【将来のマンションはどうなる】今後のマンション政策のあり方まとめ

マンション管理
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国土交通省が、「今後のマンション政策のあり方に関する検討会」という会合を識者を交えて2022年10月から検討してきていました。

そのまとめが国土交通省より、「今後のマンション政策のあり方に関する検討会 とりまとめ(概要)」 として2023年9月29日に行われた「今後のマンション政策のあり方に関する検討会 とりまとめのWEB説明会」資料にて、紹介しています。

今後のマンション管理において重要な論点もあることから、今回マンション管理士である筆者が概要を具体的に確認するとともに、筆者の見解も少し挟みたいと思います。

※国土交通省から発表されている資料から抜粋しています

マンションを取り巻く現状

まず、前段として、現状のマンションを取り巻く環境がどのような状況にあるのか、確認しておきます。

マンションのストック状況等

マンションのストック(マンション総戸数)は約700万戸にも及び、日本国民全体の1割強が居住している、主要な居住形態になっています。

さらに新築マンションも増え続けており、すでにある中古マンションを加えると、今後も緩やかながらも増え続けていく傾向にあります。

1980年においてマンション住まいの方で「いずれは住み替えるつもり」と回答した方が57.0%で、「永住するつもり」と答えた21.7%に対して圧倒していました。

かつてはマンションは将来的な戸建てのための一時的な住まいとして位置づけられていたようです。

それも今では昔話であり、1999年には逆転し、2018年には「いずれは住み替えるつもり」と答えた方が17.1%に対して、「永住するつもり」と答えた方が62.8%と、永住志向がより高まっています。

マンションと居住者の「2つの老い」の進行

新築マンションは高齢者というよりも、むしろ30~40代の比較的若い世代が購入して住む傾向があることから、築年数が浅いマンションは70歳以上の高齢者が少ない傾向にあるのでしょう。

一方で、良く言われている「2つの老い」としてマンションの築年数が長くなるに従い、住民の高齢化も自然と増えていく傾向にあります。

さきほどのマンションの永住志向を考えると、自然な流れとして位置づけられるでしょう。

区分所有者の非居住化

高経年マンションに空き家が多い傾向にありますが、区分所有者がいなくなり住まなくなることで、空き家になっていることが考えられます。

また住まなくなることで、そのまま置いておいても管理費や修繕積立金の支払は発生することから、発生費用を埋めるべく、高経年マンションにおける収益手段として賃貸に出していることも想定されます。

管理組合の担い手不足

若い人は仕事や家庭で忙しいためにマンション管理まで手が回らない人も多く、さらに役員としての負担も多いことから、高齢者は管理規約や細則等で役員から外れることも考えられます。

そのため、役員を引き受けない方も組合員には多く、管理業者による外部者管理(第三者管理)も年々増えてきている結果となっています。

修繕積立金の不足等

高経年マンションにおいては、経年劣化の進行により大規模修繕工事や通常の修繕工事等を行う必要があり、本来の長期修繕計画よりも修繕積立金が足らないと考えているマンションが増えています

近年では、修繕工事を行う職人不足による人件費の高騰や、マンションの修繕に使用する資材の高騰等により、必要とされる修繕積立金も増える傾向にあります。

また、近年分譲されるマンションにおいては、将来的な大規模修繕工事のタイミングで修繕積立金が足らないことを想定して、段階的に修繕積立金を上げていく「段階増額積立方式」を採用するマンションが圧倒的です。

国土交通省としては、計画通りに増額しようにも合意形成が難しく、将来にわたり安定的な修繕積立金を確保する観点から、「均等積立方式」が望ましいとしています。

しかしながら、分譲マンションにおいては、購入当初から修繕積立金単価を上げる設定を販売のしやすさの観点からしない傾向にあり、この商慣習も結果的に段階増額方式を採用する要因となっているといえるでしょう。

マンションの大規模化

そして、首都圏や駅近を中心として、超高層(タワー)マンションを中心としたマンションの大規模化も進行しています。

1990年からのデータですが、当初44棟であった超高層マンションは、2022年には1,464棟と、1990年代の当初の横ばい傾向を経て一貫して増加傾向となっています。

2000年代は新規竣工棟数も多かったものの、2010年代以降は落ちてついてきている状況にあります。

既存住宅流通量の増加、管理情報に関する情報不足

新規分譲マンションは引き続き建てられているものの、売買においては中古マンションが近年逆転しています。

また、購入者はマンションの共用部分における管理については関心度が低く、目先の利便性や間取り等に関心がいきがちになっています。

建替え事業における事業採算性の低下、区分所有者の負担額の増加

マンションの建て替えにおいては、経年マンションの総棟数に比べて多くはないものの、徐々に増加している傾向です。

一方で、建替えにおける区分所有者の負担額は増加傾向です。

これは建て替えによって新たに建てるマンションの容積率が限られている、すなわち高いマンションにより新たに販売する住戸を多くし、新たな購入者に負担させることが難しくなっています。

そのため、区分所有者が建替えに対して賛成しづらい面も考えられます。

管理・修繕に関する現状・課題、施策の方向性

前章のような現状を踏まえて、今後のマンションにおいてどのような方向性で取り組んでいかなければならないのか、有識者で議論された内容について紹介します。

マンションの長寿命化の推進

前章で紹介したマンションの建替えを検討することについてですが、大多数のマンションにおいては建て替えは非常に難しい選択になると考えられます。

そのため、マンションを超長期的に考えていくために超長期修繕計画を検討し、マンションの長寿命化を検討する観点から、マンションの寿命をどうしていくべきか、考えていく必要があるとしています。

