管理組合のコンサルタントであるマンション管理士は難しい試験?

マンション管理

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マンション管理士ってよく聞くけど、これってなるには難しいのかな?

また、

マンション管理士ってどうやったらなれるのだろうか…?

さらには、

マンション管理士になりたいけど、どのように学習したらよいのか知りたい…

このような疑問を持つ方も非常に多いようです。

毎年1万人超程度が受験するマンション管理士試験ですが、2024年度は11月24日(日)に実施されます。

令和3年度まで10%を切る水準で一貫して推移してきましたが、令和4年、5年と続けて10%を超える水準で推移しています。

筆者も令和元年にマンション管理士資格を取得していますが、当時は合格率8.2%で、合格者数も1,000人を切る低い水準でした。

そのようなマンション管理士ですが、どのような資格なのか、今回はマンション管理組合の課題から切り口を変えて紹介します。

管理組合のコンサルタントであるマンション管理士は難しい試験?

今回紹介する内容は以下の通りです。

・マンション管理士試験の概要
・試験合格のための学習方法は?
・マンション管理士取得のメリットは?
・対する取得の注意点は?

まず初めに、マンション管理士の試験とはどのような内容なのか、概要を紹介します。

次に、どうやったらマンション管理士試験に合格できるのか、筆者の経験も踏まえて学習方法等、紹介します。

苦労してマンション管理士に合格したはいいけど、そのあとどうなるのかという点で、資格取得のメリットと注意点を紹介します。

冒頭で紹介したとおり、合格率10%前後の試験になるため、簡単という部類には入らず、難関資格の一角に位置づけられる資格です。

そのため、学習においても時間や効率を意識しながら学習することが、特に働きながら受験を考えている方にとっては重要になります。

また、合格したあとには、様々な活躍の場が考えられますが、具体的にはどのような場面があるのか、筆者の実例や他のマンション管理士の実例等も踏まえて紹介します。

マンション管理士試験の概要

まずはじめに、試験に突破しないとマンション管理士にはなれないということで、マンション管理士試験の概要について紹介します。

試験内容は?

マンション管理士の試験機関であり、資格取得後において筆者も大変お世話になっている、マンション管理センターの情報から引用します。

受験資格

年齢、学歴に関係なく受験可能です。そのため、実務経験が無くても受験可能な点は非常にいいですね。

ただし、試験に合格しても、マンション管理適正化法(以下、同法)第30条第1項の各号に該当する場合は、マンション管理士として登録できません。

具体的には、

・禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
・同法の規定で罰金の刑に処せられ、執行が終わってから2年が経過していない
・その他同法各号の取り消し基準に該当し、取り消し日から2年を経過していない

などがあります。

試験内容

同法施行規則第2条に記載があり、以下の4つになります。

①マンションの管理に関する法令及び実務に関すること
②管理組合の運営の円滑化に関すること
③マンションの建物及び附属施設の構造及び設備に関すること
④マンションの管理の適正化の推進に関する法律に関すること

①はマンションに関連する各法律として、区分所有法、被災マンション法、マンション建替え等円滑化法、マンション標準管理規約等が該当します。

②は管理組合の組織と運営、業務と役割、苦情対応と対策等、管理組合運営実務に近い内容です。

③はマンションの構造・設備、長期修繕計画、建物・設備の診断、大規模修繕等になります。

そして、④はマンションの管理の適正化の推進に関する法律、マンションの管理の適正化の推進を
図るための基本的な方針等が該当します。

試験の実施方法

50問4肢択一となります。

ただ、試験の一部免除者として、おもに管理業務主任者試験の合格者が該当しますが、前述④の範囲が免除となります。

ここから5問出るので、免除者は試験対策上、有利に機能します。

合格率はどのぐらいで推移しているのか?

