マンション管理組合の中には、管理組合法人と言われる形態と、そうでない形態があるけどどのような違いがあるのだろうか?
また、
マンション管理組合法人にすると、区分所有者にはどのようなメリットがあるのだろうか?
このような疑問を持たれるマンション管理組合や区分所有者も比較的多いと考えられます。
多くの管理組合は、管理組合法人とつかない
マンション名+管理組合
という名称がほとんどでしょう。
そして、管理組合法人となる場合には、どのような特徴や手続きがいるのでしょうか?
そのような疑問を解消するために、企業経営にも詳しい筆者がマンションの管理組合法人について解説します。
※法的面におけるマンション独自の個別具体的な内容は弁護士等の専門家に確認されることをお勧めします
マンション管理組合法人と通常の管理組合の違いや特徴を詳しく解説
今回の内容は以下の通りです。
・法人ではない通常の管理組合との違いは?
・管理組合を法人とすることのメリットは?
・対する管理組合法人のデメリットは??
すでにお住まいになられているマンションで、当初から管理組合法人となっている区分所有者の方ももしかしたらいらっしゃるかもしれません。
一方で、管理組合法人でない管理組合が大半であるでしょう。
そもそも管理組合法人とはどのような形態であり、さらには管理組合を法人化することによるメリットにはどのようなものがあるのか、さらにはデメリットについても解説します。
マンションの管理組合法人とはどのような形態?
まず初めに、分譲マンションにおける管理組合法人とは、どのような形態であるのか確認しましょう。
管理組合法人とは
多くのマンションでは、マンション名+管理組合として運営されています。
一方で、管理組合法人の場合は、
マンション名+管理組合法人
として管理組合の名称がつけられているところがほとんどです。
したがって、管理組合法人とは、管理組合が法人化された法人格を持つもので
法律上、権利能力が認められる団体
であり、いわば会社に近い形態であるといえます。
しかしながら、マンション管理組合なので会社ではない法人といえます。
少々分かりづらい論点ではあるので、次の項目で詳細を記載します。
ちなみに、国土交通省が発表した令和5年マンション総合調査75ページによると、管理組合法人となっているのは管理組合全体の9.8%と1割にも満たない、比較的少ない状況にあります。
管理組合法人の特徴
そして、具体的な管理組合法人の特徴は次の通りです。
・管理組合法人には法的な地位と責任がある
・財務面での安定性
・管理組合運営の透明性
・法的・規制上の遵守が行いやすい形態
具体的にそれぞれ確認していきます。
管理組合法人と名乗る必要がある
マンションの法律である区分所有法の第48条には、
という決まりがあります。
そのため、必ずマンション名+管理組合法人という名称になります。
管理組合法人が、この名称になっていたのは、そもそも法律で決まりがあるからなのですね。
法人格がない管理組合と明確に区別することが必要であるといえます。
管理組合法人には法的な地位と責任がある
前述した通り、管理組合法人は法人格を持ちます。
そのため、契約や訴訟を行う際には、管理組合法人名義で行うことができます。
そのため、法的には、管理組合法人の責任となります。
通常の管理組合の場合は、理事長名義で行うことが一般的ですが、それとは対照的といえます。
財務面での安定性
法人として管理費や修繕積立金等の管理組合会計が管理されます。
また、法人として所得が発生した場合には税務申告が必要となることから、適切な会計処理が行われることが求められます。
法的・規制上の遵守が行いやすい形態
民法や区分所有法といったマンションに関する法律で法人について規定されており、遵守する必要があります。
そのため、管理組合全体で不正等が発生しずらい形態であるともいえます。
それぞれ、管理組合で実態は異なるものの、一般的にはコンプライアンスにおいては法人格がない管理組合以上に遵守している状況といえるかもしれません。
管理組合運営の透明性
管理組合法人として、法令順守が実践されることから、透明性の高い管理組合運営が期待できます。
また管理組合財産が一定規模の場合は、管理組合内の監事における監査だけではなく、会社同様に外部監査が求められることもあります。
法人ではない管理組合との違いは?
