管理組合の総会が成立する要件ってどうなっているのだろうか…?
また、
総会には普通決議と特別決議っていう内容があるけど、それぞれどのような要件になっているのだろうか…?
さらには、
管理組合としてやろうとしていることが、普通決議に当たるのか、特別決議に当たるのか、分からないので確認しておきたい…
などなど、総会の議案においては、様々な疑問点が出てくると考えられます。
そして、管理組合独自のルールとして管理規約に制定されている可能性もあるでしょう。
今回は、このような疑問に応えるべく、管理組合総会に直結している内容として、国土交通省が挙げているマンション標準管理規約第47条「総会の会議及び議事」について紹介します。
国土交通省が挙げる内容が比較的細かく、加えて筆者の解説も添えているため、今回非常に長い内容となっています。
そのため、興味関心がある所を中心に確認頂ければと思います。
とりわけ、最後の章では、マンション管理士である筆者独自の視点から、管理組合や区分所有者にとって気を付けておいた方が良い点を補足していますので、こちらも合わせてご参照ください。
- 【規約解説】マンション管理組合の総会完全ガイド:標準管理規約第47条を紹介
- マンション標準管理規約第47条「総会の会議及び議事」とは?
- 第47条「総会の会議及び議事」の規定に対する補足・注意事項は?
- 「総会の会議及び議事」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?
- 管理組合の最高意思決定機関である総会の決議には非常に細かなルールが設定されている
【規約解説】マンション管理組合の総会完全ガイド:標準管理規約第47条を紹介
今回紹介する内容は以下の通りです。
・マンション標準管理規約第47条「総会の会議及び議事」とは?
・第47条「総会の会議及び議事」の規定に対する補足・注意事項は?
・「総会の会議及び議事」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?
まず、最初の章ではマンション標準管理規約第47条の条文から「総会の会議及び議事」についてそのままの文面を紹介します。
具体的に「総会の会議及び議事」とは、
・管理組合総会の開催
・総会の議事内容
についての規約の定めとなります。
続いて、この条文についての補足事項や、注意しておくべき事項について国土交通省より提示されています。
今回は、国土交通省が示している文面を、筆者が意訳せずにまずはそのまま紹介します。そしてその文面の解説を、イメージしやすい具体的な例を踏まえながら紹介します。
少々指摘事項が多いので細かくかつ長くなりますが、分かりづらい場合は読み飛ばして次章をご確認ください。
そして、最後の章では第47条「総会の会議及び議事」の条文や補足事項を踏まえて、管理組合や区分所有者が気を付けておいた方が良い点を、マンション管理士である筆者独自の視点から具体的に紹介します。
早速、次章より当該条文について紹介します。
マンション標準管理規約第47条「総会の会議及び議事」とは?
まず初めに、マンション標準管理規約第47条「総会の会議及び議事」の条文を紹介します。
マンション標準管理規約第47条「総会の会議及び議事」の条文は?
内容としては比較的多いですが、以下の通りです。
第47条 総会の会議(WEB会議システム等を用いて開催する会議を含む。)は、前条第1項に定める議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない。
2 総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。
3 次の各号に掲げる事項に関する総会の議事は、前項にかかわらず、組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する。
一 規約の制定、変更又は廃止
二 敷地及び共用部分等の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの及び建築物の耐震改修の促進に関する法律第25条第2項に基づく認定を受けた建物の耐震改修を除く。)
三 区分所有法第58条第1項、第59条第1項又は第60条第1項の訴えの提起
四 建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
五 その他総会において本項の方法により決議することとした事項
4 建替え決議は、第2項にかかわらず、組合員総数の5分の4以上及び議決権総数の5分の4以上で行う。
5 マンション敷地売却決議は、第2項にかかわらず、組合員総数、議決権総数及び敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上で行う。
6 前5項の場合において、書面又は代理人によって議決権を行使する者は、出席組合員とみなす。
7 第3項第一号において、規約の制定、変更又は廃止が一部の組合員の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。この場合において、その組合員は正当な理由がなければこれを拒否してはならない。
8 第3項第二号において、敷地及び共用部分等の変更が、専有部分又は専用使用部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分を所有する組合員又はその専用使用部分の専用使用を認められている組合員の承諾を得なければならない。この場合において、その組合員は正当な理由がなければこれを拒否してはならない。
9 第3項第三号に掲げる事項の決議を行うには、あらかじめ当該組合員又は占有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。
10 総会においては、第43条第1項によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議することができる。
電磁的方法が利用可能な場合
また、電磁的方法が利用可能な場合については、第6項のみ違っています。
そして、この条文の羅列だけではなかなか分かりづらい点もあるので、上記に挙がっている全10項についてそれぞれ具体的に紹介します。
条文の内容を簡単にいうと、以下の各題名の通りとなります。
第1項 総会の成立要件
まず、第1項は、WEB会議システムを用いて行う総会含めて、議決権総数の半数以上の組合員が出席して成立することとなります。
逆に、参加者が少ないと総会として成立しないこととなります。
この出席には、書面で議決権行使した組合員も含まれることとなります。
したがって、必ずしも当日会議場に参加する必要はありません。
第2項 総会の普通決議の可決要件
そして第2項は、総会の可決要件について記載されています。
第1項で紹介した出席株主数のうち、過半数で決することとなります。
このような記載から、こちらは普通決議の要件であると理解できます。
仮に、100戸の1戸1議決権のマンション管理組合であるなら、
・総会成立(定足数)には半数の50以上の出席者が必要
・総会議案可決のためには、出席者の中から26以上の賛成票が必要
ということになります。
普通決議については、全体住戸の過半数の51以上である必要はありません。
第3項 特別決議議案の内容
さらに第3項は、特別決議案の内容が紹介されています。
特別決議とは
で決議される議案です。
また、先ほどの100戸の1戸1議決権のマンション管理組合を想定した場合、
・可決には100×3/4=75以上の組合員数の賛成が必要
・さらに議決権総数も100×3/4=75以上の賛成が必要
と、可決要件がかなり上がることとなります。
普通決議の26以上と比べると、約3倍の賛成票が必要となるため、特別決議には一定のハードルが課されることとなります。
そして、ここでは各号を細かく見ていきたいと思います。
第一号 規約の制定、変更又は廃止
管理規約を新たに制定したり、変更、または廃止するには、特別決議が必要となります。
また、管理規約を制定するのは、最初のマンション分譲時であり、廃止する場合はマンションを取り壊したりする場合のため、ほとんどの場合は「変更」が該当します。
管理規約を少し変更するだけでも、この特別決議要件をクリアしなければなりません。
第二号 敷地及び共用部分等の変更
マンション内の敷地や共用部分等の変更を行う場合も特別決議要件となります。
ただし、ここは
・建築物の耐震改修の促進に関する法律第25条第2項に基づく認定を受けた建物の耐震改修
を「除く」となっています。
「除く」は上記の2つの項目に掛かってきますので、
が特別決議要件となります。
ちなみに、大規模修繕工事は「大規模」とついていますが、「形状又は効用の著しい変化を伴うもの」には該当しません。
劣化した共用部分を元に戻すという変更というよりも保存行為に近いことから、現行のマンション標準管理規約では普通決議で実施されるのが一般的です。
第三号 訴えの提起
この号に記載のある、区分所有法第58条第1項、第59条第1項又は第60条第1項とは、要約すると
第59条第1項:同様の場合の専有部分の競売請求
第60条第1項:同様の場合の占有者(賃借人など)に対する引き渡し請求
という請求を、訴えによって実施できるということになります。
第四号 建物の価額の2分の1を超える滅失部分の復旧
建物の価額(資産価値)の2分の1を超える部分が地震等で滅失した場合は、特別決議によって復旧をすることとなります。
逆に2分の1を超えない部分、すなわち資産価値の半分以下の滅失であれば、普通決議で行えることとなります。
第五号 その他特別決議案として決議することとした事項
管理組合には、マンション標準管理規約の上記第一号から第四号以外にも、重要な決議事項として特別決議として定めている場合も考えられます。
例えば、現在のマンション標準管理規約に合わせていない、古くからの管理組合であれば、
・多額の支出を行う場合
なども、特別決議案になっている可能性も考えられます。
各管理組合の現行規約に合わせる必要があります。
第4項 建替え決議案の可決要件
次に、第4項は建替え決議は、特別決議の中でもさらにハードルが高い組合員総数の5分の4以上及び議決権総数の各5分の4以上で行う必要があるとしています。
非常に重要な意思決定を行うことから、組合員の多くの参加とともに、管理組合としての統一見解である賛成票が投じられる必要があると考えています。
第5項 マンション敷地売却決議の可決要件
また、マンション敷地売却決議も建替え決議と同様に、組合員総数の5分の4以上及び議決権総数及び敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上で行う必要があるとしています。
ここには「敷地利用権の持分の価格」という項目が入っています。
決議によって、マンションを壊して、最終的には敷地を売却して売却代金を各区分所有者に配分することとなります。
そのため、もともと各区分所有者が持っている「敷地利用権の持分の価格」という概念が重要になります。
第6項 書面、電磁的方法又は代理人による議決権行使
第6項は、必ずしも総会当日出席することだけが出席者として扱われるわけではないことを示しています。
書面や電磁的方法、さらには代理人による出席であっても、組合員が総会に出席して議決権を行使したとして扱われます。
第7項 規約変更議案が一部の組合員の権利に特別の影響を及ぼす場合
第7項は、規約の変更が一部の組合員に特別の影響を及ぼす場合についての規定です。
イメージしやすい例としては、
・民泊利用可もしくはその設定が無く、新たに民泊不可の規約を定める場合に民泊を行っている組合員
などが考えられます。
ちなみに、管理組合として、承諾を得ようとしてこのような話が来ている場合には、その組合員は拒否できないということになります。
文章がややこしいですが、必ずしも総会で「否決してはいけない」という強制力がある訳ではありません。
第8項 敷地及び共用部分等の変更議案が一部の組合員の権利に特別の影響を及ぼす場合
第8項は、第7項と同様に、敷地及び共用部分等の変更議案があった場合に、一部の組合員の権利に特別の影響を及ぼす場合についてです。
この場合にイメージしやすい例としては、
・駐車場の一部を別の設備のために使用することにより、駐車台数が少なくなることによって、現在駐車場を借りている区分所有者に影響が出る場合
などが特別の影響を及ぼすと考えられるでしょう。
第9項 訴訟決議における被告への弁明の機会の提供
第9項は、第3項第三号の3つの訴訟提起である、専有部分の使用の禁止、競売請求、引き渡し請求を行う場合には、これらの被告側となる組合員や占有者(賃借人等)に対して、弁明の機会を提供する必要があるという定めです。
訴えられる側からの「いい訳」としての弁明を機会を与えることで、実際に管理規約や法律の定めに対して違法行為があったことが事実であるのか、また総会で賛否を判断する区分所有者に対しての判断基準になることも考えられます。
第10項 総会議案は通知した内容のみ決議
最後に、第10項は、総会は第43条第1項にしたがって、招集通知に記載された議案に通知した事項のみ、決議することができるとなっています。
以下に第43条の記事
を紹介しています。
原則、総会議案自体に対する動議は認められないこととなっています。
その点については、以下の記事で詳しく紹介していますので、合わせてご参照ください。
これまでの中で、第47条「総会の会議及び議事」の条文を細かく紹介しました。
次章では、国土交通省が第47条「総会の会議及び議事」について指摘している補足、注意事項があります。
また、普通決議議案と特別決議議案等について細かく紹介されています。
その内容をそのまま紹介するとともに、筆者の方で詳しい補足を入れながら解説します。
第47条「総会の会議及び議事」の規定に対する補足・注意事項は?
