マンション管理士等の外部専門家の活用方法のコツは【忖度なく紹介】

マンション管理

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マンション管理士等の専門家の活用を考えたいが、どのようにすればよいのか?

また、

スキルや安心できるマンション管理士はどのように採用すればよいか?

このような疑問を持つ管理組合も多いと思います。

マンション管理組合において、第三者的な、客観的意見を聞きながら管理組合運営を進めていきたいと考える組合も多いと聞きます。

一方で、

外部専門家に対する費用はどれぐらいかかるのか?

さらには、

外部専門家の役員起用を考えているが、うまくいくだろうか…

このような疑問も出てきます。

今回は、これらの疑問を含めて、実際に外部専門家のマンション管理士として業務に携わっている筆者が、マンション管理組合が持つ疑問点等について具体的に紹介します。

また、筆者が資格保有しているマンション管理士についても、客観的な視点から忖度なく説明します。

マンション管理士等の外部専門家の活用方法のコツは【忖度なく紹介】

今回紹介する内容は以下の通りです。

・マンション管理における外部専門家とは?
・管理組合における外部専門家の適切な選択方法は?
・外部専門家を活用するメリット
・外部専門家を活用する際の注意点
・マンション管理士は外部専門家としてどうか?

マンション管理組合において、具体的に外部専門家を活用するといってもどのような専門家を採用すればよいか、わからない点も多いでしょう。

一方で、外部専門家にもそれぞれ得意分野があり、管理組合にマッチするかどうかは具体的に組合内で比較検討していく必要があります。

具体的には、会計に詳しい税理士を外部専門家として採用しても、日々のマンション管理について詳しいかどうかはわからない点もあります。

また、マンション管理士だからと言って、マンション管理のあらゆる分野に詳しいという訳ではなく、一定の分野に専門性を持っている方も比較的多いといえるでしょう。

このように、マンション管理組合において、どのような弱みを外部専門家を活用することで克服する必要があるのか、検討する必要があります。

国土交通省 マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン(案)では?

2024年8月時点で、国土交通省では「外部専門家等の活用のあり方に関するワーキンググループ」を設置して、外部専門家に関する議論を行っているようです。

その中の資料で、第5回(開催:令和6年3月26日)において、「資料1 マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン(案)」が公表されています。

ガイドラインが示す方向性

ガイドラインでは外部専門家ではなく、「外部管理者方式等」となっていますが、ガイドライン3ページのイエローマーカーの箇所を見ると、以下のような方を想定していることから「外部管理者」を主眼におきつつも「等」という用語を付けています。

・管理組合の担い手不足の課題への対処等を理由として外部専門家等の活用を検討している管理組合の方
・外部管理者方式の採用が見込まれる新築マンションの購入を検討している方
・外部専門家や管理業者、分譲業者など、外部管理者方式のマンションに関わる様々な方

このように、外部管理者方式を重点的に記載していますが、外部専門家も含まれているということになっています。

また、現在はまだ最終的には固まった資料ではないですが、国土交通省として方向性としては定まっているものと考えられます。

したがって、この資料も参考にしながら、各章で外部専門家について、具体的に解説していきます。

マンション管理における外部専門家とは?

まずはじめに、マンション管理組合における、外部専門家とはどのような専門性を持つ人なのか、活用が必要な背景や特徴とともに紹介します。

外部専門家を活用する背景は

前述で紹介した国土交通省のガイドラインでは、次のようにまとめています。

・近年、マンションの高経年化の進行等による管理の困難化やマンションの高層化・大規模化等による管理の高度化・複雑化が進んでいる
・これらの課題への対応の一つとして、外部の専門家の活用が考えられる
・以前から、管理組合がマンション管理士等の専門家に対し、相談、助言、指導その他の援助を求めることについては規定してきた
・さらに進んで、外部の専門家が直接管理組合の運営に携わることも想定する必要がある

ということが背景です。

すなわち、

マンション管理士等の専門家から、相談、助言、指導その他の援助を求めること

相談、助言、指導その他の援助+管理組合運営も担う

という、

「助言や指導だけではなく、実務もこなせる外部専門家の必要性」

を国土交通省としては想定しているようです。

どのような外部専門家が適しているか?

