マンションの損害保険は、共用部分の修繕や災害対応に欠かせない重要な仕組みです。しかし、「管理組合が勝手に保険を契約できるのか?」「理事長が代理で保険金を受け取るのはなぜ?」といった疑問を持つ管理組合役員の方も多いでしょう。
この記事では、マンション標準管理規約第24条をもとに、管理組合の損害保険契約の仕組みや注意点を現役のマンション管理士が分かりやすく解説します。
【規約解説】マンションの損害保険の仕組みとは?標準管理規約第24条を管理組合向けに分かりやすく解説
まずはじめに、第24条「損害保険」の条文を紹介します。
第24条は2項からなる比較的シンプルな条文です。
第24条 区分所有者は、共用部分等に関し、管理組合が火災保険、地震保険その他の損害保険の契約を締結することを承認する。
2 理事長は、前項の契約に基づく保険金額の請求及び受領について、区分所有者を代理する。
以下、条文について解説します。
第1項の解説:管理組合の損害保険契約と区分所有者の承認とは?
マンションの共用部分(エントランス・廊下・外壁・屋根など)は、個人ではなく管理組合が一括して管理します。
そのため、共用部分が火災や地震などで被害を受けたときに備えて、管理組合が損害保険を契約するのが一般的です。
この第1項では、区分所有者(各住戸のオーナー)は、管理組合が損害保険を契約することを承認すると明記されています。
区分所有者の承認が必要な理由とその重要性
管理組合が勝手に保険を契約すると「費用負担の合意がない」といったトラブルが起こる可能性があります。そのため、区分所有者が管理組合による契約を認めることがルール化されています。
ちなみに、保険契約の承認については、総会で契約締結について決議することもあります。
また、管理組合が契約する保険は「共用部分」が対象なので、各住戸(専有部分)の保険は、各区分所有者が個別に加入する必要があります。
そして、保険の契約については、第32条「業務」の中で、管理組合として実施すべき業務として挙げられています。
第2項の解説:理事長が保険金を請求・受領する理由とは?
マンションで災害や事故が発生し、損害保険を使う必要がある場合、誰が保険金を請求・受領するのか?という問題が発生します。
ここで理事長が管理組合を代表して保険金を請求・受領できると定めているのが第2項です。
理事長が代理する理由
マンションの保険金は、基本的に共用部分の修繕や復旧のために使われるものです。もし保険金の請求を区分所有者それぞれが行うと、以下のような問題が発生する可能性があります。
🚫 手続きがバラバラになり、スムーズに対応できない
🚫 保険金の用途が不明確になり、トラブルの原因になる
🚫 一部の所有者だけが保険金を受け取るなど、不公平が生じる
このため、理事長が区分所有者全員の代理人として、まとめて保険金を請求・受領する役割を担うことが決められています。
損害保険契約のポイント!管理組合が注意すべき点とは?
次に、上記以外または上記に関連する筆者独自の視点から、管理組合や区分所有者が知っておくべき損害保険の注意点を紹介します。
総会決議は必要?損害保険契約の承認ルール
以下のリンク先に詳細を紹介していますが、損害保険を含めた、管理組合の保険契約は必ずしも総会決議事項となっている訳ではありません。
しかしながら、世間的にも保険料の値上がりもしており、とりわけ共有部分の損害保険料は高くなっています。
そのため、管理費の一定の負担が見込まれることから、総会決議事項にある「十七 その他管理組合の業務に関する重要事項」に照らして承認することも考えられます。
1年契約?5年契約?損害保険の契約期間と費用の違い
共用部分の損害保険における契約は一般的には5年となっています。
かつては10年契約も可能でしたが、今は5年ごとに見直す必要が出ています。
また、損害保険料は単年度で支払う場合と、5年などの複数年で支払う場合ではその金額が変わってきます。
まとめて複数年契約する方が同じ5年間で見ても一般的には割安となるパターンが多いでしょう。
対して、5年分まとめて損害保険料の支出を行う必要があることから、管理費の支出額が大きくなってしまいます。
そのため、一定の管理費の積立額が無いと難しいともいえます。
従って、単年度にするか、複数年にするかは、管理組合の収支をよく確認して検討する必要があります。
修繕積立金で損害保険料を支払えない理由とは?
最新版の標準管理規約に準拠している場合や、そうでなくても標準管理規約改正時にチェックしている場合はほぼないとは考えられますが、筆者の経験上まれに管理組合において保険料の支払いが修繕積立金からの拠出ができるようになっている場合もあります。
修繕積立金では、マンションの修繕のためや建替え等特別な支出のために充当されるものであることから、損害保険料に充当することはできません。
したがって、前述の通り、管理費から充当することとなります。
しかしながら、昨今の損害保険料の高騰もあり、管理費からの充当が難しいという管理組合も多いかもしれません。
そうであっても、修繕積立金からの充当は避けなければなりません。
現在の標準管理規約は、修繕積立金の使い道が厳しく制約されており、また管理費への充当はできないこととなっています。
そのため、損害保険料支払いのために一定の管理費負担が発生することを予め想定しておくことが重要です。
損害保険の支払いルールを正しく理解しよう!
今回は標準管理規約第24条「損害保険」の条文とともに、筆者が管理組合や区分所有者において注意しておいた方が良い点を紹介しました。
損害保険料については
✅理事長が区分所有者の代理として対応する
✅損害保険料が大きくても修繕積立金ではなく必ず管理費から拠出する
ことが重要であることを、改めてご確認頂ければ幸いです。
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