実際にマンション管理士の受験者数や合格率はどのような推移をしているのか、2001年の試験開始以降のデータを集計してみました。

年度 受験者数 合格者数 合格率 合格点
2001年度 96,906 7,213 7.44% 38
2002年度 53,317 3,719 6.98% 36
2003年度 37,752 3,021 8.00% 38
2004年度 31,278 2,746 8.78% 30
2005年度 26,184 1,909 7.29% 34
2006年度 21,743 1,814 8.34% 37
2007年度 19,980 1,479 7.40% 36
2008年度 19,301 1,666 8.63% 37
2009年度 19,120 1,444 7.55% 34
2010年度 17,704 1,524 8.61% 37
2011年度 17,088 1,587 9.29% 36
2012年度 16,404 1,498 9.13% 34
2013年度 15,383 1,265 8.22% 38
2014年度 14,937 1,260 8.44% 36
2015年度 14,092 1,158 8.22% 38
2016年度 13,737 1,101 8.01% 35
2017年度 13,037 1,168 8.96% 36
2018年度 12,389 975 7.87% 38
2019年度 12,021 991 8.24% 37
2020年度 12,198 1,045 8.57% 36
2021年度 12,520 1,238 9.89% 38
2022年度 12,209 1,402 11.48% 40
2023年度 11,158 1,125 10.08% 36
合計・平均 520,458 42,348 8.14% 36.3

※筆者独自集計

延べ52万人が受験し、総合格者数は4万2千人、平均合格率は8.14%、平均合格点は36.3点という結果でした。

年によって難易度に差があるもの、30点台後半を取る必要がある試験と言えるでしょう。

受験者の傾向は?

令和5年度のマンション管理士試験における受験者の傾向は、マンション管理センターによると以下のとおりでした。

年齢
受験申込者数 受験者数
受験率
合格者数
合格率
人数 割合 人数 割合 人数 割合
~29歳 1,140 8.7% 894 8.0% 78.4% 84 7.5% 9.4%
30~39歳 1,927 14.6% 1,557 14.0% 80.8% 207 18.4% 13.3%
40~49歳 3,040 23.1% 2,522 22.6% 83.0% 303 26.9% 12.0%
50~59歳 3,729 28.3% 3,212 28.8% 86.1% 324 28.8% 10.1%
60歳~ 3,333 25.3% 2,973 26.6% 89.2% 207 18.4% 7.0%
合計 13,169 100.0% 11,158 100.0% 84.7% 1,125 100.0% 10.1%

受験者、合格者の傾向としては、

・受験者数は50代以上が55.4%、40代以上も含めると78.0%と大半を占める
・受験率は年齢とともに上がっていく
・合格者数は40代、50代が中心
・合格率は30代、40代が比較的高い

数値となっています。

30代~50代の現役世代がスキルアップで取得する一方で、60代以上が第二の社会人人生の中で新たにチャレンジする傾向があると想定されます。

試験合格のための学習方法は?

次に、おもな学習方法について紹介します。

おもに、「受験予備校に通う」か、「通信講座で学習する」、また「独学で頑張る」の3つが考えられます。

受験予備校に通う

マンション管理士専門の講座を開設している受験予備校に通うことも考えられます。

TACLECといった資格試験専門予備校を中心に、マンション管理士講座が開設されている所もあります。

受験予備校に通うことによる主なメリットやデメリットは以下の通りです。

メリット デメリット
・授業の時間がカリキュラム上指定されているため学習することに向き合うことができる
・模擬試験を実施している所もあり、実力を測ることができる
・講師とリアルな場面で質疑応答ができる
・通学の手間が掛かる
・近隣に通学できるところがない可能性
・他の通信講座や独学と比べて費用が高い

 

通信講座で学習する

通信講座はコロナ禍以降、急速に伸びてきた学習方法ですが、非常に便利です。

テキストが郵送またはダウンロードで入手し、動画配信している講座を受講する方式です。

また、マンション管理士は人気講座でもあり、各社力を入れています。

具体的には、STUDYingや、TVCMでもおなじみのアガルートアカデミーフォーサイトなどの講座がありますが、どこも講師に力を入れている所が多いです。

また、後述で書籍でも紹介しますが、筆者は平柳塾で学習していました。

この講座は通学と通信のハイブリッド型です。

受講によって、一発受験で合格しましたが、先生のおかげと言ってもいいぐらいです。

講義の内容も非常に分かりやすいですが、必ず事前準備をして臨むことが重要です。

ちなみに、通信講座のメリット、デメリットも紹介すると、

メリット デメリット
・通学の必要がない
・いつでも好きな時間に学習が可能
・自宅や外出先等、場所に限らず学習可能
・スマホ対応している講座は隙間時間も活用した学習ができる
・通学に比べてコストが割安
・自身でモチベーションを保つ必要がある
・緊張感が続かない可能性がある
・講師とリアルタイムに質疑応答ができない

