【規約解説】マンション標準管理規約第26条を徹底解説|滞納管理費の請求は可能?

管理規約解説

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マンション管理組合にとって、管理費や修繕積立金の滞納は大きな課題です。特に、区分所有者が売却や相続で変わる際、未払いの管理費等を誰が負担するのかが問題になります。

「マンション標準管理規約第26条」では、管理組合が未払いの管理費等を新たな所有者(特定承継人)に請求できると定められています。この規定があることで、管理費不足による組合運営の悪化を防ぎ、適正な管理を維持することが可能になります。

本記事では、第26条の条文解説に加え、国土交通省の補足説明、特定承継人への請求方法、買主が注意すべきポイントについて詳しく解説します。特に、売買契約の工夫や、相続時の滞納管理費の対応方法など、管理組合や区分所有者が実際に直面する可能性のある問題について具体的な解決策を、マンション管理士である筆者が細かく紹介します。

【規約解説】マンション標準管理規約第26条を徹底解説|滞納管理費の請求は可能?

今回紹介する内容は、以下の通りです。

✅マンション標準管理規約第26条のポイント
✅国土交通省の見解|マンション標準管理規約第16条の補足説明
✅「承継人に対する債権の行使」に関する管理組合・区分所有者の注意点

まず、最初の章では標準管理規約第26条の条文から「承継人に対する債権の行使」についてそのままの文面を紹介します。

続いて、この条文についての補足事項や、注意しておくべき事項について国土交通省より提示されています。

さらに、その文面の解説を、イメージしやすい具体的な例を踏まえながら紹介します。

そして、最後の章では第26条「承継人に対する債権の行使」の条文や補足事項を踏まえて、管理組合や区分所有者が注意しておいた方が良い点を、マンション管理士である筆者独自の視点から具体的に紹介します。

それでは、次章より当該条文について紹介します。

マンション標準管理規約第26条とは?滞納管理費等の請求ルールを解説

まずは、第26条の条文紹介です。

(承継人に対する債権の行使)
第26条 管理組合が管理費等について有する債権は、区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。

第26条の重要ポイント|どんな場合に請求できる?

管理組合が請求できる「管理費等」の具体例

この条文で言う「管理費等の債権」とは、主に以下のようなものを指します。

  • 管理費(共用部分の維持管理に必要な費用)
  • 修繕積立金(将来の大規模修繕のための積立金)
  • 特別徴収金(突発的な修繕費用など)

これらは、マンションの管理運営を維持するために区分所有者が負担すべき重要な費用です。

ちなみに、「管理費等」はおもに管理費と修繕積立金を指す言葉として、標準管理規約では定義されています。

「特定承継人」の定義と適用範囲

「特定承継人」とは、ある区分所有者からその権利を引き継いだ人を指します。具体的には、

  • 売買によって新しく区分所有者になった人(購入者)
  • 相続や贈与によって所有権を取得した人

つまり、「前の所有者が滞納していた管理費を、新しい所有者も支払う義務がある」という考え方がこの条文のポイントです。

なぜ特定承継人に請求できるのか?管理費回収の仕組み

この規定がないと、滞納していた所有者が部屋を売却し、管理費の未払い分が回収できなくなるリスクがあります。例えば、以下のようなケースが考えられます。

📌 事例:管理費を滞納したまま売却した場合

  1. Aさんがマンションを所有し、管理費を半年間滞納。
  2. AさんはそのままBさんに売却。
  3. Aさんは退去し、管理組合が請求しようにも行方不明。
  4. しかし、第26条があるため、Bさんに請求できる。

こうすることで、管理組合が未収金を回収しやすくなり、マンションの管理運営に支障が出にくくなります。

買主は前所有者の管理費滞納分を支払う義務がある?

管理費の滞納リスクを避けるために買主が確認すべきこと

マンションを購入する際には、売主に滞納がないかを確認することが重要です。不動産売買契約の際には、「管理費等の滞納がないこと」を売主が保証する条項が盛り込まれることが一般的です。

売買契約で滞納管理費の負担を回避する方法

もし売主が滞納している場合、売買契約の中で「未払いの管理費は売主が支払う」という取り決めをすることが可能です。

しかし、これは売主と買主の間の約束に過ぎず、管理組合に対する請求権には影響しません。管理組合は新所有者(承継人)に対して直接請求できるため、最終的に新所有者が負担する可能性もあります。

管理組合の立場に立てば、売主であれ、買主である新たな組合員であれ、滞納分の管理費等の支払いが行われればよい訳です。

国土交通省の補足説明|「包括承継人」と「特定承継人」の違いとは?