適切な修繕工事等の実施

下のグラフの例では、初期の修繕積立金単価3,000円から、20~25年目ににおいて30,000円にすることは合意形成の観点からも現実的ではなく、引き上げられないおそれがあります。

そのため、国土交通省が推奨する、均等積立方式を当初から採用して、馴らした形での修繕積立金が望まれるところです。

また、管理組合において事業者選定における透明性の確保や利益相反等にも注意する必要があるとともに、将来的にマンションを解体する場合には、その相場を把握の上、費用を考えていくことも重要です。

管理不全マンションへの対応

賃貸化や空き家化の進行により、区分所有者の所在地が不明となる点により総会の開催や管理費等の徴収に支障をきたす可能性があります。

加えて、管理不全マンションに対して、地方公共団体からの助言・指導・勧告に従わないことや、地方公共団体のマンパワー不足により適切に対応できないことも想定されます。

そのため、今後は地方公共団体の権限の強化や、専門家による行政の補完等についても検討がなされることになるかもしれません。

管理組合の役員の担い手不足への対応

管理会社が管理会社の役員を兼ねる、管理者管理・第三者管理の事例が増加しています。

中でも、自社の関係企業に修繕工事を優先的に発注し、区分所有者の費用負担が増加する懸念はあるものの、その際に管理組合としての留意事項が不明確となっている状況です。

今後管理会社が第三者管理を行う場合において、実態把握とともに、留意事項等ガイドラインの整備を行う予定としています。

定期借地権マンションの今日的評価

定期借地権に建てたマンションの解体についての、管理組合が関与するノウハウがない点や、定期借地権が終了した後にも継続して建物を使用したい場合等の具体的な対応が不明確になっている状況です。

今後このあたりも必要な施策の検討が必要となってくるでしょう。

大規模マンション特有の課題への対応

大規模マンションにおいては、管理費、修繕積立金が高額になりがちですが、監査体制が見合っていないとの指摘があります。

監事の大半が区分所有者であり、税理士やマンション管理士等の専門家がなっている割合が低い状況です。

また、超高層マンションにおける、特有の修繕項目が長期修繕計画に織り込まれていない可能性もあり、会計監査とともに、超高層マンション特有の修繕項目に対応した長期修繕計画の作成のあり方についても今後検討する必要があるとのことでした。

マンションの管理状況が価格に反映される環境づくり

マンションの管理の状況が不動産検索サイトに適切に反映されていない、情報の非対称性(買う側と売る側における情報の格差)があるようです。

また、購入時に長期修繕計画も確認していない方が多いなど、将来的なマンションの管理や計画より、目先の購入にとらわれてしまっていることが読み取れます。

そのため、情報提供のあり方についても、今後検討を行っていくとしています。

建替え等に関する現状・課題、施策の方向性

最後に、難易度が高い建替え等についての施策の方向性についてです。

円滑な建替事業等に向けた環境整備

マンションにおける平均世帯人数の減少傾向の中で、建替え後のマンションにおいては住戸の面積基準が原則50㎡以上などにより、本来さほど大きな面積を要しなくなってきている区分所有者にとって、負担が増加する傾向があります。

さらに、建替え前に所有していた専有部分の面積に対し、建替え後に無償で取得できる面積の割合である還元率が低くなる(建替え後の新たな居住面積が100%以下と小さくなる)傾向にあります。

さらに、高齢者にとっては、建替え前と建替え後の2度の引っ越しを伴うこととなり、賛成を躊躇するケースがあるようです。

また、既存不適格マンション(竣工時点での法律では適合して建てられたが、法改正等により現在の法律では適合しなくなってしまったマンション)の場合、建替える場合は現行法の基準となる事から、建物の規模が建替え前を確保できない可能性があります。

今後は地方公共団体において独自の緩和策等を収集して、他の地方公共団体への横展開を図るなど、施策が必要となってくるようです。

多様なニーズに対応した事業手法

建替えに伴う引越しにより、そのまま戻ってこないニーズや、マンション建替えの際に影響する隣接地・底地の権利者が、権利変換により新たにマンションの権利を得られないなど、建替え事業に協力するインセンティブが不足しているとの指摘があるようです。

また、建替え決議において、現在法制審議会で検討中の新たな仕組みに対応した事業手続きがないため、事業遂行が支障をきたす恐れがあるとしています。

建替え事業におけるこれらの新たなニーズに対応すべく、整備を行っていく必要がありそうです。

自主建替えの円滑化

ディベロッパー等の事業協力者が参加しない、いわゆる自主建替えの実施にあたり、管理組合や区分所有者が主体性をもって事業を実施するために役立つノウハウが未整備であるとの指摘があります。

また、自主建替えが増加した場合、これらをサポートする人材の不足も懸念されています。

そのため、今後において自主建替えにおける実態把握や金融支援、専門家活用のあり方に関する検討を踏まえ、マニュアルの整備等を進める方針となっています。

今後の対応

国土交通省として、検討方針が明らかになった事項については、今後、標準管理規約や管理計画認定基準、ガイドラインの見直しなど、施策の具体化に向けた検討を開始するようです。

とりまとめについて、関係者(マンション居住者、管理業者、修繕工事会社及び設計コンサルタントの従業員、マンション管理士などの専門家、地方公共団体の職員等)の関心を呼び起こす視点から、国土交通省HPで公開した上で、広く意見募集を行う予定とのことです。

国が考えるマンション施策においては、我々マンション管理士等の専門家だけではなく、管理組合や管理会社、そして修繕工事会社、さらにはマンションデベロッパーに及ぶまで、全てにおいて検討すべき事項であると考えられます。

従って、常に国の動きを注視しながら、今後の方針についてできることを考えていく必要があるという認識を持っています。

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