今回、管理組合の役員として監事に選ばれることになったけど、どのような役割を果たせばよいのだろうか…?
また、
管理組合の役員には、理事と監事があるけど、監事の役割が今一つ分からない…
さらには、
監事には権限があるって聞いたけど、具体的にどのような事が出来るのだろうか…?
などなど、監事に関する疑問を持っている管理組合役員や区分所有者も比較的多いでしょう。
理事は「理事長」「副理事長」「会計担当理事」などに分かれるので、それぞれなんとなくやることはわかるものの、監事ってイメージしづらいのではないでしょうか。
そのような管理組合役員や区分所有者のために、今回はマンション標準管理規約第41条に定められている監事についての条文を紹介します。
また、国土交通省が定めているマンション標準管理規約の条文や補足事項に加えて、それらには紹介されていない、マンション管理士である筆者独自の視点から、気を付けておくべきことについても紹介します。
【規約解説】マンション管理組合の監事の仕事!わかりやすく徹底解説
今回紹介する内容は、以下の通りです。
・第41条「監事」の規定に対して国土交通省が指摘する補足・注意事項は?
・「監事」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?
まず、最初の章では標準管理規約第41条の条文から「監事」についてそのままの文面を紹介します。
続いて、この条文についての補足事項や、注意しておくべき事項について国土交通省より提示されています。
今回は、国土交通省が示している文面を、筆者が意訳せずにまずはそのまま紹介します。
その後、その文面の解説を、イメージしやすい具体的な例を踏まえながら紹介します。
そして、最後の章では第41条「監事」の条文や補足事項を踏まえて、管理組合や区分所有者が気を付けておいた方が良い点を、マンション管理士である筆者独自の視点から具体的に紹介します。
それでは、次章より当該条文について紹介します。
マンション標準管理規約第41条「監事」とは?管理組合や区分所有者が知っておくべきこと
早速、マンション標準管理規約第41条「監事」の中身を見ていきたいと思います。
マンション標準管理規約第41条「監事」条文
まずは、条文の紹介です。
第41条 監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければならない。
2 監事は、いつでも、理事及び第38条第1項第二号に規定する職員に対して業務の報告を求め、又は業務及び財産の状況の調査をすることができる。
3 監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況について不正があると認めるときは、臨時総会を招集することができる。
4 監事は、理事会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。
5 監事は、理事が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令、規約、使用細則等、総会の決議若しくは理事会の決議に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を理事会に報告しなければならない。
6 監事は、前項に規定する場合において、必要があると認めるときは、理事長に対し、理事会の招集を請求することができる。
7 前項の規定による請求があった日から5日以内に、その請求があった日から2週間以内の日を理事会の日とする理事会の招集の通知が発せられない場合は、その請求をした監事は、理事会を招集することができる。
監事に関する決まりが7項目あり、各項で細かく決められています。
これらについて、筆者の補足コメントを含めて紹介します。
第1項 総会における監事の報告義務
最初に、第1項から見ていきます。
第1項では、監事のおもな役割である、管理組合の業務執行や財産の状況の監査についてです。
この年間の監査対応状況について、おもに定時総会で報告する必要があります。
また、条文ではとりわけ「定時」と決められている訳ではないのですが、多くの場合、定時総会で監査報告がなされることが一般的です。
第2項 理事等からの業務報告や調査
次に、監事は理事等からの業務報告を求めることができるとあります。
「いつでも」とあるため、理事会開催時等の定期的なものではなく、随時業務報告を受けることが可能と考えられます。
また、「業務及び財産の状況調査」についても、「いつでも」可能であることとなっています。
第3項 監事による臨時総会招集権
さらに、監事は前のとおり管理組合の業務執行や財産の状況において監査することとなりますが、これが不正であると認める時には、臨時総会を招集することができます。
