2026年度から管理組合も国債購入へ|修繕積立金のインフレ防衛とマンション最新ニュース

マンショントピックス

※当コラムでは商品・サービスのリンク先にプロモーションを含むことがあります。ご了承ください。

近年、マンション管理組合の「お金」に関する相談が急増しています。特に、インフレによる工事費の上昇で修繕積立金が追いつかないという声は全国で広がりつつあります。

そんな中、2026年度から大きな転換点が訪れます。
マンション管理組合でも 「個人向け国債」 が購入しやすくなる方針が示され、修繕積立金の新たな運用手段として注目を集めています。

本記事では、

「国債が管理組合に向いているのか?」
「実務としてどう手続きするのか?」

をマンション管理士 × FP1級の視点からわかりやすく整理しました。

後半では、マンション業界の最新ニュースを「プロのコメント付き」でまとめています。2025年以降のマンション管理の方向性を一緒に押さえていきましょう。

ヘッダーの写真は、たまたま行った横浜市内のとある日帰り温泉施設のそばにある、非常に有名な斜面マンションです。

この温泉駐車場からの景色が斜面マンションとして非常に素晴らしいものでした。

また機会があれば、こちらについても紹介します。

2026年度から管理組合も個人向け国債を購入可能に──制度変更のポイントを解説

2026年度から、マンション管理組合の資産運用に大きな選択肢が生まれます。これまで管理組合が購入できるのは「新窓販国債(銀行窓口販売の国債)」に限られ、3億円までなどの制限がありました。

しかし今後は、個人向け国債の購入が、管理組合でも実質的に可能になる方向性 が明確になってきました。

この背景には、主に次の理由があります。

生損保の国債需要が一巡し、安定的な買い手が必要になった
全国に約9,000億〜1兆円規模で積み上がる「修繕積立金」を市場に取り込みたい

管理組合はもともと“超保守的な運営主体”であり、国債の「元本保証」「シンプルな仕組み」は非常に相性が良いと言えます。

この制度改正によって、「普通預金に寝かせているだけ」からの脱却が現実的になるという点が最大のポイントです。

管理組合は“国の想定する大口顧客”へ──財務省が注目する理由とは

個人向け国債の販売対象が拡大される背景には、財務省が 「安定的に継続購入してくれる新たな大口顧客」 を求めているという事情があります。その最有力候補の一つが マンション管理組合です。

日経の報道では、財務省関係者の次のコメントが紹介されています。

「資金量では非上場企業の割合が高いが、管理組合からは『買いたい』という声を多く聞く」

管理組合は全国で 10万5100組合以上(2024年4月1日時点)。修繕積立金制度を持つ組合の平均残高は 1億1521万円(国交省・2023年度調査) に達しており、全国では数兆円規模の資金が積み上がっています。

修繕積立金は性質上、

✅目的が明確
✅長期で蓄える
✅一時的に大きな余剰資金が生まれる

という特徴を持つため、財務省にとっては “極めて安定的な国債の買い手” になり得ます。

マンション管理士・FP1級の立場から見ても、「安全・流動性・透明性を重視する管理組合」と「低リスクで継続購入してほしい財務省」は、非常に相性が良い組み合わせです。

今後、管理組合が“余剰資金の標準的な保全先のひとつとして国債を選ぶ”という流れは、ほぼ確実に加速していくと見られます。

修繕積立金“数億円”時代──管理組合が国債でインフレ対策を図る動きが加速

Bloombergは2025年9月の記事で、複数の大規模マンション管理組合が「修繕積立金の一部を国債で運用する方針を検討している」と報じました。

修繕積立金は、建物の維持管理に不可欠な財産であり、将来の大規模修繕に必ず使う“予定支出の資金” です。適切に積み立てている管理組合ほど、残高は2億円、3億円を超える場合も珍しくありません。

