【規約解説】マンション管理組合の借入れとは?標準管理規約第63条をわかりやすく解説!

管理規約解説

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マンション管理組合の資金調達の一つとして「借入れ」が認められているのをご存じでしょうか?
マンション標準管理規約第63条では、管理組合が必要な範囲で借入れを行うことができると定められています。
しかし、借入れには一定のルールがあり、借入れのための工事内容の総会での承認や適切な返済計画の策定が求められます。
また、金融機関による審査基準もあり、管理組合の財務状況や管理体制がチェックされます。

この記事では、マンション標準管理規約第63条の概要と、管理組合が借入れを行う際のポイントや注意点について、実際に管理組合の借入と返済業務にも関わったことがあるマンション管理士兼財務の専門家である筆者がわかりやすく解説します。

マンション標準管理規約第63条とは?
管理組合が借入れをする目的と注意点
金融機関の審査基準と返済計画の立て方

マンション管理の運営をスムーズにするためにも、ぜひ最後までお読みください。

【規約解説】マンション管理組合の借入れとは?標準管理規約第63条をわかりやすく解説!

今回紹介する内容は、以下の通りです。

✅マンション標準管理規約第63条とは?管理組合の借入れの基本を解説
✅管理組合が借入れをする際の具体的な注意点

まず、最初の章では標準管理規約第63条の条文から「借入れ」についてそのままの文面を紹介します。

続いて、第63条「借入れ」の条文や補足事項を踏まえて、管理組合や区分所有者が注意すべき点を、マンション管理士である筆者独自の視点から具体的に紹介します。

それでは、次章より当該条文について紹介します。

マンション標準管理規約第63条とは?管理組合の借入れの基本を解説

まずは第63条の条文を確認しましょう。

(借入れ)
第63条 管理組合は、第28条第1項に定める業務を行うため必要な範囲内において、借入れをすることができる。

一文のみの比較的シンプルな条文ですが、文章に込められている内容には非常に深いものがあります。

以下ならびに、次章で細かく紹介します。

第63条の概要と条文

マンション管理組合は、必要な範囲で借入れが可能と定められています。これは、管理組合がマンションの維持・管理を適切に行うために、資金が不足する場合に金融機関などからお金を借りられることを意味します。

管理組合が借入れをする目的とは?

借入れは無制限ではなく、第28条第1項に記載された管理組合の業務の範囲内でのみ可能です。具体的には、以下のようなケースが考えられます。

  • 大規模修繕工事の資金不足時(修繕積立金が不足している場合)
  • エレベーターや給排水設備の緊急修繕(急な修繕が必要になった場合)
  • 共用部分の設備更新(防犯カメラやオートロックの導入など)

借入れをする際の注意点とリスク

管理組合が借入れをする際には、以下の点に注意が必要です。

  • 総会の決議が必要(標準管理規約第48条第十号により、通常、普通決議で可決)
  • 借入金の返済計画を明確にする(管理費の充当や修繕積立金で返済可能か)
  • 金融機関の審査を受ける(管理組合としての返済能力が必要)

借入れを活用する際のポイント

借入れは管理組合の財政を圧迫するリスクがあるため、まずは長期修繕計画に基づいた修繕積立金の計画的な運用を検討することが重要です。また、借入れに頼る前に、資金調達の選択肢(管理費・修繕積立金の値上げ、一時金の徴収など)を比較検討し、どの方法が管理組合にとって適切なのか、十分検討する必要があります。

管理組合が借入れをする際の具体的な注意点

次に、借入れに関して管理組合として注意しておきたい点を紹介します。

借入れできる資金の用途は修繕積立金のみ

管理組合の借入れは、主に修繕積立金の用途に限定されます。これは、標準管理規約第63条が第28条第1項の業務範囲内で、おもに長期的な観点でマンションに重要な使途に限定しているためです。

修繕積立金の用途としては、大規模修繕工事、設備の改修・更新、災害などの緊急修繕が代表例です。

一方で、管理費の不足補填や、組合運営の一般経費には原則として使用できません。管理費が不足している場合は、借入れではなく、管理費の見直しや一時徴収などの方法を検討する必要があります。短期的な資金は管理組合自らで手当てすることがマンション管理の原理原則です。

管理組合が利用できる借入れ先とは?

