マンションの管理組合で収益化したけど、納税が必要なのはどのようなケースなのだろうか?
また、
そもそも、管理費や修繕積立金の場合は納税の必要性って出てくるのか??
このような疑問を持っている管理組合も多いと思います。
管理組合は、企業と違って納税という概念は、理事会や総会でもあまり聞かないでしょう。
しかしながら、一定の収益があった場合には、税額計算結果で納税が必要なこともあります。
税については複雑であり、管理組合における役員や区分所有者も不明点が多いことが想定されます。
そのため、具体的にはどのような場合に納税が必要になるのか、企業やマンションの経理・会計にも詳しい筆者が一般例を挙げながら解説します。
※管理組合個別の金額や項目等、具体的な税務に関する例は記事には出しませんので、詳細は税理士や税務署にご確認・ご相談ください。
マンション管理組合にて税務申告が必要な場合は?事例や注意点を解説
今回紹介する内容は以下の通りです。
・マンション管理組合において税務申告が必要な収益事業の事例は?
・税務申告における注意点とは?
また、以前「マンション管理組合が消費税を納める必要がある収入とはどんな時?」と題して、消費税に特化して解説しました。
消費税以外にも税金を払う必要があるのか?
という管理組合や区分所有者からの意見や疑問もありそうですが、一定の条件を満たすと必要となる可能性はあります。
また、消費税は1,000万超の管理組合以外からの収益があった場合として、比較的管理組合では少ないケースとも言えました。
しかしながら、マンション管理組合によっては税務申告を行うことにより消費税以外に法人税等、また違った税金を支払う必要性があるかもしれません。
このような税務申告にあたる一般例や注意点について、今回紹介いたします。
一般的に税務申告が必要なケースは?
まず初めに、そもそもマンション管理組合において税務申告が必要なケースを挙げてみます。
具体的には、収益事業がマンション管理組合にある場合は、法人税法上の課税対象に当たるとされています。
「収益事業:販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるもの」(法人税法第2条13項)が該当します。
法人税法施工令第5条1項に定める34業種に該当するもの
34業種の中には、物品販売、不動産販売、物品貸付、不動産貸付、倉庫、旅館、遊技所、駐車場など各業種が該当します。
また、マンション管理組合として、これらの業種に該当する収益事業があれば、税務申告が必要になる可能性があります。
事業として継続している
管理組合における事業年度として、スポット的ではなく継続して収益を得ている場合は、こちらに該当する可能性があります。
また、継続ではなくても、定期的に、反復的に行われるものもこの「事業として継続している」要件に該当するようです。
事業場を設けている
店舗を設けていたり、事務所を設けて収益事業を展開している場合に該当することとなります。
マンション管理組合は、必ずしも事務所を設けているわけではないと考えられますが、管理組合としての場所の実態や、管理員室、集会室等、役員をはじめとした管理組合員が集まることができる「事務所」があると考えられるでしょう。
したがって、管理組合として
・継続して貸している
・事務所としての実態(ここはどの管理組合においても考えられる)
を満たす場合は、収益事業を行っているものと考えられます。
ちなみに、以前「マンション管理組合が消費税を納める必要がある収入とはどんな時?」で紹介したとおり、管理組合内からの収入としての管理費や修繕積立金、駐車場代などは非課税取引であり、収益事業に該当しません。
そのため、管理組合内からの収入は対象外として考えます。
税務申告により支払うべき税金は?
次に、マンション管理組合が税務申告をした場合に、どのような税金を払うこととなるのか、確認します。
納めるべきおもな税金は以下の通りです。
・法人住民税(法人税割と均等割)・都道府県税事務所及び市区町村(東京23区は都税事務所)に申告書を提出して納税
・事業税・特別法人事業税:都道府県税事務所に申告書を提出して納税
・消費税:所轄の税務署に申告書を提出して納税
・固定資産税:市区町村(東京23区は都税事務所)に申告書を提出して納税
法人税
収益事業がある場合には、法人税が課税され、申告の上所轄の税務署に納税することとなります。
管理組合においては、法人格がある管理組合法人と、そうでない通常の管理組合があります。
また、法人化されていない管理組合であっても、収益事業がある場合はケースによっては納税する必要が出てきます。
法人住民税
法人税同様に、住民税も納税する必要があり、こちらには、法人税割と均等割があります。
また、法人税割は収益事業がある場合は納める必要があり、均等割は管理組合法人の場合は収益事業がない場合であっても納める必要があります。
申告書の提出は都道府県税事務所と市町村ですが、東京23区は都税事務所となります。
事業税・特別法人事業税
こちらの税金も収益事業がある場合には納める必要があります。
また、都道府県税事務所に申告書を提出して、税金を納める必要があります。
消費税
消費税の記事でも紹介した通り、消費税込み収益が1,000万円を超える場合には納める必要が出てきます。
ただし、消費税の納税はその発生事業年度ではなく、2年後の事業年度から納める必要があります。
具体的にはこちら
の記事で細かく紹介していますので、併せてご参照ください。
固定資産税
収益事業に償却資産がある場合には、管理組合として固定資産の計上を行う必要があります。
そして、申告の上、該当する場合は固定資産税を市町村(東京23区は都税事務所)に納める必要があります。
また、償却資産については、固定資産税が掛かってくるのは、償却資産の課税標準額で150万円以上からとなります。
ただし、償却資産を保有している場合は必ず申告が必要となる点に注意が必要です。
マンション管理組合において税務申告が必要な収益事業の事例は?
