先日、日本経済新聞で、マンション管理に関する重要なニュースが報じられました。

国土交通省は、第三者管理(管理業者管理者方式)における利益相反の問題に対応するため、
2025年通常国会での法改正案提出 → 2026年導入を目指す方針とされています。
今回のコラムでは、このニュースの背景にある身内発注と利益相反の構造的な問題、そして2026年に向けて管理組合が備えるべきポイント を、マンション管理士の視点から整理します。
※写真はみなとみらい大橋から神奈川方面を見た風景です
ニュース要約:管理会社の「身内発注」に事前説明義務へ
国土交通省が検討している法改正のポイントは次のとおりです。
背景
・担い手不足や高齢化により、管理会社が理事長を兼ねる「第三者管理」が増加。
・しかし監視体制が弱く、管理会社が自社やグループ企業に割高な契約を発注するなど、
利益相反(自己取引)のリスクが以前から指摘されていた。
法改正の主要ポイント(予定)
- 身内発注の事前説明義務化
管理会社が自社・関連企業と契約する際、
その理由・金額・選定理由を住民に説明することを義務付け。 - マンション購入時の重要事項説明を強化
第三者管理を採用しているマンションでは、
購入者に対し契約内容を必ず説明するルールを新設。 - 導入時期の見通し
2025年通常国会で法改正案の提出を予定
可決されれば、2026年を目途に制度導入へ
つまり、これまで“ブラックボックス”になりがちだった
「管理会社のお手盛り発注」に対して、国が透明性を求め始めたという流れが鮮明になったと言えます。
マンション管理士が読み解く第三者管理の本質
日経の記事をうけて、マンション管理士の視点から少し補足説明をします。
第三者管理者方式とは?
当初は、マンション管理士など外部専門家が理事長(管理者)を務める方式として想定されていました。
しかし実務上は、日常管理を担う管理会社がそのまま管理者となるケースが急増し、
国交省はこれを 「管理業者管理者方式」 と定義しています。
実務では、日常管理を担う管理会社が区分所有者に最も近い立場にあるため、管理者(理事長)も兼ねるケースが急増しました。
国土交通省はこれを「管理業者管理者方式」と定義しています。
ガイドライン型とチェックリスト型の違い
管理会社が管理者となる方式
→ 国交省のガイドラインや法律で規制・基準が整備される方向。
マンション管理士が管理者となる方式
→ 日管連の「移行安全度チェックリスト」による厳格な要件が必要。
「管理会社」VS「マンション管理士」どちらを選ぶべきか?
第三者管理を採用した場合、一度導入すると理事会方式に戻すのは非常に難しいという点を、まず理解しておく必要があります。
その前提で、それぞれの特徴を比較します。
管理会社(管理業者)に任せる場合
メリット
✅窓口が一元化され、運営の手間が大幅に軽減
✅設備トラブルへの対応が早い
✅大手管理会社のノウハウを活用できる
デメリット
✅利益相反による割高発注のリスク
✅管理会社を監視する仕組みが弱まり透明性が低下
✅組合の主体性が損なわれやすい
マンション管理士(外部専門家)に任せる場合
メリット
✅管理会社の契約内容を中立の立場でチェックできる
✅利益相反の抑止力が働く
✅管理組合の意思決定を支援し主体性を確保できる
デメリット
✅実務の多くは管理会社が行うため調整が必要
✅専門家への報酬が別途かかる
✅専門家の能力に差がある
以上の比較からもわかるように、単独方式ではどちらも弱点が残ります。特に第三者管理者方式は「監視が効きにくくなる構造的な課題」があるため、チェック機能を外部に置くことでリスクを補完する必要があります。
外部専門家を組み合わせた「併用型」が最も現実的
第三者管理者方式は便利な一方、利益相反や監視不足という構造的なリスクを抱えています。管理会社の実務力を活かしつつ、外部専門家(外部監事)が中立の立場から点検する「併用型(ハイブリッド型)」が最も現実的で安全性の高い選択肢です。
2026年の法改正では身内発注への規制が強化される見込みですが、備えは今から始められます。
✅権限が管理会社に集中しすぎていないか
✅発注や見積りが不透明になっていないか
✅外部監事の設置が必要ではないか
これらを点検し、“任せっぱなしにしない仕組み” を整えることが管理組合の資産を守る最も確実な方法です。





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