管理規約以外に使用細則もあるけど、どういったことを定めるのか確認したい…
また、
新たにペット使用細則を作成する際にはどのようなルールが必要なのか知りたい…
さらには、
置き配に関するルールも考えたいけど、使用細則で定めた方がよさそうだろうか…?
このような使用細則に関する疑問も、管理組合や区分所有者にとって非常に多いと思います。
使用細則は、管理規約に収まり切らない事柄に対して、細かく定めているルールといえます。
今回はこのような使用細則について、国土交通省の標準管理規約第18条から条文ならびに、補足・注意事項を抽出して解説します。
【規約解説】ペット飼育、置き配…使用細則の策定ルールについて確認
今回紹介する内容は、以下の通りです。
・第18条「使用細則」の補足・注意事項は?
・「使用細則」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?
まずはじめに、標準管理規約第18条「使用細則」の条文について、紹介します。
1文のみで非常に短い内容となっています。
次に、「使用細則」には、規約を解釈するうえでの補足事項や注意事項が細かく紹介されています。
条文は短いですが、こちらは詳細がありますので、それぞれ紹介させて頂きます。
そして最後の章では、使用細則において管理組合や区分所有者が確認しておきたい事項を、筆者のマンション管理士活動の経験上も踏まえて、追加で紹介いたします。
標準管理規約第18条「使用細則」の紹介
この第18条については、以下の1文のみです。
第18条 対象物件の使用については、別に使用細則を定めるものとする。
すなわち、マンションの使用については、別途使用細則に細かく定めることにするので、そちらを見てくださいということになっています。
よって、使用細則の定め方が重要になってくると捉えることができます。
第18条「使用細則」の補足・注意事項は?
マンション施設の使用については、管理規約の中に定めずに別途使用細則という形で別建てすることが分かりました。
その場合において、具体的にどのような点に注意すればよいのか、国土交通省が補足をしています。
各内容について確認していきます。
使用細則全般に関する確認事項
まず、使用細則全般に関する確認事項として、どのような使用細則が考えられるのか紹介しています。
具体的には、
・駐車場、倉庫等の使用方法、使用料
・置き配を認める際のルール
・その他、敷地、共用部分の使用方法や対価等に関する事項など
が考えられるということです。
すなわち、管理組合内でルールが必要なものは、使用細則で定めることができると考えられています。
また、専有部分の使用に関するものは、その基本的な事項は規約で定めるべき事項であるとしています。
そして、マンション内における感染症の感染拡大のおそれが高いと認められた場合において、使用細則を根拠として、居住者による共用部分等の使用を一時的に停止・制限することは可能であると考えられています。
具体的には、集会室の大人数での使用や、エレベーターの入場制限等が考えられそうです。
そして、使用細則を定める方法としては、
事項ごとに個別の細則として定める方法
があると紹介しています。
一つの使用細則の中では入り切らないような、具体的な内容はさらに個別の細則として定めることによって、居住者にその使用上のルールを守って貰うよう考えていくことが望まれます。
ペット飼育に関する使用細則の注意点
次に、ペット飼育に関する使用細則においての注意点も指摘しています。
具体的には、
・基本的な事項を規約で定め、手続等の細部の規定を使用細則で定めることも可能
・飼育を認める場合には、動物等の種類及び数等の限定、管理組合への届出又は登録等による飼育動物の把握
・専有部分における飼育方法並びに共用部分の利用方法
・ふん尿の処理等の飼育者の守るべき事項
・飼育に起因する被害等に対する責任
・違反者に対する措置
等の規定を定める必要があるとしています。
また、ペット飼育を禁止する場合、容認する場合の管理規約の例も挙げています。
以下、それぞれ紹介します。
ペット飼育を禁止する場合
以下のような規約条文の例が紹介されています。
第○条 区分所有者及び占有者は、専有部分、共用部分の如何を問わず、犬・猫等の動物を飼育してはならない。ただし、専ら専有部分内で、かつ、かご・水槽等内のみで飼育する小鳥・観賞用魚類(金魚・熱帯魚等)等を、使用細則に定める飼育方法により飼育する場合、及び身体障害者補助犬法に規定する身体障害者補助犬(盲導犬、介助犬及び聴導犬)を使用する場合は、この限りではない。
この場合は、ペットの飼育を禁止する内容であることから、特にペット飼育細則で詳細を決めることもない事となります。
また、ペット禁止であっても、かごや水槽で飼育する小動物なら問題ない例です。
さらに、盲導犬や介助犬についても、飼育ペットから対象外とされています。
