や区分所有者が親しい業者に発注する場合は注意が必要です。

業務を紹介したお礼としてなんらかの見返りを求める可能性も考えられます。

このような、管理組合の費用・損失と、役員・区分所有者の利益は、いわゆる利益相反行為に該当します。

したがって、役員や区分所有者と親しい業者に発注する場合は、理事会や総会でチェックの上、承認を得ることが必要です。

役員内での業務の引き継ぎを行う必要がある

一部委託の場合は、管理組合でも対応事項が増えていく可能性があり、対応はおもに役員が行うことが多いでしょう。

一方で、役員は輪番制により2~3年担当すれば退任することが一般的です。

そのため、業務を担当した役員は、次の役員に対する申し送りとして、業務を引き継いでいく必要が出てくるでしょう。

一部委託はメリットと注意点を十分考えることが重要

今回は令和5年度のマンション総合調査から、一部委託の傾向や一部委託の主な業務、さらには一部委託を行うことについてのメリットや注意点を紹介しました。

一部委託は、コスト削減効果やノウハウの蓄積が期待できる反面、管理組合や役員に対する負担が相応に掛かってきます。

管理組合内でメリットや注意点を十分検討しながら、導入を決定することが必要でしょう。

一般的には決定は管理組合総会を通じて行うことが求められます。

役員の独断や理事会個別の判断にならないようにも注意する必要があります。

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