また、これも特に時期等の記載がないため、「いつでも」臨時総会を招集できると考えることができます。
そして、不正を認めた段階で、定時総会等を待つことなく「速やかに」「遅滞なく」というイメージであると考えられます。
監査の段階で何らかの問題を発見した場合、管理組合にとって重要なことを速やかに報告する必要があることから、このような規定があります。
第4項 監事の理事会への出席
そして、監事について理事会への出席ならびに、必要時には意見を述べなければならない旨が規定されています。
標準管理規約第51条「理事会」の解説でも紹介しましたが、監事は理事会のメンバーではありません。
しかしながら、理事会に出席する権利があります。それはこの第4項を指しています。
また、
とあるとおり、必要時には必ず監事の立場として理事会で発言をすることが求められます。
発言内容としては、おもに前述の通り、管理組合の業務の執行及び財産の状況についての意見を述べることとなります。
第5項 理事の不正またはその可能性がある時の理事会への報告義務
続いて第5項は、理事が不正または、不正の可能性がある場合についてです。
さらには法令や規約、細則、総会、理事会の決議事項に違反したり、それに対して不当な事実があった場合には、遅滞なく理事会に報告する必要があります。
理事会での報告ということで、他の理事をつるし上げるようなこととなりますが、監事として非常に重要なけん制機能としての役割を果たすこととなります。
これも、
と似ているといえます。
第6項 理事会の招集請求権
また第6項は、第5項のために、必要があれば理事長に対して理事会開催の請求ができるという規定があります。
ただし、これは「前項に規定する場合」とあることから、第5項の事案が発生した場合に請求ができるということになります。
したがって、その他の内容で監事が理事会を開催して欲しいという請求は、受け入れられない可能性も考えられます。
第7項 監事による理事会招集権
最後に第7項ですが、第6項の請求に対してなかなか理事会の開催が決まらない場合には、監事自ら理事会を招集することができることとなっています。
請求があれば、理事長は第6項の請求時点から5日以内に、2週間以内に開催する旨、通知を発する必要があります。
逆に、不正またはその可能性があるということで、それだけ急いで開催が必要であるということになります。
次の章では、国土交通省が第41条「監事」について指摘している補足、注意事項があります。
監事の職務内容や監事主導の理事会開催までの仕組み等について細かく紹介されています。
その内容をそのまま紹介するとともに、筆者の方で補足を入れながら解説します。
第41条「監事」の規定に対して国土交通省が指摘する補足・注意事項は?
続いて、マンション標準管理規約第41条「監事」について、国土交通省が補足・注意事項として記載している内容を全て紹介します。
指摘事項はおもに3項目あります。
監事の基本的な職務内容についての補足
最初に指摘しているのは、監事の職務内容の補足です。
監事は、年度の報告や決議として、理事長を含めた理事が総会にて提出する議案内容を調査することが求められます。
その結果、不正や不当な事項があった場合は、その総会で監査報告として報告をすることも求められるとしています。
また、監査においては、電磁的方法で行うことも考えられるとしています。
そして、第2項においては、監査のために理事等からの業務の報告を請求できることや、調査ができることを定めているとして補足があります。
監事の監査機能強化の必要性
次に指摘しているのは、監事による監査機能強化が必要であるという点です。
筆者の条文解説でも記載しましたが、監査機能強化を意識して、理事会では必要があれば意見を述べる義務があるとしています。
また、第52条に理事会の「招集」という条文がありますが、ここは理事会は監事がいなくても成立する旨の補足となっています。
そのため、監事がいなくても、理事会の決議は理事だけで行われることで有効となります。
監事が理事の不正等の報告を理事会で必ず行うための仕組み
段階的に整理すると、
↓
監事による理事会での報告
↓
理事会が直近開催されない場合
↓
監事による理事長に対する2週間以内の理事会開催の請求
↓
請求から5日経っても理事長から理事会の招集通知がない
↓
監事自ら理事会を招集できる
ということになります。
すなわち、監事が理事に対して理事会招集することによって、不正又は不正の可能性を報告できる場が必ずできるということになります。
次章では、これまでの内容を踏まえて、筆者独自の視点から管理組合や区分所有者、さらには理事や監事の方に対して気を付けておくべき事項を紹介します。
「監事」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?