 

独学で頑張る

最後に紹介する手段が、独学で学習する形です。

この方式は、以下のようなテキストを購入して、そこに自分なりに向き合いながら学習する方法です。

前述の講座でも紹介した、筆者が最もお世話になった、平柳先生の書籍です。

講座も先生の通信講座を取っていましたが、講座以外ではこの書籍に集中して学習していました。

また、シリーズの問題集

も活用しましたが、この一問一答式も非常にお勧めです。

また、テキストはあれもこれも手を付けずに、これと思ったものに集中することが合格への近道です。

他の著者の情報を色々と入れずに、出題範囲に絞った内容を集中的に学習することがよいでしょう。

おもな独学のメリット、デメリットは以下の通りです。

メリット デメリット
・時間を気にせず学習できる
・いつでもどこでも学習できる
・通学や通信に比べてコストがかなり割安
・モチベーションが続かない可能性
・独自の学習メソッドが必要
・学習方法に問題があれば複数年受験のリスクがある
・相談相手がいない

ちなみに筆者の場合は、マンション管理士以外の宅建や管理業務主任者、FP3級~FP1級までは全て独学で取得しています。

しかも、宅建以外は1発合格で、コストは最小限で達成しています。

ただ、独学は孤独であり独自の学習メソッドを構築する必要があり、一定の難易度を伴う手段かもしれません。

マンション管理士取得のメリットは?

これまで紹介した通り、マンション管理士試験合格には、比較的高いハードルがあります。

これらを超えてもなお考えられるメリットにはどのようなものがあるのか、経験上も含めて紹介します。

資格取得により仕事で箔が付く

マンション管理センターの受験者データの中でも受験者層で多かった30代~50代は、会社の中でも中心となっている戦力となる世代です。

その世代が顧客に向き合う際に、他の不動産資格である宅建や管理業務主任者等に加えて、マンション管理士資格を持っていたらどうでしょうか。

宅建や主任者よりも難易度が高いマンション管理士資格者であることは、自分自身に箔が付き、業務上にも好影響を及ぼす可能性があります。

宅建等複数資格を持っていると視点が広がる

マンション管理士以外でも宅建や主任者、FPなどの資格を持っていると、多面的なスキルがあるという証明にもなるでしょう。

それらの資格の背景である学問を身に着けている、知識を持っているということになります。

最近では、タワーマンションの管理や高経年マンションの課題など、マンション管理の複雑化が日々増加している状況です。

そのため、マンション管理士取得を通じて、マンション管理における一段上の視点が加わることによって、マンション管理だけではなく、建築や不動産全般の視点からもうまく活用できるでしょう。

仮題が多いマンションに対する支援のニーズが将来非常に多くなる可能性

国土交通省の2022年のデータによると、将来的な2031年末には築40年以上のマンションが249.1万戸、さらに2041年末には425.4万戸と急増する傾向にあります。

これまでどんどんマンションを建ててきたこともあり、築40年以上の高経年に差し掛かるマンションもさらひ増えていくことになります。

高経年マンションとともに増えるのが、マンションの二つの老いの中でも挙げられる、住民の高齢化課題です。

高齢化すれば、管理組合内の機能も徐々に低下していく可能性もあり、マンション管理士等のコンサルタントが対策へのアドバイスや支援が求められてくることとなります。

国や自治体もこの点は非常に注視していることから、今後のマンション管理士の活躍の場がますます増えてくることは間違いないでしょう。

ノウハウやスキルを固めれば独立開業も可能

マンション管理や不動産業界でのノウハウを貯めることができれば、独立することも考えられます。

多くの現役世代のマンション管理士資格者はマンション管理会社や不動産会社、マンションデベロッパーに勤務するサラリーマンです。

そのため、独立している方は比較的少ないですが、それらの方がシニアになった場合の今後のキャリアとして有効な手段でしょう。

一方で、業界に関係なく、管理組合の役員経験からさらに深堀をしたいということで取得される方もいらっしゃいます。

筆者はむしろこのタイプですが、そこでもノウハウを貯めることができれば、独立開業の可能性も少なからずあると言えるでしょう。

対する取得の注意点は?