しかし昨今のインフレにより、

✅施工費(足場・資材)が上昇
✅工事単価の上昇
✅人件費の増加

など、修繕費の将来予測が読みにくい時代に突入しています。

この状況で、多くの組合では次のような問題意識が高まっています。

「普通預金のままでは積立金の実質価値が目減りしてしまうのでは?」
「せめてインフレ率に負けない“安全な運用先”はないのか?」

こうした悩みに対し、個人向け国債は非常に相性がよい金融商品です。

なぜ管理組合の“インフレ防衛”に国債が選ばれるのか

✅元本割れしない(預金より安全性が高いケースも)
✅流動性が高く、必要な時に換金しやすい
✅インフレ局面での利率見直し(変動10年)対応がある
✅管理組合が扱いやすい仕組み(複雑なリスク商品でない)

特にインフレが長期化すると、普通預金に眠らせておくことは “実質的な損失” につながります。
そのため、「積立金の価値を守るための国債活用」という考え方は、今後さらに広がると見られます。

マンション管理士・FP1級としても、管理組合の意思決定プロセスにおいて「安全性を損なわずに将来の修繕費を確保する」という観点は重要であり、国債は有力な選択肢になります。

なお、実際に国債を購入する際には、管理規約・細則の確認や総会決議の要否、会計処理の整理など、事前の手続き確認が不可欠です。

以上のように、修繕積立金の“安全な保全”という視点では、個人向け国債は極めて相性の良い選択肢です。ここからは、マンション業界全体の動向として押さえておきたい最新ニュースを紹介します。

中古市場の主役が“築深マンション”に──背景は価格高騰と新築供給の限界

新築マンションの価格高騰が続く中、購入層は次第に築浅 → 築深へとシフトしています。
直近の市場動向では、「築深マンション(築20〜30年以上)」に再び注目が集まっています。

背景は大きく3つあります。

新築価格の高騰と築浅プレミアムの拡大

新築マンションの坪単価は首都圏を中心に過去最高水準を更新し続けています。その影響は中古市場にも及び、築5〜10年の“築浅マンション”でさえ新築以上の価格で取引されるケースも増えています。

こうなると、「割安感」を求める購入者が自然と築20年・30年超へ流れるのは当然の流れです。

新築供給の限界──“土地不足”が鮮明に

都市部ではマンション用地の確保が困難になっており、新築供給量は長期的に減少傾向です。
その結果、住みたいエリアを優先する購入者にとって、中古(特に築深)の選択肢が相対的に価値を持つようになりました。

築深マンションは「価格が3分の1」も珍しくない

記事によると、

✅築20〜30年の物件:新築や築浅の半額程度
✅築30年超の物件:新築の3分の1程度

まで価格が落ち着く傾向が見られます。

しかし、築30年超でも 1981年6月以降(新耐震基準) の物件が多く、耐震性を大きく心配する必要がないケースも多数あります。

築深マンションを検討するなら「インスペクション」は必須

築深物件は割安な一方で、建物状態のバラつきが大きいのも事実です。
そのため、中古購入時は インスペクション(建物状況調査) の実施が重要になります。

インスペクションを行うことで、

✅欠陥の有無
✅耐久性の状態
✅修繕履歴の妥当性

を客観的に判断でき、購入後のトラブルを未然に防ぐことができます。

住宅の“面積縮小”が止まらない現実──マンション価格維持の裏で何が起きているのか

建材価格や人件費の高騰で、住宅メーカーやデベロッパーは「販売価格を適正に維持する」ことが難しくなっています。そこで、最近目立ってきたのが、“面積を縮小して価格を据え置く”という手法です。

食品分野で話題になった「ステルス値上げ」の住宅版ともいえる現象で、価格は一見据え置きでも、居住スペースがわずかに減ることで実質的な負担が上昇する構図が広がっています。

日経の報道によると、「コスト増をそのまま販売価格に転嫁すると、購買層がついてこられない」という事情から、面積縮小は多くの新築物件で採用され始めています。

さらに、この影響を最も実感しているのが若い世代です。横浜市の30代女性は「広めのマンションを検討しているが、新築は無理で、中古の人気エリアも手が出ない」と語っており、夫婦2人で約50㎡の2LDKに住み続けざるを得ない状況にあるとのことです。

住宅の狭小化は、単なる“暮らしの快適性”の問題にとどまりません。

安定した住まいを確保しにくい状況は、
結婚・出産の判断を後ろ倒しにする少子化加速につながる
という社会的な懸念としても指摘されています。

また、マンション管理の観点でも、住戸面積の縮小は長期的に影響します。面積が小さくなるほど専有面積割合が変わり、修繕積立金の按分や長期修繕計画の前提が変わるケースも出てきます。