続いて、マンション標準管理規約第41条「監事」について、国土交通省が補足・注意事項として記載している内容を全て紹介します。
指摘事項はおもに7項目あります。
こちらも非常に細かな内容もあるため、必要に応じて読み飛ばして頂ければと思います。
総会でWEB会議システムを活用する場合の出席者のカウント方法
まず、総会においてWEB会議システムを活用する場合の出席者の取り扱いについてです。
WEB会議システムからの参加を可能としている場合なら、当然その出席者も参加者に含まれます。
また、WEB会議システムであるため、URLとともに入室可能なパスワードが付与されれば、区分所有者ではない、議決権を行使できない家族や居住者であっても参加可能になる可能性はあります。
その場合は、傍聴人としての扱いとなり、出席組合員には当然含まれません。
総会議案否決の考え方
第2項はには
総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。
とあることから、過半数に満たない場合は否決となります。
ここでは
・賛成、反対同数であれば否決となる
という点に注意が必要です。
国土交通省が定める特別決議としての基準
これは第3項の第一号から第五号のことを指しています。
これらは、国土交通省として特に慎重に判断する必要性から、特別決議として組合員数及び議決権の各4分の3以上を可決要件としています。
共用部分の変更に関する決議の補足
マンション標準管理規約の根拠となる区分所有法においては、共用部分の変更については、特別決議であるとされています。
ただし、注意点があり、その点を補足しています。
建物の維持・保全に関して、区分所有者は協力してその実施に努めるべきであることを踏まえ、機動的な実施を可能とするこの区分所有法の規定を、標準管理規約上も確認的に規定したのが第47条第3項第二号である。
なお、建築物の耐震改修の促進に関する法律第25条の規定により、要耐震改修認定区分所有建築物の耐震改修については、区分所有法の特例として、敷地及び共用部分等の形状又は効用の著しい変更に該当する場合であっても、過半数の決議(普通決議)で実施可能となっている。
その形状又は効用の著しい変更を伴わない共用部分の変更
こちらは前章でも紹介しましたが、共用部分の修繕等の工事(大規模修繕含む)やバリアフリー化工事、耐震改修工事などは、「著しい変更と伴わない」共用部分の変更にあたります。
後ほど紹介する項目「普通決議と特別決議の考え方の例」対比表でその例を示しています。
区分所有法第17条第2項
これも前章でも紹介しましたが、「敷地及び共用部分等の変更議案が一部の組合員の権利に特別の影響を及ぼす場合」と同義となります。
要耐震改修認定区分所有建築物の耐震改修
ここに記載がある「要耐震改修認定」とは、建築物の耐震改修の促進に関する法律によって、管理組合が所轄行政庁(自治体)に申請して認定取得している場合です。
すでに自治体から耐震改修が必要であると認定を得ている場合は、「著しい変更と伴う」改修工事であっても、特例で普通決議で可能であるとしています。
普通決議の中でも特別に扱う決議の考え方
国土交通省は普通決議議案であっても、すこしハードルを上げる考え方を提示しています。
改めてですが、普通決議について、前章では100戸の管理組合で例を示したとおり、
・総会成立(定足数)には半数の50以上の出席者が必要
・総会議案可決のためには、出席者の中から26以上の賛成票が必要
と、26/100、すなわち4分の1超の賛成で決議できることとなっています。
これでは低いのではないかということで、例えば大規模修繕工事のような多額の費用を要する決議事項は、
・総会成立(定足数)には過半数の51以上の出席者が必要
・総会議案可決のためには、議決権総数を過半数の51以上の賛成票が必要
普通決議と特別決議の考え方の例
国土交通省では、以下のように普通決議と特別決議の考え方の例を示しています。
工事において国土交通省が挙げる普通決議と特別決議の例
ア)バリアフリー化の工事に関し、建物の基本的構造部分を取り壊す等の加工を伴わずに階段にスロープを併設し、手すりを追加する工事は普通決議により、階段室部分を改造したり、建物の外壁に新たに外付けしたりして、エレベーターを新たに設置する工事は特別多数決議により実施
可能と考えられる。
イ)耐震改修工事に関し、柱やはりに炭素繊維シートや鉄板を巻き付けて補修する工事や、構造躯体に壁や筋かいなどの耐震部材を設置する工事で基本的構造部分への加工が小さいものは普通決議により実施可能と考えられる。
ウ)防犯化工事に関し、オートロック設備を設置する際、配線を、空き管路内に通したり、建物の外周に敷設したりするなど共用部分の加工の程度が小さい場合の工事や、防犯カメラ、防犯灯の設置工事は普通決議により、実施可能と考えられる。
エ)宅配ボックスの設置工事に関し、壁や床面に宅配ボックスを固定するなど、共用部分の加工の程度が小さい場合は、普通決議により実施可能と考えられる。