管理組合が借入れをする場合、利用できる金融機関は限られます。一般的な住宅ローンや事業融資とは異なり、マンション管理組合向けの融資を取り扱っている金融機関を選ぶ必要があります。代表的なのは公的機関である住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資です。その他、地方銀行・リース会社などが管理組合向けの融資を提供しています。しかし、対応している金融機関は多くはなく、かつ融資条件や金利、審査基準が異なるため、事前に比較・相談が必要です。

金融機関の審査基準|返済能力と管理体制がポイント

借入れ審査では、管理組合の「返済能力」がチェックされます。借入先金融機関によっても審査内容が異なりますが、おもに以下の点が審査対象になります。

  • 修繕積立金の残高と過去の管理状況(滞納者が多いと審査が厳しくなる)
  • 修繕積立金の積立計画が適正か(長期修繕計画の有無)
  • 管理費や修繕積立金の徴収状況(滞納率が高いと信用度が下がる)
  • 管理規約や管理体制が整備されているか(管理規約が曖昧だったり標準管理規約に準拠しておらず古い場合は金融機関の信用が得にくい)

例えば、住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資の場合は、以下のような書類が求められています。

必須書類
✅管理規約
✅借入や工事内容が承認された総会議事録や議案書
✅工事内容の見積書や内訳書

当てはまる管理組合にとって提出が必要な書類
✅すまい・る債の積立手帳
✅管理計画認定通知書
✅滞納率が10%を超える場合の帳簿や督促状況確認書
✅返済期間が10年を超える場合の対象工事が確認できる資料

※参考:住宅金融支援機構 マンション共用部分リフォーム融資 借入申込書添付書類一覧表より一部抜粋

などがあります。

修繕積立金計画と一緒に返済計画を立てるべき理由

借入れを行う際は、単に資金を調達するのではなく、修繕積立金計画と一体で検討することが必須です。例えば、以下のような視点が求められます。

  • 借入額は、将来の修繕費の見通しを踏まえて決定する
  • 返済期間と金利を考慮し、毎月の返済額が適正か確認する
  • 将来的に修繕積立金の値上げが必要か検討する

特に、長期修繕計画の見直しをせずに借入れを行うと、返済が管理組合の財政を圧迫するリスクがあるため、慎重な計画が求められます。

余裕を持った繰り上げ返済の検討も重要

借入れを行った場合、契約通りに返済を続けるだけでなく、余裕があれば繰り上げ償還(早期返済)を検討することも有効です。繰り上げ償還には以下のメリットがあります。

  • 支払う利息を減らせる(借入期間が短くなるほど利息総額が減少)
  • 管理組合の財政負担を軽減できる(早期に返済が完了すれば、将来的な管理費・修繕積立金の負担軽減につながる)
  • 財務状況を改善し、次の修繕計画に柔軟に対応できる

ただし、繰り上げ償還には手数料がかかる場合や、資金繰りに余裕を持たせる必要があるため、無理のない範囲で計画的に行うことが重要です。

借入れがあっても自治体の管理計画認定を取得できる!

マンションの管理計画認定制度とは、地方自治体がマンションの管理状況を評価し、適正な管理が行われていると認定する制度です。管理計画認定を取得すると、取得していない物件と比べて管理状態が良いということから、資産価値向上につながることや、共用部分のリフォームローンの借入利率が下がるメリットなどがあります。

管理組合が借入れをしている場合でも、適正な長期修繕計画があり、計画最終年度までに借入れを完済していれば管理計画認定の取得の可能性はあります。

つまり、借入れ自体が問題になるのではなく、計画的な返済が可能かどうかが重要なポイントになります。管理計画認定の取得を目指す場合は、借入れを含めた財務管理の透明性を高め、健全な管理運営を心がけることが求められます。

マンション管理組合の借入れは計画的な運用が重要!

マンション標準管理規約第63条では、管理組合が必要な範囲で借入れを行うことが認められています
ただし、借入れをする際には、総会での承認、金融機関の審査、適切な返済計画の策定が必要です。

✅ 借入れは修繕積立金の用途に限定されている
✅ 金融機関によって審査基準が異なるため、事前に比較・相談が必要
✅ 長期修繕計画と一体で借入れと返済を考えることが大切
✅ 繰り上げ返済を活用し、財務負担を軽減することも検討すべき
✅ 借入れがあっても、計画的な返済を行えば管理計画認定の取得は可能

マンションの管理組合が適切に借入れを活用することで、計画的な修繕や管理運営を行うことができます
しかし、借入れはあくまで補助的な手段であり、まずは修繕積立金の適切な運用を最優先に考えましょう。

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