ペット飼育を容認する場合
続いて、ペット飼育を容認する規約の条文例です。
第○条 ペット飼育を希望する区分所有者及び占有者は、使用細則及びペット飼育に関する細則を遵守しなければならない。ただし、他の区分所有者又は占有者からの苦情の申し出があり、改善勧告に従わない場合には、理事会は、飼育禁止を含む措置をとることができる。
ペット飼育を容認する場合は、規約に定める以外に、使用細則やペット飼育に関する細則などにルールの詳細を定める必要があります。
また、区分所有者や占有者が、苦情に対して改善がなされない場合は、理事会の決議によってペット禁止を含む措置を取ることができるとしています。
置き配に関する使用細則の注意点
さらに、管理組合では徐々に一般的になりつつある置き配に関する注意点も挙げています。
主な内容としては、
・宅配ボックスが無い場合等、例外的に共用部分への置き配を認める場合、長期間の放置や大量・乱雑な放置等により避難の支障とならないよう留意する必要がある
としています。
置き配についても、宅配ボックスの使用とともに具体的なルールとしての細則が必要になってくると考えられます。
民泊に関する使用細則の注意点
最後に、民泊に関する使用細則の取り決めルールについても記載があります。
細則を作成するということで、民泊を可とする内容です。
第12条において住宅宿泊事業を可能とする場合は、必要に応じ、住宅宿泊事業法第13条に基づき掲げなければならないこととされている標識の掲示場所等の取扱いについて、あらかじめ使用細則において明確化しておくことが望ましい。
としています。
ちなみに、住宅宿泊事業法第13条は
第十三条 住宅宿泊事業者は、届出住宅ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通省令・厚生労働省令で定める様式の標識を掲げなければならない。
という決まりがありますので、その標識を使用細則の定めに従って掲げることとなります。
「使用細則」に対して管理組合や区分所有者が気を付けておくべき事項は?
標準管理規約で説明されている内容について、前章までで紹介しました。
この章では、具体的にマンション管理組合において、使用細則上気を付けておいた方が良い点について、具体的に紹介します。
使用細則の制定や変更は総会の普通決議にて行う
まず、使用細則は作成したあとに、ルールを周知、定着させる必要があります。
理事会役員で使用細則案を作成して、区分所有者や居住者に配布したり掲示するだけでは有効なものとなりません。
使用細則を制定するには、総会の普通決議で可決される必要があります。
また、使用細則を加筆、修正等の手直しする場合においても、制定同様に総会の普通決議での可決が必要となります。
規約でないからということで、独自に定めて周知するというだけでは足らない点に注意が必要です。
新たに細則を制定することによって管理規約の変更を伴う場合もある
前項の細則の制定において、規約で関連性がある条文が新たに入る可能性があります。
そして、細則の制定のみでは足らず、規約にも加筆、修正を伴う可能性があるかもしれません。
または、新たな条文を入れることも場合によっては考えられます。
そのような場合は、管理規約の変更を総会で承認される必要があります。
規約の変更は、管理組合として重要ルールの変更を伴うことから、
というハードルが高い特別決議が必要となります。
この場合は単に細則1つを追加するだけでは収まらずに、多くの区分所有者からの承諾を取り付けて、規約を変更し、細則を制定する場合も考えられるため、注意が必要といえます。
ペット飼育、置き配、民泊と例に挙がっている以外にも様々な細則が考えられる
第18条の使用細則において、国土交通省が例に挙げたのは、使用細則全般に加えて詳細で定める必要があるペット飼育、置き配、民泊について取り上げていました。
これらは最近のトピックス的なものであり、その他管理組合の実情に応じて、使用細則として個別に具体的なルールを定める必要があると考えられます。
具体的には、以下
も参考に、各管理組合において検討いただければと考えています。
マンション内の使用上のルールは専有部分、共用部分ともに必要
今回は、標準管理規約第18条を取り上げ、使用細則について紹介しました。
マンションの使用上のルールは、区分所有者全員の持ち物である共用部分内ではもちろんのこと、共同の利益に影響を与える可能性がある、専有部分内でもルールを守っていくことが求められます。
規約に収まらないものは基本は細則に逃がす形で細かく定めるのが一般的です。
通常の掲示書面や暗黙の了解という形のみではなく、総会決議を通じて細則として定め、区分所有者や占有者とともにルールを共有していくことが求められます。
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