最後の章では、これまでの規約の条文や国土交通省が補足・注意すべき「監事」の内容を踏まえ、筆者が独自の視点で気を付けておいた方が良い点を、さらに補足という形で紹介します。
監事は理事長とともに非常に重要な立ち位置である
これまで紹介したとおり、監事の役割は管理組合や理事会、また理事に対しても非常に重要な役割を占めることが分かりました。
会社でいう監査役と同様に、高齢の方が就任するちょっと一歩引いたような立ち位置で見られがちですが、全くそんなことはないと言えるでしょう。
言い換えれば、理事長の重要性とともに、監事の重要性も語られなければならない位置づけにあると言えそうです。
責任がある監事の権限は強くある必要がある
管理組合の業務執行や財産の状況の監査がおもな役割である監事については、理事の活動に対しても不正がないかチェックするという大きな役割を担うこととなります。
そのため、その役割を果たすためには、先に紹介したように、理事からの業務報告や財産状況調査等をする権限があります。
加えて、理事による不正がもし見つかった場合は、区分所有者や理事に速やかに報告する必要があることから、臨時総会や理事会の招集権も持っています。
このように規約には定められていることから、監事の役割は、権限と責任が強い立ち位置であるとともに、独立した視点から客観的に監査することも重要であると考えられます。
管理会社や発注先施工会社などへの対外的なけん制も時には必要である
なかなかここまで実施することは、マンションの管理について熟知していないと難しいかもしれませんが、サラリーマン等のビジネス経験がある方であれば、一般的な立ち回りはイメージ付くかもしれません。
監事と言えば、これまで紹介したような、理事会や理事に対するけん制が主な業務ではあります。
しかしながら、管理組合や理事会は、管理会社が握っていることもあります。
代わりに管理会社が動いていると言ってもいいかもしれません。
また、理事長や理事も委託していることがあるため、チェックは欠かせないでしょう。
さらには、理事長や理事の業務→管理会社が委任を受けて実施することもあるため、間接的または、直接的には監事による管理会社や発注先施工会社などへのチェックもしていくことも考えられます。
特に利益相反行為に当たるかどうかのチェックは、監事が機能すべき事項かもしれません。
監事は理事会に必ず出席するのが良い
繰り返しになりますが、監事は理事会の構成員ではありません。
したがって、監事がいなくても理事会は成り立ち、決議されることとなります。
しかしながら、理事会に参加していないと、どのような経緯で議案が可決または否決されたのか、分からないということとなります。
加えて、その議案を可決しても良いのか、またその逆として否決してもよいのか、重要な局面で意見を言うことができません。
そのため、前述しましたが、監事の重要な役割である
ということを実践する必要があるでしょう。
ただ、どうしても出席できない場合は、
・理事会議案に対して意見があれば、事前に理事長や理事、または管理会社に伝えておく
・終了後の理事会議事録に必ず目を通し次回の理事会に活かす
など、理事会や理事に対するけん制機能を発揮する必要があると言えます。
監事は独立した立場であるため、理事とは別に総会で選任する
これまで見てきたとおり、監事は理事とはちがって、監査の役割を果たす、いわば管理組合の独立機関といえます。
理事会での議決権がないことも、その独立性を示していると言えるかもしれません。
したがって、理事とは一緒にできないこととなり、選ぶ時にも注意が必要です。
以前も紹介しましたが、マンション標準管理規約第35条の第2項には、
とあることから、理事長含む理事候補者と、監事候補者はそれぞれ別で総会で選ぶ必要があります。
総会後の理事会で役員全員を互選で選ぶのではなく、監事は総会で就任予定者を決定しておく必要があるということです。
一方で監事自体が不正を働いた場合は?
監事による理事のチェックによる不正発覚も考えられますが、チェックする側の監事に不正があった場合はどのように考えればよいのでしょうか?
マンション標準管理規約には、監事の不正については示されていません。
監事の不正が発覚するとなると、逆の立場である理事長や理事、または管理委託先の管理会社、そして区分所有者や住民ということになるでしょう。
事実を確かめたうえで、不正が事実なら監事の解任を検討する必要があります。
その場合は、以下のようなフローが考えられます。
↓
監事本人への不正事実の確認
↓
事実であった場合の対応策の検討
↓
監事解任の必要性がある
↓
マンション標準管理規約第35条2項による監事解任のための総会決議
↓
監事の解任と新たな監事の選任
↓
解決のための対応
という流れが想定されます。
理事長経験者の監事が機能すれば上手くいく可能性も
輪番制においては、必ず役員の順番が回ってきます。
そのため、理事長や理事、さらには監事のどれかに就任する必要があります。
多くは実績をかわれて、前回の理事長が再度回ってきた時に理事長に選ばれることも多いでしょう。
一方で、公平を期すために、理事長もより多くの区分所有者に回るようにすることも考えられます。
その場合は、前回理事長を経験した方は、次回の輪番時は監事に回ることも考えられます。
これによって、理事長がどのような業務をやるか分かっていることから、監事としてのチェックの論点が分かりやすいためです。
また、輪番制で2期役員をやる場合において
・2期目は監事
などの役割もあるかもしれませんし、またその逆も考えられます。
管理組合によっては、暗黙のルールまたは規約や細則の定めにより、理事長経験者は監事に回るという例も少なからずあるようです。
それは上記のようなことを想定していると思われます。
監事の役割は非常に重要で奥が深い
今回は、マンション標準管理規約第41条の「監事」について紹介しました。
これまで紹介してきた通り、監事は理事長同様に、権限と責任が伴う役職といえるかもしれません。
一方で、「理事ではない」監査を行う独立した立場であることから、報告を受けたり調査をすることによる客観性も重要であることがわかります。
第41条の条文に対して監事について深く触れましたが、管理組合における監事の立ち位置の参考にして頂ければ幸いです。
コメント