国土交通省のガイドラインによれば、外部専門家に求めるスキルとしては、

(マンション)管理の執行を担うという点から、特に、管理規約、管理の委託、修繕、建替え等に関する広範な知識が必要

と想定しています。

すなわち、

マンション管理組合が直面しているマンション管理における、管理の困難化、高度化、複雑化に対処できる外部専門家

と言えるのかもしれません。

このようなマンション管理における対処が可能なのは、「令和5年度マンション総合調査」における「専門家の活用状況」から、上位専門家を抜粋すると、

・マンション管理士
・建築士
・管理業務主任者
・税理士

の各スキルを持つような方が該当すると想定されます。

一方で、法的な面で課題を持っている場合は

・弁護士
・司法書士

も入ってくると考えられます。

外部専門家の主な特徴とは?

一部記載している点もありますが、各士業専門家の一般的な特徴は次の通りです。

・マンション管理士:マンション管理全般に浅く広く詳しい
・一級建築士:建築設備に詳しい
・弁護士:法律や規約などに詳しい
・司法書士:一般的な法律や登記手続きに詳しい
・税理士:経理や会計、税務に詳しい

それぞれの士業領域は広く、かつ専門性を伴うものであることから、各専門家は得意、不得意分野があるといえます。

そのため、必ずしも上記に合致するかどうかは、専門家次第であるかもしれません。

管理組合における外部専門家の適切な選択方法は?

マンション管理総合調査のアンケート結果でも、マンション管理組合が活用している多数の外部専門家の中で、どのような専門家を選んでいけばよいのか、費用面と採用期間の面から紹介します。

※筆者独自見解であり、各専門家の独自スキルを具体的に加味したものではありません。

費用面での考慮点は?

この切り口で検討した場合は、以下のマトリックスで整理できます。

弁護士や司法書士は、通常の管理組合の法務相談に加え、滞納に対する法的措置等専門性が高い、マンション管理組合独自の、個別具体的な内容が多いことが想定されます。

一方で、マンション管理士や管理業務主任者(管理会社のフロント担当を除くスキル保有者を想定)は、通常のマンション管理に関する相談が多く、その他の専門士業と連携することで対応することも多いでしょう。

そのため、業務内容にもよるものの、弁護士や司法書士ほどコストはかからないものと考えられます。

また、建築士は、マンション設備における修繕や大規模修繕工事における設計監理等において専門性が必要なものの、日々の修繕における一般的な相談もあり、双方当てはまるかもしれません。

税理士は、日々の会計上の課題や税務対応など、建築士同様、双方当てはまることが考えられます。

ちなみに、マンション管理士の採用について、マンション管理組合の規模や業務範囲にもよりますが、筆者の肌感覚では数万円(半ば~後半)/月~が相場のようです。

継続採用かスポット利用かの違い

同様に、外部専門家を採用期間の切り口から考えてみます。

また、令和5年度のマンション総合調査では、

・単発のコンサルティング業務: 65.2%
・顧問契約:22.2%
・管理者・理事長への就任:2.9%

となっていました。

日々のマンション管理に携わる、マンション管理士や管理業務主任者は、継続的にマンション課題に対応する必要があることから、継続性がある管理組合の顧問や役員就任の立ち位置が多いと考えられます。

税理士も同様に、会計上の対応や決算時の対応等、月次や年次対応を行うことが想定されるでしょう。

また、建築士は大規模修繕工事においてスポット的に監理契約を行い、採用することも考えられます。

マンション管理士同様、マンション設備等において、日々の修繕を見ていく顧問としての対応もあるかもしれません。

一方の弁護士や司法書士は、専門家としてのコストが掛かることから、法務相談や訴訟等の個別で依頼し、継続的ではなく、都度のケースが考えられます

外部専門家を活用するメリット

マンション管理組合が具体的に外部専門家の活用を検討する際に、そのメリットはどのようなところにあるのでしょうか?

