【規約解説】理事会に出席できない!マンション管理規約で定める理事会のルールを解説

管理規約解説

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理事会にどうしても出席できないのだけれど、どのように対応すればいいのだろうか…?

また、

理事会に出席できない代わりに、予め伝えておきたいことがあるのだけれど、これは理事会として認められるのだろうか…?

さらには、

代理で家族に理事会に出て貰うことは可能なのだろうか…?

などなど、理事として理事会に関する疑問ももつことが多いと考えられます。

理事会の日に限って、他の予定とバッティングすることも比較的ありそうですね。

今回は、このような管理組合や理事などの疑問に応えるべく、マンション標準管理規約第53条の「理事会の会議及び議事」について取り上げます。

第53条の条文とともに、国土交通省が示している補足・注意事項に加えて、マンション管理士である筆者が管理組合や区分所有者にとって気を付けておいた方が良い事項も踏まえて、細かく紹介します。

  1. 【規約解説】理事会に出席できない!マンション管理規約で定める理事会のルールを解説
  2. マンション標準管理規約第53条「理事会の会議及び議事」とは?
    1. 電磁的方法が利用可能でない場合
    2. 電磁的方法が利用可能な場合
    3. 第53条「理事会の会議及び議事」の条文解説 理事会を開催するための定足数や議決方法
      1. 第1項 理事会の定足数
      2. 第2項 書面または電磁的方法による決議
      3. 第3項 特別利害関係理事に対する取り扱い
      4. 第4項 理事会の議事録
      5. 第5項 理事会資料の保管等
  3. 第53条「理事会の会議及び議事」の規定に対する国土交通省の補足・注意事項は?
    1. 理事会における理事本人の出席の必要性
    2. 理事会には代理出席を認めない
    3. 理事に事故があるなどやむを得ない場合の対策
    4. 理事が理事会を欠席する場合の対応策
    5. 理事会欠席理事への配慮
    6. 書面又は電磁的方法による理事会決議は例外対応
    7. 特別利害関係にある理事について
  4. 「理事会の会議及び議事」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?
    1. 理事の決めごとは原則理事会を開催して決める
    2. 管理組合において理事の人数が少ないと、集まりが悪い場合は理事会が開催できない
    3. 理事の出欠確認と意見を吸い上げる仕組み
    4. 理事が理事会に出席できない場合の対処法は?
  5. 理事会には理事本人が出席して議案に対する賛否を投じる

【規約解説】理事会に出席できない!マンション管理規約で定める理事会のルールを解説

今回紹介する内容は以下の通りです。

・マンション標準管理規約第53条「理事会の会議及び議事」とは?
・第53条「理事会の会議及び議事」の規定に対する国土交通省の補足・注意事項は?
・「理事会の会議及び議事」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?

まず、最初の章ではマンション標準管理規約第53条の条文から「理事会の会議及び議事」についてそのままの文面を紹介します。

続いて、この条文についての補足事項や、注意しておくべき事項について国土交通省より提示されています。

国土交通省が示している文面を、筆者が意訳せずにまずはそのまま紹介します。そしてその文面の解説を、イメージしやすい具体的な例を踏まえながら紹介します。

さらに、最後の章では第53条「理事会の会議及び議事」の条文や補足事項を踏まえて、管理組合や区分所有者が気を付けておいた方が良い点を、マンション管理士である筆者独自の視点から具体的に紹介します。

早速、次章より当該条文について紹介します。

マンション標準管理規約第53条「理事会の会議及び議事」とは?

早速ですが、マンション標準管理規約第53条「理事会の会議及び議事」の条文について紹介します。

この第53条には、電磁的方法が利用可能でない場合と可能な場合のパターンがあります。

電磁的方法が利用可能でない場合

まずは、電磁的方法が利用可能でない場合です。

(理事会の会議及び議事)
第53条 理事会の会議(WEB会議システム等を用いて開催する会議を含む。)は、理事の半数以上が出席しなければ開くことができず、その議事は出席理事の過半数で決する。
2 次条第1項第五号に掲げる事項については、理事の過半数の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議によることができる。
3 前2項の決議について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。
4 議事録については、第49条(第4項を除く。)の規定を準用する。ただし、第49条第2項中「総会に出席した組合員」とあるのは「理事会に出席した理事」と読み替えるものとする。
5 理事会で使用した資料については、第49条の2の規定を準用する。

電磁的方法が利用可能な場合

続いて、電磁的方法が利用可能な場合です。

このケースは第4項のみ違っており、具体的には太線の箇所です。

4 議事録については、第49条(第6項を除く。)の規定を準用する。ただし、第49条第3項及び第4項中「総会に出席した組合員」とあるのは「理事会に出席した理事」と読み替えるものとする。

