【規約解説】管理組合役員になれない人とは?(免除との違いも説明)

管理規約解説

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管理組合において役員になれない区分所有者がいるって知ったけど、どういう内容なのだろうか…?

また、

役員の欠格事由ってどういう内容だろうか…?

さらには、

管理組合役員の欠格事由は免除されることとどう違うのだろうか…?

このように、役員就任に関する取り決めについて、細かな所は分からないという管理組合役員や区分所有者も多いでしょう。

そして、自分が対象なのかどうかも気になる所です。

確かに、どのようなケースが役員になることができない「欠格事由」であり、役員就任を免れることができる「免除」なのか分かりづらいですよね。

今回は、このような内容が明確化されている、標準管理規約第36条の2「役員の欠格条項」を紹介します。

国土交通省が当該条文に対する補足・注意コメントとともに、筆者が底に記載されていない、管理組合として気を付けておいた方がよい情報も付加します。

それによって、管理組合役員や区分所有者の理解をより深められるようになればと思っています。

【規約解説】管理組合役員になれない人とは?(免除との違いも説明)

今回紹介する内容は、以下のとおりです。

・標準管理規約第36条の2「役員の欠格条項」を徹底解説!
・第36条の2「役員の欠格条項」の規定に対する補足・注意事項は?
・「役員の欠格条項」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?

まず、最初の章では標準管理規約第36条の2の条文から、「役員の欠格条項」について、そのままの文面を紹介します。

また、欠格とは必要な資格として欠けているという意味です。

続いて、この条文についての補足事項や、注意しておくべき事項について国土交通省より提示されています。

それらについて、全て抜き出します。

そして、最後の章では第36条の2「役員の欠格条項」の条文や補足事項を踏まえて、管理組合や区分所有者が気を付けておいた方が良い点を、マンション管理士である筆者独自の視点から具体的に紹介します。

特に、最後の章では「欠格事由」と「免除」「除外」の違いや、欠格事由に該当するかどうかのチェック方法等も紹介します。

標準管理規約第36条の2「役員の欠格条項」を徹底解説!

まず初めに、最初の章では第36条の2「役員の欠格条項」の条文を紹介します。

第36条の2「役員の欠格条項」の条文

(役員の欠格条項)
第36条の2 次の各号のいずれかに該当する者は、役員となることができない。
一 精神の機能の障害により役員の職務を適正に執行するに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者又は破産者で復権を得ない者
二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
三 暴力団員等(暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者をいう。)

具体的に、各項目を以下で細かく確認していきます。

第一号 精神の機能障害や破産者で復権を得ない者

この号には、2つの欠格条項が考えられます。

具体的には、

・精神的な機能障害によって適切な判断が出来ない場合
・破産者で復権を得ていない場合

が該当します。

前者の「精神の機能の障害~」については、マンション管理組合役員に限らずに、欠格事項として一般的に言われる言い方です。

また、「破産者で復権を得ない者」とは、破産手続き開始の決定によって失った法律上の資格を回復していない者を指します。

こちらも同様に、法律用語ですが、欠格事項として一般的に言われる言い方です。

第二号 禁固以上の刑が終わって5年を経過していない者

禁固以上の刑を受けて、執行を受けることが無くなった日から5年が経過していない区分所有者も役員にはなれないこととなっています。

具体的には、

・禁固以上の刑を受ける
・禁固刑の刑期が終了する
・刑期が終了してから5年間

これらの間は役員になることができないということになります。

禁固の詳細など、刑法について細かくは触れませんが、禁固以上の刑としては、死刑、懲役、禁固が該当します。

第三号 暴力団員等の反社会的勢力

第三号では、過去暴力団員等であったとして、暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者は管理組合の役員にはなれないとされています。

いわゆる「反社会的勢力」ではないかどうかと言い換えることもできます。

各号について、それぞれの制約が無くなった段階で、改めて管理組合役員に就任することができます。

そして、次章では、国土交通省が提示する補足・注意事項として、おもに外部専門家役員に対する欠格事由の具体例などがあるので、細かく紹介します。

第36条の2「役員の欠格条項」の規定に対する補足・注意事項は?

この章では、第36条の2「役員の欠格条項」の規定に対する、補足や注意点として国土交通省が考える内容が踏まえられています。

その内容を具体的に紹介します。

外部専門家や暴力団員等反社会的勢力の扱い

まず、外部専門家を役員とすることができる点は、標準管理規約第35条「役員」の中でも解説したとおりです。

それも踏まえて、欠格事由として扱っています。

また、暴力団員等の範囲については、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成18年法律第49号)に定める欠格事由(同法第6条)を参考にしたとのことです。

外部専門家の欠格事由の具体的な内容

上述の標準管理規約第35条「役員」における第4項には

4 組合員以外の者から理事又は監事を選任する場合の選任方法については細則で定める。

とあります。

この考え方で選任方法を定めている場合は、細則にて以下のような役員の欠格条項を定める必要があるとして、以下の通り紹介しています。

ア 個人の専門家の場合

個人事務所等に所属の外部専門家を外部役員として起用する際に、欠格事由として考えられるのは、以下のような場合です。

マンション管理に関する各分野の専門的知識を有する者から役員を選任しようとする場合にあっては、マンション管理士の登録の取消し又は当該分野に係る資格についてこれと同様の処分を受けた者