次に、当該条文において国土交通省は1点補足説明を行っています。

その点を具体的に見ていくとともに、筆者の解説も加えたいと思います。

第26条関係
以前は包括承継人についても記載していたが、包括承継人が債務を承継するのは当然であるため、削除した。

 「包括承継人」とは?相続時の管理費負担の仕組み

「包括承継人」とは、亡くなった人の財産や負債を、全てまとめて受け継ぐ人のことを指します。

相続で管理費滞納が発生した場合の対応方法

  • Aさんがマンションを所有し、管理費等を滞納したまま亡くなった。
  • Aさんの相続人(例えば息子Bさん)は、Aさんの財産だけでなく、借金や未払いの管理費等も引き継ぐ。
  • つまり、Bさん(相続人)は当然のこととして、滞納していた管理費等も支払う義務を負う。

このように、相続などで財産を受け継ぐ場合、法律上「包括的に」負債も引き継ぐことが決まっています。

2016年の規約改正で「包括承継人」の記載が削除された理由

以前の標準管理規約では、「特定承継人(売買などで所有権を取得した人)」と「包括承継人(相続などで包括的に財産を受け継ぐ人)」の両方について書かれていました。

しかし、包括承継人は法律上、自動的に負債を承継することが決まっているため、「わざわざ規約に書かなくても当然」と判断され、削除されたのです。

ちなみに、こちらは2016(平成28)年3月の標準管理規約改正時に削除されました。

管理組合が注目すべきは「特定承継人への請求」

包括承継人については法律でカバーされているため、管理組合が気にするべきなのは、特定承継人(売買などで新たに区分所有者になった人)に滞納分を請求できるかどうかという点です。

標準管理規約第26条は、この特定承継人にも請求できることを明確にするためのルールです。

承継人への請求で管理組合が注意すべきポイント

マンション標準管理規約第26条の条文ならびに、国土交通省の補足説明から、筆者が独自の視点で管理組合や区分所有者が注意しておきたい内容を紹介します。

区分所有者が変わったら管理費の請求はすぐに!

管理費等を滞納したまま区分所有者が売却(競売も含む)を行い、新たな区分所有者が判明した場合には、滞納額を請求して回収する必要があります。

不動産会社を通じて購入する方であれば、前区分所有者が管理費等を滞納したことを知って購入する場合がほとんどでしょう。

また、競売であれば当然その情報は入手したうえで入札します。

そのため、管理組合として滞納額は速やかに請求して回収することが求められます。

遺産分割協議中でも滞納管理費の請求は可能?管理組合の対応策

区分所有者の急な不幸により、銀行残高が無く、口座引き落としが止まってしまう場合も考えられます。

引き落とせない場合は、家族等に確認の上、相続人を特定したうえで、管理組合としても滞納額の回収を速やかに行うことが望まれます。

ちなみに、相続において誰がどの遺産を引き継ぐかという遺産分割協議が終わっていなくても、管理組合としては滞納管理費等を請求することができるとしています(兵庫県弁護士会の記事より)。

遺産分割協議を待っていると時間が経過することとなり、管理費等が膨らんでいくこととなるため、協議が終了していないとしても、管理組合としては速やかに請求するとともに、継続的に滞納しないように払ってもらう必要があります。

駐車場使用料の滞納は特定承継人にも請求できる?判例も紹介

条文には、

✅管理組合が管理費等について有する債権

とあることから、駐車場や駐輪場の使用料は含まれず、滞納していた場合は、新たな区分所有者が引き継がないのではないか?という考え方もあ

るかもしれません。

しかしながら、平成20年11月27日の東京地裁の判例では、新たに購入した特定承継人にも及ぶこととなる判決のようです。
マンション管理業協会の資料より

ただ、同様の事象でも判例が異なるため全てがこの判断に該当するわけではないことから、同様の事例があった場合は、専門家である弁護士に相談することが望まれます。

特定承継人への滞納金回収はスピードが命!

今回はマンション標準管理規約第26条「承継人に対する債権の行使」について解説しました。

滞納したまま義務違反者行為等で競売に回されるケースも常に発生しています。

また、とりわけ高経年マンションにおいては高齢者が多い中で、滞納したまま相続を行うケースも比較的見られます。

その際に、この第26条に関する問題が発生することも多いようです。

管理組合としては、承継人に対して請求することで、管理費等の滞納がこれ以上増えないような対策を速やかに打っていくことも非常に重要と考えられます。

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