管理組合法人と、そうでない管理組合の違いは以下の通りです。
管理組合法人 | 管理組合(権利能力なき社団) | |
法的地位と責任 | 法人名義で契約 | 理事長や各々の区分所有者 |
契約名義と法的強制力 | 法人名義 | 理事長(管理者) |
訴訟・法的手続き | 法人 | 理事長や各々の区分所有者 |
資産管理と所有権 | 法人名義 | 区分所有者全員 |
※筆者独自の見解による作成
それぞれ具体的に説明します。
法的地位と責任の違い
法人格をもつ管理組合法人は、法人名義で契約や法的手続きを行うことができます。
法人としての法的責任を負うため、区分所有者個人に責任が及ぶリスクが軽減されます。
対して、法人格がない管理組合は契約や法的手続きは理事長や個々の区分所有者が名義を用いることとなります。
そして、最終的には区分所有者全員が法的責任を負う可能性があります。
契約の名義と法的強制力
管理組合法人においては、契約はすべて法人名義で行われ、契約の相手方に対する法的強制力が強く、管理組合全体の利益を守ることが容易です。
対して、法人格がない管理組合における契約は個人名義や理事長名義で行うことが多く、契約の相手方との法的関係が複雑になることがあります。
訴訟・法的手続き
管理組合法人においては、訴訟や法律手続きにおいて、法人が当事者となるため手続きが簡便です。
そして、訴訟費用も法人として処理され、区分所有者全員が関与する必要がありません。
対して、法人格がない管理組合における訴訟手続きでは、理事長や区分所有者個々が直接関与することが求められるため、手続きが複雑化しがちです。
資産管理と所有権
管理組合法人の場合、管理組合が所有する資産は法人名義で登録され、所有権が明確に整理されます。
これにより、管理組合としての財産の処分や管理がスムーズに行えます。
対して、法人格がない管理組合は、資産の所有権は区分所有者全員に分散されます。
そのため、資産の処分や管理が複雑で、合意形成が難しくなることが考えられます。
管理組合を法人とすることのメリットは?
管理組合法人の特徴や、法人ではない管理組合法人との比較からある程度は確認される所ではありますが、具体的なメリットについて紹介します。
法的地位と信頼性の向上
管理組合法人とすることで、契約や法的手続きを法人名義で行えるため、取引先や第三者からの信頼が向上することが期待されます。
これによって、管理組合としての意思決定や交渉が円滑に進むことが可能となります。
新規購入者や区分所有者における安心感の確保
マンション管理組合における信頼性が向上することにより、新規でマンションを購入する際における、購入者からの信用や安心感の高まりも期待できます。
安定した管理組合に加入することによって、安心した生活が確保できることも大きなメリットでしょう。
また、既存の区分所有者においても同様に、加入している管理組合において安心感が生まれることが期待されます。
訴訟や法的手続きの簡便性
管理組合法人における訴訟や法的手続きでは法人が当事者となります。
そのため手続きが法人格がない管理組合に対して簡便で、理事長等、個々の区分所有者が直接関与する必要がありません。
理事長や個々の区分所有者に対する負担の軽減
管理組合法人が表に立つため、理事長や区分所有者が立つ必要はありません。
そのため、それぞれの精神的かつ業務としての負担が軽減されることとなります。
この点は、法人格ではない管理組合と比べて大きなメリットといえるかもしれません。
役員が輪番でたまたま自分の番に回ってきた時に訴訟等法的手続きを取らなければならない場合は、その役員にとって不利な役割を担わされることとなります。
管理組合法人であれば、前述の通り訴訟の当事者は法人となるため、役員における訴訟リスクは軽減されることとなるでしょう。
管理組合における継続性の確保
法人格を持つことによって、管理組合法人自体が廃業を行うまでは半永久的に存続することとなります。
そのため、理事の交代や区分所有者の異動に関係なく、法人格が継続することとなります。
また、特定の役員に依存することが法人格がない管理組合に比べて軽減されることとなるでしょう。
対する管理組合法人のデメリットは??
管理組合法人には一定のメリットがある反面、デメリットとして注意しておくべき点があります。
どのような点が挙げられるのか、具体的に確認します。
設立手続きの煩雑さ
法人化する際の手続きが、管理組合法人を立ち上げる際に必要となります。
最初の立ち上げだけではありますが、設立登記が必要であり、初期費用が掛かったり等、時間とコストが掛かることとなります。
さらに、法人化されていない管理組合から管理組合法人に変更するには、総会によって区分所有者及び議決権の4分の3以上の特別決議が必要になります。
さらに、法人化することによって、名称や事務所を定め登記する必要があります。
運営コストが掛かる可能性
法人としての運営に伴う会計処理や監査、登記維持費用など、追加の運営コストが毎年発生します。
これによって、管理費の増加につながる可能性があります。
とりわけ、毎年会計士や司法書士等の外部の専門家に会計処理や会計監査、登記手続き等を依頼することとなり、一定の支出が必要となります。
役員負担の増加
法的な面においては法人が表に立つことからその負担は減るものの、理事や監事は会社でいう、取締役や監査役に近い位置づけとなります。
そのため、管理組合法人運営における法的手続きや財務会計の管理等、管理組合内での業務負担が増える可能性があります。
加えて、法的手続きにおいては矢面に立つ必要はないものの、その準備等は管理組合内部で行う必要があることから、法人格がない管理組合同様の負担は発生する可能性があるでしょう。
管理組合における法人化も一つの選択肢
管理組合法人の特徴や、法人化されていない管理組合との比較、法人化することによるメリット、デメリット等を紹介しました。
冒頭で記載した通り、全管理組合のうち法人化されているのは10%に満たない水準です。
デメリットに対して余りあるメリットがある管理組合としては、法人化も視野に入ることと考えられます。
とりわけ、比較的大規模な団地やタワーマンション、複合用途型など、管理組合の資産が多い場合は、役員の業務上や精神的負担が大きくなることから、有効な手段といえるかもしれませんね。
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