電磁的方法が利用可能な他の条項を指すため、条文の調整をしています。

第53条「理事会の会議及び議事」の条文解説 理事会を開催するための定足数や議決方法

上記の通り、当該条文は5項からなります。

各項について、それぞれ具体的に解説します。

第1項 理事会の定足数

リアルに集まって行う理事会もWEB会議システムで開催するものも、理事の半数以上の出席(定足数)がないと開催できません。

また、議案の可決は、出席理事の過半数で決まることとなります。

管理組合の理事が10名いる場合
・理事会は5名以上で開催可能
・議案の可決は3名以上

となります。

ちなみに、理事会には「特別決議」という概念は無く、全ての議題において「過半数」での可決となります。

第2項 書面または電磁的方法による決議

次条(第54条「議決事項」)第1項第五号に掲げる事項とは、

五 第17条、第21条及び第22条に定める承認又は不承認
という内容です。さらに、各条項へ飛ぶ形となり、
第17条:専有部分の修繕等
第21条:敷地及び共用部分等の管理
第22条:窓ガラス等の改良

となっています。

これらについては、わざわざ理事が集まらなくても、理事の過半数の承諾があるときは、書面やメール等電磁的方法で可決可能であるとしています。

各条文の解説は以下で詳しく行っているので、合わせてご参照ください。

第17条:専有部分の修繕等

【規約解説】対応マニュアル並に詳細…専有部分リフォーム時の注意点
標準管理規約第17条には専有部分の修繕等として、区分所有者が行うリフォームの取り決めがあります。補足説明も非常に細かくチェック項目があり、管理組合としても有益情報といえます。また主に筆者の観点からも気を付けておくべき事項として紹介します。

第21条:敷地及び共用部分等の管理

【規約解説】敷地や共用部分等の管理・費用負担のルールを細かく紹介
標準管理規約第21条の「敷地及び共用部分等の管理」について、条文とともに補足事項を紹介します。共用部分においては費用負担が管理組合か区分所有者・居住者かを明確にしておくことが重要です。マンション管理士の筆者が注意点を含めて紹介します。

第22条:窓ガラス等の改良

【規約解説】管理組合と区分所有者共に確認したい窓ガラス改修ルール
標準管理規約第22条には窓ガラス等の改良として修繕のためのルールが定められています。一方の窓ガラス等の開口部は、専有部分ではなく共用部分であることが一般的です。規約条文と共に区分所有者として気を付けていきたいことを中心に紹介します。

第3項 特別利害関係理事に対する取り扱い

前述の第2項に関わっている理事がいる場合は、その決議に参加できないとしています。

すなわち、関係する理事自身の住戸で専有部分の修繕(リフォーム)や、窓ガラスの改良等をする場合には、その理事が区分所有者として申請しているためです

結果的に自己承認となってしまうことから、この理事を除いて判断を行うこととなります。

第4項 理事会の議事録

こちらの項目は第49条「議事録の作成、保管等」の準用規定があります。

ただし、電磁的方法が利用可能でない場合は第4項、利用可能な場合は第6項を除くとあります。

この各項は、「議事録の保管場所の掲示」を除くということなので、理事会議事録の保管場所の掲示は不要ということになります。

第5項 理事会資料の保管等

こちらについても、第49条の2「総会資料の保管等」の準用規定があります。

総会資料と同様の保管方法にて、理事会資料も保管すればよいということになります。

第53条「理事会の会議及び議事」の規定に対する国土交通省の補足・注意事項は?

この条文において、国土交通省は7項目の補足・注意事項を紹介しています。

それぞれどのような内容になっているのか、筆者の解説を含めて紹介します。

理事会における理事本人の出席の必要性

まず挙げているのは、理事は本人が出席する必要があるという点です。

① 理事は、総会で選任され、組合員のため、誠実にその職務を遂行するものとされている。このため、理事会には本人が出席して、議論に参加し、議決権を行使することが求められる。

総会で選任され、組合員のために誠実義務を果たす必要があるためです。

本人自ら理事会に出席して、理事会議案の賛否を投じる必要があるとしています。

理事会には代理出席を認めない

次に、本人が出席する必要があり、代理は認めないというのが原則のようです。
② したがって、理事の代理出席(議決権の代理行使を含む。以下同じ。)を、規約において認める旨の明文の規定がない場合に認めることは適当でない。

