【規約解説】専有部分には使用方法があり勝手に民泊は出来ない?

管理規約解説

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自分自身の持ち物である専有部分の範囲は分かったけど、使用方法って決まりがあるのかな?

また、

専有部分で民泊を考えたいのだけれどそもそも可能なのだろうか…?

さらには、

事務所として使用することは可能なのだろうか…?

などなど、専有部分に関する疑問点も非常に多くあるようです。

分譲マンションは、自分のものであり、自分だけのものではない部分があります。

そのため、規約というマンション内に住む全員が守るべきルール決めて、自分のものである専有部分であっても、従っていく必要があります。

今回は、普段生活している専有部分において区分所有者が守るべきルールを、標準管理規約第12条の条文や筆者が具体的な事例を含めて紹介します。

【規約解説】専有部分には使用方法があり勝手に民泊は出来ない?

今回紹介する内容は、以下の通りです。

・標準管理規約第12条「専有部分の用途」の紹介
・第8条「専有部分の用途」の民泊を中心とした補足・注意事項は?
・「専有部分の用途」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?

まず初めに、標準管理規約第12条の条文より、専有部分の用途に関する内容を紹介します。

続いて、第12条には他の条項同様に、規約を解釈するうえでの補足事項や注意事項があります。

その点について細かく紹介されていますので、全て抽出してそれぞれ確認します。

とりわけ、民泊を実施する際の注意事項について、細かく紹介されています。

また、民泊については、管理組合として許可していないところの方が多いと考えられますが、民泊を可とする場合の規約での記載方法について紹介します。

そして、最後の章では専有部分の用途から、管理組合や区分所有者が確認しておきたい事項を具体的に紹介します。

とりわけ、筆者は民泊新法施行以前の数年間、マンション民泊に深く携わっていたため、その際に経験した注意事項も含めて紹介します。

標準管理規約第12条「専有部分の用途」の紹介

第12条には、専有部分を住宅宿泊事業(以下、「民泊」と記載)として使用することを可能とする場合と、禁止する場合に分けて管理規約の記載例があります。

それぞれ確認してみます。

住宅宿泊事業を可能とする場合の条文

(専有部分の用途)
第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
2 区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号)第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用することができる。

第1項にある

「専有部分を専ら住宅として使用」

ということで、居住用として使用することが定められています。

第2項の住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)の第3条第1項の届出は、民泊実施の場合は都道府県知事や市長等への届出を行うこととなります。

同法第2条第3項は

「住宅宿泊事業」とは、営業者以外の者が宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業であって、人を宿泊させる日数として国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより算定した日数が一年間で百八十日を超えないもの

という規定になります。

住宅宿泊事業を禁止する場合の条文

禁止する場合は、太字の所に違いがあります。

(専有部分の用途)
第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
2 区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号)第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用してはならない。

第8条「専有部分の用途」の補足・注意事項は?

第8条の補足事項については、ほぼ民泊に関する内容が並んでいます。

そのため、説明はほぼ民泊に関することとなってしまいますが、それぞれ紹介していきます。

住宅としての使用とは?

第1項にあった「専ら住宅として使用」についてです。

ここの判断軸としては、

専ら居住者の生活の本拠があるか否か

ということが判断材料になります。

そのため、利用方法としては、生活の本拠であるために必要な平穏さを有することが必要とされています。

規約には民泊が可能か禁止かを明確化することが望まれる

民泊については、第2項のように、可能か禁止かを明記することが望まれます。

また、旅館業法第3条第1項の簡易宿所の許可を得て行う「民泊」については、旅館業営業として行われるものとなります。

この旅館業営業は、営業日数の制約が180日が無い一方で、営業上の制約があります。

さらに、第1項の用途に含まれておらず可能としたい場合は、その旨を明記することが望れます。

そして、旅館業法や住宅宿泊事業法に違反している民泊は、管理規約に明記するまでもなく、当然に禁止されているとの趣旨です。

よって、

区分所有者は、その専有部分を、宿泊料を受けて人を宿泊させる事業を行う用途に供してはならない。

のような規定を置くことも考えられるとのことです。

同一マンション内に区分所有者が居住していて別の部屋を民泊にする家主居住型の場合

例えば、区分所有者が606号室と607号室を所有しているような場合です。

本人は606号室に住んでおり、空いている607号室を民泊として利用する場合が想定されます。

このように、マンション内に住んでいて監視の目が届きやすい、家主居住型民泊であれば空き部屋を貸すことを可能とする場合です。

そして、これも規約に明記することが望まれます。

具体的な家主居住型民泊を可能とする条文例は、

第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
2 区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業(同法第11条第1項2号に該当しないもので、住宅宿泊事業者が自己の生活の本拠として使用する専有部分と同法第2条第5項の届出住宅が同一の場合又は同じ建物内にある場合に限る。)に使用することができる。
となります。

