ワンルームやコンパクトマンションが多い管理組合の課題と対応策は?

マンション管理

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うちのマンションはワンルームやコンパクトマンションが中心で単身世帯が多く住んでいる

または、

単身世帯は賃貸で借りている人も多く、役員になる人がなかなかいなくなっている…

このような課題を持っているマンション管理組合も比較的多いでしょう。

特に、ワンルームやコンパクトマンションは都心の駅近に多く、住民も単身世帯や賃貸で住んでいる方も多い傾向にあります。

となると、役員になってもらう人が少なかったり、住民の移り変わりが激しい、さらにはそもそも区分所有者が投資目的でそこに住んでいない…なども考えられます。

そのようなワンルームが多いマンション管理組合における現状課題と対応すべき課題について、確認していきます。

※不動産経済研究所によれば、コンパクトマンションとは、住戸専有面積が30.00㎡以上50.00㎡未満でワンルームマンションとファミリータイプマンションの中間に位置する物件であり、単身者やDINKs、シニア世帯などをターゲットとしているのものです。

ワンルームやコンパクトマンションが多い管理組合の課題と対応策は?

本日紹介する内容は次の通りです。

・不動産経済研究所がリリースしているデータからコンパクトマンションの傾向は?
・令和5年度マンション総合調査から見る管理組合における賃貸住戸の傾向は?
・ワンルームやコンパクトマンションが多い管理組合で想定されるおもな課題は?
・管理組合としての課題に対する対応策は?

データは、不動産経済研究所がリリースしているデータや、国土交通省による令和5年度のマンション総合調査から、小規模マンションの傾向や分譲マンションにおける賃貸の傾向など確認します。

さらに、ワンルームや小規模マンションを多く抱える管理組合にとって、考えられる課題とともに、その一般的な対応策を紹介します。

不動産経済研究所がリリースしているデータからコンパクトマンションの傾向は?

まず初めに、株式会社不動産経済研究所の2024年4月9日にリースされた、「首都圏・近畿圏コンパクトマンション(専有面積30㎡以上50㎡未満)供給動向」から、都市部におけるコンパクトマンションの傾向を見ていきます。

※当該記事については、株式会社不動産経済研究所より使用許諾を得て同社のデータを引用しています。

首都圏のコンパクトマンションの供給動向は?

まず、首都圏1都3県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)におけるコンパクトマンションの動向です。

分譲マンション全体の販売に対する、コンパクトマンションのシェアは年々増加傾向です。

傾向として、

・エリアでは、東京23区が1,872戸と多く、次いで神奈川県の970戸、さらに埼玉県の402戸と続く
・価格高値が続いており、2023年の平均価格は5,111万円と、前年の4,771万円と比べ+340万円

となっているようです。

近年人気の理由として、2021年度から住宅ローン控除の対象が床面積(内法面積)40㎡以上の住戸へ緩和されたことも供給増に拍車をかけているようです。

発売戸数の10年間の推移は以下の通りです。

また、首都圏における市区別上位20エリアの4年間の推移は以下の通りです。

さらに、価格帯別発売戸数の5年間の推移です。

この推移をみると、年々高価格帯へシフトしていることが分かります。

首都圏近郊は、小規模マンションでも価格高騰が顕著となっていることが伺えます。

近畿圏の供給動向は?

続いて、近畿圏2府4県(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県、滋賀県、和歌山県)におけるコンパクトマンションの動向についても確認してみます。

首都圏同様、近畿圏についてもシェアは年々増加傾向です。

傾向として、

・エリアでは大阪府が多く930戸、京都府177戸、兵庫県116戸と続く
・首都圏同様、価格高騰が続き、2023年は平均3,651万円となり、2022年の3,642万円から+9万円

となっています。

首都圏ほど上昇はしていないものの、コンパクトマンション需要の高まりから価格が上がってきている状況が分かります。

発売戸数における10年間の推移は以下の通りです。

価格的には、大阪府よりも兵庫県や京都府の方が高くなっています。

兵庫や京都は、より便利な立地にあるのではとも考えられます。

令和5年度マンション総合調査から見る管理組合における賃貸住戸の傾向は?

ワンルームやコンパクトマンション、さらには大規模なタワーマンションは区分所有者が購入したあと、賃貸として貸し出されている傾向もあります。

また、具体的に国土交通省が令和6年6月に発表した、令和5年度マンション総合調査のデータを確認しながら、賃貸動向を確認していきます。

マンション全体に占める賃貸の割合は?