収益事業に当てはまるのがどのようなケースなのか、事例を考えてみます。
具体的には、以下のような事例でしょう。
・製造業
・駐車場業
・印刷業
・席貸業
・物品貸付業
・旅館業
・遊戯所業
管理組合がこんなに該当するのか?と考えられますが、マンションの共用部分や敷地を活用して、管理組合自ら収益事業を展開する場合は、これ以外にも様々な収益事業が考えられます。
以下、それぞれ確認していきます。
不動産貸付業
管理組合の収益事業として、イメージしやすいのがこちらではないでしょうか。
具体的には、
・屋上や壁面の目立つところに広告用の看板を貸与している
・マンション内や敷地内に自動販売機を設置している
・ケーブルテレビやインターネット設備の利用料を取りまとめ管理組合として収入を得ている
などが該当しそうです。
製造業
次のような場合は製造業にもあたることが想定されます。
・同様の仕組みで風力発電も行っている
・地域のイベント等で管理組合として手作業で準備した物品を売り出す
なども想定されそうです。
駐車場業
こちらもイメージしやすいですが、
場合は収益事業となります。
ちなみに、前述のとおり、区分所有者のみの場合は収益事業には該当しません。
印刷業・出版業
管理組合内部の資料の配布等は、管理費から支出します。
一方で、仮に、管理組合外の地域の町内会に配布する資料を管理組合がまとめて印刷し、町内会から印刷代を徴収する場合や、地域へ会報誌を発行する場合は、この印刷業や出版業に該当するかもしれません。
また、実際に収益事業として反復、継続しているかどうかなどを含め厳密には線引きが難しい点もあります。
そして、他の事業に該当するかもしれませんが、毎月、四半期等、定期的に町内会や地域に対して実施している場合は、収益事業として想定しておく必要もあるかもしれません。
席貸業
管理組合の集会室を外部にも開放し、貸会議室として貸与している場合はこの事業に該当する可能性があります。
物品貸付業
管理組合として所有または管理しているカーシェアリングやレンタサイクルを、外部の方に開放している場合はこちらに該当する可能性があります。
また、管理組合が所有している物品を、管理組合外の地域の町内会や近隣の企業、さらには地域住民に貸与して定期的に収益を得ていることとなった場合は、この事業に該当する可能性があるかもしれません。
旅館業
ゲストルームを所有している管理組合においては、区分所有者の顧客が利用することも多いでしょう。
その場合は、利用するのはおもに外部の方であることから、収益事業となる可能性があります。
遊戯所業
タワーマンション等の大規模マンションやリゾートマンションにおいては、フィットネスジムや、プール等の設備を備えているところもあります。
このような設備において、外部の方に対しても利用を開放して収益を得ている場合は、収益事業となる可能性があります。
税務申告における注意点とは?
マンション管理組合において、収益事業に該当しそうな例を抽出したところで、注意点を紹介します。
管理組合以外から収益を得る場合には事前にどのような事業かを確認しておく
新たに収益事業を開始する場合は、各役員に共有され、理事会で決議することとなるでしょう。
そして、いきなり、誰かが収益事業を始めるということはなく、管理組合と相手方との契約や申し込み等の手続きが必要になると考えられます。
その際には、
・継続、反復するものなのか、スポットなのか
・収益額の目途
なども明確化することで、管理組合として実施するか否かを検討していくことになるでしょう。
場合によっては、重要事項として総会により決議することも考えられます。
管理規約において収益事業の取り扱いを明確化する
収益事業については、管理規約に定められていることが一般的です。
当該事業において外部から得た収入をどのように取り扱うのか、また事業において費用が発生する場合など、経理上の手続きを含めて管理規約で定めておくことが重要です。
課税所得の金額を明確化する
課税所得とは、税金計算のベースとなる所得であり、
として算出されることから、収益事業に掛かる費用を差し引くことができます。
そのため、収益事業に掛かる費用を明確化しておく必要があります。
また、通常の管理組合の管理で掛かる管理費とは別で区分経理しておくことも重要です。
例えば、
・外部に対して駐車場や会議室、フィットネスジム等を募集する場合の広告宣伝費
・外部にも貸出可となっているカーシェアリングに関するガソリン代や車両メンテナンス費用、車検費用
・税務申告における税理士報酬
などが該当するでしょう。
さらに、どの費用が収益事業に掛かった経費かが不明確になると、適格な課税所得が算出できず、あとあと重加算税や延滞税等を指摘される可能性もあるので注意が必要です。
税務申告の前に税理士や税務署に必ず相談する
冒頭にも記載しましたが、管理組合の収益事業に関する個別具体的な内容は、管理会社経由を含めて税理士や税務署に相談する必要があります。
さらに、収益事業を進めてしまい後々事業年度決算の修正があった場合には、大きな手間となる可能性があります。
また、税務申告の手続きにおいては、税金計算や申告書作成において専門家である税理士や税務署の協力を得ながら進めていく必要があります。
こちらも、収益事業を開始する前に、事前に相談しておくと税務申告の際にもよりスムーズにいくこととなるでしょう。
収益事業はマンション管理組合にとって重要な財源
物価や人件費が高騰する中で、マンション管理組合として必要となる管理費も上がってきています。
一方で、区分所有者に対する値上げもなかなか難しいところもあるでしょう。
そのためには、マンション管理組合として、新たな収益化手段を検討することも重要となります。
収益事業を展開することで、必要経費や税金を支払うこととなりますが、それに余りある収入を管理組合にもたらしてくれるものと考えられます。
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