メリットの反面、取得してもなかなかうまくいかないなどの注意点も想定されます。

こちらも具体的に筆者の実例や周りのマンション管理士資格者の傾向なども踏まえながら紹介します。

難易度が高くそれなりに学習時間を割く必要がある

受験者の傾向からも確認した通り、マンション管理士試験はそれなりに準備を行い、試験に臨む必要があります。

また、そこまで行くには相応の学習時間を割く必要があります。

受験予備校などは500時間程度というところが多いですが、筆者は合格までに10カ月、1,000時間費やしています。

結果的に37点で合格の所、39点で合格したので結果的に余裕を持った学習時間ともいえますが、必ず合格するためには、一定の時間の確保と中身の濃い学習が重要です。

時間をかければよい訳ではないですが、

・10カ月300日、500時間の場合は1日平均1時間半~2時間の学習は必要
・同1,000時間確保するとなると、1日平均で3~4時間の学習は必要

という相当ハードな内容にはなります。

全くマンション管理や不動産の学習をしたことが無い方であれば、1,000時間の確保が必要かどうかは分かりませんが、500時間では足りないような気はします。

また、仮に10カ月学習しても合格が確約されたわけでもないので、そこが難易度が高い所であるともいえます。

業務独占が無い名称独占資格である

マンション管理士は資格取得をしたと言っても、それ自体で仕事ができる資格ではありません。

中小企業診断士やファイナンシャルプランナー(一級ファイナンシャル・プランニング技能士など)、技術士などと同様に、いわゆる名称独占資格といえるものです。

ただ、その名称を語るためには、資格を取得している必要があり、無資格者はその名称を使うことができません。

しかしながら、最近では管理計画認定制度の事前審査や新築マンションの予備認定審査など、マンション管理士の中でも一定の資格を持つ者しかできない独占に近いものも出てきています。

現時点では分かりませんが、今後独占業務含め、さらに増える可能性があるかもしれません。

資格取得だけでは簡単には仕事が得られない

前述のとおり、独占資格がある業務と違い、資格があるからと言って仕事が得られる訳ではありません。

そのため、資格を取得してもなかなか業務に結びつかないマンション管理士が多いのが実態です。

少々古いのですが、平成30年にマンション管理センターがマンション管理士を対象に行ったアンケート結果は次の通りです。

マンション管理士を本業として活動を行っている者
・無収入 10.6%
・100万円未満 37.3%
・100~400万円未満 30.4%
・400~700万円未満 10.2%
・700~1,000万円未満 3.3%
・1,000~2,000万円未満 2.3%
・2,000万円以上 3.0%
・無回答 3.0%

また、なんらかの本業を持ちながら、副業として行っている者については、

マンション管理士を副業として活動を行っている者
・無収入 23.7%
・100万円未満 58.7%
・100~400万円未満 12.7%
・400~700万円未満 1.2%
・700~1,000万円未満 0.2%
・1,000~2,000万円未満 0%
・2,000万円以上 0.5%
・無回答 3.1%

これを見る限り、本業で行っている方で最低限食べていける水準である400万円以上の方でも20%弱しかありませんので、本業はかなりの難易度が伴うものとなります。

高年齢層で年金の足しにできるぐらいの収入で生活できる層に偏ってしまうのかもしれません。

従って、サラリーマンや他の士業をもちながら、または副業としてマンション管理士を行いながら、副業が伸びたら本業を検討することが望まれます。

逆に言えば、副業でも始められるビジネスとしてマンション管理士は考えられるのではないかと思います。

今後のニーズは非常にあるマンション管理士

今回は裏側の視点として、資格取得の観点からマンション管理士を紹介しました。

各種データを見ていても、相応の難易度があるにも関わらず、現時点では簡単には業務にありつけない実態も確認できます。

しかしながら、今後高経年マンションのストックがますます増加し、マンション管理に詳しいマンション管理士の活用がかなり増えてくると想定されます。

管理会社は管理組合と相対する場面も多く、お互いに利益相反の関係にもなります。

対して、情報が少なかったりノウハウが不十分な管理組合側に寄り添う立場として、マンション管理士の存在意義があります。

このような立場にあるマンション管理士について、管理組合の参考になればと思っています。

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