単棟型マンションと、団地型マンションにおいて、賃貸住戸がどれぐらいあるのかのデータとなります。

以下、マンション戸数全体に占める賃貸の割合を、簡易的に賃貸率として表現します。

傾向としては、

・単棟型マンションは20階建て以上のいわゆるタワーマンションと3階建て以下のマンションにおいて賃貸住戸が多い
・平均賃貸率はそれぞれ20.7%、15.8%
・さらに賃貸率2割超であると答えた割合がそれぞれ37.0%、27.8%と高い
・団地規模の大小問わず賃貸率は10%以下が多い傾向(全体平均賃貸率9.4%)

となっています。

タワーマンションは駅直結型や便利なターミナル駅近に建っていることが多いでしょう。

さらに、3階建て以下の比較的小規模のマンションも、小さな敷地で建設可能な駅近隣に建てられていることも多いと考えられます。

そしてこれらのマンションは、その利便性から賃貸率が高まる傾向にあると考えられます。

駅からの距離に対する賃貸の割合は?

前項より、駅近くにあるようなタワーマンションや小規模マンションは賃貸に出される傾向があると紹介しました。

また、具体的に駅からの距離と、マンション内で賃貸になっている戸数の割合の関係がどうなっているのか、確認します。

調査結果を見ると、

・駅から近くなるにつれて賃貸住戸の割合が増える傾向にある
・200m未満の駅近のマンションの賃貸率は15%
・賃貸率2割超と答えた管理組合は、駅の距離が近いと増加傾向にある
・駅から2km以上離れたマンションでも賃貸率2割超と答えた管理組合が10%を超えている

という傾向にあります。

やはり、駅近の場合は自分たちが住まない場合は賃貸に出している傾向が顕著です。

また、前項であった、駅近にありがちなタワーマンションや比較的小規模なマンションは、一定数は賃貸住戸となっていると想定されます。

逆に、団地は駅から比較的遠いところに大規模に構成されている所が多いでしょう。

そのため、賃貸住戸は減るものの全て区分所有者というわけではなく、一定数は賃貸の割合もあると考えられます。

ワンルームやコンパクトマンションが多い管理組合で想定されるおもな課題は?

関東や関西の都市圏を中心に、コンパクトマンションが多くなっていることが確認できました。

また、比較的小規模なマンションにおいては、賃貸に出す傾向も出ています。

データから見ても、ワンルームマンションやコンパクトマンションは住まいにとって欠かせない居住形態です。

一方で、そのようなマンションにおいて管理組合としての課題も想定されるので、確認します。

現役世代で忙しい方が多い

単身やDINKsであれば、現役世代で家族全員業務に従事している多忙な世代であると考えられます。

平日昼間はほぼ在宅しておらず、さらに週末も外出で余暇を過ごしていることが多いでしょう。

そのような方が、週末に管理組合役員に就任するとなると、義務とはいえ一定のハードルも想定されます。

区分所有者が住んでいない場合は連絡にひと手間掛かる

マンションに区分所有者が住んでいれば、ポストに書面を投函することや、掲示板に連絡事項を掲示することにより、容易に管理組合の連絡事項を通達することができます。

また、双方向の連絡も取りやすく、またマンション管理組合に対する帰属意識も高いでしょう。

一方で、自身は外部に住んでいるいわゆる外部所有者の場合は、これらのことが出来ない場合があります。

そのため、連絡が取りづらかったり、管理組合への帰属意識も低くなる可能性があります。

総会の議決権が集まりづらく重要事項が決議できない可能性

特に外部所有者となっている場合は、総会の通知までに時間が掛かる可能性があります。

さらに、管理組合への帰属意識が低い場合は、議決権の行使を行わないことも想定されます。

そのような場合は、区分所有者数ならびに議決権の4分の3以上を必要とする特別決議事項について、なかなか議決権や委任状が回収されず、重要な議案であっても決議されない可能性もあるかもしれません。

役員のなり手が見つかりづらい

外部所有者が多い場合は、次にどの方に役員をやってもらおうかということも常に考える必要があります。

既存の役員の方も、色々と試行錯誤しなければならず、理事会としても手間がかかることとなります。

また、単身世帯が多い場合は、その方々に頼る可能性が高くなってしまいます。

そのため、一定の負担が強いられる可能性もあります。

住んでいる区分所有者に役員の順番が早く回ってくる

仮に、管理規約や細則に

外部所有者は役員対象者から除外する

さらには、

75歳以上(もしくは80歳以上)の高齢者は役員対象者から除外する

などの定めがある場合はどうでしょうか。

外部所有者が多く、さらには高齢者が多い場合は、一部の区分所有者に役員就任のしわ寄せがくることとなります。

ついこの前役員をやったと思ったら、また順番が回ってきた…

といったような事態も考えられます。

ワンルームやコンパクトマンションにおける課題に対する対応策は?

