マンションの総会は、管理組合の運営にとって非常に重要な場です。しかし、「総会に誰が出席できるのか?」について、正しく理解している方は意外と少ないかもしれません。
マンション標準管理規約第45条では、総会の出席資格について定められていますが、実際の運用では「賃貸入居者は出席できるの?」「管理会社の担当者は発言できる?」といった疑問が生じることがあります。
本記事では、第45条の条文を紹介するとともに、国土交通省の補足説明や実際の運用例について解説し、管理組合や区分所有者が注意すべきポイントを、実務に精通しているマンション管理士が分かりやすく説明します。
【規約解説】マンション標準管理規約第45条とは?総会の出席資格とルールを解説
今回紹介する内容は、以下の通りです。
✅マンション標準管理規約第45条のポイント
✅国土交通省の見解|マンション標準管理規約第45条の補足説明
✅「出席資格」に関する管理組合・区分所有者の注意点
まず、最初の章では標準管理規約第45条の条文から「出席資格」についてそのままの文面を紹介します。
続いて、この条文についての補足事項や、注意しておくべき事項について国土交通省より提示されています。
さらに、その文面の解説を、イメージしやすい具体的な例を踏まえながら紹介します。
そして、最後の章では第45条「出席資格」の条文や補足事項を踏まえて、管理組合や区分所有者が注意しておいた方が良い点を、マンション管理士である筆者独自の視点から具体的に紹介します。
それでは、次章より当該条文について紹介します。
マンション標準管理規約第45条とは?総会の出席資格と発言ルールを解説
マンションの管理組合において、総会は最も重要な意思決定の場です。では、誰が総会に出席できるのでしょうか?マンション標準管理規約第45条では、総会への出席資格について定めています。
以下、条文となります。
(出席資格)
第45条 組合員のほか、理事会が必要と認めた者は、総会に出席することができる。
2 区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は、会議の目的につき利害関係を有する場合には、総会に出席して意見を述べることができる。この場合において、総会に出席して意見を述べようとする者は、あらかじめ理事長にその旨を通知しなければならない。
第45条について、具体的に解説していきます。
総会に出席できる基本的な条件(第1項)
「組合員(区分所有者)」が基本的な出席者です。
つまり、マンションの所有者(区分所有者)は当然ながら総会に出席できます。さらに、理事会が必要と認めた者も出席可能です。
理事会が必要と認めた者については、次章で国土交通省が事例を挙げているため、そちらで細かく説明します。
賃貸入居者の発言権はどう決まる?(第2項)
区分所有者が承諾した場合、専有部分を占有する者(賃貸入居者など)も、利害関係がある議題について意見を述べることができます。
例えば、どんなケースがある?
- 駐車場の利用ルール変更 → 賃貸入居者が駐車場を借りている場合、影響を受けるため意見を述べる権利がある
- ペット飼育ルールの変更 → 賃貸入居者がペットを飼っている場合、影響がある
ただし、意見を述べるには事前に理事長へ通知が必要です。突然総会で発言を求めても認められない可能性があります。
総会での「発言」と「議決権」は何が違うのか?
ちなみに、「発言」(意見を述べる)と「議決権」の違いはどこにあるのかをまとめたのが下の表です。
参加者 | 出席 | 意見を述べる | 議決権 (投票) |
区分所有者(組合員) | ○ | ○ | ○ |
理事会が認めた者(管理会社・専門家など) | ○ | ○ | × |
区分所有者が承諾した専有部分占有者 (賃貸入居者など) |
○ | ○ (利害関係がある場合) |
× |
議決権があるのは、区分所有者のみです。
その他の参加者は、出席して意見を述べることができるメンバーとなります。
理事会が出席を認めるケースとは?国土交通省の補足説明
次に、当該条文において国土交通省は1点補足説明を行っています。
その点を具体的に見ていくとともに、筆者の解説も加えたいと思います。
第45条関係
理事会が必要と認める者の例としては、マンション管理業者、管理員、マンション管理士等がある。
マンション標準管理規約第45条では、「理事会が必要と認めた者」が総会に出席できると定められています。これについて、国土交通省は具体例として以下のような人々を挙げています。
管理会社の担当者は総会に出席できる?
管理組合が業務委託している管理会社の担当者が、総会で理事長の支援や管理状況を説明するために出席することはどの管理組合でもあるでしょう。
✅ 例えばこんなケース
- 1年間の管理事務報告や予算案の補足説明
- 各議案の補足説明
- 管理委託契約締結時の補足説明
管理会社は、日常的な管理業務を担う立場として、総会での報告や説明が求められるため、出席することが一般的です。
管理員(管理人)は総会に参加できるのか?