これは、二重否定の言い方で分かりづらくなっていますが、単に

管理規約で代理出席を認めることは適切ではない

ということです。

理事に事故があるなどやむを得ない場合の対策

さらに、代理についてのコメントが続きます。

理事に事故があった場合どうするのか?という点です。

③ 「理事に事故があり、理事会に出席できない場合は、その配偶者又は一親等の親族(理事が、組合員である法人の職務命令により理事となった者である場合は、法人が推挙する者)に限り、代理出席を認める」旨を定める規約の規定は有効であると解されるが、あくまで、やむを得ない場合の代理出席を認めるものであることに留意が必要である。この場合においても、あらかじめ、理事の職務を代理するにふさわしい資質・能力を有するか否かを考慮して、その職務を代理する者を定めておくことが望ましい。
なお、外部専門家など当人の個人的資質や能力等に着目して選任されている理事については、代理出席を認めることは適当でない。

ここでは、やむを得ない場合においては、その配偶者又は一親等の親族に限って代理出席を認めるのは有効としています。

ただそれでも、資質・能力を判断して代理人として適切かを定める必要があるとしています。

ちなみに、外部専門家理事は当然代理出席を認められません。

その専門家の個人的資質や能力を配慮して選任していることから、本人以外には代えがたいということになります。

理事が理事会を欠席する場合の対応策

前述した理事がやむを得ず欠席することとなる場合であっても、代理出席ではなく、議決権行使書や事前に意見を記載した書面を提出することが望まれるとしています。
④ 理事がやむを得ず欠席する場合には、代理出席によるのではなく、事前に議決権行使書又は意見を記載した書面を出せるようにすることが考えられる。これを認める場合には、理事会に出席できない理事が、あらかじめ通知された事項について、書面をもって表決することを認める旨を、規約の明文の規定で定めることが必要である。

また、この場合、予め通じされた事項(理事会議案)について、書面で賛否を行使できるように規約や細則で明文化しておくことが必要であるとしています。

理事会欠席理事への配慮

加えて、欠席理事への配慮も必要としています。

⑤ 理事会に出席できない理事に対しては、理事会の議事についての質問機会の確保、書面等による意見の提出や議決権行使を認めるなどの配慮をする必要がある。
また、WEB会議システム等を用いて開催する理事会を開催する場合は、当該理事会における議決権行使の方法等を、規約や第70条に基づく細則において定めることも考えられ、この場合においても、規約や使用細則等に則り理事会議事録を作成することが必要となる点などについて留意する必要がある。
なお、第1項の定足数について、理事がWEB会議システム等を用いて出席した場合については、定足数の算出において出席理事に含まれると考えられる。

当日出席できない場合であっても、書面により意見を提出し、議案に対する賛否を投じるなど、意思を表明しておくことが重要であるとしています。

また、これらが可能な旨も、管理規約や細則に定めておく必要がありそうです。

そして、当日参加できなかった理事についても、その書面での意見を議事録に反映する必要があるとしています。

ここまで国土交通省が理事に対して理事会の出席を促すということは、管理組合の総会で選ばれた理事が理事会に出席して、意見を述べ、決議に参加することが非常に重要であると考えていると捉えられます。

したがって、理事にとっては負担になるとは思いますが、管理組合のためにも理事会に参加することが望まれます。

最低でも、議案に対する書面や電磁的方法での事前提出が求められるといえます。

書面又は電磁的方法による理事会決議は例外対応

また、第2項の専有部分の修繕や窓ガラス等の改良における、書面または電磁的方法による決議は例外対応であるとしています。

⑥ 第2項は、本来、①のとおり、理事会には理事本人が出席して相互に議論することが望ましいところ、例外的に、第54条第1項第五号に掲げる事項については、申請数が多いことが想定され、かつ、迅速な審査を要するものであることから、書面又は電磁的方法による決議を可能とするものである。

これは、区分所有者からの申請数が多く、またスムーズに対応する必要があることから、次回の理事会を待たずに決議をする必要があるためです。

特別利害関係にある理事について

最後に補足しているのが、特別利害関係にある理事についてです。

⑦ 第3項については、第37条の2関係を参照のこと。

第37条の2は「利益相反取引の防止」という条文ですが、今回の第53条第3項はこちらに配慮した形で設定されています。

すなわち、自らが関係する専有部分の修繕や窓ガラス等の改良は、実施したいという利益を求めることとなります。

一方で、理事会、さらには管理組合として、それらを許諾するとマイナスになる側面も考えられます。

したがって、関係する理事と、理事会・管理組合で利益が相反する可能性があることから、第3項の決議については、利害が関係するとして関わっている理事は参加できないこととなっています。

第37条の2は「利益相反取引の防止」について、詳しくは以下

の記事も参照頂ければと思います。

 

以上、この章では国土交通省がマンション標準管理規約第53条「理事会の会議及び議事」の規定で補足、注意すべき点を紹介しました。

特に、理事として注意すべき点や理事会に臨む姿勢が重要であると指摘していました。

最後の章では、これまでの内容を踏まえて、筆者独自の観点から欠席時の対応方法や理事会開催の注意点等について紹介します。

「理事会の会議及び議事」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?

