マンションの駐車場やルーフバルコニーなどの共用部分を利用する際に支払う「使用料」。その使い道は適切に管理されていますか?
マンション標準管理規約第29条では、使用料は管理費と修繕積立金に充てることが定められています。特に駐車場収入は管理組合にとって重要な財源となるため、適正な運用が求められます。
本記事では、
✅国土交通省の補足説明とその意図
✅使用料の適切な管理と金額設定のポイント
について詳しく解説します。
マンション管理の健全化を目指す管理組合の皆様にとって、マンション管理士が役立つ情報をお届けします。
マンション標準管理規約第29条とは?
マンション管理組合における使用料について定めたのが、マンション標準管理規約第29条です。
以下がその条文となります。
第29条 駐車場使用料その他の敷地及び共用部分等に係る使用料(以下「使用料」という。)は、それらの管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てる。
マンション標準管理規約第29条の条文と基本ルール
マンションには、駐車場やルーフバルコニーなどの共用部分があります。これらを利用する際に支払う料金を「使用料」といいます。
マンション標準管理規約第29条では、この使用料の使い道について定めています。具体的には、以下の2つの用途があります。
- 管理費の補填
使用料の一部は、駐車場や共用施設の維持管理に必要な費用に充てられます。例えば、駐車場の清掃費や設備の点検費などです。 - 修繕積立金への積み立て
また、マンションの将来的な修繕のために「修繕積立金」として貯めておくことも考えられます。これにより、将来の大規模修繕や機械式駐車場の修繕などに使われます。
使用料の適切な管理が重要な理由
使用料は、管理組合の財源の一部となり、適切に運用することでマンションの資産価値を維持できます。特に修繕積立金の不足は、将来的な大幅な値上げや大規模修繕工事の際に一時金徴収のリスクを高めるため、計画的な管理が必要です。
国土交通省の見解と補足説明
次に、第29条において、国土交通省は次の点について補足しています。
筆者の解説も交えながら紹介します。
機械式駐車場を有する場合は、その維持及び修繕に多額の費用を要することから、管理費及び修繕積立金とは区分して経理することもできる。
機械式駐車場の修繕費は別会計にすべき?
マンションの駐車場には、平置き駐車場と機械式駐車場の2種類があります。特に機械式駐車場は、エレベーターや回転装置などの機械設備があるため、維持管理や修繕に高額な費用がかかります。
国土交通省の補足では、こうした機械式駐車場の維持・修繕費用を、通常の管理費や修繕積立金とは別会計にすることも可能としています。
機械式駐車場の別会計が必要な理由
別会計が検討される理由としては、おもに以下の3点が考えられます。
- 費用負担の公平性
機械式駐車場を利用していない住民もいるため、その修繕費を全員で負担するのは公平でないと考えられるケースがあります。別会計にすることで、実際に利用する人が負担できる仕組みが作れます。 - 修繕計画の明確化
機械式駐車場は定期的な点検・部品交換が必要で、修繕サイクルが他の共用部分と異なることが多いです。そのため、大規模修繕工事とも別で実施することができます。また、別会計にすると、駐車場専用の修繕積立金を確保でき、計画的なメンテナンスが可能になります。 - 管理組合の財政健全化
駐車場の修繕費が一般の修繕積立金と混ざってしまうと、他の共用部分の修繕費に影響を与える可能性があります。別会計にすることで、財務状況を透明化し、共用部分と機械式駐車場各々における適切な資金管理ができます。
管理組合・区分所有者が注意すべき使用料のポイント
最後の章では、第29条条文ならびに、国土交通省の補足を踏まえて、筆者独自の視点から管理組合や区分所有者にとって注意すべき事項を紹介します。
使用料の金額は適正?適切な設定方法とは
管理組合として使用料が適切な金額に設定されているかを考える必要があります。
また、マンション標準管理規約第15条の国土交通省における補足コメントには、駐車場の場合ですが、
とあり、設定額は高すぎず、安すぎず設定することが重要とされています。
修繕積立金への振り替えはどのように判断する?
駐車場使用料をはじめとした使用料は管理費収入として計上されることが一般的です。
一方で、駐車場のメンテナンスは、エレベーター同様に日々のメンテナンス(経常的な補修費)と、大規模修繕の時に行う大掛かりなメンテナンス(一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕)双方が考えられます。
また、大掛かりなメンテナンスは、管理費ではなく修繕積立金が充当されることとなります。
そのため、当該条文のとおり駐車場使用料収入を修繕積立金会計に振り替える必要があります。
振り替える金額としては、「管理費に余剰があった場合」とすることが一般的です。
しかしながら、機械式駐車場がある場合は、一般的に管理費に対する余剰が発生することが多いでしょう。
一定額は将来の機械式駐車場のために、計画的に積み立てていくことが求められます。
使用料の見直しは必要?適正な増減の考え方
最初の項目で、駐車場については
✅近傍の同種の駐車場料金と均衡を失しないよう設定すること
として国土交通省からのコメントがありました。
駐車場に限らずですが、駐輪場や専用使用権があるバルコニーや専用庭についても、メンテナンス費用などの維持費を加味しながら考えていく必要があります。
多くは一度設定された金額でそのまま長期に渡って変更がないことが考えられます。
そして、管理組合としては安すぎない利用料を加味するとともに、物価上昇も踏まえながら見直しすることも一つでしょう。
機械式駐車場の区分会計はどう進めるべき?
これまで管理費と修繕積立金で管理してきたものを、新たに機械式駐車場を切り出して区分経理し始めることについては、比較的難易度も伴います。
論点としては、
✅管理費収入の機械式駐車場収入の減少
✅管理費から振り替え後の修繕積立金からの減少
✅機械式駐車場使用者からの使用料収入のみで工事費用が賄えるか
などが想定されそうです。
また、
✅機械式駐車場の長期修繕計画や修繕積立金計画の作成
✅これらの総会決議(管理規約の変更を伴う場合は特別決議が必要)
✅会計区分が1つ増えることから、経理処理の手間が増える
なども検討材料となるでしょう。
管理費と修繕積立金、使用料の適切な振り分けが重要
今回は、マンション標準管理規約第29条「使用料」の条文とともに、国土交通省による補足コメント、さらにはそれらを受けて筆者独自の視点から注意点を紹介しました。
とりわけ、駐車場収入は金額が大きいことから、管理組合にとって重要な収入源となります。
そして、第29条は、
✅機械式駐車場のみで新たに区分会計を行う場合は管理組合で課題等議論する
✅使用料は公平性や物価等も加味する
ことも重要と考えられます。
改めて、管理組合内での検討材料にして頂ければ幸いです。
コメント