ワンルームマンションやコンパクトマンションにおいて考えられる課題を挙げてみました。

それらに対する対応策として、管理組合としてどのような対応が必要なのか、最後に紹介します。

外部所有者も役員就任を可とする規約や細則の変更

もし、役員の就任要件として、

現に居住する組合員でなければならない

という文言が入っている場合はこれを修正することも考えられます。

外部所有者の就任も可能として、理事会に参加してもらうパターンです。

また、参加してもらう工夫としては、

・音声やWEB会議システム等、オンラインでの出席も可能とする
・議案を予め送っておき、欠席の場合は賛否を前もって伝えてもらう

など、理事会への参加を促すこともできます。

ちなみに、WEB会議システム等オンラインでの理事会や総会の開催は、規約の変更を伴わないという国土交通省の見解もあります。

もちろん、理事会や総会のルールとして、区分所有者にとって分かりやすいよう、オンライン開催も可能である旨、規約を変更することが望まれます。

外部専門家の役員就任の検討

国土交通省や各自治体としても、マンション管理士等の外部専門家の有効活用により、管理組合運営を適正化していくことを求めています。

一方で、外部専門家の活用は、管理組合としても一定の費用負担を強いられることから、費用対効果を含めて検討する必要があります。

また、管理規約において、役員に外部専門家の就任が可能とする必要があり、さらには採用の際には総会での決議が必要となります。

将来的な外部専門家を採用するにあたって、まずは顧問として採用して実績を見る等、段階を踏んで考えることも有効でしょう。

外部所有者からの協力金徴収の検討

もし、マンションの管理規約に、

役員は現に居住する組合員でなければならない

というような文言が入っているままであれば、居住していない外部所有者は就任できません。

そのため、役員を免れる外部所有者から協力金として一定の金額を徴収することも考えられます。

ただ、こちらも管理規約や細則の変更を伴うことから、外部所有者も役員就任を可とするのか、それとも合わせて検討するのが良いでしょう。

第三者管理者方式導入の検討

外部専門家を役員として迎え入れることも、広義の第三者管理者方式と考えられます。

また、どうしても役員のなり手がいない場合は、第三者管理者方式を取り入れることも考えられます。

一般的に言われている第三者管理者方式の形態としては、理事会を開催せず、総会のみを開催する形で、外部管理者総会監督型という形態です。

それは、総会のために監事に区分所有者が就任し、管理組合の理事長的立場となっている外部の第三者である管理者をチェックしていくとともに、総会で全区分所有者が監視するものです。

ただし、第三者管理者方式の中でも、管理会社が第三者管理者となる、いわゆる管理業者管理者方式については、管理組合としても採用に注意が必要です。

具体的には、以下

に細かく紹介していますが、管理会社による利益相反行為が懸念される所です。

管理組合として、区分所有者の労力の負担減のために管理業者管理方式を採用したにも関わらず、金銭的な負担増を強いられる可能性がないよう、注意すべきでしょう。

ワンルームやコンパクトマンションが多い管理組合は運営上の工夫も必要となる

マンションの高経年化や高齢化、さらに区分所有者の価値観の多様化、マンションの構造の高度化などにより、マンション管理が複雑化してきています。

そのため、どの管理組合においても、管理組合運営で工夫が必要です。

築年数が経過している高経年マンションにおいては、高齢の区分所有者が多く、なり手不足や管理費等の滞納もあるかもしれません。

また、比較的新しいマンションにおいては、分譲時の修繕積立金が非常に低く、値上げを余儀なくされ、区分所有者は想定外の支出を強いられているかもしれません。

そして、大規模なタワーマンションでは管理費や修繕積立金の高騰、さらには団地ではバリアフリー化による修繕費用の高騰など、それぞれ特徴的な課題があります。

さらに、戸数が少ない小規模マンションにおいても、管理会社からの管理費値上げ要請等、それなりに課題があるでしょう。

今回紹介したワンルームやコンパクトマンションが多い管理組合においても、区分所有者の特性から、独自の課題が発生します。

管理組合としては、常に課題を確認しながら改善していくことによって、最適管理ができている状態にしておくことが重要です。

これによって、資産価値の維持、向上とともに、新たな世代の入居という新陳代謝の促進にもつながることになるでしょう。

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