これまで紹介したマンション標準管理規約第53条「理事会の会議及び議事」についての条文ならびに、国土交通省が補足・注意すべき点を紹介しました。

この章では、これまでの内容を踏まえて、筆者が特に管理組合や区分所有者に対して気を付けておくべき事項を、独自の視点から紹介します。

理事の決めごとは原則理事会を開催して決める

第54条の理事会「議決事項」にある各号について、第五号を除いて理事会で決議する必要があります。

マンション標準管理規約では原則、それ以外の書面又は電磁的方法では出来ないこととなっています。

本来出来そうものですが、マンション標準管理規約やその補足説明にも記載がありません。

逆に総会は、第50条「書面又は電磁的方法による決議」として定められており、

組合員全員の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による総会決議をすることができる。

とあります。

ただし、こちらも各管理組合の管理規約に別段の定めをした場合は、書面又は電磁的方法による理事会決議も可能となるでしょう。

その場合であっても、どのような議案が書面又は電磁的方法で決議されたのか、必ず議事録を残すことが必要です。

管理組合において理事の人数が少ないと、集まりが悪い場合は理事会が開催できない

こちらは当然の話になりますが、理事の数が少ない管理組合、とりわけ小規模マンションにおいては、理事が3名、監事が1名などの構成も考えられます。

その場合、理事2名の都合がつかない場合は、理事会が開催できないこととなります。

一方で理事が少ない場合は、お互いに日程調整等しやすいというメリットがあります。

これまでに紹介した書類やメール、チャットツール等の電磁的方法による決議も含めて、柔軟に対応できるとも考えられます。

理事会が不成立にならないための工夫としては、以下の記事

に記載しています。

理事の出欠確認と意見を吸い上げる仕組み

前項のとおり、国土交通省のコメントでは、

・総会で選ばれた理事は理事会に出席する必要がある
・理事の代理は原則認めない
・理事会に欠席する場合は欠席理事に対する意見提出や議決権行使を認めるなどの配慮

について注意深く紹介していました。

すなわち、何があっても、書面提出でもいいので理事会に関与してくださいという意味合いとも捉えられます。

よって、理事会当日までに

・理事の出欠予定の確認
・欠席の場合は当日の議決権行使と意見の吸い上げ

を必ず確認することが求められます。

また、これを実践するためにも、

・欠席理事の把握方法
・議決権行使や意見の吸い上げ方法

を理事会内で確立しておくことも必要でしょう。

マンション標準管理規約第52条「招集」にしたがって、理事会の招集通知と議案書が2週間前までに配布されていることは、検討するうえで当然のこととなります。

そして、書面や電磁的方法による議決権行使や意見の吸い上げ時に貰っていないということが無いよう、こちらも注意が必要です。

理事が理事会に出席できない場合の対処法は?

これまでに、理事が理事会に出来ない場合の対応については紹介していますが、具体的にはどのように対応すればいいのでしょうか?

おもに考えられるのは、

・理事会議案書の内容を確認する
・理事会での議論を想定して自分の意見を簡潔にまとめる
・その議案に対して賛成か反対かを理由も添えて明確化する
・書面又は電磁的方法で理事長(取りまとめている場合は管理会社も含む)に提出する

というパターンです。

電話等口頭で伝えることも可能ですが、あとあと議事録に反映することや、他の役員にも共有しやすいことを考えると、理事会宛に提出する書面があれば、より丁寧であると言えます。

理事会には理事本人が出席して議案に対する賛否を投じる

今回は、マンション標準管理規約第53条「理事会の会議及び議事」についての条文ならびに、国土交通省が補足・注意すべき点、さらには筆者独自の視点から、管理組合や区分所有者が気を付けておいたほうが良い事項について紹介しました。

理事会は各管理組合で培ってきたそれぞれやり方があり、また規約の別段の定めによって、マンション標準管理規約とは違った方法で対応している所もあるでしょう。

今回のマンション標準管理規約は国土交通省が推奨している方法であり、必ずしもその通りにやらなければならないという訳ではありません。

しかしながら、理事は代理による代わりが利かないと強調している点を考えると、理事会へ出席し、意見を述べて、結果的に議案に対して賛否を投じることが求められているといえます。

今回のコラムを参考に、改めて管理組合での理事会の仕組み等を見直すきっかけになれば幸いです。

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