今回、管理組合の総会に出席したのだけれど、署名と捺印をして欲しいと理事長から言われた…
また、
総会の議事録って我々区分所有者にも毎回回ってくるけど、具体的な質疑応答の内容がどうだったのか知りたい…
さらには、
総会の議事録について、チェックする必要があるのだけれどどういった点に気を付ければよいのか知りたい…
などなど、区分所有者にとって管理組合総会に関する疑問や確認事項も比較的多いと考えられます。
そして、議長はこれらの議事録を作成する必要があるとともに、適切に保管する義務もあります。
今回は、総会が開催されると必ず必要となる議事録について、その作成や保管等の決まりを、国土交通省が公開しているマンション標準管理規約の第49条を抽出して、マンション管理士である筆者が細かく紹介します。
【規約解説】総会後の疑問を解決!議事録の書き方から保管方法まで【管理組合向け】
今回紹介する内容は、以下の通りです。
・第49条「議事録の作成、保管等」の規定に対して国土交通省が指摘する補足・注意事項は?
・「議事録の作成、保管等」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?
まず、最初の章ではマンション標準管理規約第49条の条文から「議事録の作成、保管等」についてそのままの文面を紹介します。
続いて、この条文についての補足事項や、注意しておくべき事項について国土交通省より提示されています。
今回は、国土交通省が示している文面を、筆者が意訳せずにまずはそのまま紹介します。
その後、その文面の解説を、イメージしやすい具体的な例を踏まえながら紹介します。
そして、最後の章では第49条「議事録の作成、保管等」の条文や補足事項を踏まえて、管理組合や区分所有者が気を付けておいた方が良い点を、マンション管理士である筆者独自の視点から具体的に紹介します。
それでは、次章より当該条文について紹介します。
マンション標準管理規約第49条の「議事録の作成、保管等」とは?管理組合が知っておくべきこと
最初に、マンション標準管理規約第49条の「議事録の作成、保管等」の条文をそのまま紹介します。
条文には、電磁的方法が利用可能でない場合と可能な場合でそれぞれ雛形文が異なっていますので、各内容を紹介します。
その後、条文に対する筆者の補足説明を紹介します。
電磁的方法が利用可能ではない場合
まずは、電磁的方法が利用可能でない場合の条文です。
第49条 総会の議事については、議長は、議事録を作成しなければならない。
2 議事録には、議事の経過の要領及びその結果を記載し、議長及び議長の指名する2名の総会に出席した組合員がこれに署名しなければならない。
3 理事長は、議事録を保管し、組合員又は利害関係人の書面による請求があったときは、議事録の閲覧をさせなければならない。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。
4 理事長は、所定の掲示場所に、議事録の保管場所を掲示しなければならない。
電磁的方法が利用可能な場合
次に、電磁的方法が利用可能な場合の条文です。
太線の所が電磁的方法が可能な条文の変更箇所です。
第49条 総会の議事については、議長は、書面又は電磁的記録により、議事録を作成しなければならない。
2 議事録には、議事の経過の要領及びその結果を記載し、又は記録しなければならない。
3 前項の場合において、議事録が書面で作成されているときは、議長及び議長の指名する2名の総会に出席した組合員がこれに署名しなければならない。
4 第2項の場合において、議事録が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報については、議長及び議長の指名する2名の総会に出席した組合員が電子署名(電子署名及び認証業務に関する法律(平成12年法律第102号)第2条第1項の「電子署名」をいう。以下同じ。)をしなければならない。
5 理事長は、議事録を保管し、組合員又は利害関係人の書面又は電磁的方法による請求があったときは、議事録の閲覧(議事録が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報の内容を紙面又は出力装置の映像面に表示する方法により表示したものの当該議事録の保管場所における閲覧をいう。)をさせなければならない。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。
ただし、議事録が電磁的記録で作成されているときには、組合員又は利害関係人からの求めがある場合に閲覧に代えて、当該電磁的記録に記録された情報を電磁的方法により提供することができる。
6 理事長は、所定の掲示場所に、議事録の保管場所を掲示しなければならない。
議事録の作成、保管に関する条文であることから、電磁的方法が可能でない場合と可能な場合で細かく相違がみられます。
具体的には次項で詳細説明します。
マンション管理士の筆者による第49条「議事録の作成、保管等」の補足説明
そして、筆者の方から前述で紹介した条文の各項に対する補足説明をします。
第1項 議事録作成義務
総会の内容については、議事録を作成する必要があるという条文です。
また、議事録は書面または電磁的記録どちらでもよいということになっています。
そのため、電磁的記録で残せば、必ずしも紙で残す必要もないということになります。
第2項 議事録への記載内容(電磁的方法が可能な場合は第2項と第3項、第4項)
議事録の内容として、議事の経過の要領と、その結果を記載する必要があります。
例えば
・会議場の組合員に賛否を諮った(賛否を問うた)
・賛成多数により可決された
という趣旨の、各議案の流れと結果を記載することとなります。
また、電磁的方法でない場合は、
・議長が指名する2名の総会出席組合員
が議事録に署名をする必要があります。
第3項 理事長による議事録保管と閲覧請求への対応(電磁的方法が可能な場合は第5項)
総会の議事録は、理事長が保管することとなっています。
実際には管理員室や集会室のバインダー等に綴じられるか、電磁的方法が可能な場合は管理組合の専用共有ファイルなどへの保管が考えられます。
また、組合員や利害関係人からの書面やメール等の電磁的方法による閲覧請求があった場合には、閲覧させる必要があります。
そして、電磁的方法が可能な場合は、必ずしも紙に出力して見せる必要はなく、PC画面への表示でもよいこととなっています。
さらに、閲覧する際には、日時や場所を指定することができるとしています。
加えて、電磁的方法が可能な場合において、議事録が電磁的記録で作成されている場合、閲覧に代えてデータ提供することも可能としています。
第4項 議事録の保管場所の掲示(電磁的方法が可能な場合は第6項)
理事長は、掲示板等の掲示場所に総会議事録の保管場所を掲示する必要があります。
また、議事録が電磁的記録によるデータである場合も同様に保管場所の掲示が必要です。
具体的には、
・電磁的方法が可能な場合は管理組合の共有フォルダーやイントラネット内に保管されている、管理員室で管理している管理組合専用PCの中にある、管理員室にある記録媒体に記録している
など、各管理組合における保管方法になると考えられます。
次章では、国土交通省が第49条「議事録の作成、保管等」の規定に対して補足している内容として、利害関係人や議事録の電子署名等について紹介します。
第49条「議事録の作成、保管等」の規定に対して国土交通省が指摘する補足・注意事項は?
国土交通省がこの条文に対して補足している内容は4項目あります。
それぞれの項目を紹介するとともに、筆者の補足を入れたいと思います。
第3項(電磁的方法が利用可能な場合は第5項)の利害関係人の定義
1つ目に、第3項(電磁的方法が利用可能な場合は第5項)の利害関係人についての説明があります。
区分所有者に対する、法律上の利害がある者として、一例が表示されています。
例えば、区分所有者から住戸を借りている賃借人であれば、総会の決議事項によって自らの影響があるかもしれません。
そのため、実際に総会でどのような議案があり、決議がどうなったのかを確認するため、議事録を閲覧することができることとなります。
その他の法律上の利害関係者についても同様となります。
また、事実上利益や不利益を受けたりする者も対象外としています。
例えば、総会の決議によって、区分所有者に対する住戸の施工を行うことになった工事業者は利益を受けたりするものに該当するかと考えられます。
しかしながら、法律上の利害関係者には当たらないことから、閲覧対象外になる可能性があります。
議事録閲覧時の注意点
次に、議事録閲覧時の注意点についても記載されています。
電磁的記録の具体例
そして、電磁的記録の例として、以下のようなものが挙がっています。
ほかの電磁的記録としては、インターネット上の共有ファイルやイントラネットのような、組合員または、一定の役員のみが入室可能なものも考えられます。
電子署名や電子認証について
最後の4つ目として、電子署名に関する補足が2点あります。
ア)当該情報が当該措置を行ったものの作成に係るものであることを示すためのものであること。
イ)当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。
ア)は本人が認証したものであることが証明される仕組みが必要になります。
また、イ)については、そこから改ざんされたものではない、電子署名がなされた議事録原本であるということが確認できるものである必要があります。
最近の電子署名システムでは、双方備わっているものが一般的です。
すなわち、それらのソフトウェアを使用することによる電子署名であることが望まれます。
以上、国土交通省が挙げるマンション標準管理規約第49条「議事録の作成、保管等」の補足と注意点を紹介しました。
最後の章では、これまで紹介した条文ならびに補足と注意点を踏まえて、筆者独自の観点から議事録の具体的な作成、保管方法や議事録保管場所の掲示について紹介します。
「議事録の作成、保管等」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?
この章では、マンション標準管理規約第49条「議事録の作成、保管等」の条文や補足コメントを踏まえ、筆者独自の視点から、管理組合や区分所有者が気を付けておいた方が良い点を紹介します。
総会議事録作成、保存には3タイプ考えられる
総会議事録として残されるパターンは3タイプ考えられます。
・紙の議事録に署名押印がなされたものをPDF等の電子データ化したもので電磁的記録として保存
・電子データで作成した議事録に電子署名を行ったもので電磁的記録として保存
それぞれ確認していきます。
紙の議事録に署名押印がなされたものでバインダーに保存
今の時代、手書きで議事録を書くことはほぼなく、多くの場合はWordやGoogle Document等のソフトを使用して書かれることが多いでしょう。
それを紙に出力して、議長である理事長と、総会に参加した区分所有者2名の署名、押印がなされるパターンです。
現時点でも多くの管理組合はこのパターンが多いのではないかと想定されます。
その後、議事録専用バインダーに保存し、利害関係者の要請があった場合に閲覧させるというものです。
紙の議事録に署名押印がなされたものをPDF等の電子データ化したもので電磁的記録として保存
上記に加えて、紙の議事録はバインダーへ、そしてその議事録をスキャンしてPDF等で保存するパターンも考えられます。
とりわけ、自治体の管理計画認定制度の申請は紙ではなくPDFデータで提出することとなるため、PDFで保管することも多くなってきました。
また、このほうが役員や利害関係者の閲覧もしやすいでしょう。
その場合は、管理組合で決めた電磁的記録方法で保存することとなります。
電子データで作成した議事録に電子署名を行ったもので電磁的記録として保存
そして、最近多くなってきているのが、議事録に電子署名をするパターンです。
これは紙の議事録回覧や署名の手間が省けるうえ、そのまま電子署名ソフトがクラウド上で保管できる機能も備えていることから、管理組合や管理会社等の手間を大きく軽減できるものです。
電子署名がついているかどうかも、PDFファイルを開けばすぐに分かる仕組みとなっています。
議事録のひな形を決めておくと書きやすく、見やすい
総会の議事録については、管理委託している管理会社が管理委託契約の範囲で作成することがほとんどでしょう。
一方で、作成の一部やチェックなど、管理組合や役員が行うことも考えられます。
そのような場合は、総会のひな型を予め定めておき、それを継続的に使うことがよいでしょう。
理由としては、本来書くべき内容としての
・総会出席者数
・議決権総数
・定足数
・総会開会の定型的内容
・議事録署名人について
・署名箇所
など、議事録として織り込むべき箇所の書き漏れが無いようにするためです。
所定の掲示場所に、議事録の保管場所を掲示する
筆者が管理組合を訪問する際には、必ず管理組合の掲示板を確認しますが、この
というのが記載されていない管理組合も見られます。
歴史がある比較的高経年マンションにおいては、プレートなどで
総会議事録は管理員室にあります。
など、掲示板に貼られてある所もあります。
管理規約で定めている場合は、総会議事録の保管場所については明確化する必要があります。
ちなみに、理事会の議事録の保管場所は特に求められていません。
議案が複数案ある場合は後から見ても分かるように承認案を明確化
議事録は、当日出席できなかった組合員や、利害関係者が閲覧することもあることから、内容を簡潔に、分かりやすく記載することが求められます。
条文に定めがある「議事の経過の要領及びその結果」はもちろんですが、結果としてどのような内容が承認されたのか、明確にすることが必要です。
とりわけ、案が複数案ある場合は、どの案が承認案なのか、後から見る人にとってもわかるように記載する必要があります。
議事録には質疑応答の内容も記載する
「議事の経過の要領」に含まれることになるかと考えられますが、当日総会で行われた質疑応答についても、明確化することが求められます。
また、総会に出席した区分所有者の質問に対して、どのような回答がなされたかという点では、その場にいなかった区分所有者にとっても興味がある内容であると考えられます。
細かい質疑応答内容まで漏れなく記載する必要はありませんが、要旨が分かる内容は記載する必要があると言っていいでしょう。
そして、前述した通り、管理組合にとって議事録は管理会社が書くことも多いと想定されます。
その場合も同様に、質疑応答の内容が的確に反映されているか、チェックすることも重要と言えます。
記載すべき内容を漏れなく記載したい総会議事録
今回は、マンション標準管理規約第49条「議事録の作成、保管等」の条文や、国土交通省が紹介する補足・注意点を紹介しました。
それらを踏まえて、筆者独自の視点からも紹介しました。
総会議事録は、管理組合や作成する管理会社を含めて、それぞれ特徴があると考えられます。
原則、管理規約に定めている内容を議事録に反映しつつ、今回紹介した補足事項や注意点も参考にして頂ければと思います。
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