オ)IT化工事に関し、光ファイバー・ケーブルの敷設工事を実施する場合、その工事が既存のパイプスペースを利用するなど共用部分の形状に変更を加えることなく実施できる場合や、新たに光ファイバー・ケーブルを通すために、外壁、耐力壁等に工事を加え、その形状を変更するような場合でも、建物の躯体部分に相当程度の加工を要するものではなく、外観を見苦しくない状態に復元するのであれば、普通決議により実施可能と考えられる。
カ)充電設備の設置工事に関し、充電器自体の設置及び配線を通すために必要な配管の設置など、建物の躯体部分や敷地への加工の程度が小さい工事を行う場合や、敷地へ相当程度の加工を加えることなく受変電設備を変更する場合は、普通決議により実施可能と考えられる。
キ)計画修繕工事に関し、鉄部塗装工事、外壁補修工事、屋上等防水工事、給水管更生・更新工事、照明設備、共聴設備、消防用設備、エレベーター設備の更新工事は普通決議で実施可能と考えられる。
ク)その他、集会室、駐車場、駐輪場の増改築工事(充電設備の設置工事等他の工事に伴って行われる場合も含む。)などで、大規模なものや著しい加工を伴うものは特別多数決議により、窓枠、窓ガラス、玄関扉等の一斉交換工事、既に不要となったダストボックスや高置水槽等の撤去工事は普通決議により、実施可能と考えられる。
文字では分かりづらいので、一覧表にして整理してみます。
一覧表で整理
国土交通省の上記の見解を整理した表は以下の通りです。
おもな議案 | 普通決議 | 特別決議 |
バリアフリー化工事 | 建物の基本的構造部分を取り壊す等の加工を伴わない工事 ・階段にスロープを併設 ・手すりを追加 する工事 |
・階段室部分の改造 ・建物の外壁に新たに外付けするエレベーター設置工事 |
耐震改修工事 | ・基本的構造部分への加工が小さい工事 ・柱やはりに炭素繊維シートや鉄板を巻き付けて補修 ・構造躯体に壁や筋かいなどの耐震部材を設置 |
具体的な紹介はなし。 左記以外の加工が大きい工事は特別決議の可能性あり。 |
防犯化工事 | ・オートロック設備を設置する際、配線を空き管路内に通す ・配線を建物の外周に敷設 ・防犯カメラ、防犯灯の設置工事 |
具体的な紹介はなし。 左記以外の加工が大きい工事は特別決議の可能性あり。 |
宅配ボックス設置工事 | ・共用部分の加工の程度が小さい工事 ・壁や床面に宅配ボックスを固定 |
具体的な紹介はなし。 左記からも解釈すると、宅配ボックスの設置は普通決議であるとの解釈である。 |
IT化工事 | 光ファイバー・ケーブルの敷設工事で ・工事が既存のパイプスペースを利用するなど共用部分の形状に変更を加えることなく実施 ・新たに光ファイバー・ケーブルを通すために、外壁、耐力壁等に工事を加え、建物の躯体部分に相当程度の加工を要するものではなく、外観を見苦しくない状態に復元するもの |
具体的な紹介はなし。 左記に該当しない、加工が大きい工事は特別決議の可能性あり。 とりわけ、建物の躯体部分に相当程度の加工を要するものは、軽微なものを超える特別決議の可能性が考えられる。 |
充電設備設置工事 | ・充電器自体の設置 ・配線を通すための必要な配管の設置 ・敷地へ相当程度の加工を加えることなく受変電設備を変更する工事 |
具体的な紹介はなし。 左記に該当しない、建物の躯体部分や敷地への加工の程度が大きい工事を行う場合は特別決議の可能性が考えられる。 |
計画修繕工事 | ・鉄部塗装工事 ・外壁補修工事 ・屋上等防水工事 ・給水管更生・更新工事 ・照明設備、共聴設備、消防用設備、エレベーター設備の更新工事 |
具体的な紹介はなし。 計画修繕工事であれば軽微な変更行為に該当することから、基本的には普通決議で可能と考えられる。 |
その他工事 | ・窓枠、窓ガラス、玄関扉等 の一斉交換工事 ・既に不要となったダストボックスや高置水槽等の撤去工事 |
大規模なものや著しい加工を伴うもので ・集会室、駐車場、駐輪場の増改築工事(充電設備の設置工事等他の工事に伴って行われる場合も含む。) |
参考:国土交通省マンション標準管理規約(単棟型)第47条関係コメントに筆者が加筆
建替え決議及びマンション敷地売却決議における賛否者の明確化
この議案については、賛成票を投じた区分所有者または、反対票の区分所有者を明確にする必要があるとしています。
反対の場合は、対象住戸において売渡し請求を行う必要があるためです。
また、第4項、第5項は、法定の要件として区分所有法に定めてある規定を、マンション標準管理規約でも明確化すべく、規定化しているとしています。
ここまで、国土交通省が定める規約に対する補足・注意事項を筆者の解説も含めて紹介しました。
最後の章では、これまでの内容を踏まえつつ、記載されていないことで管理組合として注意した方が良い点を、筆者独自の視点から具体的に紹介します。
「総会の会議及び議事」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?
