管理組合では、たくさんの書類が出てくるけど、どのように保管すればよいのだろうか?
また、
帳票類等、管理組合に関わる書類の作成方法は?
さらには、
書類が多くなってきているけど、保管場所はどうすればよいのか?
このような疑問を持っている管理組合も多いと思います。
これらについても、標準管理規約ではルールが定められています。
もちろん、管理組合としての重要な書類であれば、証拠書類として適切に保管することが求められます。
今回はこのような帳票類をはじめとした書類の作成や保管についてのルールを、標準管理規約(単棟型)第64条から確認していきます。
※第64条の2として「組合員名簿等の作成、保管」という条項もありますが、またの機会に紹介します。
【規約解説】管理組合における帳票類の作成、保管のルールとは?
今回紹介する内容は、以下の通りです。
・第64条の補足・注意事項は?
・想定される帳票類の作成や保管の事例は?
まずはじめに、標準管理規約第64条にある「帳票類等の作成、保管」のルールについて確認してみます。
こちらには、紙での保管と、電磁的方法が利用可能な場合についての双方の解釈が考えられます。
最近では、電磁的方法によって保管されている管理組合も多いことから、こちらについても紹介します。
次に、第64条における補足事項や注意点について、標準管理規約では細かく指摘しています。
具体的にどのような点に注意する必要があるのか、紹介します。
そして最後に、想定される帳票類の作成や保管の事例について、管理組合が実施している方法に当てはめて紹介します。
標準管理規約第64条の解説
初めに、標準管理規約第64条の解説から入ります。
電磁的方法が利用可能ではない場合の条文は?
2 理事長は、第32条第三号の長期修繕計画書、同条第五号の設計図書及び同条第六号の修繕等の履歴情報を保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による請求があったときは、これらを閲覧させなければならない。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。
3 理事長は、第49条第3項(第53条第4項において準用される場合を含む。) 、第49 条の2 ( 第53 条第5項において準用される場合を含む。)、本条第1項及び第2項並びに第72条第2項及び第4項の規定により閲覧の対象とされる管理組合の財務・管理に関する情報については、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による請求に基づき、当該請求をした者が求める情報を記入した書面を交付することができる。この場合において、理事長は、交付の相手方にその費用を負担させることができる。
電磁的方法が利用可能な場合の条文は?
続いて、電磁的方法が利用可能な場合のパターンです。
電磁的方法が利用可能でない条文において、
・書面を交付→書面を交付し、又は当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる
という形で言い換えられています。
その他、第4項を設け、
と追加があります。
第49条第5項は「議事録の作成、保管等」の条項であり、電磁的方法(PDF書類等)によって提供することができる旨、定めています。
第64条の補足・注意事項は?
標準管理規約64条に対しては、細かな補足や注意事項が指摘されています。
具体的にどのような点に注意すればよいのかを含めて、確認してみましょう。
条文に出てくる利害関係人とは?
ここで指している利害関係人とは、
・差押え債権者
・賃借人
・組合員からの媒介の依頼を受けた宅地建物取引業者等
を指し、法律上の利害関係がある者を言っています。
単に事実上利益や不利益を受けたりする者、親族関係にあるだけの者等は対象とはならない点に注意が必要です。
作成、保管すべき帳票類は?
第64条第1項に規定するもの以外に、
・請求書
・管理委託契約書
・修繕工事請負契約書
・駐車場使用契約書
・保険証券
などが想定されます。
また、第64条の各項には「理事長は」と記載があり、保管及び閲覧に関する理事長の業務権限を明確化したものとなっています。
したがって、適切に保管されなかった等で帳票や書類を再作成することとなった場合は、その費用負担を負う責任も出てきます。
管理組合の財務・管理に関する情報の取り扱い
不動産会社や購入予定者等に対して、管理組合の財務・管理に関する情報が外部に開示されることによって、優良なマンションであれば市場評価が高まることが期待されます。
こちらの条項は管理計画認定制度における審査項目にも入っていることから、管理組合の情報を開示していくことは国や自治体としても重要視していると考えられます。
一方で、開示には防犯上の懸念等もあるため、管理組合の事情を踏まえて検討する必要がありそうです。
想定される帳票類の作成や保管の事例は?
次に、これら条文に従った、管理組合としての作成や保管の事例を紹介します。
区分所有者が書類を確認したい場合
まず考えられるのが、区分所有者が管理組合の収支状況や書類について確認したい場合です。
・室内リフォームするので図面を確認したいと施工会社から言われた
・前回の大規模修繕を実施した際はどのような工事をしたのか確認したい
などが想定されそうですが、これらの場合に書面の閲覧を希望される場合は、閲覧させる必要があります。
不動産会社が書類を確認したいと言ってきた場合
区分所有者が自宅の売却を想定している場合には、買い手を探す必要があります。
買い手は、売却物件がどのような環境にあるのか、当然確認するでしょう。
そのため、売買を仲介する利害関係人である不動産会社が
・管理費や修繕積立金の金額
・長期修繕計画の確認
・大規模修繕の実施状況や今後の予定
・ペットや楽器の使用制限
・駐車場の空き状況
などを確認したいケースも考えられます。
したがって、これらの資料を閲覧させて欲しいという依頼が考えられますので、管理組合としては閲覧の機会を設ける必要が考えられます。
閲覧することはできるので、所定の時間に管理員室に来て欲しい
特に資料が膨大であり、複数のバインダーにファイリングされている場合は、実際に閲覧しに来てもらって、必要な書類を確認して貰う必要があります。
例えば、管理員さんが勤務している時間帯に来てもらえれば、管理員室に保管されているファイルを貸し出すなどの対応が可能です。
とりわけ、竣工図面は複数に渡る上、サイズが大きなものもあるため、実際に見て貰った方が良い場合もあります。
理由があれば交付も可能
64条第3項には、
な旨、記載があります。
そのため、コピーをして渡しても良いこととなります。
また、電磁的方法なら、PDFや画像等の書類を送付することも可能となります。
さらに、コピー代や電磁的方法による作業費用が掛かる場合であれば、その費用負担も請求可能です。
管理組合の書類が適切に作成・保管し、情報開示していく必要性
今回は帳票類等の作成、保管のルールを確認しました。
帳票類等の書類の作成、保管だけではなく、マンションが適正に管理されているという観点から、利害関係者への情報開示の必要性も出てきています。
また、国や自治体の管理計画認定制度でも当該条項が審査対象となっていることから、管理組合にとってもこれらの方向性がますます求められてきていると言っていいでしょう。
※標準管理規約は都度変更になるため、専用書籍はあるものの、法改正により古くなってしまいます。そのため、マンション管理センターのこちらの書籍の最新版
を確認されることをお勧めします。
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