住居内の空き部屋を民泊とする家主同居型の場合

さらに、区分所有者が住んでいる住戸の空き部屋のみを民泊可能とする場合も考えられます。

前項の家主居住型の場合以上に目が行き届く可能性があるからです。

また、家主同居型民泊を可能とする条文例は、

第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
2 区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業(同法第11条第1項2号に該当しないもので、住宅宿泊事業者が自己の生活の本拠として使用する専有部分と同法第2条第5項の届出住宅が同一の場合に限る。)に使用することができる。

となります。

新築分譲時の原始規約で民泊を使用細則で定める旨の考え方

区分所有者が新築マンションを購入した時点で、規約や細則に民泊の条項が定められている場合もあります。

具体的には、

第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
2 区分所有者が、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用することを可能とするか否かについては、使用細則に定めることができるものとする。

というような文面です。

民泊だけではなく広告掲載も禁止する

民泊の実施そのものだけでなく、その前段階の広告掲載等をも禁止する旨を明確に規定することも考えられます。

具体的には、

区分所有者は、前2項に違反する用途で使用することを内容とする広告の掲載その他の募集又は勧誘を行ってはならない。

のような規定を置くことも考えられます。

暴力団事務所としての使用の禁止

暴力団の排除のため、暴力団事務所としての使用や、暴力団員を反復して出入りさせる等の行為について禁止する旨の規定を追加することも考えられるとのことです。

「専有部分の用途」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?

今回の標準管理規約第12条は、ほぼ民泊に関するテーマが補足説明として入っています。

そのため、民泊について定めた条項ともいえます。

最後の章では、民泊やそれ以外の使用についての注意事項を紹介します。

民泊不可の場合は規約にはっきりと明記する

筆者が関与していたマンションは、もともと民泊新法制定前は、規約や細則にも明確な線引きが無かったため、民泊が可能でした。

そのため、その時に流行っていた民泊を区分所有者が開始したという経緯です。

しかしながら、民泊新法に則って、標準管理規約の改正があり、そのマンションの規約も改正されたことから、民泊が当然不可となりました。

当然ですが、規約に民泊が不可となっている場合は、民泊はできません。

また、規約に明記されていない場合は、管理組合として曖昧な状態になっている可能性があります。

加えて、マンション購入者においては、「民泊可」物件を魅力的に考えて、購入を検討する場合があります。

規約に記載がない場合は、「民泊可能」という誤解にも繋がることから、あとあとのトラブルを回避するためにも、明記することが望まれます。

その点は国土交通省も「明記することが望まれる」とのコメントを残しています。

民泊可能な場合も明記する

民泊が不可の場合も可能な場合も、規約に明記することが望まれます。

ちなみに、筆者の感覚ですが、居住者の生活の拠点となっている大半の管理組合は民泊を禁止しています。

一方で、地方のリゾートマンション等は使用上の性質から可能となっている所も多いでしょう。

具体的には、

・家主居住型
・家主同居型のみ
・居住していなくても可能な形態
・旅館業法も可能な形態

など、どのような民泊が可能なのか具体的に明記することが望まれます。

ビジネス用途の事務所も認める場合は?

第1項にあった「専ら住宅として使用」という点について、ビジネスには利用できるのかということもあるでしょう。

専ら住宅として使用→専ら居住者の生活の本拠があるか

ということなので、例えば、

・リモートワークで使用
・自宅兼事務所として使用

は当然事務所として使用することは可能でしょう。

一方で、部屋の一室を会社の営業拠点として

・自宅兼事務所であるが、社員が出入りする事務所

のような場合も考えられます。

前章で紹介した、家主同居型民泊に近い形となるためです。

民泊ほど不特定多数の旅行者が泊まりに来るわけではなく、固定化された社員が出入りするため、考え方はやや違います。

このような場合は、

管理規約で事務所使用も可能である

旨を定めておくことが望まれます。

また、「専ら住宅として使用」しない場合で、ビジネスの事務所のみとして使用可能とする場合も、上記のような定めを行うことが望まれます。

専有部分であっても決まった事以外に使用はできない

今回は標準管理規約第8条の「専有部分の用途」について解説しました。

首都圏や観光地においては、コロナ禍以降はとりわけ外国人の旅行客が非常に多くなりました。

また、それらの地域ではホテルの宿泊費が高騰しており、日本の旅行客は手が届かないような事例も出ています。

そのような際に有効となるのが民泊ですが、マンションでは普段そこで平穏無事に暮らしている居住者がいることから、旅行客の出入りが激しくなることは認められないのが実態でしょう。

時代の流れによって管理組合も新たな対策が講じられることとなりますが、専有部分の用途の参考にして頂ければ幸いです。

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