最後の章では、これまでの規約の条文や国土交通省が補足・注意すべき「総会の会議及び議事」の内容を踏まえ、筆者が独自の視点で気を付けておいた方が良い点を、さらに補足という形で紹介します。
特別決議が必要な規約の変更は極力まとめて総会議案として諮る
極端な例ですが、管理組合の管理規約において、
・現在のマンション標準管理規約に合わせるべく、長い間変更していなかった管理規約を一度に変更
という双方の場合があったと考えます。
このどちらについても、管理規約の変更に当たるとして、第47条第3項第一号の総会における特別決議が必要となります。
しかも、双方とも一度の総会で決議を取ることも可能です。
ただ、後者においては、どこが変更になったかの比較や区分所有者への説明会の開催、または場合によっては管理規約検討委員会等の理事会の諮問委員会を結成して議論することも考えられます。
そのため、総会の手間は一度で済むかもしれませんが、総会決議までの準備に時間がかかる可能性はあるでしょう。
特別決議事項の内容確認とその見直しの検討
現在、国としても区分所有法の変更案として、決議要件を検討しています。
理由として、決議に参加しない区分所有者がいると、本来なすべきことがなかなか進まない管理組合が増える可能性を懸念していることが挙げられます。
具体的には、紹介したマンションの建替え決議を5分の4以上から4分の3以上に緩和することなどが考えられているようです。
本来老朽化で危険を伴うにも関わらず、建替え要件が高く、なかなか建替えの合意形成が出来ない場合、建替えの話が前に進まない可能性もあります。
そのような観点で考えると、現状の管理組合の特別決議内容が実は古い内容で、今の時代では普通決議で行けるのに…となっている可能性もあります。
筆者が見てきたマンションの中でそのような事例もありました。
そのため、マンション標準管理規約に沿っているかどうかを見ていくことも一つでしょう。
また、マンション標準管理規約は、その時代背景を加味しつつ現行法である区分所有法の条文を参考に、マンション独自のルールとして採用すべき内容を配慮して作成されています。
そして、管理規約が古く現在の標準管理規約と比較して更新がなされていない箇所があり、厳しい要件のままであると、本来実施したほうがよい議案でも賛成票が集まらない可能性も考えられます。
結果的に、管理組合として適切な判断が遅れがちになってしまう可能性があります。
それゆえに、改めて普通決議内容や特別決議内容を、最新版のマンション標準管理規約に照らして考えてみるのも一つでしょう。
通常の管理組合運営上の特別決議は3つに集約される
これまで述べてきた中でのまとめ的な形になりますが、イレギュラーな対応を除き通常のマンション管理上の特別決議は、おもに
・敷地や共用部分における形状又は効用の著しい変化を伴うもの(共用部分の重大変更)
・区分所有者や占有者に対する訴えの提起
の3つに集約されます。
それ以外はイレギュラーな過半数を超える大規模滅失や建替え、マンション敷地売却といった、管理組合が存続するか否かを判断する非常に重要な決議になります。
したがって、これら以外の決議要件については、基本的には普通決議にて行われることが一般的でしょう。
それもあり、とりわけ特別決議は区分所有者としても慎重に検討するとともに、議決権行使を含めた積極的な参加が求められると言えます。
管理組合の最高意思決定機関である総会の決議には非常に細かなルールが設定されている
今回は、マンション標準管理規約第47条から「総会の会議及び議事」について、条文ならびに国土交通省が補足・注意点として挙げている事項について紹介しました。
それぞれについて、筆者独自の視点からの補足も入れて解説しました。
もともと国土交通省が補足・注意点として挙げている事項が多く、また非常に細かな論点にも及んでいるため、解釈を添えるとなると非常に長いコラムとなりました。
恐らくは一度読んでもなかなか分かりづらい内容となっていますが、都度確認頂き、管理組合の参考として頂ければ幸いです。
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