考えられるメリットについて、具体的に紹介します。

不足するスキル・ノウハウの補完

理事会で今後どう進めていいのか分からないということで進まないこともあるでしょう。

その場合には、外部の専門家は引き出しがたくさんあるので、そこから新たな提案も生まれることも多いです。

また、外部専門家のスキルやノウハウを活用することで、マンション管理組合にも継続的に知見を貯めていくことができます

最新情報の取得が可能に

国や自治体が取り組んでいる情報や、他のマンション管理組合での取り組み情報、さらには修繕における最新事例の入手など、管理組合内部ではなかなか入手できない情報が入手できる可能性があります。

また、士業であれば継続的にスキルアップしていることから、新たな法令や制度、仕組みなども入手することができるでしょう。

その他、外部専門家が得意としている分野以外でも、外部専門家との連携も密にしていることから、それ以外の情報を入手して、マンション管理組合に共有してもらうことも可能かもしれません。

客観的な意見を得る利点

管理組合運営の中で、

マンション管理組合vs管理会社

となった場合には、はたしてどちらが適切な意見なのか、判断がつかない場合もあります。

また、専門性を持つ管理会社からの提案に対して、ノウハウが不足しているマンション管理組合は、提案を飲まざるを得ない可能性もあるかもしれません。

そのようなケースにおいて、外部専門家の客観的な意見が提示されれば、管理会社の提案が適切なものなのか、それとも、他に良い考え方があるのか考える材料にもあります。

特に、外部役員で理事としてマンション管理組合に入る場合は、理事会における議決権も所有することとなります。

そのため、理事会決議において、管理会社に対するけん制機能が期待できます。

外部専門家を活用する際の注意点

国土交通省も活用を推奨する外部専門家ですが、注意点も存在します。

マンション管理組合としてどのような点に注意しておけばよいのか、紹介します。

期待に応えられない場合もある

外部専門家には、それぞれ専門性があり、得意分野とそうでない分野があります。

例えば、マンション管理においては、ハードとソフトと言われることもありますが、ハードと言われる修繕や設備においては、マンション管理士よりも建築士の方が専門性が高いかもしれません。

逆に、ソフトと言われるマンションの管理規約や管理組合運営における課題対応は、建築士よりもマンション管理士の方が秀でているかもしれません。

また、さらに細分化すると、マンション管理士でも、ソフトの一部で管理組合運営や管理会社変更には秀でているものの、規約改定や滞納金対応等、法的な部分については弱い方もいらっしゃいます。

法務が得意な弁護士が、会社法務は得意であっても必ずしもマンション法務に精通しているとは限らないのと同様に、細分化すれば得意、不得意もあることが想定されます。

契約範囲内での対応に限られる

顧問契約や業務委託契約、設計監理契約など、契約の範囲内での業務となります。

例えば、顧問契約であれば、マンション管理に関する課題について幅広く助言をすることになるでしょう。

一方で、大規模修繕工事における設計監理契約であれば、工事内容のチェックや進行管理、工事費用管理など、役割が決まっていることとなります。

そのため、工事以外に関することについては対応できないと考えられます。

コストに対する考慮が必要

外部専門家は、その専門サービスが商品であるため、それなりのコストがかかります。

また、士業のスキルの発揮と責任をもって仕事をすることから、安値で依頼することにも限界があります。

コンサルティングや顧問等の役務提供サービスという業務において、費用を捻出したくないという考え方では、スキルのある士業の採用が難しくなる可能性もあります。

そして、コスト削減を考えている管理組合においては、費用対効果を考えながら対応する必要があるといえるでしょう。

マンション管理士は外部専門家としてどうか?