こちらは、採用例として多いと考えられる「マンション管理士」を挙げていると思われます。

したがって、採用する外部専門家が「建築士」や「弁護士」「税理士」であっても、同様の要件であると考えられます。

イ 法人から専門家の派遣を受ける場合(アに該当する者に加えて)

次に、法人に所属する外部専門家を役員として検討する場合に、欠格事由として考えられる例です。

次のいずれかに該当する法人から派遣される役職員は、外部専門家として役員となることができない。
・ 銀行取引停止処分を受けている法人
・ 管理業者の登録の取消しを受けた法人

「銀行取引停止処分を受けている法人」とは、おもに手形や小切手を2回以上不渡りにした法人が該当します。

会社の信用の問題として、そこからくる外部専門家は起用しないということになります。

さらに、「管理業者の登録の取消しを受けた法人」とは、マンション管理会社において、マンション管理業者としての登録の取消しを受けた法人に所属する専門家は起用しないということになります。

銀行停止処分と同様に、会社の信用問題にあたることが想定されそうです。

最後の章では、第36条の2「役員の欠格条項」の条文ならびに国土交通省が指摘する補足・注意事項を踏まえ、マンション管理士の筆者から見た気を付けておくべき事項を紹介します。

「役員の欠格条項」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?

ここでは、これまでの章で紹介した内容に加えて、管理組合として気を付けておくべき点を、前述の中では紹介されていない、筆者独自の視点を踏まえて紹介します。

欠格事由と役員から免除・除外できる場合の違い

これまで紹介した通り、欠格事由は法的に「望ましくない」として役員に就任させないという内容です。

対して、役員から除外や免除できる点を細則等で定めている管理組合もあります。

すなわち、「欠格事由」と「免除」または「除外」における相違点について確認が必要となります。

役員就任の「免除」または「除外」の例として、

・高齢による対象者からの免除または除外
・外部に住んでいることによる役員就任の免除または除外
・病気等の体調不良による役員就任の免除または除外

なども考えられます。

病気等の体調不良が欠格事由である「精神的な機能障害によって適切な判断が出来ない場合」に該当すれば欠格事由ですが、そうでない場合は、就任の免除として考えられることもあります。

また、欠格と免除や除外については、

欠格:管理組合として役員就任から強制的に除外する
免除や除外:強制的ではないものの、役員就任を免れたり辞退することができる

というニュアンスになると考えらえます。

反社会的勢力でないかどうかのチェック

役員の欠格事項に該当するかどうかは、例えば区分所有者名簿からは分からないでしょう。

長く住んでいる区分所有者であれば、ある程度の情報は入手できるかもしれません。

しかしながら、引っ越してきて新たに区分所有者となった方については、分からないこととなります。

そして、区分所有者が欠格事項に該当するかどうかは、管理規約の条文に記載しただけでは判明できません。

そこで考えられるのが、

反社会的勢力でないかどうかのチェック(通称「反社チェック」)

という方法があります。

具体的なチェック方法は専門的になるためここでは割愛いたしますが、このようなチェックを実施することも有効です。

外部専門家役員候補に対する信用調査

前の章で、外部専門家役員の採用を検討する際における、欠格事由として、

・士業としての取り消し処分
・会社としての信用問題

がある場合が紹介されていました。

また、これらを見極めるのもある程度の調査が必要になってきます。

・個人に対しては候補者への十分なヒアリングや客観的な信用調査
・法人から派遣される専門家に対しては、上記に加えて会社としての信用調査

が必要になるでしょう。

要配慮個人情報に抵触する可能性がある

仮に、区分所有者の方で役員となる予定だった方が欠格事由に該当する場合であっても、その方の情報の取り扱いには十分注意する必要があります。

個人情報の中でも、いわゆる要配慮個人情報に該当する可能性があるためです。

要配慮個人情報とは、個人情報の保護に関する法律第二条第3項に、

3この法律において「要配慮個人情報」とは、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報をいう。

とあります。

これまでに紹介した通り、欠格事由に該当する役員候補者の中には、上記に該当する可能性も考えられます。

そのため、管理組合内においては、非常に丁寧に扱っていく必要があると言えそうです。

要配慮個人情報については、個人情報保護委員会の説明

もつけておきます。

また、標準管理規約第64条の2「組合員名簿等の作成、保管」

でも個人情報の取り扱いについて記載していますので、合わせてご参照ください。

標準管理規約やその補足説明だけでは分からない事項もある

今回は、第36条の2「役員の欠格条項」の条文とともに、国土交通省が補足・注意すべき事項について紹介するとともに、筆者独自の視点で管理組合や区分所有者が気を付けておいた方が良い点を紹介しました。

管理組合にとっても、今回の「役員の欠格条項」に限らず、標準管理規約の条文や国土交通省の補足説明だけでは分からないことも多々あるでしょう。

その場合は、当該コラムも参考にしつつ、管理組合内でも対応策を十分に検討されることを推奨いたします。

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