管理員(管理人)はマンション内の清掃や設備点検を担当することが多いため、日常の管理状況について総会に出席して説明を求めることがあります。
✅ 例えばこんなケース
- 「共用部の清掃状況について住民から苦情がある」 → 管理員が現場の実情を説明
- 「ゴミ捨てルールを守らない住民が多い」 → 管理員がトラブルの現状を報告
管理員は現場の状況をよく知っているため、住民の意見を整理して総会で伝える役割も期待されます。
マンション管理士・専門家は総会で何ができる?
マンション管理士や弁護士、建築士等の外部専門家は、管理組合の運営をサポートする専門家です。特に管理規約の見直しやトラブル対応などの場面で、顧問としての助言を求めるために総会へ出席することがあります。
✅ 例えばこんなケース
- 「管理規約改正議案についての補足説明」 → マンション管理士が専門家の立場として説明
- 「総会議案全般の補足説明」 → 専門的かつ中立的な立場で助言し、解決策を提案
- 「大規模修繕工事に関する工事内容の説明」 → 理事に代わって工事内容の詳細を総会で説明
マンション管理士等の外部専門家は総会における議決権は当然持ちませんが、組合運営をスムーズに進めるために重要な役割を果たします。
管理組合・区分所有者が押さえておくべき総会出席のポイント
最後の章では、第45条の条文ならびに、国土交通省の補足説明に加えて、筆者がマンション管理士としての活動の中で感じた、管理組合や区分所有者に対して注意すべき点について紹介します。
賃貸住戸の住人(賃借人)にも総会の開催を周知すべき理由
総会に出席できるのは原則として区分所有者ですが、第45条第2項では「利害関係を有する賃借人」に限り、意見を述べることが認められています。
しかし、区分所有者ではなく管理規約等にあまり触れていない賃借人自身がこのルールを知らないことも多いため、適切な周知が重要です。
周知の方法
- エントランスや掲示板に案内を掲示する(総会の日程・議題・出席資格について記載)
- 理事会や管理会社が該当する賃借人に直接通知する(例:ペット飼育ルール改定時は、飼育届を出している住戸に通知)
総会当日になって「知らなかった」「意見を言いたかった」という声が出ないよう、事前の告知を徹底しましょう。
利害関係がある賃借人は総会出席前に「書面提出」がベターな理由
第45条では、利害関係を有する賃借人は、総会で意見を述べることができるとされていますが、その際には事前に理事長に通知する必要があります。
なぜ書面提出が望ましいのか?
- 口頭の申し出だけでは、当日の混乱を招く恐れがある(理事長や議長が把握できていないと、発言を認めるか判断しにくい)
- 議題に直接関係のない賃借人が出席を希望するケースを防げる(「利害関係」の範囲を適切に判断するため)
- 誰が出席・発言するのか記録を残せる(総会後のトラブル防止)
理事会側としては、総会の1週間前までに「出席希望者は書面で申請する」などのルールを設けておくと、スムーズな運営が可能になります。
総会に参加する管理会社・専門家・賃借人の「守秘義務」に注意!
総会には管理会社、マンション管理士、場合によっては専門業者が出席することがあります。これらの出席者が管理組合の内部情報を外部に漏らさないようにすることが重要です。
秘密保持が必要な理由
- 管理組合の財務状況、住民のトラブル、修繕計画などの情報が含まれるため
- 外部業者が競合他社へ情報を流すリスクがある
- 賃借人が、他の住民の個人情報を知ることがないようにする
実施すべき対策
- 管理会社・マンション管理士は契約上守秘義務を負っているため、総会でもその意識を徹底してもらう
- 外部の出席者に対して、議案に直接関係する範囲での発言にとどめてもらうよう事前に伝える
総会は管理組合の意思決定の場であり、情報管理を徹底することで、円滑な運営と住民の信頼を確保できます。
総会の出席資格を整理し、管理組合運営をスムーズに!
本記事では、マンション標準管理規約第45条の条文とその解説、国土交通省の補足説明、そして実際の運用上の注意点について解説しました。
総会は管理組合の意思決定において重要な場ですが、誰が出席できるのか、どこまで発言が許されるのかを正しく理解することが大切です。
特に、賃貸入居者の発言権や、管理会社・専門家の出席ルールについては、管理組合として適切なルール設定が求められます。
管理組合の運営を円滑にするためにも、第45条の内容を正しく理解し、必要に応じて総会の運営ルールを明確に定めることをおすすめします。
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