最後の章では、外部専門家として国土交通省も一番に挙げているマンション管理士はどうなのかという点を、実際にマンション管理士として活動している筆者の視点から紹介します。

新しい士業としての位置づけ

マンション管理士の資格制度ができたのは、2001年であり、まだ20年強しか経過していません。

そのため、他の士業資格と比べて、まだまだ知名度がありません。

また、マンションに限定される資格であるため、マンション以外にお住いの方には馴染みがないともいえます。

マンション管理における社会的な課題としては非常に大きいものの、資格の知名度や業務範囲においては、限定されるといえるかもしれません。

問題解決能力の重要性

そもそも、マンション管理士には最近でこそ、管理計画認定制度における事前確認が独占業務に近い形で出てきました。

しかしながら、他の士業には多い独占業務と言われる業務はなく、マンション管理組合のコンサルタント的な位置づけです。

そのため、マンション管理組合の課題解決にどれだけ貢献できるかが肝であるといえます。

そして、前述しましたが、深くは無いものの多面的なスキルと知見、外部ネットワークがあるマンション管理士が強いと考えられます。

もちろん、深い知識を持ち合わせている方が望ましいですが、訴訟のスキルは弁護士や司法書士が、会計は税理士の方が持ち合わせています。

また、建築士を含めこれらの資格を重複して持つマンション管理士は強いといえるかもしれません。

独立して活躍する専門家の現状

マンション管理士ができてから20年超経っていますが、マンション管理において専門性を持って独立して活躍している人は比較的少ないといえるかもしれません。

理由としては、

・現役引退後に何か手に職をということで取得する人も一定程度いるため、取得後専門性を身に着ける人も一定数いる
・マンション管理士として独立し専門性を発揮しながら食べていけている人が少数である
・資格取得者の多くは社内マンション管理士としてマンション管理会社や不動産会社に所属している

などが考えられます。

ちなみに少し前のデータですが、平成30年6月1日公益財団法人マンション管理センターが発表した「マンション管理士の業務についてのアンケート調査結果の概要」では、

・年齢構成は60代以上が51.6%で60~69歳が34.3%
・マンション管理業、不動産業が34.6%とそれ以外の業種も多い
・マンション管理士として活動を行ったことがないが75.8%
・過去1年間の年間売上高は、400万円以上が18.8%、100万円以上400万円未満が30.4%、100万円未満が37.3%と売上が少ない

状況となっています。

そのため、地元のマンション管理士会や、日本マンション管理士会連合会、検索にでてくるマンション管理士等、採用にはマンション管理組合に必要なニーズを含めて比較検討することが求められます。

今後重要な役割を担う職業

国土交通省のガイドラインを通じた施策や自治体による管理計画認定制度、さらにはメディアでもよく取り上げられる修繕積立金不足の問題、高経年化したマンションの大規模修繕工事等、マンション管理においては社会課題も含め数々の問題が発生しています。

これらをノウハウを持ち合わせていないマンション管理組合で解決していくのは至難の業ともいえます。

そのような中で、一定の難易度のある国家資格であり、十分にマンション管理に関する経験を積むことによってスキルやノウハウが蓄積するマンション管理士は重要な位置づけになってくると考えられます。

ただ、前章でも紹介した通り、他の士業と同様にマンションの専門家であるマンション管理士であっても、得意不得意があることから、管理組合が抱える課題をそのまま解決できるかどうかは分かりません。

そこはマンション管理組合として適切かどうか、判断していく以外にはないかと考えられます。

マンション管理組合において採用を検討したい外部専門家

国土交通省からのガイドラインにもある通り、今後はマンション管理組合として外部専門家の活用がより多くなってくることが想定されます。

また、管理組合独自の事情もあるため、活用におけるメリットやデメリットも検討していく必要があるでしょう。

マンション管理士をはじめとした、今後の外部専門家活用の参考になればと考えています。

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