近年、都市部のランドマークとして存在感を増している超高層マンション(タワーマンション)。「中古となっても値崩れが起き難く、換金性に優れている」ことから人気を集め、その人気は大都市圏から地方中核都市にまで波及しています。規制緩和による市街地中心部や駅前での再開発の進捗も、建設・計画増加に大きく影響してきました。
本コラムでは、株式会社不動産経済研究所の最新調査に基づき、日本の超高層マンション供給計画の現状と将来展望をマンション管理士が詳しく解説します。
最新!全国の超高層マンション供給計画の全体像
2025年以降に完成を予定している全国の超高層マンション(20階建て以上)は、270棟、総戸数9万7,141戸となる見込みです。これは、2024年3月末時点の前回調査と比べて、7棟、1,033戸の増加となっています。
エリア別の内訳を見ると、首都圏が168棟・7万2,252戸で全国シェアの74.4%を占めています。近畿圏は33棟・1万1,343戸でシェア11.7%、その他地区は69棟・1万3,546戸となっています。首都圏は前回調査時と比較して戸数が減少していますが、近畿圏は増加しています。
超高層マンション市場の過去の変遷
超高層マンションの建設・計画は、1990年代後半以降、人気と再開発の進展を背景に増加しました。しかし、2007年以降の価格高騰による販売低迷や、2008年9月のリーマンショックにより、マンション供給計画の規模縮小が相次ぎました。超高層マンションも例外ではなく、多くの物件で事業の縮小が余儀なくされた結果、竣工戸数は大きく変動しました。
特に、2009年には3万5,607戸と3万5,000戸を突破しましたが、その後は減少に転じ、2010年には1万7,967戸、さらに東日本大震災の影響も受けた2011年には1万3,321戸まで落ち込みました。
その後、2012年には1万6,060戸に増加し、2013年には1万8,022戸、2015年には2009年以来の高水準となる1万8,821戸に達しました。しかし、2016年以降は再び減少傾向となり、2018年には1万5戸となりました。2019年に1万7,039戸と増加しましたが、2020年1万1,991戸、2021年1万3,966戸、2022年はコロナ禍での工期遅延などの影響もあり8,244戸に落ち込みました。直近では、2023年に1万4,037戸、2024年も1万4,138戸と同水準を維持しています。
2025年以降の超高層マンション供給予測
2025年以降の超高層マンション供給は、再び増加が見込まれています。2025年には1万5,840戸が完成予定で、これは建設業の2024年問題などで完成がずれ込んだ物件が加わることも影響しています。
さらに、2026年には2万4,746戸と急増する見込みです。これは、東京都心部や湾岸エリアに加え、地方中核都市でも大規模タワーや複合再開発プロジェクトが多く控えているためです。2027年は反動で落ち込むものの、1万2,307戸、その後も2028年1万2,971戸、2029年以降は3万1,277戸の計画があり、今後も一定規模の供給が続くことが予測されます。
エリア別詳細!首都圏、近畿圏、その他主要都市の計画
首都圏の計画
首都圏では、2025年以降に168棟・7万2,252戸の超高層マンションが計画されています。これは全国計画の74.4%を占めます。前回調査時と比較すると、棟数は1棟増加していますが、戸数は1,163戸減少しています。
首都圏内の詳細エリア別の計画(2025年以降完成予定)
- 東京23区: 112棟・4万8,613戸。首都圏全体の約67.3%、全国計画の50.0%を占める最大エリアです。
- 特に、港区(31棟・12,047戸)、中央区(10棟・6,507戸)、千代田区(5棟・319戸)といった都心部での計画が多いです。新宿区も2棟で3,200戸と大規模計画があります。
- 東京都下: 10棟・4,265戸。
- 神奈川県: 25棟・1万489戸。横浜市(10棟・5,118戸)、川崎市(8棟・3,221戸)での計画が中心です。
- 埼玉県: 6棟・1,691戸。さいたま市での計画が2棟で751戸です。
- 千葉県: 15棟・7,194戸。千葉市での計画が3棟で1,459戸です。
近畿圏の計画
近畿圏では、2025年以降に33棟・1万1,343戸の超高層マンションが計画されており、全国シェアは11.7%です。前回調査時から4棟・1,783戸と大きく増加しています。
近畿圏内の詳細エリア別の計画(2025年以降完成予定)
- 大阪市: 20棟・6,805戸。近畿圏全体の約60.0%を占めます。全国シェアは7.0%です。
- 大阪府下: 7棟・2,364戸。
- 兵庫県: 5棟・1,844戸。
- 京都府: 1棟・330戸。
その他主要都市の計画
首都圏、近畿圏を除くその他地区では、2025年以降に69棟・1万3,546戸の超高層マンションが計画されています。
その他主要都市の計画(2025年以降完成予定、一部抜粋)
- 愛知県: 10棟・1,761戸。
- 福岡県: 8棟・1,497戸。
- 岡山県: 3棟・1,202戸。
- 広島県: 6棟・1,113戸。
- 北海道: 5棟・912戸。
- 宮城県: 3棟・847戸。
その他、静岡県、茨城県、新潟県、岐阜県、愛媛県、長崎県など、多くの地方都市で計画が進んでいます。
注目の大規模超高層マンション計画
特に規模の大きな、50階以上の「超超高層計画」も各地で進行中です。代表的な例をいくつか挙げます。
- 六本木(港区): 70階, 66階建て、1,000戸。
- 麻布台(港区): 63階, 53階建て、1,239戸。
- 西新宿3丁目(新宿区): 63階, 62階建て、3,200戸。
- 大手町(千代田区): 63階建て、50戸。
- 月島(中央区): 58階建て、1,285戸(分譲中)。
- 豊海(中央区): 53階建て×2棟、2,046戸。
- 東高島(横浜市神奈川区): 52階, 47階建てなど、2,500戸。
- 中之島(大阪市北区): 57階, 52階建て、2,000戸。
これらの大規模プロジェクトが、将来の供給戸数を押し上げる要因となります。
まとめ
2025年以降、日本の超高層マンション供給計画は全国で約9.7万戸に達しており、前回調査から増加しています。特に首都圏に集中していますが、近畿圏や地方中核都市でも計画が進展しています。
過去には市場変動や震災の影響で供給が落ち込んだ時期もありましたが、今後は大規模プロジェクトの完成などにより、特に2026年に向けて供給が増加する見込みです。これらの計画の進捗は、今後の都市開発や住宅市場に大きな影響を与えると考えられます。
今回のコラムの音声解説
今回のコラムの音声解説は以下
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参考文献
今回の参考文献は以下の通りです。
✅株式会社 不動産経済研究所(2025年5月22日) ―超高層マンション動向 2025―
✅不動産経済研究所、「超高層マンション動向 2025」を発表 プレスリリース
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