“買える新築は狭い”という現状が続く限り、家計とマンション管理の双方で新たな課題を抱える時代に入っているといえるでしょう。

マンション災害時の「在宅避難」が現実に──鍵はトイレ対策と高層階の孤立防止

大地震などの大規模災害が発生した際、マンションでは「避難所へ行く」のではなく、自宅に留まる“在宅避難(籠城)”が基本になると指摘されています。

背景には、エレベーターの長期停止リスクや、戸建てに比べて構造的に安全性が高いという特性があります。

最も深刻な課題:断水時のトイレ問題

在宅避難を困難にする最大の要因は「トイレの確保」です。水が止まると水洗トイレは使えなくなり、逆流や詰まりのリスクが高まります。

そのため、記事でも紹介されているように、簡易トイレの備蓄は“必須のライフライン” とされています。

高層階の「孤立化」も懸念

エレベーターが停止すると、高層階では上下移動が難しくなり、支援が届きにくくなる可能性があります。この課題に対応するため、建物の中層〜上層階に備蓄倉庫を設ける管理組合も増えています。

非常食や水だけでなく、簡易トイレ・ライト・救急用品などを配置し、「上層階住民が自力で対処できる仕組み」を整える動きが進んでいます。

マンションは「人材力」の宝庫――住民のノウハウを活かす

興味深い指摘として、記事では

マンションには専門技術者、医療従事者など、多様なスキルを持つ住民がいる可能性が高いと紹介されています。

つまり、災害時には
住民一人ひとりが“自治力の資産”として機能する
ことが期待されるわけです。

管理組合としても、これらの知見をまとめ、

✅防災委員会の設置
✅住民のスキル把握(アンケート)
✅共助のルール作り

といった取り組みが資産価値向上にもつながります。

管理組合 × 自治会 × 町内会の連携がカギ

マンション単体での備えだけでは限界があります。

災害時には、

✅情報共有
✅物資輸送
✅避難所との連携

など、外部組織との協力体制が不可欠です。

特に、在宅避難が中心となるマンションは、「地域の避難所の利用者ではない」可能性もあります。しかし、情報連携と地域防災ネットワークへの参加は、建物としてのレジリエンスを守るために不可欠 です。

マンションは戸建てより構造的に強く、在宅避難に向いていますが、その分、「備蓄」「合意形成」「共助体制」の整備が求められます。

2025年以降のマンション管理は「資産 × 防災 × 運用」の三本柱へ

2025年以降のマンション管理では、修繕積立金を守る「資産防衛」、災害時の在宅避難を前提とした「防災力」、そして余剰金を安全に生かす「運用」の三本柱が重要になります。管理組合の国債購入が認められることで、資金をより確実に保全しながら将来の修繕に備える選択肢が広がりました。

同時に、住宅の狭小化や生活コスト増、災害リスクの高まりなど、マンションを取り巻く環境は大きく変化しています。高層階の孤立やトイレ問題など、災害対策を建物単位で整えることは資産価値にも直結します。これからの管理組合には、情報収集と合意形成のスピードが問われる時代です。

この記事は長文です。上記の印刷ボタン・リンクから飛んでいただき、印刷、またはPDFとして保存して、お手元でじっくりお読みいただけます。

【記事執筆・監修】
マンション管理士・1級ファイナンシャル・プランニング技能士 古市 守
横浜マンション管理・FP研究室(研究室紹介)

マンション管理全般に精通し、管理規約変更、管理会社変更、管理計画認定制度の審査、修繕積立金の見直し、自治体相談員、コラムの執筆など、管理組合のアドバイザーとして幅広く活動。
また、上場企業やベンチャー企業のCFOや財務経理部長経験から、経営・財務経理分野にも精通。コンサルティング会社経営の傍ら、経営・財務経理視点を活かし、マンション管理の実践的サポートを行う。
古市 守の著者紹介ページはこちら

横浜マンション管理・FP研究室(研究室紹介)をフォローする
マンショントピックス
シェアする
横浜マンション管理・FP研究室(研究室紹介)をフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました